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経世済民のために・・・

日本共和国憲法私案要綱

2023年07月20日 | 憲法研究

 

日本共和国憲法私案要綱

日本共和国憲法私案要綱

昭和二十年十一月二十一日 十二月十日 高野岩三郎
根本原則 天皇制ヲ廃止シ、之ニ代ヘテ大統領ヲ元首トスル共和制採用
参考 北米合衆国憲法
ソヴィエット聯邦憲法
瑞西聯邦憲法
独逸ワイマール憲法
現行帝国憲法制定ノ由来ト推移△
現行憲法ヲ改正シ政体ヲ変更スルニ現時ヲ以テ絶好ノ機会ナリトスル理由
△明治初期ニ於ル民権論ノ興隆、之ニ対スル藩閥政府ノ対策、国会開設ノ誓約、憲法ノ制定、其ノ以後ニ於ル軍閥ノ一貫セル組織的陰謀、最近ニ至ルマデノ民衆ノ奴隷化、現時ヲ以テ絶好ノ機会ナリトスル理由ハ「憲法改正要綱」ノ中ニアリ
上記根本原則ニ基テ立案セル憲法私案ノ要綱

一、 第一章 主権及ビ元首

日本国ノ主権ハ日本国民ニ属スル
日本国ノ元首ハ国民ノ選挙スル大統領トスル
(帝国憲法第一条乃至第五条削除)
大統領ノ任期ハ四年トシ、再選ヲ妨ゲザルモ三選ヲ禁ズル
大統領ハ国ノ内外ニ対シテ国民ヲ代表スル
立法権ハ国会ニ属スル
国会ノ召集 其ノ開会及閉会ハ国会ノ決議ニヨリ大統領之ニ当ル、大統領ハ国会ヲ解散スルヲ得ズ
国会閉会中公益上緊急ノ必要アリト認ムルトキハ大統領ハ臨時国会ヲ召集スル
大統領ハ行政権ヲ執行シ国務大臣ヲ任免スル
条約ノ締結ハ国会ノ議決ヲ経テ大統領之ニ当ルv 爵位勲章其ノ他ノ栄典ハ一切廃止、其ノ効力ハ過去ニ於テ授与サレタルモノニ及ブ

一、 第二章 国民ノ権利義務

国民ハ居住及ビ移転ノ自由ヲ有ス
国民ハ通信ノ自由ヲ有ス
国民ハ公益ノ必要アル場合ノ外、其ノ所有権ヲ侵サルルコトナシ〔営業ノ自由ヲ含ム〕
国民ハ信教ノ自由ヲ有ス
国民ハ言論著作出版集会及結社ノ自由ヲ有ス
国民ハ労働ノ権利、生存ノ権利ヲ有ス
国民ハ教育ヲ受ルノ権利ヲ有ス
国民ハ文化的享楽ノ権利ヲ有ス
国民ハ休養ノ権利(労働不能トナレル勤労者ノ休養、妊婦産婦ノ保護等ヲ含ム)ヲ有ス
国民ハ憲法ヲ遵守シ社会的共同生活ノ法則ヲ尊重奉スルノ義務ヲ有ス
国民ハ納税ノ義務ヲ有ス

一、 第三章 国会

国会ハ第一院及第二院ヨリ成ル
第一院ハ選挙法ノ定ムル法ニヨリ国民ノ直接選挙シタル議員ヲ以テ組織ス
第二院ハ各種ノ職業及ビ其ノ内ニ於ル階層ヨリ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス、議員ノ任期ハ三年トシ毎年三分一ヅツ改選スル
何人モ同時ニ両院ノ議員タルヲ得ズ
二タビ第一院ヲ通過シタル法律案ハ第二院ニ於テ否決スルヲ得ズ
両院ハ各々其ノ総議院三分一以上出席スルニ非ザレバ議決ヲナスコトヲ得ズ
両院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
両院ノ議事ハ一切公開トシ、之ヲ速記シテ公表スヘシ
両院ハ各々其ノ議決ニ依リ特殊問題ニ就テ委員会ヲ設ケコレニ人民ヲ召喚シ意見ヲ聴聞スルコトヲ得
両院ノ議員ハ院内ニ於テナシタル発言及表決ニ就キ院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ
両院ノ議員ハ現行犯罪ヲ除クノ外会期中又ハ院ノ許諾アリシテ逮捕セラルルコトナシ
両院ハ各々政府又ハ大臣ニ対シ不信任ノ表決ヲナスコトヲ得此ノ場合政府又ハ大臣ハ直チニ其ノ職ヲ去ルヘシ

一、 第四章 政府及大臣

政府ハ各省大臣及無任所大臣ヲ以テ組織ス
(枢密院ノ廃止、宮内大臣内大臣ノ廃止)

一、 第五章 経済及労働

土地ハ国有トスル
公益上必要ナル生産手段ハ国会ノ議決ニ依リ漸次国有ニ移スベシ
労働ハ如何ナル場合ニモ一日八時間(実労働時間六時間)ヲ超ルコトヲ得ズ
労働ノ報酬ハ労働者ノ文化的生計水準以下ニ下ルコトヲ得ズ

一、 第六章 文化及科学

凡テ教育其他文化ノ享受ハ男女ノ間ニ差異ヲ設クベカラズ
一切ノ教育・文化ハ真理ノ追究・真実ノ闡明ヲ目標トスル科学性ニ其ノ根底ヲ措クベシ

一、 第七章 司法

司法権ハ裁判所構成法及陪審法ノ規定ニ従ヒ裁判所之ヲ行フ
司法権ハ行政権ニ依リ侵害セラルルコトナシ
行政官庁処分ニ依リ権利ヲ傷害セラレ又ハ正当ノ利益ヲ損害セラレタリトスル場合ニ対シ別ニ行政裁判所ヲ設ク

一、 第八章 財政

国ノ歳出歳入ハ詳密ニ併カモ判明ニ予算ニ規定シ毎年国会ニ提出シ其ノ承認ヲ経ベシ
予算ハ先ヅ第一院ニ提出スベシ其ノ承認ヲ経タル項目及金額ニ就テハ第二院之ヲ否決スルヲ得ズ
租税ノ賦課ガ公正ニ行ハレ苟モ消費税ヲ偏重シテ民衆ノ負担ノ過重ヲ来サザルヤウ注意スルヲ要ス
歳入歳出ノ決算ハ速ニ会計検査院ニ提出シ其ノ検査確定ヲ得タル後政府ハ之ヲ国会ニ提出シテ承認ヲ経ベシ

一、 第九章 憲法ノ改正及国民投票

将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アリト認メタルトキハ大統領又ハ第一院若クハ第二院ハ議案ヲ作成シ之ヲ国会ノ議ニ付スヘシ
此ノ場合ニ於テ両院ハ各々其ノ議員三分二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲナスコトヲ得ス
国民全般ノ利害ニ関係アル問題ニシテ国民投票ニ附スルノ必要アリト認メラルル事項アルトキハ前憲法改正ノ規定ニ遵準シテ其ノ可否ヲ決スへシ
 
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2-13 高野岩三郎の憲法改正案

高野岩三郎は、明治から大正時代にかけて、東大教授として統計学を講じていたが、労働運動家の兄房太郎の影響で、労働問題に関心を深め、東大教授を辞して、大原社会問題研究所の創立に参画し所長に就任(1920年)。戦後は、日本社会党の創立に参加、また日本文化人連盟を結成するとともに憲法研究会を組織、1946(昭和21)年には日本放送協会会長に就任した。

憲法研究会は、鈴木安蔵が作成した原案をもとに討議をすすめたが、多数意見は、天皇制の存続を容認するものであった。高野は、研究会案の討議に参加する一方で、主権在民の原則を徹底し、天皇制廃止・共和制樹立の立場から、1945(昭和20)年11月下旬、独自案である「日本共和国憲法私案要綱」を起草し、完成稿を鈴木に手渡した(掲出資料の日付表記によれば、11月21日に執筆し、12月10日に加筆したように見える)。この中には、大統領制の採用とともに、土地や公益上必要な生産手段を国有化する旨の規定が含まれている。

同要綱は、第二章を修正するとともに、全体に若干の字句の修正を加えて、『新生』1946(昭和21)年2月号に掲載された論文「囚われたる民衆」の中に、「改正憲法私案要綱」と題されて収録された。

資料名 日本共和国憲法私案要綱
年月日 昭和20年11月21日、12月10日
資料番号  
所蔵 法政大学大原社会問題研究所
原所蔵  
注記  
資料名 改正憲法私案要綱 高野岩三郎(「新生」昭和二一年二月號所載)
年月日  
資料番号 入江俊郎文書 11(「憲法改正参考書類(憲法問題調査委員会資料)」の内)
所蔵 国立国会図書館
原所蔵  
注記  
    ※出典
    高野岩三郎の憲法改正案 | 日本国憲法の誕生 https://is.gd/sKNf0z
     
     
     
     

    進歩黨 憲法改正要綱

    2023年07月19日 | 憲法研究

    進歩黨 憲法改正要綱

    (参考)

    進歩党 憲法改正要綱 (二月十四日発表)

    一、統治権行使の原則

    一、天皇は臣民の輔翼に依り憲法の条規に従ひ統治権を行ふ
    立法は帝国議会の協賛に由り、行政は内閣の輔弼を要し、司法は裁判所に之を託す
    二、委任立法並に独立命令は之を廃止す
    三、緊急勅令の制定は議会常置委員会の議を経るを要す
    四、宣戦、媾和、同盟条約、立法事項又は重大事項を含む条約の締結は帝国議会の議を経るを要す
    五、統帥大権、編成大権及非常大権に関する条項は之を削除す
    六、戒厳の宣告は帝国議会の議を経るを要す
    七、内閣、各省其の他重要なる官制は法律に拠る
    八、教育の制度に関する重要なる事項は法律に拠る
    九、栄典大権中爵位の授与は之を廃止す

    二、臣民の権利義務

    十、日本臣民不法に逮捕、監禁せられたりとするときは裁判所に対し呼出を求め弁明を聴取せられんことを請願することを得
    十一、日本臣民は自己を犯罪人たらしむべき告白を強要せらるることなし
    十二、住所の不可侵、信書の秘密、信教、言論、著作、印行、集会、結社の自由の制限の法律は公安保持の為め必要なる場合に限り之を制定することを得

    三、帝国議会

    十三、貴族院を廃止し参議院を置く
    参議院は参議院法の定むる所に依り学識経験者及選挙に依る議員を以て之を組織す
    十四、予算案及財政法案は衆議院に於て之を先議す
    参議院は衆議院に於て削減せる予算案の復活を決議することを得ず
    十五、衆議院に於て引続き二回通過したる法案は参議院の同意なくして成立したるものと看做さる
    十六、衆議院は内閣及各国務大臣に対し不信任又は弾劾を決議することを得
    十七、帝国議会の会期を五箇月とす
    衆議院は会期の延長並に臨時議会の召集を求むることを得
    十八、議会常置委員会を設く
    常置委員会は議会閉会中緊急勅令の制定、臨時議会召集の請求緊急財政処分、予備金の支出、暫定予算、其の他緊急実施を要する重要事項を議決す此等の議決は次の帝国議会の承認を要す常置委員は衆議院議員任期満了及衆議院解散の場合に於ても新議会成立迄其の資格を存続す

    四、国務大臣

    十九、天皇内閣総理大臣を親任せんとするときは両院議長に諮問す
    各国務大臣の親任は内閣総理大臣の奏薦に依る
    内閣総理大臣及国務大臣を以て内閣を組織す
    二十、内閣総理大臣及国務大臣は帝国議会に対し其の責に任ず
    二十一、枢密院は之を廃止す

    五、司法

    二十二、大審院を最高裁判所とす大審院は法律又は命令が違憲又は違法なりやを審査するの権を有す
    二十三、行政裁判所を廃止しその権限を裁判所の管轄に属せしむ

    六、会計

    二十四、総予算不成立の場合には前年度予算の月額範囲内に於て三箇月限り暫定予算を作成す、暫定予算は常置委員会の承認を要す
    政府は三箇月の期間内に新予算の成立し得るやう帝国議会を召集することを要す
    七、補則
    二十五、各議院は各其の現在議員の三分の二以上の同意を以て憲法改正案を発議することを得
     
     
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    資料と解説

    2-12 各政党の憲法改正諸案

    敗戦後、それまで非合法化されていた日本共産党が再建され、また、共産党を除く戦前の無産政党関係者により日本社会党が結成された。他方、保守政党では、非翼賛系議員を中心とした日本自由党と旧大日本政治会の多数を結集した日本進歩党が相次いで結成された。これら左右の各政党は、組織が整うにつれて、順次、独自の憲法改正草案を発表していった。

    共産党の「新憲法の骨子」は、1945(昭和20)年11月8日の全国協議会で決議されたものである。なお、当日決議されたものは、掲出資料より1項目多く全7項目となっていた。翌年の6月29日に、条文化された憲法草案が発表されたが、その特徴は、天皇制を廃止して共和制を採用していること、自由権・生活権等が社会主義の原則に基づいて保障されていることである。

    自由党は、同党の憲法改正特別調査会の浅井清慶大教授と金森徳次郎が中心となり、「憲法改正要綱」を作成し、1946(昭和21)年1月21日の総会で決定した。また進歩党は、2月14日の総務会で「憲法改正要綱」を決定した。両党の案は、天皇大権の廃止、制限や人権の拡張に関する条項があるものの、共和制を否定して、天皇の位置付けを統治権の「総攬者」もしくは統治権を「行ふ」ものとしており、総じて明治憲法の枠組みを堅持した保守的なものであった。

    一方社会党は、民間の憲法研究会案の作成にも加わった高野岩三郎、森戸辰男等が起草委員となり、党内左右両派の妥協の産物という色合いが強い「憲法改正要綱」を、2月23日に発表した(掲出資料の表記は2月24日発表)。同要綱は、「主権は国家」にあるとし、統治権を分割、その大半を議会に、一部を天皇に帰属させることで、天皇制を存続するとともに、議会の権限を増大し、国民の生存権の保障や死刑制度の廃止等を打ち出した点に特色がある。

    なお、共産党案以外の3点の掲出資料は、いずれも憲法問題調査委員会において配布された参考資料の一部である。

    資料名 日本共産党の新憲法の骨子
    年月日 昭和20年11月11日
    資料番号 佐藤達夫文書 26(「政党その他の団体の憲法改正案」の内)
    所蔵 国立国会図書館
    原所蔵  
    注記 当該資料は、当時の憲法問題調査委員会において配布された資料ではなく、後年に憲法制定関連の資料の一つとして作成されたものと思われる。11月8日の全国協議会で決議されたものには、第4項として「民主議会の議員は人民に責任を負ふ、選挙者に対して報告をなさず、その他不誠実不正の行為があった者は即時辞めさせる」とある。以下第5項から第7項の部分は、本資料中の第4項から第6項に該当する。(1945年11月12日付『朝日新聞』)
    資料名 自由黨 憲法改正要綱
    年月日 昭和21年1月21日
    資料番号 入江俊郎文書 9(「憲法問題調査委員会関係」の内)
    所蔵 国立国会図書館
    原所蔵  
    注記  
    資料名 進歩黨 憲法改正要綱
    年月日 昭和21年2月14日
    資料番号 入江俊郎文書 11(「憲法改正参考書類(憲法問題調査委員会資料)」の内)
    所蔵 国立国会図書館
    原所蔵  
    注記  
    資料名 社会黨 憲法改正要綱
    年月日 昭和21年2月24日発表
    資料番号 入江俊郎文書 11(「憲法改正参考書類(憲法問題調査委員会資料)」の内)
    所蔵 国立国会図書館
    原所蔵  
    注記  
    資料名 日本共産黨の日本人民共和國憲法(草案)
    年月日 1946年6月29日発表
    資料番号 憲法調査会資料(西沢哲四郎旧蔵)42(「憲資・総第10号 帝国憲法改正諸案及び関係文書(二)-政党その他の憲法改正案」の内)
    所蔵 国立国会図書館
    原所蔵  
    注記 当該資料は、憲法調査会の資料として昭和32年に翻刻刊行されたもの。6月29日発表当時のものには、当該の表題は付されておらず、「日本共産党憲法草案」となっている。(1946年7月15日付『アカハタ』)
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    大日本帝国憲法

    2022年09月02日 | 憲法研究

    大日本帝国憲法

    目次


    告文

    皇朕レ謹ミ畏ミ
    皇祖
    皇宗ノ神霊ニ誥ケ白サク皇朕レ天壌無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ宝祚ヲ承継シ旧図ヲ保持シテ敢テ失墜スルコト無シ顧ミルニ世局ノ進運ニ膺リ人文ノ発達ニ随ヒ宜ク
    皇祖
    皇宗ノ遺訓ヲ明徴ニシ典憲ヲ成立シ条章ヲ昭示シ内ハ以テ子孫ノ率由スル所ト為シ外ハ以テ臣民翼賛ノ道ヲ広メ永遠ニ遵行セシメ益々国家ノ丕基ヲ鞏固ニシ八洲民生ノ慶福ヲ増進スヘシ茲ニ皇室典範及憲法ヲ制定ス惟フニ此レ皆
    皇祖
    皇宗ノ後裔ニ貽シタマヘル統治ノ洪範ヲ紹述スルニ外ナラス而シテ朕カ躬ニ逮テ時ト倶ニ挙行スルコトヲ得ルハ洵ニ
    皇祖
    皇宗及我カ
    皇考ノ威霊ニ倚藉スルニ由ラサルハ無シ皇朕レ仰テ
    皇祖
    皇宗及
    皇考ノ神祐ヲ祷リ併セテ朕カ現在及将来ニ臣民ニ率先シ此ノ憲章ヲ履行シテ愆ラサラムコトヲ誓フ庶幾クハ
    神霊此レヲ鑒ミタマヘ

    憲法発布勅語

    朕国家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノ欣栄トシ朕カ祖宗ニ承クルノ大権ニ依リ現在及将来ノ臣民ニ対シ此ノ不磨ノ大典ヲ宣布ス
    惟フニ我カ祖我カ宗ハ我カ臣民祖先ノ協力輔翼ニ倚リ我カ帝国ヲ肇造シ以テ無窮ニ垂レタリ此レ我カ神聖ナル祖宗ノ威徳ト並ニ臣民ノ忠実勇武ニシテ国ヲ愛シ公ニ殉ヒ以テ此ノ光輝アル国史ノ成跡ヲ貽シタルナリ朕我カ臣民ハ即チ祖宗ノ忠良ナル臣民ノ子孫ナルヲ回想シ其ノ朕カ意ヲ奉体シ朕カ事ヲ奨順シ相与ニ和衷協同シ益々我カ帝国ノ光栄ヲ中外ニ宣揚シ祖宗ノ遺業ヲ永久ニ鞏固ナラシムルノ希望ヲ同クシ此ノ負担ヲ分ツニ堪フルコトヲ疑ハサルナリ

    大日本帝国憲法

    朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ万世一系ノ帝位ヲ践ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ即チ朕カ祖宗ノ恵撫慈養シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ増進シ其ノ懿徳良能ヲ発達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼賛ニ依リ与ニ倶ニ国家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履践シ茲ニ大憲ヲ制定シ朕カ率由スル所ヲ示シ朕カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所ヲ知ラシム
    国家統治ノ大権ハ朕カ之ヲ祖宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ伝フル所ナリ朕及朕カ子孫ハ将来此ノ憲法ノ条章ニ循ヒ之ヲ行フコトヲ愆ラサルヘシ
    朕ハ我カ臣民ノ権利及財産ノ安全ヲ貴重シ及之ヲ保護シ此ノ憲法及法律ノ範囲内ニ於テ其ノ享有ヲ完全ナラシムヘキコトヲ宣言ス
    帝国議会ハ明治二十三年ヲ以テ之ヲ召集シ議会開会ノ時ヲ以テ此ノ憲法ヲシテ有効ナラシムルノ期トスヘシ
    将来若此ノ憲法ノ或ル条章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ継統ノ子孫ハ発議ノ権ヲ執リ之ヲ議会ニ付シ議会ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ
    朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ為ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及将来ノ臣民ハ此ノ憲法ニ対シ永遠ニ従順ノ義務ヲ負フヘシ

    御名御璽
    明治二十二年二月十一日

    • 内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
    • 枢密院議長 伯爵 伊藤博文
    • 外務大臣 伯爵 大隈重信
    • 海軍大臣 伯爵 西郷従道
    • 農商務大臣 伯爵 井上 馨
    • 司法大臣 伯爵 山田顕義
    • 大蔵大臣兼内務大臣 伯爵 松方正義
    • 陸軍大臣 伯爵 大山 巌
    • 文部大臣 子爵 森 有礼
    • 逓信大臣 子爵 榎本武揚

    大日本帝国憲法

    第1章 天皇

    • 第1条大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス
    • 第2条皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス
    • 第3条天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス
    • 第4条天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ
    • 第5条天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ
    • 第6条天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
    • 第7条天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス
    • 第8条天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス
      2 此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ
    • 第9条天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス
    • 第10条天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル
    • 第11条天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
    • 第12条天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム
    • 第13条天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス
    • 第14条天皇ハ戒厳ヲ宣告ス
      2 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
    • 第15条天皇ハ爵位勲章及其ノ他ノ栄典ヲ授与ス
    • 第16条天皇ハ大赦特赦減刑及復権ヲ命ス
    • 第17条摂政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
      2 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ

    第2章 臣民権利義務

    • 第18条日本臣民タル要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
    • 第19条日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得
    • 第20条日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
    • 第21条日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税ノ義務ヲ有ス
    • 第22条日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
    • 第23条日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ
    • 第24条日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルヽコトナシ
    • 第25条日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及捜索セラルヽコトナシ
    • 第26条日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
    • 第27条日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルヽコトナシ
      2 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
    • 第28条日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
    • 第29条日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス
    • 第30条日本臣民ハ相当ノ敬礼ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得
    • 第31条本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナシ
    • 第32条本章ニ掲ケタル条規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴触セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス

    第3章 帝国議会

    • 第33条帝国議会ハ貴族院衆議院ノ両院ヲ以テ成立ス
    • 第34条貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス
    • 第35条衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス
    • 第36条何人モ同時ニ両議院ノ議員タルコトヲ得ス
    • 第37条凡テ法律ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス
    • 第38条両議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得
    • 第39条両議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同会期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス
    • 第40条両議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付キ各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得但シ其ノ採納ヲ得サルモノハ同会期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス
    • 第41条帝国議会ハ毎年之ヲ召集ス
    • 第42条帝国議会ハ三箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ
    • 第43条臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常会ノ外臨時会ヲ召集スヘシ
      2 臨時会ノ会期ヲ定ムルハ勅命ニ依ル
    • 第44条帝国議会ノ開会閉会会期ノ延長及停会ハ両院同時ニ之ヲ行フヘシ
      2 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停会セラルヘシ
    • 第45条衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅令ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ
    • 第46条両議院ハ各々其ノ総議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ為ス事ヲ得ス
    • 第47条両議院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
    • 第48条両議院ノ会議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ秘密会ト為スコトヲ得
    • 第49条両議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得
    • 第50条両議院ハ臣民ヨリ呈出スル請願書ヲ受クルコトヲ得
    • 第51条両議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノヽ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得
    • 第52条両議院ノ議員ハ議院ニ於テ発言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ処分セラルヘシ
    • 第53条両議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内乱外患ニ関ル罪ヲ除ク外会期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラルヽコトナシ
    • 第54条国務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及発言スルコトヲ得

    第4章 国務大臣及枢密顧問

    • 第55条国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
      2 凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス
    • 第56条枢密顧問ハ枢密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ応ヘ重要ノ国務ヲ審議ス

    第5章 司法

    • 第57条司法権ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
      2 裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
    • 第58条裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
      2 裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ処分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
      3 懲戒ノ条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
    • 第59条裁判ノ対審判決ハ之ヲ公開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ法律ニ依リ又ハ裁判所ノ決議ヲ以テ対審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
    • 第60条特別裁判所ノ管轄ニ属スヘキモノハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
    • 第61条行政官庁ノ違法処分ニ由リ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニシテ別ニ法律ヲ以テ定メタル行政裁判所ノ裁判ニ属スヘキモノハ司法裁判所ニ於テ受理スルノ限ニ在ラス

    第6章 会計

    • 第62条新ニ租税ヲ課シ及税率ヲ変更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
      2 但シ報償ニ属スル行政上ノ手数料及其ノ他ノ収納金ハ前項ノ限ニ在ラス
      3 国債ヲ起シ及予算ニ定メタルモノヲ除ク外国庫ノ負担トナルヘキ契約ヲ為スハ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ
    • 第63条現行ノ租税ハ更ニ法律ヲ以テ之ヲ改メサル限ハ旧ニ依リ之ヲ徴収ス
    • 第64条国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ
      2 予算ノ款項ニ超過シ又ハ予算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝国議会ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
    • 第65条予算ハ前ニ衆議院ニ提出スヘシ
    • 第66条皇室経費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年国庫ヨリ之ヲ支出シ将来増額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝国議会ノ協賛ヲ要セス
    • 第67条憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ属スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝国議会之ヲ廃除シ又ハ削減スルコトヲ得ス
    • 第68条特別ノ須要ニ因リ政府ハ予メ年限ヲ定メ継続費トシテ帝国議会ノ協賛ヲ求ムルコトヲ得
    • 第69条避クヘカラサル予算ノ不足ヲ補フ為ニ又ハ予算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル為ニ予備費ヲ設クヘシ
    • 第70条公共ノ安全ヲ保持スル為緊急ノ需用アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝国議会ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
      2 前項ノ場合ニ於テハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
    • 第71条帝国議会ニ於テ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ予算ヲ施行スヘシ
    • 第72条国家ノ歳出歳入ノ決算ハ会計検査院之ヲ検査確定シ政府ハ其ノ検査報告ト倶ニ之ヲ帝国議会ニ提出スヘシ
      2 会計検査院ノ組織及職権ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

    第7章 補則

    • 第73条将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
      2 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス
    • 第74条皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス
      2 皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ条規ヲ変更スルコトヲ得ス
    • 第75条憲法及皇室典範ハ摂政ヲ置クノ間之ヲ変更スルコトヲ得ス
    • 第76条法律規則命令又ハ何等ノ名称ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ総テ遵由ノ効力ヲ有ス
      2 歳出上政府ノ義務ニ係ル現在ノ契約又ハ命令ハ総テ第六十七条ノ例ニ依ル

       

       

       


      なぜ、憲法学は集団的自衛権違憲説で一致するのか? 木村草太・憲法学者

      2015年06月18日 | 憲法研究

       

      憲法学者の長谷部恭男・早稲田大教授と小林節・慶応大名誉 教授が、衆院憲法審査会で安全保障関連法案を「違憲」と指摘した。長谷部教授は「95%を超える憲法学者が違憲だと考えているのではないか」とも語る。憲 法学者による疑義に対し、菅官房長官は、「安保法制を合憲と考える学者もたくさんいる」と反発したが、後日、「数(の問題)ではない」と述べ、事実上前言 を撤回した。そもそも、なぜ、圧倒的多数の憲法学者が集団的自衛権を違憲と考えるのだろうか。憲法が専門の木村草太・首都大学東京准教授に寄稿してもらっ た。


      1.集団的自衛権はなぜ違憲なのか

       6月4日の憲法審査会で、参考人の憲法学者が集団的自衛権行使容認を違憲と断じた。このことの影響は大きく、政 府・与党は釈明に追われている。もっとも、集団的自衛権行使容認違憲説は、ほとんどの憲法学者が一致して支持する学界通説である。まずは、「なぜ学説が集 団的自衛権違憲説で一致するのか」確認しておこう。

       日本国憲法では、憲法9条1項で戦争・武力行使が禁じられ、9条2項では「軍」の編成と「戦力」不保持が規定される。このため、外国政府への武力 行使は原則として違憲であり、例外的に外国政府への武力行使をしようとするなら、9条の例外を認めるための根拠となる規定を示す必要がある。

       「9条の例外を認めた規定はない」と考えるなら、個別的自衛権違憲説になる。改憲論者の多くは、この見解を前提に、日本防衛のために改憲が必要だと言う。

       では、個別的自衛権合憲説は、どのようなロジックによるのか。憲法13条は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は「国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定める。

       つまり、政府には、国内の安全を確保する義務が課されている。また、国内の主権を維持する活動は防衛「行政」であり、内閣の持つ行政権(憲法65 条、73条)の範囲と説明することもできる。とすれば、自衛のための必要最小限度の実力行使は、9条の例外として許容される。これは、従来の政府見解であ り、筆者もこの解釈は、十分な説得力があると考えている。

       では、集団的自衛権の行使を基礎付ける憲法の条文は存在するか。これは、ネッシーを探すのと同じくらいに無理がある。国際法尊重や国際協調を宣言 する文言はあるものの、これは、あくまで外国政府の尊重を宣言するものに過ぎない。「外国を防衛する義務」を政府に課す規定は、どこにも存在しない。

       また、外国の防衛を援助するための武力行使は、「防衛行政」や「外交協力」の範囲には含まれず、「軍事」活動になるだろう。ところが、政府の権限 を列挙した憲法73条には、「行政」と「外交」の権限があるだけで「軍事」の規定がない。政府が集団的自衛権を行使するのは、憲法で附与されていない軍事 権の行使となり、越権行為になるだろう。

       つまり、日本国憲法の下では、自衛隊が外国の政府との関係でなしうる活動は、防衛行政としての個別的自衛権の行使と、外交協力として専門技術者として派遣されるPKO活動などに限定せざるを得ない。

       以上のように、個別的自衛権すら違憲と理解する憲法学者はもちろん、個別的自衛権は合憲と理解する憲法学者であっても、集団的自衛権の行使は違憲 と解釈している。憲法学者の圧倒的多数は、解釈ロジックを明示してきたかどうかはともかく、集団的自衛権が違憲であると解釈していた。さらに、従来の政府 も集団的自衛権は違憲だと説明してきたし、多くの国民もそう考えていた。だからこそ、集団的自衛権の行使を容認すべきだとする政治家や有識者は、改憲を訴 えてきたのだ。

      2.集団的自衛権を合憲とする人たちの論拠

       これに対し、政府・与党は、従来の政府見解を覆し、集団的自衛権の行使は合憲だといろいろと反論してきた。その反論は、ある意味、とても味わい深いものである。

       まず、菅官房長官は、6月4日の憲法審査会の直後の記者会見で、「全く違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいる」と述べた。しかし、解釈学 的に見て、集団的自衛権を合憲とすることは不可能であり、合憲論者が「たくさん」と言えるほどいるはずがない。もちろん、合憲論者を一定数見つけることも できるが、それは、「ネッシーがいると信じている人」を探すのは、ネッシーそのものを探すよりは簡単だという現象に近い。数日後の報道を見る限り、菅官房 長官は発言を事実上撤回したと言えるだろう。

       ちなみに、合憲論者として政府・与党が名前を挙げた人のほとんどは、憲法9条をかなり厳格に解釈した上で、「許される武力行使の範囲が狭すぎる」 という理由で改正を訴えてきた人たちである。改憲論の前提としての厳格な9条解釈と集団的自衛権行使合憲論を整合させるのは困難であり、当人の中でも論理 的一貫性を保てていない場合が多いだろう。

       また、合憲論の論拠は、主として、次の四つにまとめられるが、いずれも極めて薄弱である。

       第一に、合憲論者は、しばしば、「憲法に集団的自衛権の規定がない」から、合憲だという。つまり、禁止と書いて ないから合憲という論理だ。一部の憲法学者も、この論理で合憲説を唱えたことがある。しかし、先に述べたとおり、憲法9条には、武力行使やそのため戦力保 有は禁止だと書いてある。いかなる名目であれ、「武力行使」一般が原則として禁止されているのだ。合憲論を唱えるなら、例外を認める条文を積極的に提示せ ねばならない。「憲法に集団的自衛権の規定がない」ことは、むしろ、違憲の理由だ。

       第二に、合憲論者は、国際法で集団的自衛権が認められているのだから、その行使は合憲だという。昨年5月にまとめられた安保法制懇の報告書も、そ のような論理を採用している。しかし、集団的自衛権の行使は、国際法上の義務ではない。つまり、集団的自衛権の行使を自国の憲法で制約することは、国際法 上、当然合法である。国際法が集団的自衛権の行使を許容していることは、日本国憲法の下でそれが許容されることの根拠にはなりえない。

       第三に、「自衛のための必要最小限度」や「日本の自衛の措置」に集団的自衛権の行使も含まれる、と主張する論者もいる。憲法審査会でも、公明党の 北側議員がそう発言した。しかし、集団的「自衛権」というのがミスリーディングな用語であり、「他衛」のための権利であるというのは、国際法理解の基本 だ。それにもかかわらず「自衛」だと強弁するのは、集団的自衛権の名の下に、日本への武力攻撃の着手もない段階で外国を攻撃する「先制攻撃」となろう。集 団的自衛権は、本来、国際平和への貢献として他国のために行使するものだ。そこを正面から議論しない政府・与党は、「先制攻撃も憲法上許される自衛の措置 だ」との解釈を前提としてしまうことに気付くべきだろう。

       第四に、合憲論者は、最高裁砂川事件判決で、集団的自衛権の行使は合憲だと認められたと言う。これは、自民党の高村副総裁が好む論理で、安倍首相 も同判決に言及して違憲説に反論した。しかし、この判決は、日本の自衛の措置として米軍駐留を認めることの合憲性を判断したものにすぎない。さらに、この 判決は「憲法がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として」と述べるなど、自衛隊を編成して個別的自衛権を行使することの合憲 性すら判断を留保しており、どう考えても、集団的自衛権の合憲性を認めたものだとは言い難い。

      3.「まさか」の展開

       このように、政府・与党の要人の発言は、不自然なほど突っ込みどころに溢れている。なぜ、こんな穴だらけの議論 を展開するのだろうか。本当に日本の安全を強化するために法案を通したいなら、「集団的自衛権」という言葉にこだわらずに、「個別的自衛権」でできること を丁寧に検証していけばいいはずだ。

       まさか、わざと穴のある議論を展開し、「国内の反対」を理由にアメリカの要請を断ろうと目論んででもいるのだろうか。なんとも不可解だ。

       ちなみに、集団的自衛権を行使する要件とされる「存立危機事態」の文言は、憲法のみならず、国際法の観点からも問題がある。

       国際司法裁判所の判決によれば、集団的自衛権を行使できるのは、武力攻撃を受けた被害国が侵略を受けたことを宣言し、第三国に援助を要請した場合 に限られる。ところが、今回の法案では、被害国からの要請は、「存立危機事態」の要件になっていない。もちろん、関連条文にその趣旨を読み込むこともでき なくはないが、集団的自衛権を本気で行使したいのであれば、それを明示しないのは不自然だ。

       まさか、法解釈学に精通した誰かが、集団的自衛権の行使を個別的自衛権の行使として説明できる範囲に限定する解釈をとらせるために、あえて集団的自衛権の行使に必要とされる国際法上の要件をはずしたのではないか。

       そんな「まさか」を想定したくなるほど、今回の法案で集団的自衛権の行使を可能にすることには無理がある。こうした「まさか」は、山崎豊子先生の 小説なみにスリリングで楽しいのだが、これを楽しむには、あまりに専門的な法体系の理解が必要だ。そんなものを国民が望んでいるはずはない。いや、国民 は、それもすべて承知の上で、憲法学者の苦労を楽しんでいるのか? やれやれ。

       いずれにしても、これだけは憲法学者として断言しよう。「個別的自衛権の範囲を超えた集団的自衛権の行使は違憲です。」


      木村草太(きむら・そうた)
      1980年生まれ。東京大学法学部卒。同助手を経て、現在、首都大学東京准教授。助手論文を基に『平等なき平等条項論』(東京大学出版会)を上梓。法科大 学院での講義をまとめた『憲法の急所』(羽鳥書店)は「東大生協で最も売れている本」と話題に。著書に『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)、『憲 法の創造力』(NHK出版新書)、『憲法学再入門』(西村裕一先生との共著・有斐閣)、『未完の憲法』(奥平康弘先生との共著・潮出版社)、『テレビが伝 えない憲法の話』(PHP新書)、『憲法の条件――戦後70年から考える』(大澤真幸先生との共著・NHK出版新書)などがある。

      出典

      【The Page 気になるニュースをわかりやすく】

      http://goo.gl/dDjgg7

       


      日本共和国憲法私案要綱2

      2014年02月26日 | 憲法研究
       

      日本共和国憲法私案要綱

      昭和二十年十一月二十一日 十二月十日 高野岩三郎
      根本原則 天皇制ヲ廃止シ、之ニ代ヘテ大統領ヲ元首トスル共和制採用
      参考 北米合衆国憲法
      ソヴィエット聯邦憲法
      瑞西聯邦憲法
      独逸ワイマール憲法
      現行帝国憲法制定ノ由来ト推移△
      現行憲法ヲ改正シ政体ヲ変更スルニ現時ヲ以テ絶好ノ機会ナリトスル理由
      △明治初期ニ於ル民権論ノ興隆、之ニ対スル藩閥政府ノ対策、国会開設ノ誓約、憲法ノ制定、其ノ以後ニ於ル軍閥ノ一貫セル組織的陰謀、最近ニ至ルマデノ民衆ノ奴隷化、現時ヲ以テ絶好ノ機会ナリトスル理由ハ「憲法改正要綱」ノ中ニアリ
      上記根本原則ニ基テ立案セル憲法私案ノ要綱

      一、 第一章 主権及ビ元首

      日本国ノ主権ハ日本国民ニ属スル
      日本国ノ元首ハ国民ノ選挙スル大統領トスル
      (帝国憲法第一条乃至第五条削除)
      大統領ノ任期ハ四年トシ、再選ヲ妨ゲザルモ三選ヲ禁ズル
      大統領ハ国ノ内外ニ対シテ国民ヲ代表スル
      立法権ハ国会ニ属スル
      国会ノ召集 其ノ開会及閉会ハ国会ノ決議ニヨリ大統領之ニ当ル、大統領ハ国会ヲ解散スルヲ得ズ
      国会閉会中公益上緊急ノ必要アリト認ムルトキハ大統領ハ臨時国会ヲ召集スル
      大統領ハ行政権ヲ執行シ国務大臣ヲ任免スル
      条約ノ締結ハ国会ノ議決ヲ経テ大統領之ニ当ルv 爵位勲章其ノ他ノ栄典ハ一切廃止、其ノ効力ハ過去ニ於テ授与サレタルモノニ及ブ

      一、 第二章 国民ノ権利義務

      国民ハ居住及ビ移転ノ自由ヲ有ス
      国民ハ通信ノ自由ヲ有ス
      国民ハ公益ノ必要アル場合ノ外、其ノ所有権ヲ侵サルルコトナシ〔営業ノ自由ヲ含ム〕
      国民ハ信教ノ自由ヲ有ス
      国民ハ言論著作出版集会及結社ノ自由ヲ有ス
      国民ハ労働ノ権利、生存ノ権利ヲ有ス
      国民ハ教育ヲ受ルノ権利ヲ有ス
      国民ハ文化的享楽ノ権利ヲ有ス
      国民ハ休養ノ権利(労働不能トナレル勤労者ノ休養、妊婦産婦ノ保護等ヲ含ム)ヲ有ス
      国民ハ憲法ヲ遵守シ社会的共同生活ノ法則ヲ尊重奉スルノ義務ヲ有ス
      国民ハ納税ノ義務ヲ有ス

      一、 第三章 国会

      国会ハ第一院及第二院ヨリ成ル
      第一院ハ選挙法ノ定ムル法ニヨリ国民ノ直接選挙シタル議員ヲ以テ組織ス
      第二院ハ各種ノ職業及ビ其ノ内ニ於ル階層ヨリ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス、議員ノ任期ハ三年トシ毎年三分一ヅツ改選スル
      何人モ同時ニ両院ノ議員タルヲ得ズ
      二タビ第一院ヲ通過シタル法律案ハ第二院ニ於テ否決スルヲ得ズ
      両院ハ各々其ノ総議院三分一以上出席スルニ非ザレバ議決ヲナスコトヲ得ズ
      両院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
      両院ノ議事ハ一切公開トシ、之ヲ速記シテ公表スヘシ
      両院ハ各々其ノ議決ニ依リ特殊問題ニ就テ委員会ヲ設ケコレニ人民ヲ召喚シ意見ヲ聴聞スルコトヲ得
      両院ノ議員ハ院内ニ於テナシタル発言及表決ニ就キ院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ
      両院ノ議員ハ現行犯罪ヲ除クノ外会期中又ハ院ノ許諾アリシテ逮捕セラルルコトナシ
      両院ハ各々政府又ハ大臣ニ対シ不信任ノ表決ヲナスコトヲ得此ノ場合政府又ハ大臣ハ直チニ其ノ職ヲ去ルヘシ

      一、 第四章 政府及大臣

      政府ハ各省大臣及無任所大臣ヲ以テ組織ス
      (枢密院ノ廃止、宮内大臣内大臣ノ廃止)

      一、 第五章 経済及労働

      土地ハ国有トスル
      公益上必要ナル生産手段ハ国会ノ議決ニ依リ漸次国有ニ移スベシ
      労働ハ如何ナル場合ニモ一日八時間(実労働時間六時間)ヲ超ルコトヲ得ズ
      労働ノ報酬ハ労働者ノ文化的生計水準以下ニ下ルコトヲ得ズ

      一、 第六章 文化及科学

      凡テ教育其他文化ノ享受ハ男女ノ間ニ差異ヲ設クベカラズ
      一切ノ教育・文化ハ真理ノ追究・真実ノ闡明ヲ目標トスル科学性ニ其ノ根底ヲ措クベシ

      一、 第七章 司法

      司法権ハ裁判所構成法及陪審法ノ規定ニ従ヒ裁判所之ヲ行フ
      司法権ハ行政権ニ依リ侵害セラルルコトナシ
      行政官庁処分ニ依リ権利ヲ傷害セラレ又ハ正当ノ利益ヲ損害セラレタリトスル場合ニ対シ別ニ行政裁判所ヲ設ク

      一、 第八章 財政

      国ノ歳出歳入ハ詳密ニ併カモ判明ニ予算ニ規定シ毎年国会ニ提出シ其ノ承認ヲ経ベシ
      予算ハ先ヅ第一院ニ提出スベシ其ノ承認ヲ経タル項目及金額ニ就テハ第二院之ヲ否決スルヲ得ズ
      租税ノ賦課ガ公正ニ行ハレ苟モ消費税ヲ偏重シテ民衆ノ負担ノ過重ヲ来サザルヤウ注意スルヲ要ス
      歳入歳出ノ決算ハ速ニ会計検査院ニ提出シ其ノ検査確定ヲ得タル後政府ハ之ヲ国会ニ提出シテ承認ヲ経ベシ

      一、 第九章 憲法ノ改正及国民投票

      将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アリト認メタルトキハ大統領又ハ第一院若クハ第二院ハ議案ヲ作成シ之ヲ国会ノ議ニ付スヘシ
      此ノ場合ニ於テ両院ハ各々其ノ議員三分二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲナスコトヲ得ス
      国民全般ノ利害ニ関係アル問題ニシテ国民投票ニ附スルノ必要アリト認メラルル事項アルトキハ前憲法改正ノ規定ニ遵準シテ其ノ可否ヲ決スへシ

       

       

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      高野岩三郎の憲法改正案 1

      2014年02月26日 | 憲法研究

      ※出典

      国会図書館:日本国憲法の誕生

      高野岩三郎【日本共和国憲法私案要綱】

      http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/02/045/045_001r.html



      2-13 高野岩三郎の憲法改正案

       

      高野岩三郎は、明治から大正時代にかけて、東大教授として統計学を講じていたが、労働運動家の兄房太郎の影響で、労働問題に関心を深め、東大教授を 辞して、大原社会問題研究所の創立に参画し所長に就任(1920年)。戦後は、日本社会党の創立に参加、また日本文化人連盟を結成するとともに憲法研究会 を組織、1946(昭和21)年には日本放送協会会長に就任した。

      憲法研究会は、鈴木安蔵が作成した原案をもとに討議をすすめたが、多数意 見は、天皇制の存続を容認するものであった。高野は、研究会案の討議に参加する一方で、主権在民の原則を徹底し、天皇制廃止・共和制樹立の立場から、 1945(昭和20)年11月下旬、独自案である「日本共和国憲法私案要綱」を起草し、完成稿を鈴木に手渡した(掲出資料の日付表記によれば、11月21 日に執筆し、12月10日に加筆したように見える)。この中には、大統領制の採用とともに、土地や公益上必要な生産手段を国有化する旨の規定が含まれてい る。

      同要綱は、第二章を修正するとともに、全体に若干の字句の修正を加えて、『新生』1946(昭和21)年2月号に掲載された論文「囚われたる民衆」の中に、「改正憲法私案要綱」と題されて収録された。

       

      資料名 日本共和国憲法私案要綱
      年月日 昭和20年11月21日、12月10日
      資料番号  
      所蔵 法政大学大原社会問題研究所
      原所蔵  
      注記  

       

      資料名 改正憲法私案要綱 高野岩三郎(「新生」昭和二一年二月號所載)
      年月日  
      資料番号 入江俊郎文書 11(「憲法改正参考書類(憲法問題調査委員会資料)」の内)
      所蔵 国立国会図書館
      原所蔵  
      注記  

      標準画像を開く

       

      ※出典

      高野岩三郎【日本共和国憲法私案要綱】

      http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/02/045/045_001r.html

       

       

       

       


      憲法研究資料1産経社説2012.2.9

      2012年02月11日 | 憲法研究
       
      【主張】 芦田修正 やはり9条改正が必要だ
       
      2012.2.9 03:08
       
       自衛隊と憲法の関係があまりに複雑すぎて、ほとんどの国民は理解できないだろう。

       衆院予算委員会で、自民党の石破茂前政調会長が憲法9条2項の冒頭に「前項の目的を達するため」と挿入された、いわゆる「芦田修正」が自衛隊合憲の根拠ではないかと指摘した問題だ。

       これに対し、田中直紀防衛相は「ご知見を拝聴してよく理解したい」と述べたが、藤村修官房長官が7日の会見で「直接の根拠」ではないと否定したように、政府は芦田修正を自衛隊合憲の根拠として認めていないのである。

       芦田修正は、連合国軍総司令部(GHQ)が示した憲法草案を審議する昭和21年の衆院の秘密小委員会で、芦田均委員長が提案した修正案を指す。

       「前項の目的」のくだりを挿入することで侵略戦争のみを放棄し、自衛のための「戦力」を持てるという解釈だ。芦田氏は自衛戦争、さらに国連の制裁活動への協力もできるとした。

       これに対し、歴代内閣は自衛隊は「戦力」ではなく必要最小限度の「実力」とみなしてきたが、極めて分かりにくい解釈である。

       芦田解釈を認めないまでも、このような考え方を政府は一部受け入れており、安全保障の専門家ですら合憲の根拠が奈辺にあるかを把握するのは容易でない。

       戦後日本はこうした解釈により、「武力による威嚇又は武力の行使」の放棄と「陸海空軍その他の戦力」の不保持を規定する9条の下で自衛隊の存在について無理やりつじつまを合わせてきた。

       自衛権の行使についても急迫不正の侵害がある場合や必要最小限の範囲にとどめられ、集団的自衛権の行使は「必要最小限」を超えるため許されないとされた。

       北朝鮮が米国に向けて弾道ミサイルを発射しても、日本は迎撃できないという。これでは、互いに守り合う真の同盟関係を構築することはできない。

       国連の制裁活動は憲法が禁止する武力行使にあたらないのに「武力行使と一体化する行為」はできないと判断した。

       問題は、こうしたつじつま合わせの憲法解釈と解釈改憲が限界を超えていることだ。芦田修正は認めるべきだが、やはり憲法を改正し自衛隊を軍と位置付けなければ、国家の防衛と国際社会の一員としての責任は果たせない。

       http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120209/plc12020903080004-n1.htm

       

      ※感想

      愚劣な憲法のために時間と労力の浪費することを止め、真性の憲法に改正することによって、合理的で哲学的にもまっとうな議論のできる憲法にして行くことである。

       

       


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