共同発表:日米安全保障協議委員会(「2+2」)
2011年6月21日
〈仮訳〉
日米安全保障協議委員会共同発表
より深化し,拡大する日米同盟に向けて:
50年間のパートナーシップの基盤の上に
クリントン国務長官
ゲイツ国防長官
松本外務大臣
北澤防衛大臣
Ⅰ. 序文
日米同盟が第二の半世紀に入るに当たり,日米安全保障協議委員会(SCC)の構成員たる閣僚は,日米同盟が日本及び米国の安全保障並びに21世紀のアジア太平洋地域の平和,安定及び経済的繁栄にとって引き続き不可欠であることを確認した。
閣僚は2011年6月21日に会し,3月11日の地震,津波及び原子力の非常事態に対応した日本政府及び米国政府の間の緊密な協力について議論した。自衛隊と米軍によるかつてない共同の運用を含むこの協力は,本日のSCC会合において発出されたSCC文書「東日本大震災への対応における協力」において述べられているように,日米同盟に対する信頼を新たにし,日本と米国が過去半世紀にわたり築いてきた友情を深めた。日本は,米国から提供された広範な支援に対する心からの謝意を表明し,米国政府は,日本の復興のための支援を継続することを誓った。
SCCの構成員たる閣僚は,ますます不確実になっている安全保障環境によってもたらされる課題に継続して取り組む必要性を認識した。これには,地域における軍事能力及び活動の拡大,北朝鮮の核・ミサイル計画及び挑発的行動,非伝統的な安全保障上の懸念の顕在化並びに宇宙,公海及びサイバー空間などに対するその他の変化する脅威が含まれる。閣僚は,また,アフガニスタン及び中東における過激主義に対する継続中の取組を含む,増大するグローバルな課題に留意した。これらの課題は,地域の安全及び安定の維持における日米同盟の不可欠な役割のみならず,日米両国が協力を深化させ,拡大させる必要性を強調するものである。日米の共有された価値,すなわち民主主義の理想,共通の利益並びに人権及び法の支配の尊重は,引き続き日米同盟の基礎である。これらの現存する又は顕在化しつつある課題に対処するために,閣僚は,日米の協力を適応させ,日米の部隊を近代化し,相互運用性を向上し,新たな技術の開発において協力することによって,日米同盟の能力を強化し続ける必要性に留意した。
米国政府は,核及び通常戦力の双方のあらゆる種類の米国の軍事力によることを含め,日本の防衛並びに地域の平和及び安全へのコミットメントを再確認した。日本政府は,米軍による施設及び区域の安定的な使用を提供し,在日米軍駐留経費負担の提供を通じて米軍の円滑な運用を支援するとのコミットメントを再確認した。日米双方は,本日のSCC会合において発出されたSCC文書「在日米軍駐留経費負担」において述べられたように,在日米軍駐留経費負担に関する新たな協定が成功裡に締結されたことを歓迎した。
SCCの構成員たる閣僚は,2010年5月28日のSCC共同発表及び本日のSCC会合において発出されたSCC文書「在日米軍の再編の進展」によって補完された2006年5月1日のSCC文書「再編の実施のための日米ロードマップ」において述べられている再編案を着実に実施する決意を再確認した。
2010年1月19日のSCCの共同発表に基づき,日米両政府は,変化する安全保障環境の中,共通の利益を有する幅広い分野において,日米同盟の深化に関する精力的な協議を実施した。閣僚は,次のようなこれらの協議の結果を支持した。
Ⅱ. 共通の戦略目標
変化する安全保障環境に関する評価に基づき,閣僚は,2005年及び2007年の日米同盟の共通の戦略目標を再確認し,更新した。閣僚は,次のものが日米同盟の共通の戦略目標を示すと決定した。
- 日本の安全を確保し,アジア太平洋地域における平和と安定を強化する。
- 日米両国に影響を与える多様な事態に対処する能力を向上させる。
- 北朝鮮による挑発を抑止する。六者のプロセス,そして不可逆的な措置を通じて,ウラン濃縮計画を含む北朝鮮の完全かつ検証可能な非核化を達成する。拡散,弾道ミサイル,不法活動及び北朝鮮による拉致の問題を含む人道上の懸念に関連する課題を解決する。国際連合安全保障理事会決議及び2005年9月の六者会合の共同声明を完全に実施する。平和的な統一を支持する。
- 豪州及び韓国の双方のそれぞれとの間で,三か国間の安全保障及び防衛協力を強化する。
- 日本,米国及び中国の間の信頼関係を構築しつつ,地域の安定及び繁栄における中国の責任ある建設的な役割,グローバルな課題における中国の協力並びに中国による国際的な行動規範の遵守を促す。中国の軍事上の近代化及び活動に関する開放性及び透明性を高め,信頼醸成の措置を強化する。
- 両岸関係の改善に関するこれまでの進捗を歓迎しつつ,対話を通じた両岸問題の平和的な解決を促す。
- アジア太平洋地域におけるロシアの建設的な関与を促す。北方領土問題の解決を通じた日露関係の完全な正常化を実現する。
- 地域の安全保障環境を不安定にし得る軍事上の能力を追求・獲得しないよう促す。
- 日本,米国及び東南アジア諸国連合(ASEAN)間の安全保障協力を強化し,民主的価値及び統合された市場経済を促進するとのASEANの努力を支援する。
- 強く揺るぎないアジア太平洋のパートナーとしてインドを歓迎し,インドの更なる地域への関与及び地域的枠組みへの参加を促す。日米印三か国間の対話を促進する。
- ASEAN地域フォーラム(ARF),ASEAN拡大国防相会議(ADMM+),アジア太平洋経済協力(APEC)及び東アジア首脳会議(EAS)を含む,開放的かつ多層的な地域のネットワーク及びルール作りのメカニズムを通じた効果的な協力を促進する。
- 脆弱な国家を支援し,人間の安全保障を促進するために,人道支援,ガバナンス及び能力構築,平和維持活動並びに開発援助の分野における日米協力を強化する。
- テロを防止し,根絶する。
- 必要な抑止力を維持しつつ,核兵器のない世界における平和及び安全を追求する。大量破壊兵器及びその運搬手段の不拡散及び削減を推進し,各国に不拡散上の義務の違反について責任を果たさせる。
- 海賊の防止及び根絶,自由で開放的な貿易及び商業の確保並びに関連する慣習国際法及び国際約束の促進を含む,航行の自由の原則を守ることにより海上交通の安全及び海洋における安全保障を維持する。
- 我々が利益を共有する宇宙及びサイバー空間の保護並びにそれらへのアクセスに関する日米の協力を維持する。情報及び宇宙のシステムの安全を含む,死活的に重要なインフラの抗堪性を促進する。
- 災害予防及び災害救援における国際的な協力を強化する。
- 民生用の原子力計画における最高水準の安全を促進し,原子力事故に対処するための能力を向上させる。
- エネルギー及びレア・アースを含む死活的に重要な資源及び原料の供給の多様化についての対話を促進する。
- 日本を常任理事国として含む国連安全保障理事会の拡大を期待しつつ,国連安全保障理事会が,改革を通じて,その任務を果たし,新しい世紀の課題に効果的に対処する能力を向上させるための努力につき協議する。
- 民主的改革を支持し,促す機会を追求することで,中東及び北アフリカにおける安定及び繁栄を促進する。
- イランの国際的義務の完全な遵守及び核計画に関するP5+1との真剣な交渉への復帰を確保する。デュアル・トラック・アプローチの一部として,日本及び米国は国際連合安全保障理事会決議の着実な実施を継続する。
- アフガニスタンにおける治安権限委譲の開始を歓迎しつつ,アフガニスタン治安部隊(ANSF)への継続的な支援を通じて持続的な進展を確保し,効果的なガバナンスと開発を促進するための民生面での努力を強化する。
- 文民統治の強化及び経済改革の実施のためのパキスタンの努力を支持する。
Ⅲ. 日米同盟の安全保障及び防衛協力の強化
変化する地域及び世界の安全保障環境に対処するため,SCCの構成員たる閣僚は,二国間の安全保障及び防衛協力の更なる向上を追求することを決定した。
日本政府は,2010年に,新たな防衛計画の大綱を策定した。新たな防衛計画の大綱は,高い即応性,機動性,柔軟性,持続性及び多目的性を特徴とし,高度の技術力と情報能力によって強化された「動的防衛力」の構築を目的とする。米国政府は,地域における抑止力を強化し,アジア太平洋地域における軍事的プレゼンスを維持・強化するとの2010年の「4年ごとの米国国防政策の見直し」(QDR)にあるコミットメントを再確認し,また,核技術及び戦域弾道ミサイルの拡散,アクセス拒否/エリア拒否能力並びに宇宙,公海及びサイバー空間などに対するその他の変化する脅威といった課題に対処するよう地域の防衛態勢を適合させる意図を確認した。
上記の新たに策定された国家安全保障戦略を反映しつつ,閣僚は以下のとおり重点分野を特定した。
(1) 抑止及び緊急時の対処の強化
- 閣僚は,二国間の計画検討作業のこれまでの進展を歓迎し,日米同盟が日本をよりよく防衛し,様々な地域の課題に対処できるよう,二国間の計画を精緻化する努力を行うことを再確認した。この努力は,平時及び危機における調整のための二国間の政府全体のメカニズムを強化し,米軍及び自衛隊による日本国内の施設への緊急時のアクセスを改善することを目的とする。
- 閣僚は,日本及び米国の役割,任務及び能力を継続的に検討する必要性を強調し,運用面での協力をより強化する分野を特定するとのこのプロセスの目的を確認した。
- 閣僚は,非戦闘員退避活動における二国間の協力を加速することを決定した。
- 閣僚は,能動的,迅速かつシームレスに地域の多様な事態を抑止し,それらに対処するために,共同訓練・演習を拡大し,施設の共同使用を更に検討し,情報共有や共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動の拡大といった協力を促進することを決定した。
- 閣僚は,弾道ミサイル防衛に係る協力について両国が達成した進展を歓迎した。SM-3ブロックⅡAの共同開発事業に関し,閣僚は,生産及び配備段階に移行する場合に備え,将来の課題を検討することを決定した。この観点から,米国政府から今後要請され得るSM-3ブロックⅡAの第三国への移転は,当該移転が日本の安全保障に資する場合や国際の平和及び安定に資する場合であって,かつ,当該第三国がSM-3ブロックⅡAの更なる移転を防ぐための十分な政策を有しているときには,米国に対する武器及び武器技術の供与に関する2006年6月23日の交換公文に従い,認められ得る。閣僚は,武器・武器技術共同委員会(JAMTC)をそのような将来の第三国移転に関する協議の機関に指定した。
- 閣僚は,短期的及び長期的に地域の安定を向上させる最も効果的な方法(核能力によるものを含む。)を決定する協議の機関として,定期的な二国間の拡大抑止協議が立ち上げられたことを歓迎した。
- 閣僚は,安全保障分野における日米宇宙協議及び宇宙状況監視,測位衛星システム,宇宙を利用した海洋監視,デュアルユースのセンサーの活用といった諸分野におけるあり得べき将来の協力を通じ,日米二国間の宇宙における安全保障に関するパートナーシップを深化させる最近の進展があったことを認識した。
- 閣僚は,サイバー空間における増大する脅威によってもたらされる課題に日本及び米国が立ち向かうための新たな方法について協議することを決意し,サイバー・セキュリティに関する二国間の戦略的政策協議の設置を歓迎した。閣僚は,サイバー・セキュリティに関する効果的な二国間協力には,政府全体による解決及び民間部門との調整が必要であることを認識した。
(2) 地域及びグローバルな場での日米同盟の協力
- 閣僚は,前述の三か国間の安全保障協力を含め,地域において共通の価値を共有する諸国と安全保障及び防衛協力を促進することの重要性を強調した。閣僚は,状況が許す場合には共同演習及び相互の後方支援を通じて,人道支援・災害救援及びその他の活動での三か国間及び多国間の協力を促進するための努力を奨励した。
- 閣僚は,また,地域の人道支援・災害救援分野の後方支援の拠点を日本に設置することの重要性につき一致した。
- 閣僚は,災害救援,平和維持,復興及びテロ対策を含む国際的な活動における更なる協力の重要性を強調した。
- 閣僚は,航行の自由を保護し,安全で確実なシーレーンを確保するため,海洋安全保障及び海賊対処において更に協力する意図を確認した。
- 閣僚は,自衛隊及び米軍に関連する環境面での課題について協力を継続することを決定した。
(3) 日米同盟の基盤の強化
- 閣僚は,これまでの進展を歓迎しつつ,情報保全についての日米協議で議論されてきたとおり,政府横断的なセキュリティ・クリアランスの導入やカウンター・インテリジェンスに関する措置の向上を含む,情報保全制度の更なる改善の重要性を強調した。閣僚は,また,情報保全のための法的枠組みの強化に関する日本政府の努力を歓迎し,そのような努力が情報共有の向上につながることを期待した。
- 閣僚は,運用面での協力についてより効果的で,顕在化しつつある安全保障上の課題により適合したものとし,様々な事態により良く対応することができるよう二国間の枠組みを継続的に検討し,強化していくことの重要性を認識した。
- 閣僚は,日米間のより緊密な装備・技術協力は,強固な同盟の基礎となる要素であることを確認した。特に,先進諸国が国際共同開発・生産を通じて,装備品の高性能化を実現しつつ,コストの高騰に対応している中,日本政府はそのような流れに対応するために現在行っている検討を促進する。米国政府は,この日本政府の努力を奨励する。
閣僚は,日米同盟の過去50年を顧みて,達成された全てに大いに満足した。同時に,閣僚は,日米同盟がかつてないほど重要であり,また,かつてないほど重要な課題に直面していることを認識した。この文脈において,双方は,地域及び世界が直面するあらゆる安全保障面,戦略面及び政治面の課題に関する協議及び調整をより充実させるため引き続き取り組んでいく必要性を認識した。
英文
Joint Statement of the Security Consultative Committee
June 21, 2011
Joint Statement of
the Security Consultative Committee
Toward a Deeper and Broader U.S.-Japan Alliance:
Building on 50 Years of Partnership
by
Secretary of State Clinton
Secretary of Defense Gates
Minister for Foreign Affairs Matsumoto
Minister of Defense Kitazawa
Ⅰ. Preamble
As the U.S.-Japan Alliance enters its second half-century, the members of the Security Consultative Committee (SCC) affirmed that our Alliance remains indispensable to the security of Japan and the United States, and to the peace, stability, and economic prosperity of the Asia-Pacific region in the 21st century.
The Ministers met on June 21, 2011, and discussed the close collaboration between the Japanese and U.S. Governments in response to the March 11 earthquake, tsunami, and nuclear emergency. This cooperation, involving unprecedented joint operations by the Japan Self Defense Forces (SDF) and U.S. Armed Forces, has given renewed confidence to the Alliance and has deepened the friendship that the United States and Japan have built over the last half century as described in the SCC document, "Cooperation in Response to the Great East Japan Earthquake," issued in the SCC meeting today. Japan expresses heartfelt gratitude for the wide-ranging assistance provided by the United States, and the U.S. Government pledges its continuing support to Japan's recovery.
The SCC members recognized the need to continue to address challenges posed by the increasingly uncertain security environment, which includes: the expanding military capabilities and activities in the region; North Korea's nuclear and missile programs and its provocative behavior; the emergence of non-traditional security concerns; and other evolving threats, such as to outer space, to the high seas, and to cyberspace. The Ministers also noted increasing global challenges, including the ongoing struggle against extremism in Afghanistan and the Middle East. These challenges highlight not only the essential role of the Alliance in maintaining regional security and stability, but also the need for our two nations to deepen and broaden cooperation. Our shared values, democratic ideals, common interests, and respect for human rights and the rule of law remain the foundation of the Alliance. To meet these existing and emerging challenges, the Ministers noted the need to continue to strengthen Alliance capabilities by adapting our cooperation, modernizing our forces, enhancing interoperability, and cooperating in the development of new technologies.
The Government of the United States reaffirmed its commitment to the defense of Japan and the peace and security of the region, including through the full range of U.S. military capabilities, both nuclear and conventional. The Government of Japan reaffirmed its commitment to provide for the stable use of facilities and areas by U.S. forces and to support the smooth operation of those forces through the provision of Host Nation Support. The two sides welcomed the successful conclusion of a new agreement on Host Nation Support as described in the SCC document, "Host Nation Support," issued in the SCC meeting today.
The SCC members reaffirmed their commitment to implement steadily the realignment initiatives described in the May 1, 2006, SCC document, "United States-Japan Roadmap for Realignment Implementation" as supplemented by the May 28, 2010, SCC Joint Statement and the SCC document, "Progress on the Realignment of U.S. Forces in Japan," issued in the SCC meeting today.
Based on the SCC Joint Statement of January 19, 2010, the two governments conducted intensive consultations on deepening the Alliance in wide-ranging areas of common interest in the changing security environment. The Ministers endorsed the following results of these consultations:
Ⅱ. Common Strategic Objectives
Based on the assessment of the changing security environment, the Ministers revalidated and updated the Alliance's Common Strategic Objectives of 2005 and 2007. The Ministers decided that the following represent Alliance Common Strategic Objectives:
- Ensure the security of Japan and strengthen peace and stability in the Asia-Pacific region.
- Enhance the capability to address a variety of contingencies affecting the United States and Japan.
- Deter provocations by North Korea; achieve the complete, and verifiable denuclearization of North Korea, including its uranium enrichment program, through irreversible steps and, through the Six Party process; resolve issues related to proliferation, ballistic missiles, illicit activities, and humanitarian concerns, including the matter of abductions by North Korea; fully implement United Nations Security Council resolutions and the September 2005 Joint Statement of the Six-Party Talks; and support peaceful unification.
- Strengthen trilateral security and defense cooperation with both Australia and the Republic of Korea.
- Encourage China's responsible and constructive role in regional stability and prosperity, its cooperation on global issues, and its adherence to international norms of behavior, while building trust among the United States, Japan, and China. Improve openness and transparency with respect to China's military modernization and activities and, strengthen confidence building measures.
- While welcoming the progress to date in improving cross-Strait relations, encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues through dialogue.
- Encourage Russia's constructive engagement in the Asia-Pacific region. Realize full normalization of Japan and Russia relations through the resolution of the Northern Territories issue.
- Discourage the pursuit and acquisition of military capabilities that could destabilize the regional security environment.
- Strengthen security cooperation among the United States, Japan, and ASEAN and support ASEAN's efforts to promote democratic values and a unified market economy.
- Welcome India as a strong and enduring Asia-Pacific partner and encourage India's growing engagement with the region and participation in regional architectures. Promote trilateral dialogue among the United States, Japan, and India.
- Promote effective cooperation through open, multilayered regional networks and rule-making mechanisms, including the ASEAN Regional Forum (ARF), the ASEAN Defence Ministers' Meeting-Plus (ADMM+), Asia Pacific Economic Cooperation (APEC), and the East Asia Summit (EAS).
- In order to support fragile states and promote human security, strengthen U.S.-Japan cooperation in areas of humanitarian assistance, governance and capacity building, peacekeeping operations, and development assistance.
- Prevent and eradicate terrorism.
- Seek the peace and security of a world without nuclear weapons, while maintaining necessary deterrence. Promote the nonproliferation and reduction of weapons of mass destruction and their means of delivery, and hold states accountable for violating their non-proliferation obligations.
- Maintain safety and security of the maritime domain by defending the principle of freedom of navigation, including preventing and eradicating piracy, ensuring free and open trade and commerce, and promoting related customary international law and international agreements.
- Maintain our cooperation with respect to protection of and access to space, and cyberspace where we share interests. Promote the resilience of critical infrastructure, including the security of information and space systems.
- Strengthen international cooperation on disaster prevention and relief.
- Promote the highest level of safety of civil nuclear programs, and enhance the capability to address nuclear incidents.
- Promote dialogue on the diversification of supplies of critical resources and materials, including energy and rare earths.
- Consult on efforts to enhance the ability of the United Nations Security Council to carry out its mandate and effectively meet the challenges of the new century through reform, looking forward to an expanded Council that includes Japan as a permanent member.
- Promote stability and prosperity in the Middle East and North Africa by pursuing opportunities to support and encourage democratic reforms.
- Ensure Iran's full compliance with its international obligations and return to serious negotiations with the P5+1 regarding its nuclear program. As part of the dual-track approach, the United States and Japan will continue robust implementation of UN Security Council Resolutions.
- While welcoming the launch of transition in Afghanistan, ensure sustained progress through continued support for the Afghan National Security Forces (ANSF), and strengthen civilian efforts to promote effective governance and development.
- Support Pakistan's efforts to strengthen civilian governance and to implement economic reforms.
Ⅲ. Strengthening of Alliance Security and Defense Cooperation
In order to address the evolving regional and global security environment, the SCC members decided to seek to enhance further bilateral security and defense cooperation.
The Government of Japan established the new National Defense Program Guidelines (NDPG) in 2010. The new NDPG aims to build a "Dynamic Defense Force" that is characterized by enhanced readiness, mobility, flexibility, sustainability and versatility, reinforced by advanced technology and intelligence capabilities. The Government of the United States reaffirmed its commitment in the 2010 Quadrennial Defense Review (QDR) to strengthen regional deterrence, and to maintain and enhance its military presence in the Asia-Pacific region and also affirmed its intent to tailor regional defense posture to address such challenges as the proliferation of nuclear technologies and theater ballistic missiles, anti-access/area denial capabilities, and other evolving threats, such as to outer space, to the high seas, and to cyberspace.
Reflecting the above newly developed national security strategies, the Ministers specified the following areas for emphasis:
(1) Strengthening Deterrence and Contingency Response
- The Ministers welcomed progress to date on bilateral planning and reaffirmed efforts to refine bilateral plans so that the U.S.-Japan Alliance can better defend Japan and respond to the range of regional challenges. These efforts will aim to strengthen bilateral whole-of-government mechanisms for peacetime and crisis coordination, and to improve contingency access by U.S. forces and the SDF to facilities in Japan.
- The Ministers stressed the need to study continuously the roles, missions, and capabilities of the United States and Japan, and confirmed the intent of this process to identify areas for strengthened operational cooperation.
- The Ministers decided to accelerate bilateral cooperation on non-combatant evacuation operations.
- The Ministers decided to expand joint training and exercises, study further joint and shared use of facilities, and promote cooperation, such as expanding information sharing and joint intelligence, surveillance, and reconnaissance (ISR) activities, in order to deter and respond proactively, rapidly and seamlessly to various situations in the region.
- The Ministers welcomed the progress both countries have made in cooperation on ballistic missile defense. Regarding the SM-3 Block IIA cooperative development program, the Ministers decided to study future issues in preparation for transition to a production and deployment phase. In this regard, transfer of the SM- 3 Block IIA to third parties to be requested by the Government of the United States may be allowed, in accordance with the Exchange of Notes of June 23, 2006, concerning transfer of arms and military technologies to the United States of America, in cases where the transfer supports the national security of Japan and/or contributes to international peace and stability, and when the third party has sufficient policies to prevent the further transfer of the SM-3 Block IIA. The Ministers designated the Joint Arms and Military Technology Commission (JAMTC) as the consultation mechanism for such future third party transfers.
- The Ministers welcomed the establishment of a bilateral extended deterrence dialogue on a regular basis as a consultative mechanism to determine the most effective ways to enhance regional stability, including that provided by nuclear capabilities, in the near-term and long-term.
- The Ministers recognized recent progress to deepen our bilateral space security partnership through the U.S.-Japan Space Security Dialogue and possible future cooperation in areas such as space situational awareness, a satellite navigation system, space-based maritime domain awareness and the utilization of dual use sensors.
- The Ministers committed themselves to discuss new ways for the United States and Japan to confront the challenges posed by increasing threats in cyberspace and welcomed the establishment of a bilateral strategic policy dialogue on cyber-security issues. They acknowledged that effective bilateral cooperation on cyber-security will necessitate "whole of government" solutions and coordination with the private sector.
(2) Alliance Cooperation in a Regional and Global Setting
- The Ministers stressed the importance of promoting security and defense cooperation with countries that share common values in the region, including the aforementioned trilateral security cooperation. The Ministers encouraged efforts to promote trilateral and multilateral cooperation in humanitarian assistance and disaster relief (HA/DR) and other operations as the circumstances allow, through joint exercises and mutual logistics support.
- The Ministers also shared views on the importance of establishing a regional HA/DR logistics hub in Japan.
- The Ministers underlined the importance of further cooperation in international operations, including disaster relief, peacekeeping, reconstruction and anti-terrorism.
- The Ministers affirmed their intent to cooperate further in maritime security and counter-piracy to protect the freedom of navigation and ensure safe and secure sea lines of communication.
- The Ministers decided to continue cooperation on environmental issues related to both countries' forces.
(3) Enhancing Alliance Foundations
- Welcoming the progress to date, the Ministers emphasized the importance of further improving information security systems, including introducing government-wide security clearances and enhancing counter-intelligence measures, as discussed in the Bilateral Information Security Consultation. They also welcomed the Japanese Government's efforts to strengthen its legal framework for information security and expected that such efforts would lead to enhanced information sharing.
- The Ministers recognized the importance of continuously examining and enhancing bilateral frameworks in order to make operational cooperation more effective, more tailored to the emerging security challenges, and more responsive to various situations.
- The Ministers confirmed that closer cooperation in equipment and technology between the United States and Japan is a fundamental element of a strong Alliance. In particular, the Government of Japan will promote its ongoing study to respond to the trend toward international joint development and production, through which developed countries enhance the performance of equipment and deal with rising costs. The Government of the United States encourages these Japanese efforts.
As the Ministers reflect on the last fifty years of our Alliance, they take great satisfaction in all that has been achieved. At the same time, the Ministers recognized that our Alliance has never been more important or been faced with more significant challenges. In this context, both sides acknowledged the need to continue to take steps to deepen the intensity of consultations and coordination on the full range of security, strategic and political issues that face the region and the world.
(End)
日米安全保障協議委員会共同発表
より深化し,拡大する日米同盟に向けて
ARF年次安保概観2011
(英語版)
目次
- 第1章 地域的な安全保障環境に対する日本の認識
- 第2章 我が国の安全保障政策及び防衛政策
- 1.日本の安全保障政策
- 2.日本の防衛政策
- (1)基本政策
- (2)防衛計画の大綱等
- (3)防衛関係費
- 3.日米安全保障体制
- 第3章 我が国の地域的な安全保障に対する貢献
- 最終章 ARFの機能向上のための我が国の将来的貢献
第1章 地域的な安全保障環境に対する日本の認識
アジア太平洋地域においては,相互依存関係が拡大・深化する中,安全保障課題の解決のため,国家間の協力関係の充実・強化が図られており,特に非伝統的安全保障分野を中心に,問題解決に向けた具体的な協力が進展しつつある。一方,グローバルなパワーバランスの変化はこの地域において顕著に表れている。我が国周辺地域には,依然として核戦力を含む大規模な軍事力が集中しており,多数の国が軍事力を近代化し,軍事的な活動を活発化させている。また,領土や海洋をめぐる問題や,朝鮮半島や台湾海峡等をめぐる問題が存在するなど不透明・不確実な要素が残されている。
この中で,北朝鮮による核・弾道ミサイル開発については,国際社会全体の平和と安定に対する重大な脅威であり,容認できない。また,北朝鮮は,昨年11月にウラン濃縮活動を公表し,韓国延坪島を砲撃する等,挑発行為を繰り返しており,我が国を含む地域の安全保障の観点から重大な不安定要因である。
北朝鮮が公表したウラン濃縮活動は,安保理決議及び六者会合共同声明の違反であり,国際社会の懸念が国連安保理等の場で適切な形で示されるべきである。また,国際社会が一致して,関連安保理決議に基づく対北朝鮮措置を着実に実施する必要があり,我が国としては,安保理決議に基づく措置に加え,我が国独自の措置を引き続き着実に実施していく。
六者会合は引き続き問題解決のための有効な枠組みであるが,「対話のための対話」は不適切である。対話再開のためには,まず北朝鮮が,非核化を始めとする六者会合共同声明におけるコミットメントを完全に実施する意思があることを,具体的な行動によって示すことが必要である。我が国は,引き続き,米韓,さらには中国を始めとする関係国と緊密に連携し,北朝鮮による具体的行動を求めていく考えである。
日朝関係については,日朝平壌宣言にのっとり,拉致,核,ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し,不幸な過去を清算して日朝国交正常化を図る方針である。拉致問題は我が国の国家主権と国民の生命・安全にかかわる重大な問題である。すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するため,北朝鮮の具体的行動を引き続き強く求めていく。
第2章 我が国の安全保障政策及び防衛政策
1.日本の安全保障政策
日本は,安全保障上の諸課題に対処するため,我が国自身の防衛力を着実に整備していく。次に,日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化・発展させていく。同時に韓国や豪州との協力や海上安全保障等の利害を共有するパートナー国との関係の強化や,地域の安全保障に大きな影響力を持つ中国やロシアとの安定した関係の構築に努めていく。さらには,ARF等の地域枠組みにおける連携・協力を推進していく。
2.日本の防衛政策
(1)基本政策
我が国は,憲法の下,専守防衛に徹し,他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い,日米安保体制を堅持するとともに,以下に述べるように,文民統制を確保し,非核三原則を守りつつ,節度ある防衛力を自主的に整備してきている。
- ア 非核三原則
- 非核三原則とは,核兵器を持たず,作らず,持ち込ませずという原則を指し,菅内閣としてはこれを堅持する方針に変わりはない。
- イ 文民統制の確保
- 国民を代表する国会が,自衛官の定数,主要組織などを法律・予算の形で議決し,また,防衛出動などの承認を行うこととなっている。
(2)防衛計画の大綱等
2010(平成22)年12月に,「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」が策定された。「防衛計画の大綱」は,我が国の安全保障の基本理念や基本方針,防衛力の意義や役割,さらには,これらに基づく,自衛隊の具体的な体制,主要装備の整備目標の水準といった今後の防衛力の基本的指針を示すものである。
- ア 我が国の安全保障における基本理念
- 新大綱において安全保障の目標は,1)脅威の防止と排除,2)脅威発生の予防,3)世界の平和と安定及び人間の安全保障の確保とし,その達成のため,「我が国自身の努力」,「同盟国との協力」,「国際社会における多層的な安全保障協力」を統合的に推進することとしている。
- イ 防衛力の在り方
- 新大綱では,将来に向けて,我が国が持つべき防衛力の基本的方向性として「動的防衛力」を構築するとの方針を示した。これは,安全保障環境の変化(周辺国の軍事力近代化や活動活発化,国際協力の重要性増大)等を踏まえ,1)情報収集・警戒監視等の平素の活動の常時継続的な実施,2)各種事態への迅速かつシームレスな対応,3)諸外国との協調的活動の多層的な推進を重視し,「運用」に焦点を当てた防衛力を実現しようとする考え方である。こうした考えの下,新大綱では,1)実効的な抑止及び対処,2)アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化,3)グローバルな安全保障環境の改善といった役割を実効的に果たすため,自らの防衛力を構築するのみならず,域内諸外国の能力構築支援等の取組みを行うこととしている。このため自衛隊は,即応態勢,統合運用態勢,国際平和協力活動の態勢を保持することとしている。
- ウ 防衛力の能力発揮のための基盤
- 防衛力の整備,維持及び運用を効率的・効果的に行うため,1)人的資源の効果的な活用,2)装備品等の運用基盤の充実,3)装備品取得の一層の効率化,4)防衛生産・技術基盤の維持・育成,5)防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討,6)防衛施設と周辺地域との調和を重視する。
- エ 動的防衛力実現のための取組
- 動的防衛力を実現するためには,統合的・横断的な視点から,自衛隊全体にわたる装備,人員,編成,配置等の抜本的な効率化・合理化を図り,真に必要な機能に資源を選択的に集中して,防衛力の構造的な改革を行うことが必要であることから,1)統合による機能強化・部隊等の在り方の検討,2)横断的な視点による資源配分の一元化・最適化の検討,3)人的基盤に関する抜本的な制度改革の推進,4)防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討や総合取得改革の推進,5)衛生機能の強化に関するについて,総合的な検討を実施している。
(3)防衛関係費
防衛関係費は,自衛隊の維持運営経費のほか,防衛施設周辺の生活環境の整備,在日米軍駐留支援などに必要な経費を含んでいる。
平成23年度防衛関係費は,歳出予算で,SACO(Special Action Committee on Okinawa)関係経費および米軍再編関係経費(地元負担軽減分)を除き,対前年度201億円の減(対前年度比0.4%の減)と9年連続のマイナスとなった。
なお,平成23年度予算では,SACO関係経費として101億円及び米軍再編関係経費(地元負担軽減分)として1,027億円が予算措置されており,これを含めた防衛関係費の総額は,前年度と比べて151億円(0.3%)減額の4兆7,752億円となる。
3.日米安全保障体制
日米安保体制は,日本及び極東に平和と繁栄をもたらし,また,アジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みとしても有効に機能してきた。日本及び地域の平和と安全を確保するために,日米安保体制を一層深化させていくことは重要な課題である。2010年は日米安全保障条約締結から50年を迎える節目の年であり,日米両国は,同盟深化のため,地域の安全保障環境の認識を共有するとともに,グローバル・コモンズ(海上安全保障,宇宙,サイバーなど),拡大抑止 ,ミサイル防衛,人道支援・災害救助といった幅広い分野における日米安保協力を推進しており,さらに,2011年1月の日米外相会談では,共通の戦略目標の見直し・再確認を推進すること等に一致した。上記の日米安保・防衛協力に加え,日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保のためには在日米軍の活動が地元に与える負担を軽減し,米軍の駐留に関する住民の理解と支持を得ることが重要である。この観点から引き続き在日米軍の兵力態勢の再編を通じて,在日米軍の抑止力を維持しつつ,地元の負担を軽減することに取り組んでいく方針である。
第3章 我が国の地域的な安全保障に対する貢献
本年3月11日,マグニチュード9.0の大地震が日本を襲い,死者・行方不明者数が28,000名以上にのぼるなど甚大な人的被害が出るとともに,社会インフラにも被害が発生した。これまでに,159カ国・地域及び43国際機関から支援の申し出があり,救助チーム等については28の国・地域・機関が来訪し,活動した。(6月3日現在。)このような国際社会による大規模な支援は,我が国がこの大きな困難を乗り越え,前進するための大きな励みとなるものであり,国際社会に対して深甚なる謝意を表明する。福島第一原発事故については,現在,我が国は,一日も早い事態の収拾を目指し,政府の総力を挙げてその解決に取り組んでおり,引き続き,最大限の透明性をもって国際社会に対する迅速・正確な情報提供を行う所存である。
1.災害救援への我が国の取組み
東日本大震災直後の3月15日から19日,ARFの枠組みにおいて,我が国はインドネシアと共催でARF災害救援実動演習を実施した。本演習には,計25カ国・地域・機関以上から4,000名以上が参加し,大規模災害への対処能力を向上させるとともに,各国・機関の相互理解を深めるという所期の目的を達成できた。
また,我が国は,世界各地で発生している大規模災害に対する支援も積極的に行っている。昨年,我が国はパキスタンで発生した大洪水に対して自衛隊部隊及び医療チーム,インドネシアで発生したメラピ山噴火に対して専門家チーム,今年2月のNZクライストチャーチで発生した地震に対して救助チーム・自衛隊部隊をそれぞれ派遣したほか,ARF参加国に対して,計5件の緊急援助物資供与及び計8件の緊急無償資金協力を行った。
我が国は,マルチの枠組みにおいても,一昨年4月より,EAS各国関係者に防災分野の研修を実施しているほか,東日本大震災を踏まえ,防災に関する情報共有の推進,災害発生時の迅速かつ円滑な意思疎通の確保,支援派遣・受入れ調整を容易にする仕組みの構築,訓練の実施・能力の向上に関する協力に取り組んでいく所存である。具体的には,日中韓や日ASEAN,ARFの枠組みにおいて,経験共有のためのセミナー・会議の開催,ASEAN防災人道支援調整センター(ASEAN Coordinating Center for Humanitarian Assistance on Disaster Management:AHAセンター)を通じた通信設備等の整備支援及び人材の派遣,救助チームの能力向上のための研修やARF災害救援実働演習の定期化等を提案している。
2.テロ対策
日本は,これまでアジア太平洋諸国との多国間・二国間協議(日韓,日米豪,日中,日中韓)を継続的に開催してきており,国際テロ対策協力の強化を進展させてきている。例えば,2010年はアジア太平洋経済協力(APEC)のCTTF(テロ対策タスクフォース)において議長を務め議論をリードした。特に,東南アジアにおけるテロの問題は,我が国の平和と安全にも直結している問題であり,日本はこれまで,同地域のテロ対策能力向上支援につき,「日ASEANテロ対策対話」,「国境を越える犯罪に関するASEAN+3閣僚会議(AMMTC)及び高級実務者会議(SOMTC)」などの枠組みを通じ積極的な貢献を行ってきた。ARFにおいても,テロ対策及び国境を越える犯罪に関する会期間会合(CTTC-ISM)を活用していく方針であり,2010年-11年の共同議長をマレーシアと共に務めた。途上国に対するテロ対処能力向上支援については,これまで出入国管理,航空保安,海上・港湾保安,法執行等の分野において,技術協力,機材供与等を行っている。
3.軍縮・不拡散
日本は,核兵器のない平和で安全な世界の実現のために,NPTを基礎とする国際的な核軍縮・不拡散体制の維持・強化を極めて重視し,様々な外交努力を行っている。毎年国連総会に提出する核軍縮決議案(「核兵器の全面的廃絶に向けた共同行動」決議案)採択や,昨年5月に開催されたNPT運用検討会議におけるNPTの3本柱(核軍縮,核不拡散,原子力の平和的利用)それぞれについての将来に向けた具体的な行動計画を含む最終文書の採択への貢献はその代表例である。また,2010年9月に我が国及びオーストラリアが主導して,地域横断的な10か国と共に,核軍縮・不拡散に関する外相会合を開催した。同会議では,「核リスクの低い世界」に向けた現実的取組を進める決意を表明する外相共同声明を発表した。我が国は,このような取組を含め,NPT運用検討会議での合意事項の着実な実施に貢献すべく,関係国とも協力しつつ努力していく。
アジア地域における国際的な軍縮・不拡散体制の整備・拡充は引き続き喫緊の課題である。北朝鮮によるミサイル発射及び核実験に対し,我が国は安保理決議第1874号の履行を目的とした貨物検査法を2010年5月に国会で成立させた。また,アジア地域においては,1)軍縮・不拡散関連条約の締結促進及び国内履行強化,2)輸出管理体制の整備及び強化,並びに,3)拡散に対する安全保障構想(PSI)の理解促進及び取組強化の三つを大きな柱としてアウトリーチ活動を実施しており,アジア不拡散協議(ASTOP)やアジア輸出管理セミナー等の各種会合を毎年開催している。
2010年4月,米国の主催により核セキュリティ・サミットが開催され,4年以内にすべての脆弱な核物質の管理を徹底することが合意された。日本は,これまでIAEAとの協力等を通じて主にアジア地域の核セキュリティ強化のための協力を実施してきたが,核不拡散・核セキュリティ総合支援センターの設立等を通じ,引き続き,特にアジアにおける核セキュリティ強化のための国際協力を推進していく。
4.国境を越えた犯罪対策
アジア太平洋地域においても,麻薬,人身取引,マネーロンダリングなどの国際組織犯罪が依然として問題となっている。
第1に,国境を越えた法的枠組み等の強化が重要である。日本は,麻薬新条約を始めとする薬物関連条約に基づいてARF各国・地域と協力しつつ麻薬問題に取り組んでいる。また,関係省庁と連携をとりつつ,国際組織犯罪防止条約,国連腐敗防止条約,サイバー犯罪条約の早期の締結に向けて必要な検討を進めていく。
第2に,キャパシティ・ビルディングを含む途上国支援が重要である。日本は,国連薬物犯罪事務所(UNODC)の犯罪防止刑事司法基金(CPCJF)及び薬物統制計画基金(UNDCP)を通じて,東南アジア地域の不正薬物対策,人身取引対策,腐敗対策のためのプロジェクトを支援している。
第3に,日本は各国及び国際機関との政策協調を積極的に推進している。日本は,バリ・プロセス,ASEAN+3国境を越える犯罪に関する閣僚会議といった地域的な枠組みの閣僚会合・高級実務者レベル会合等にも積極的に参加しているほか,二国間での政策協調も推進している。
5.海上安全保障にかかる我が国の取組み
近年,ソマリア沖で海賊行為が急増していることから,我が国は2009年3月より自衛隊艦船及び哨戒機を派遣し海賊対策に当たっている。また,2009年6月には海賊対処法を成立させた。
アジア地域においては,日本の主導の下に作成されたアジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)」に基づき,情報共有センターがシンガポールに設立され,アジア地域における海賊情報の共有体制や各国協力網の整備のための積極的な活動が展開されている。同協定には,欧州の国も加盟するなど,国際的な評価も高まっている。我が国は,同協定に対し,財政的な貢献に加え,事務局長を送るなどの人的貢献もしている。現在,海賊事件の多発に悩むアフリカ地域において,ReCAAPをモデルとした地域協力の枠組み作りが進められている。
また,ARFにおいては,本年2月,日本は東京で第三回海上安全保障会期間会合(ISM)を共同議長国であるニュージランド,インドネシアとともに共催した。同会合においては,今後優先的に取り組んでいく分野を示した「ワークプラン」に合意するなどの具体的な成果があった。日本は,7月以降は共同議長ではなくなるものの,引き続き,優先分野を具体化していく過程でリード国をつとめるなどの貢献をしていきたいと考えている。
最終章 ARFの機能向上のための我が国の将来的貢献
ARFは,アジア太平洋地域全体の安全保障枠組みとして,安全保障に関する情報交換や本年3月に我が国とインドネシアで共催したARF災害救援実動演習のような現場に即した演習を行う場としては非常に有効に機能しつつある。我が国としては,ARFが,第1段階の「信頼醸成の促進」から第2段階の「予防外交の推進」へと進み,更に第3段階の「紛争へのアプローチ」を目指して発展していく道を着実に進むことが重要であると考えている。この中で,国家間の対立の問題など伝統的安全保障の問題については,国家主権などの関係もあり,メンバー国間で考え方が異なることから,ARFの枠組みを発展させることについては困難も存在するが,引き続き地域の安全保障環境の向上のための対話を続けることが重要である。
他方,ARFをこれまでの単なる意見交換の場(a talk shop)から行動指向型の(action oriented)枠組みに変えていくべく,テロ対策,災害救援,不拡散・軍縮,海上安全保障,PKOといった非伝統的安全保障分野での協力も着実に進化させていくことが重要かつ現実的なアプローチと考える。非伝統的安全保障分野での課題に対しては,各国の利害も一致しやすく,ARFにおいてもワークプランの策定,机上演習・実動演習の実施といった具体的な協力が少しずつ進み始めている。ARFビジョン・ステートメント行動計画も策定され,各分野の協力の方向性も示されたことで今後具体的な活動が進み,ARFの機能向上に繋がることが期待されるところ,我が国としても各分野で具体的イニシアティブを発揮し,ARFの機能向上に積極的に貢献していく。