【清水寺】
京都に関するコラムの最終回。京ことばについてである。どうぞ。
「京ことば」
訪ねてきた江戸の人から、「あなたは<平計>(へーけー)を好ま
れるそうで。と言われてびっくりしたが、よく聞いてみると、<俳諧>
(はいかい)のことだった。」と『翁草(おきなくさ)』の著者神沢
貞幹が書いている。
その人が、「肴(さかな)をかってこい」といいつけた。いいつけ
られた京都生まれの小物(こもの)が、困ってもじもじしていると、
「早くかってこい」とせき立てる。幸い江戸弁を知っている人が同座
していて、「それは肴を買って(こうて)くること」と説明したので
やっと埒が開いた。
「かって」は、京ことばでは「借って」の意味になり、「買う」の
場合は「こうて」と発音するわけだが、この違いは現在でもよくまご
つかされることがある。
うっかりしていて、電灯の笠に頭をぶつけた。まだ電灯に笠がつい
ていた頃のことだ。思わず「ア痛タ!」と言ったら、その家の人が大
笑いした。その家というのが、東京は神田、チャキチャキの江戸っ子
一家であった。
それでは、頭を打った時、東京では何というのかと尋ねると、しば
らくして、やっぱり「痛テッ」だろうなと答えた。「ア痛タ」と「痛
テッ」は、たんなる言葉の違いだけではなさそうだ。「ア痛タ」の後
には、すぐに次の言葉が「・・・えらい、すんまへん」と続きそうだ
が、「痛テッ」の後には、「・・・なんだ、この野郎!」と続きそう
な気がする。前者は妥協的だが、後者は闘争的だ。
京都と東京。ふたつの言語圏の間には、「ア痛タ」と「痛テッ」に
代表される風土・気質の違いがあるのだろうとその時に感じたもので
ある。
◆京ことば
あて :私
うち :自分
おいでやす :いらっしゃい
おくれやす :ください
そうどす :そうです
そや :そうだ
あかん :だめ
けったいな :変な
しんきくさ :じれったい
ややこし :複雑な
いわはる :おっしゃる
よろしゅおす:よろしゅうございます
ほんま :本当
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