蝦夷犬(エゾイヌ)

奥羽越列藩同盟の東北北海道さらに新潟県をテーマとして、地域の新聞から記事を選び、勝手なことを書きたいと思う。

観音堂天井画 学生描く

2023-05-18 15:34:00 | 日記
河北新報電子版 朝刊
2023年5月18日 21/24

福島県の奥会津地方金山町にある福島県重要文化財の宮崎聖観音坐像、観音堂「大悲堂」に天井画と欄間が設けられた。
会津大学短期大学部の学生と教員が制作。
漆芸を勉強している学生4名がそれぞれ2枚ずつを担当し、中央の1枚は指導する教授と講師で、仏教の装飾に用いられる宝相華(ほうそうげ)を描いた。

宮崎聖観音坐像(みやざきしょうかんのんざぞう)は、どのように作られたかは定かでは無い。
鎌倉時代中期に作られた物を、金山地方の領主が安置したものと推定されていて、指の形がおはじきのようだとして、「おはじき観音」として信仰を集めて来た。
坐像は全体を漆で塗られてから金箔が施された物。
漆芸を学ぶ学生が天井画を描いたのは、後々には一体化して鑑賞されるであろう。

記事からは、どのように漆を使用して描いたかは分からないが、漆の木から樹液を採り、それを作品に塗ると、固まって、水を弾き、腐食を防ぐので、日本では様々な工芸に広く使用されてきた技法である。

簡単に木工の作業について触れるなら、木と木を接着するのに、動物の皮や骨から作られる膠(にかわ)を使用する。
これは、必要な場合には温度を上げると接着が容易に外すことが出来、便利な接着剤である。
しかし、日本で作られる本物は、ある方が苦労の末に復元して、作り方を再現したが、どうしても高価にならざるを得ず、実際には東南アジアで作られる、同種の物を輸入して使用することが大半である。
本物で復元するような文化財などでも、もはやどうだろう?
輸入品で間に合わせてしまうのではと危惧している。

漆(うるし)は、ご存知の方も多いと思うが、漆の木に斜めに傷をつけ、その木が自ら修復するために流す樹液を採り、それを使用するのが本漆(ほんうるし)。
本漆に合成樹脂を加えた合成漆、漆に似せた仕上がりのカシュー、あるいはウレタンなどの合成の塗布剤などがある。

漆はかぶれやすい方もいるように、ウルシオールと言う成分がアレルギー源となって、一度目は触っても問題は無いが、体内に免疫が出来ると、過剰反応を起こしてかぶれるようになってしまう。
しかし、漆職人は、そのかぶれてしまうのを、更に訓練することで、何度も経験することで、かぶれない体質に作り、ようやく作業できる身体を得て初めて仕事ができるようになる。

近年は、多くは合成漆のかぶれないように作られたもので作業を行うのだが、本漆には似て非なる物ではある。
以前に将棋の駒師の方を取材して、お話しを聞いたことがあるが、その漆を克服するまでの壮絶な努力たるや、筆舌に尽くし難い。

膠には膠の、非常に大切なことがあり、漆には膠の大切なことがある。
学生さんが、漆をどう使用したのかは、興味のあるところだが、理屈で知っている私にしても、現実に作業で使うものは輸入品の膠であり、化学合成された漆である。
100年もつ芸術品なら、本物の膠と本漆であって欲しいが、現代では野暮というものかも知れない。


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