S多面体

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」のショート版

ショウビジネスを目の当たりにできたワハハ本舗の「王と花魁」

2021年11月09日 | 演劇

WAHAHA本舗劇団東京ヴォードヴィルショー出身の6人、喰始柴田理恵久本雅美らがつくった劇団だ。37年の歴史をもつ有名な劇団で喰始の名はしばしば耳にしていたが、わたしはまだ一度も観たことがなかった。

新宿文化センターの開演時間は14時なのに開場は13時、なぜこんなに早いのかと思いながら、いつもより早めの40分前に到着するようにした。すると、すでにロビーに客がいっぱいいてマスクに絵を描き写真を撮っている。ワハハでは「マスクdeエール」という自分自身に向けエールを送ろうというプロジェクトを展開中だそうだ。
小林幸子のマスクは「早くみんなで歌いたーい!」、その他キャイーン、松村邦洋、鈴木杏樹、シェリーらのマスクも展示されていた。ビデオは芝居のエンディングで放映される可能性もあるとのことだった。

平日昼間だったせいもあるだろうが、70歳前後の高齢客が多かった。歴史があるのでなじみ客、常連客が多いようだった。しかも新型コロナ流行のせいで、この全体公演は1年半延期、前回の全体公演から4年ぶりとのことで、よけいに多く客がやってきたようでワハハ祭りの様相だった。
客が高齢だからか、ネタも昭和のなつかしネタ、たとえば「笑点」「11PM」などのテレビ番組、クレージーキャッツ、ザ・ドリフターズなどのネタが満載だった。
王と花魁」の幕開けはいきなり、宝塚の大階段のようなダンスで、ふつうの劇団ならカーテンコールの雰囲気でびっくりした。
2部構成で、いちおう第1部はジャズと男花魁、2部は東京オリンピック2020ということになっているようだ。
1部90分の出し物は、昭和のなつかしのテレビ番組「笑点」「11PM」「朝ドラなど」の3チームに分かれた対抗コント、久本・柴田2人だけの応援団、昭和のギャグ(例 「新婚さんいらっしゃい」「アジャパー」「シェー!」「ガッテン」「スチャラカチャンチャン」など)、柴田の一人芝居(宍戸梅軒の妻、秀吉、演劇ファンの男と女など)、宝塚ドリフ組の歌とダンス、裸スーツ着用男女グループのダンス。
10分休憩で2部60分は東京オリンピックのファンファーレと古関裕而作曲のオリンピックマーチで始まる。出し物はオリンピックの各競技(走り幅跳び、三段跳び、ハンマー投げ、バスケットボール、フェンシング、競歩、空手、スポーツクライミングなど)のパントマイム、実際のオリンピック開会式で披露されたピクトグラムのパントマイムと少し似ていた。久本の独り舞台「This is me(私は私)」かつて年齢を2歳サバを読んでいたこと、など一種の(自分の)恥のさらけ出し、梅ちゃん(梅垣義明)の歌謡ショー、「白波五人男」の歌舞伎ミュージカルなど。

エンディングは泉谷しげるの新曲「風の時代」で、バックに客が描いた手作りマスクが映し出された。サビの歌詞「風の時代を生きよう、新しい君とともにどこにいても生き抜く力を風の時代を(Ah-)生きる」が力強かった。
柴田と久本の二大スターを中心に展開されていることがよくわかった。
わたしはシナリオで演劇をみるタイプ(たとえば井上ひさしや平田オリザ、古くはつかこうへい)なので、こういう構成の芝居はちょっとなあ、という感じだった。しかしファンにとってはこういう盛りだくさんの学芸会風のショウは、見どころ満載で大満足なのだろう。
ただわたしも、歌、ダンス、殺陣などのレベルが高いことは十分に認める。年長の役者は60代以上だが、若手も(少なくともダンスでは)しっかり育っているようだった。
それ以上にわたしが注目したのは、照明、音響、衣装、美術などいわゆる裏方のレベルが非常に高いことだった。ヴァイオリン独奏もすごくレベルが高かった。わたしにはわからないが、三味線・尺八など邦楽器もレベルが高いのだろうと思う。
なおわたくしの席は2階席の後ろのほうだったので、役者の表情がほとんどみえず、高い場所なので声も一部聞き取りにくかった。もう少しいい席なら、役者の表情や演技がよく見えセリフもはっきり聞こえ、印象がよくなった可能性がある。

喰は5年も前の本で「「ワハハ本舗」はお笑い集団と取られていますけど実際はショウビジネスを舞台でやっているんです。ダンスあり、チャンバラあり、ほかではやらないようなことをやっている」と語っている(「赤塚不二夫生誕80年企画 バカ田大学講義録なのだ!」2016.7 文芸春秋)。きっとそういう劇団なのだと思う。
 
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