goo

『バベットの晩餐会』・・・・おなかも心も満足の1本

1988年 デンマークの作品。

19世紀のデンマークの辺鄙な漁村が舞台。
厳格な牧師とその2人の美しい娘マーチーネとフィリパは
神に仕える暮らしを送っている。
それぞれにロマンスの気配もありながら
結局は二人とも牧師館を離れることなく
父親が亡くなった後も
村人たちに善行を施す、質素な暮らしを続けていた。

そこにフランス革命を逃れた女性バベットがやってくる。

彼女は給料はいらないので牧師館で
メイドとして住まわせて欲しいと
姉妹に頼むのだ。

時が流れ
美しかった姉妹も老婆となり
村人たちも年とともに皆頑固になったのか
時折の集まりの中でも口論が絶えない日々になってしまう。

そんな時、
亡き牧師の生誕100年を記念しよう、という提案がされる。
たまたま時折買っていた宝くじに当たったバベットから
「この晩餐会は自分の思うとおりにさせて欲しい。」
という申し出がある。

いつもどおり簡単な食物とコーヒーだけで良いと思った姉妹だが
バベットの申し出を受け入れる事にするのだ。

フランスから続々と届く食材の数々。
それは村人の暮らしとはかけ離れたものばかりで
村人はそれを食べる事を罪と感じ、
食べ物を決して味わう事の無いように、と誓い合い、
晩餐会に臨むのだが・・・。


辺鄙な漁村とそこで暮らす慎ましやかな人々を追う映像が前半に続く。
宗教色も強く、
もしかするとある程度の展開を知らずに見始めると
ちょっと飽きてしまうかも。
でも、だんだんと引き込まれていくのは
村人や2人の姉妹の心のつながりに興味がもてるからか。

後半は一挙に画面が展開していく。
おいしそうな料理の力というのはすごいものだ。
海がめのスープやウズラのパイ仕立て。
ジビエっていうのだろうか。
シウはハトやウズラは食べた事があるけど
さすがに海がめは食べた事が無いな~~
どんな味がするのだろう・・

決して食事を味わう無かれ、と誓っていたはずの村人が
料理とそれにあわせて出されるお酒に夢中になってしまうのが楽しい。
それでも口では料理の話題を無理やり避けているのが笑ってしまう。

ネタバレしてしまうが
バベットはパリの一流レストランのシェフだったことがわかり
その高級レストランで提供されるのと同じ食材で晩餐会を催したのだ。
宝くじで当たったお金をすべてつぎ込んで・・。

姉妹が
「あなた、また貧しくなってしまったのね。」
というと
「貧しい芸術家はいません。」
と応えるバベット。

この一言がこの映画のすべてである。

美味しい料理が人を幸せにする、
というのももちろんだが
この映画が訴えるものはそれだけではなく
人が誇りを持ってする仕事は
それすべて“芸術”であり、
それこそが人々を感動させ、心を開かせる。
そういうことなのではないか。
そして、
そんな仕事こそが何よりも自分自身をも豊かにするのである。

=あの世に持っていけるものは、自分が人に与えたものだけ=

しみじみと心にいつまでも残る作品となりそうだ。


(Gyaoで配信しているのを見ました)
コメント ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« この2冊 リトルショッ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。