ゆう’sful LIFE

感染予防と看護について考えたことや勉強したことを綴っています。

クラスター対応 その1

2020年05月23日 | 感染管理
近隣ではクラスターの発生が多く、当院も薄氷を踏む思いで日々を過ごしていました。
ある病院からは、発熱だけを理由に”お断り”された患者が、直接紹介され続けて
なんて送り付け方をするんだと憤っていたところ
ある患者でCOVID-19のPCR陽性。
その後も、1人。
当該医療機関は、クラスターが確認され、長期間に渡ってニュースを賑わすことになりました。

その後も近隣では、グループホームや高齢者施設、病院と県内随一の発生地となり
4月に入ってから、保健所さんと訪問支援に行くようになりました。
延べ7施設。
後半、厚生労働省クラスター班の方と一緒になるようになりました。
そこで、ふと気づいたことがあります。
クラスター班の組織の中には、感染対策(感染防止技術)に関する専門家がいない。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000599837.pdf

彼らのいう対策とは、リンクを追い、濃厚接触者をとにかく封じ込め、リンクを断つこと。
見ているのは主に後ろ向きです。
私たちも疫学的分析をして、リスク因子と考えるものに対して対策を講じるという点では視点は同じですが
院内感染のクラスターでは、リスク因子を改善して、医療を継続しなければなりません。
リンクを断つ=医療従事者の濃厚接触者は自宅待機 だけでは、現場の戦線離脱者を大量に生み出すことになり
医療機能の減退につながります。

戦線離脱者をいかに減らし、医療機能を維持するか
なぜ院内感染が発生したのか、感染の連鎖を断つために必要なことはなにかを見出し、対策を講じることが必要です。
おそらく、これからのCOVID-19対策に必須であるこの作業には、ICNの役割が重要でしょう。

昨日、本省の方から電話をいただき、どうやってICNがクラスターが発生している病院や施設に行くようになったのか、そのスキームについて質問を受けました。
途中、彼女が「10年間に渡って培ってきた保健所との信頼関係の基盤があったのですね」とつぶやきました。
2009年のパンデミック以降、いろいろな感染症の取り組みを共に行い、関係を作った方が県内全土に異動され、またそこでICNと関係を作り
そうして2020年を迎えているわけです。
3月から4月の混乱の最中に、時に感情的になる人もいる中で、どうやって命を救うかを真剣に考えることができる関係は、一朝一夕ではできないでしょう。
そう考えると、そういった土壌がない地域で、役割だけで作ったスキームがすぐに有効に機能するかは未知数です。
それでも、今から作っておくにこしたことはありません。
うまくいかなかったら、評価検証し、改善していけばよいのです。
第2波、第3波、来ないといいなあと思いますが、大なり小なり来るのだと思って、今準備をしておくことが必要です。

障害者施設のクラスター発生後の対応

2020年04月25日 | 感染管理
近隣の障害者施設でクラスターが発生していて、行政支援を依頼されたのですが
障害者施設って複雑に交流しまくっていることがよく分かった。
こんがらがって、整理に時間がかかる。

なんとかこれ以上の拡大は抑え込めそうなので、ここからはどうやって日常を取り戻すかの話である。
いろいろな行政文書等を見ていても、休職の基準などは散見されるのに、復職基準が見当たらない。
陰性化2回で無罪放免ってことはないでしょう。

で、今考えていること。

入所施設についてです。
【入所施設】
感染者が入院するまで滞在していた日から2週間後まで現在の利用者と職員に異常がなければよい。
複数いる患者の誰から陰性化して戻ってくるかわかりませんが、遅く退院(陰性2回)された方が、戻られてから1週間は現在の隔離予防策を継続した方がよい。
つまり、居住空間における個室管理を継続するということです。
4週間は専門家(保健所?)の健康観察下に置く(それ以降も現場では継続されるでしょうが…)。

というような形で、他の入所施設も隔離期間を設定していけばよいか。。。
通所施設については、それぞれの入所施設で最後の感染者の隔離解除基準を満たしてから再開の方が安全だろうと思います。
可能であればの話ですが。
来週、現地に行くので、現場の方のお話と実際の状況もみて、コメントできればと思います。

国内の指針で復職基準に関する公式の記述は未だ出ていないと思います。
第4回のS県の専門家会議の復職基準案は容認されていましたので、使えると思います。
基にしたCDCガイドラインは、4月13日に更新されましたが、改訂部分は接触期間が発症48時間前からになったことと、検査ベースによる対応をより推奨する部分ですので、内容に影響はないと思います。
(国内の指針も概ね下記のガイドラインを踏襲しているので、発出のタイミングが遅れがちです)

職場復帰基準
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/return-to-work.html?CDC_AA_refVal=https%3A%2F%2Fwww.cdc.gov%2Fcoronavirus%2F2019-ncov%2Fhealthcare-facilities%2Fhcp-return-work.html

曝露評価
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/guidance-risk-assesment-hcp.html

1週間と4週間の下りの根拠は、日本渡航医学会と日本産業衛生学会が合同で公開している新型コロナウイルス情報に基づいた東京商工会議所の文書に寄ります。
https://www.sanei.or.jp/images/contents/416/COVID-19info0420koukai.pdf
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1021793

高齢者福祉施設のCOVID-19対策

2020年03月11日 | 感染管理
インフルエンザなどの他の感染症でも明らかなように
高齢者施設にCOVID-19のクラスターが発生すると、重症者や死亡者が増加する可能性が高くなります。
ひとたび入り込むと、その拡散予防は困難を極めるので、大切なことは入り込まないように予防することです。

日本環境感染学会では、下記相談窓口とQ&Aを公開しました。
ご活用いただければ幸いです。

高齢者福祉施設従事者の方へ
・相談窓口の設置
新型コロナウイルス感染症対策についての相談窓口を設けます。
以下のアドレスに「施設名・お名前」を明記の上、お問い合わせください。
E-mail:jsipc-toiawase-ML@umin.ac.jp 
 
・高齢者福祉施設の方のためのQ&A  (2020年3月10日)
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/koureisyashisetsu_Q%26A.pdf

#COVID-19

2020年はサーベイランスから

2020年01月04日 | 感染管理
2019年の秋以降は本当に忙しかったので、結局年末年始も普通の日と変わらなかった。
2020年最初の日(=元日)の夜は、2020年初の貫徹をしてしまいました。
これは、どうしてもと頼まれた仕事の関係で、さすがに元日はと思いつつ
送信した6:30のメールに6:50には返信がきた...そして、夕方には編集さんからゲラが届いた。。。お疲れ様です。

2019年最後の夢は、電車に乗り遅れる夢で
夢占いでは、追い込まれていて精神的余裕がないという心理状況らしい。
確かに仕事が多くて追い込まれています、はい。

3が日もあけまして、今日は原稿を書いてます。
サーベイランスに関しては、何度か書いたりしているので、最近問題になっている「剽窃」に引っかからないように自分の言葉で組み立て直す。
これって、一見ばかばかしいような。
自分が書いた文章が既に発行されているから、同じ表現だと剽窃、著作権に抵触するという。
でも、自分で同じことを表現するのに、そんなにボキャブラリーがあるわけではないので、やっぱり何となく同じような言い回しになってしまう。
専門領域の依頼はどうしても同じようなテーマで依頼を受けることが多いので、これは本当に大変なのである。

原点回帰ではないけれど、2005年頃の自分の講義スライドを引っ張り出してみた。
表現も作り方も幼稚なんだけど、教科書通りな表現だった。
また、それはとても新鮮な?表現でもあった。

感染症のサーベイランスは、感染症の発生やその関連因子に関するデータを収集し、分析した結果を、それを減らすことができる人々にフィードバックする系統だったプロセスである。

「系統だった」というのは、一定の原理と法則に従って、ということで、サーベイランスは感染率という結果だけではなくて、データ収集からフィードバックまでのプロセスそのものであるということで
そのプロセスが系統立ってないとだめなのよ、と言いたいのですね、ここでは。

たまに、ICNからJ〇〇Sのデータを利用したいが、公表されていないので何とかしてもらえないかという問い合わせがある。
個人的にはね(あくまで私見)、データを送ってあげるのは簡単なんだけど、データを見たいのならまずは登録して自分もサーベイランスをしなさいよと言いたい。
登録もしてないのにデータを見せろと普通は言わないよね。
中身を見てから参加を検討という人もいるんでしょうけど。。。
というわけで、まずはウェブサイトに公表しました。
それにしても、サーベイランスをしないCNICによく会う。

サーベイランスをやっていないCNICよ、そんなんじゃ あんこの入っていないどら焼きだぞ。

使用済み器材の洗浄に何を使うか

2019年06月05日 | 感染管理
他施設でラウンドをすることがあるのですが、しばしば器材洗浄に食器用洗剤を使用している施設をお見かけします。

…が、それは誤りです。

洗浄剤の主成分は界面活性剤です。
医療器材の洗浄剤には、さらに洗浄補助剤が添加されており、代表的な洗浄補助剤は酵素です。

一般的に、医療器材の洗浄剤には蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)が添加されます。
これは酵素のもつ基質特異性という特定の物質だけを対象として反応するという特徴を考慮し、血液や体液などの汚れを対象とする酵素を選択しているからです。

その他の洗浄に用いられる酵素には、油脂に作用する脂肪分解酵素(リパーゼ)や、米などのデンプンに作用する多糖類分解酵素(アミラーゼ)があります。
食器用洗剤は、洗浄対象を食器として作られたものなので、酵素類が含まれていたとしてもデンプンや油を対象としたものが主成分で、血液や体液などの蛋白質に対する洗浄効果が高いとは限りません。
食器用製剤を医療器材の洗浄に使用している施設は、見直しをお勧めします。