ゆう’sful LIFE

感染予防と看護について考えたことや勉強したことを綴っています。

旭川に思うこと

2020年12月13日 | 感染管理
旭川が大変な状況で、ICNの支援要請に応じられないかとの連絡がありました。
かの地には、中心となって活動していたICNがいましたが、最近他界され、指揮者不在の状況になっているとのことです。

行ってあげたい思いはあるのですが、私は今日も療養ホテルの支援に行ってきました。
最近、週末はほとんどホテル支援に行っています。
ゾーニングやPPEの使用、廃棄物の扱い方や、消毒薬の使い方などを指導しています。
色々指針は出ていますが、実際の現場をみると、いくつか改善点があるのです。
それから、私が説明したり、質問に徹底的に答えることで、みなさんが納得して対応できるようになっていきます。

土日の休みが皆無なのは、体力的にはきついのですが、当院のクラスターは先週無事に終息し、少し余裕が復活してきたので、今できることをしておこうと思っています。

北海道の話に戻りますが
旭川厚生病院には、感染管理認定看護師が2人いたと報道されましたが、彼らはとても優秀なICNです。
今、置かれている状況を思うと、心身共に疲弊しているであろうと心配でなりません。
かといって、こちらも逼迫状況で、とても旭川まで赴くことはできません。
歯がゆい思いで、どうか踏ん張ってほしいと祈るばかりです。

政府は勝負の3週間と言っていますが、道行く人の人数は減った印象がありません。
ウイルスはヒトと共に動きます。
若い人たちが会食などで感染し、自宅や職場で高齢者に感染が広がる構図ができています。
もはや、自粛=お願いベースで国民は言うことを聞かなくなってしまったように思います。
感染した人は、1週間後くらいに悪化します。
今、陽性になってホテルや自宅にいる人も、来週には肺炎が悪化する可能性が一定数いるわけで
現在の高齢者の割合が多い感染者数だと、入院できない患者が出るのは明らかです。

ベッド、つまり箱モノを増やせばいいというものではないということを、政府も国民は知るべきです。
潜在看護師や急性期現場から離れている看護師は、いきなり人工呼吸器なんて扱えません。
呼吸音だってちゃんと聴取できない看護師がいっぱいいるんですから。
これが現実です。
だから、感染者を減らすことが必要です。
マスクをしない状態で、誰かと過ごすのを避けるしかないのです。
4人以下で食べたら大丈夫なのではなくて、二次感染者が10人で食べる時よりも少なくて済むというレベルの話なんですよ。
感染リスクがない会食の方法なんてないと思います。

神奈川のホテルで療養者が死亡していましたが、分母が増えるということは、こういう患者が増えるということです。
そして、それを許容する方を社会は今選んでいるんですよね。
だから、他の地域でも出ることは想像できます。
ウイルスは平等です。
偉い人も、そうでない人も、高齢者も、若者にも、公平に感染します。
でも、その中で80歳以上の人たちは、8人に1人が亡くなります。
だから、どうか感染しないように、自分は大丈夫かなーなんて思わないことです。






外国人の入院

2020年08月26日 | 感染管理
外国人のパーティなどが開催されると、お国柄か大人数になることが多いようで
県内で大きなクラスターが発生しています。
当院にも患者さんが来院し、やはり抗原検査で陽性でしたので即入院となりました。

英語圏の人ばかりではないので、日本語と英語が半々くらいになると、コミュニケーションが難しかったりします。
見た目が欧米系だからと言って、英語ができるとは限らないですよね。

また、医師がしゃべれるかというとそうでもないので、説明をすることになりました。
やっぱりDMM英会話をしているおかげか、話すのに抵抗感というか変な緊張感がありませんでした。
ただ、やっぱりボキャブラリーが足りないですよね。
経験を積む必要があります。

感じたことは、こちらも最初に名前を名乗って、「ゆうとよんでください」と伝えることで表情が和らぐということです。
屈強な男性患者さんでしたが、少し安心されたようでした。

患者さんは、「何日入院しますか?」「家は大丈夫ですか?」などの質問がありましたが
事前に覚悟していたようで、それほど混乱はしませんでした。
病棟スタッフが対応できるか少し不安ですが、がんばってもらいましょう。

自分は感染していないなんて思わない方がいい

2020年07月11日 | 感染管理
東京都のCOVID-19患者数が増加していますが、一方で自粛緩和を進めている部分もあり
一般市民は、行動をどの程度拡げていいのだろうかと戸惑っているのではないかなと思います。

この数は、様々な解釈ができると思うのですが、背景などの情報を見ることができないので単純に数だけでどうこう言えないと思います。
しかし、この数は楽観視できる状況ではなく、厳しい数だと思います。

テレビを最近はあまり見ないようにしているのですが、プロ野球で観客を入れるようになったニュースの中で気になったものがありました。

千葉の球場に来ていた都内在住の女性が
「行くのは怖いと思ったけど、感染対策をちゃんとやってるなら大丈夫かなと思った」
と言っていました。

都内在住の女性の方が、感染しているリスクが大きくて、自分が千葉に持ち込むかもしれないとは思っていないんでしょうね。
もちろん、不特定多数の人が集まるのですから、球場で感染するリスクがあるでしょう。
千葉の人から見れば、都内から来る人が千葉に持ち込む不安もあるわけです。
患者さんたちと話していて常に感じるのは「自分は大丈夫と思っていた」という当事者意識の欠如です。
感染した人が悪いとは言いませんが、行動に慎重さが欠けていた人がそれなりにいるというのは事実です。

個人的には、今はリンクが追えない症例や、東京では特定の業種や人々に限定した感染状況ではなくなってきているので
特に都内からの人の往来は、控えてもらうことが必要な状況だと思います。

政府からの発信は、行動レベルで変容を促すような具体的な表現であってほしいです。




レインボーブリッジは赤くならない

2020年07月01日 | 感染管理
東京都はモニタリング指標を変更しましたね。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2ba32b75a256c3434c4361ec7082073a2ba75cb2

この感染症は、新しい感染症なので、適宜見直すことは悪いことではないと思います。
が、東京アラートっていったい何だったんですかね。
都庁やレインボーブリッジが赤くなって、「みんな気をつけよう!」ってことで
自粛要請とか〇〇宣言とかを出すわけではなくても
今、感染者が増えてるから気をつけてねということで、赤くするなら赤くすればいいのになあと思ったりします。

そもそも、アラートなんて、そんなものなんだから。
指標を超えたら赤くして、落ち着いたら戻す、そういうシンプルなことでいいと思うんだけど。

そうやって、結局1回赤くしてみただけ…ってことになってしまうのだろうか。
経過を見ていきたいと思います。

次亜塩素酸水・・・つづき

2020年06月27日 | 感染管理
次亜塩素酸水に関する追検証の結果をNITEが公表しました。
https://www.nite.go.jp/information/osirase20200626.html

明確な製品基準がなく、これまでも質問に答えにくいものでしたから、こうして公式に検証されることはいいことだと思います。

おさらいです。(前述をコピペ)
次亜塩素酸水は、もともとは食品衛生法で生成方法が指導されている食品添加物で、殺菌効果と安全性が確かな次亜塩素酸水とは「食塩や塩酸を水に溶かして電気分解したもの」と定義しています。
しかし、実際は次亜塩素酸ナトリウムを希釈したり、クエン酸などを混ぜてpH調整した水溶液を次亜塩素酸水や次亜塩素酸水溶液として販売していることもあります。

今回のNITEの検証に、どの製品を使用したのかは見当たらないのですが複数の製品で検証されています。
しかし、いろいろあるものでした。

結論は「次亜塩素酸水(電解型/非電解型)は有効塩素濃度35ppm以上」
35ppmとは0.0035ppmですから、≒0.001...ほぼ水ではないかと思ったりもします。

更に追記として
①汚れ(有機物:手垢、油脂等)をあらかじめ除去すること
②対象物に対して十分な量を使用すること
とあります。
これ、①の時点で、ほぼウイルスいなくなってるんじゃない?とも考えられます。
なぜなら、有機物を除去するために界面活性剤などを使用すれば、それでウイルス除去されるので…
対象物によって使い分けをするのがよいでしょうね。

噴霧については変わらず、人体への安全性が確認されていないでと注意喚起しています。
ボックス中の除菌(ウイルス)と、市中では条件が違い過ぎるので、それを使用したことがアウトカムの改善=感染が減る、ことにつながるといったら評価が難しいでしょうね。
現時点では、他の有効性が明らかな対策をきっちりやった方がいいと思います。

次亜塩素酸水について

2020年06月19日 | 感染管理
次亜塩素酸水についてよく質問をいただくので、現時点での備忘録

次亜塩素酸水は、もともとは食品衛生法で生成方法が指導されている食品添加物で、殺菌効果と安全性が確かな次亜塩素酸水とは「食塩や塩酸を水に溶かして電気分解したもの」と定義しています。
しかし、実際は次亜塩素酸ナトリウムを希釈したり、クエン酸などを混ぜてpH調整した水溶液を次亜塩素酸水や次亜塩素酸水溶液として販売していることもあります。
たとえば、ある製品は、ウェブサイトを見ると、次亜塩素酸水とは記載されておらず、次亜塩素酸ナトリウムとの表記もあります。
また、「次亜塩素酸ナトリウムと酢酸を組み合わせた」とあるので、現在経済産業省が検証している次亜塩素酸水とは異なるものと解釈できます。
この製品にはいくつか種類があって、たとえば80ppm製剤であれば、消毒液として0.008%の次亜塩素酸ナトリウムという解釈ができるかと思います。
0.008≒0.01%なので、ノロウイルスでいうところの、目視で汚染が認められない高頻度接触部位の消毒には使用できると考えていただいてよいと思います。
手指衛生には使用しない方がよいと思います。

次亜塩素酸水については、経済産業省からファクトシートが出ており、現時点では有効性が確認できないので、評価を継続することとなっています。
https://www.nite.go.jp/data/000109500.pdf
評価しているのは、NITE(ナイト:製品評価技術基盤機構)で、特に、噴霧での利用は安全性が確認されていないと注意喚起しています。
ちなみに次亜塩素酸ナトリウムの人体噴霧は特に有害で、塩素ガスによる間質性肺炎を引き起こす可能性があるので絶対禁忌です。

この検証では、新型コロナウイルスに対して有効なアルコール以外の消毒方法として界面活性剤 11種も検証試験が行なわれています。https://www.nite.go.jp/data/000108034.pdf
有効と判断された界面活性剤は、以下の7種です。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
アルキルグリコシド(0.1%以上)
アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
塩化ベンゼトニウム(0.05%以上)
塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01%以上)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)
これらを含んだ住宅・家具用洗剤のリストは以下になります。
消毒用なので、手指には使用しないでください。
噴霧も禁忌です。
https://www.nite.go.jp/data/000109226.pdf

次亜塩素酸ナトリウムは、アルコールほどの即効性がないので、対象物によっては汚れも落とす界面活性剤の方が経済的で効率的なものもあります。
使い分けをされるとよいと思います。

特定の職種を感染源と断定するのは

2020年06月06日 | 感染管理
昨夜、某局のニュース番組で「新型コロナウイルス第2波へ備えて」という特集番組でコメントさせていただきました。
とてもうまくまとめていただき、記者の方には感謝しています。

さて、ここでも院内感染に関するコメントを求められましたが
今朝、webニュースで気になる記事をみました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5a4cc3d062afce03898cae65646b02ceae55cd4f

この記事の見出しはこうです。
「看護師が「感染の媒介」の可能性 集団感染の病院に指摘」
気になる部分を抜粋してコメントします。

「入院患者や医療従事者ら計133人の新型コロナウイルスへの感染が確認されたなみはやリハビリテーション病院(大阪市生野区)について、厚生労働省のクラスター対策班が調査報告書をまとめた。感染防止対策が不十分だった看護師らが院内感染を広めた可能性もあると指摘している。」
→院内で患者間の感染拡大に寄与する可能性がある職員(ここでは敢えて職員に限定)は看護師だけではありません。
直接接触する機会が多いのが看護師であることは自明でしょうが、たとえば手指衛生の遵守率について他の職種の方が看護師よりも低いという報告は多数あり、業界ではよく知られています。

「感染拡大の原因について、消毒などの感染防止策を十分に講じないまま病棟間を行き来していた看護師らが「感染の媒介」となった可能性を指摘。明確な感染源は特定できなかったと結論付けているという。」
→看護師は病棟間の行き来はあまりせず、まして他病棟の患者に直接接触する機会はほとんどないのではないでしょうか。
医師や理学療法士など、病棟間の往来を頻繁にする職種は他にもいます。
明確な感染源を特定することはできなかったと結論づけられているのにも関わらず、なぜ見出しに看護師が媒介と表現してしまうのでしょうか。

詳細は報告書にあり、クラスター対策班の記述を精読すれば、このような見出しにはならないのではないかと思います。
なぜなら、そのような特定の職種を名指しして、断定的に記述するような報告書を彼らが作成するとは考えられないからです。

また、流行真っただ中です。
終息気分で街中を闊歩している人も多そうですが、SARS-CoV2は日本や地球からいなくなったわけではないので、いずれまた大なり小なり流行するでしょう。
だから、医療現場は次に備えてやることが山積しています。
これまでの対策を振り返り、評価し、改善すること。
今後を予測し、いくつかの可能性にそって、計画を立てておくこと。
そんなオンゴーイングの時期に、医療従事者の気持ちを慮ることなく、逆なでしたり、やる気をなくすような行為はやめていただきたい。

一度でも、現場に立ち
一度でも、患者に接してみたらいい。
そうしたら、何も語らなくても、わかることがたくさんある。

ガウンをもって、マスクをもって、ゴーグルと手袋をもって、医療現場の中を見てみたらいい。



これから登山を考えている人へ:山の感染対策

2020年05月31日 | 感染管理
高尾山では例年の2割程度の登山客だそうですが、この時期って新緑がきれいで気候もいいから、みなさん出かけたくなりますよね。
業種別ガイドラインというものがでていますが、山岳医療救助機構から分かりやすく具体的なガイドが出ていました。
加藤英明先生が監修されているんですね。
登山はするけど、冬は危ないから行かないよ、なーんて以前仰っていました。

発熱などの何らかの体調不良がある場合に行かないのは当たり前ですが、無症状でも感染性があることが指摘されていますし、同行する人がCOVID-19感染者ではないという保証はありません。
SARS-CoV-2の感染リスクとして、三蜜があるわけですが、登山という野外活動自体は三蜜に該当しません。
高尾山や富士山のように、登山道で行列を作るようなことがあっても、基本的にみなさん同じ方向を向いて黙々と歩いているので、飛沫が顔にかかるということも稀でしょう。
ロープや鎖を触ると接触感染が心配かもしれませんね。
これは、手指衛生をするまでは顔に触らない、飲食の前に手指衛生をすることで大丈夫です。

では、感染リスクがある場所や行為とはなんでしょうか。

・登山仲間と休息時や下山後に6フィート=1.8m以内でおしゃべりをしながら飲食をする。
・飲み物をの回し飲みをする。
・山小屋・テントや移動の車の中で、みんなでワイワイマスクを外しておしゃべりをする。

となると、ソロ登山か、現地集合現地解散ですかね。
パーティで山小屋に宿泊するのは、感染者がいた場合はクラスター発生に繋がるリスクがあるといえるでしょう。

感染リスクを避けるために行うことで注意してほしいこともあります。
マスクを着用したままでの登山は、熱中症や酸素飽和度の低下を招く可能性があります。
前述したようなリスクのある場面で着用することをお勧めします。

登山時にケガをすると医療機関はどのような影響を受けるのか?
COVID-19の対応をしているのは、内科系です。
外傷は外科系です。
とはいっても、4月の流行期は外科系医師も総出で対応に当たっていました。
登山をするような山岳近隣のクリニックには、医師を含めた人的ソースは少ないでしょうし、重症でICUを埋めるような状況は、どちらにしても歓迎できるものではありません。
今は少しおさまっていますが、流行期の入院=院内感染を受ける可能性と隣り合わせです。
または、自分自身が感染者であれば、院内感染の原因になるかもしれないのです。

大前提として、安全に登山できること、感染対策をできる人だけが、山に行ってほしいです。
山を歩くことで感染したというエビデンスはありませんが、自宅の出発から帰宅までの過程では、感染リスクがあちこちにあるのです。
そして、山で遭難したり、ケガをしてしまうと、感染対策の意味そのものがありません。
自粛生活で思った以上に体力も落ちています(私も…実感中)。
安全登山と感染対策をセットで、楽しい登山を楽しんでください。

https://sangakui.jp/data/wp-content/uploads/tozan_knowledge_practical0524s.pdf