福島第1原発、配電盤トラブルなぜ? 想定外29時間「考えられない」
2013年3月20日(水)08:05
東京電力福島第1原発で停電が発生し、1、3、4号機の燃料貯蔵プール代替冷却システムなど9つの設備が停止した問題は、20日未明までに9施設全てが復旧した。東電は冷却システムに電源を送る配電盤に不具合が生じた可能性があるとみて、原因を調査している。
東電によると、19日未明に格納容器に窒素を供給する装置が復旧。同正午ごろには放射性物質を含んだ汚染水を処理する装置も稼働できるようになった。午後になって冷却装置も順次復旧し、1、3、4号機の燃料貯蔵プールも冷却を開始。燃料6377体を保管する共用プールの冷却システムも20日午前0時12分に運転を再開、約29時間ぶりに全面復旧した。
東京電力福島第1原発で起きた停電は20日未明、発生から丸1日以上たって、ようやく復旧した。多くの設備が同時に電源を失ったため、停電の原因となった場所の特定が難航したことが復旧の遅れの最大の要因だ。専門家は「これほど長時間の電源喪失は、通常考えられない」と指摘。事故から2年が経過した今も、「安定」と言えず、想定外のトラブルが起きうる一進一退の状況が続いていることを浮き彫りにした。地元からは「住民の帰還の障害になる」との懸念も出た。
「心配をおかけして大変申し訳ない」。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は19日午後の記者会見の冒頭、陳謝した。
福島第1原発について、平成23年12月に当時の民主党政権は「事故収束」を宣言したが、その後もトラブルが続発。汚染水の流出や温度計の故障、燃料貯蔵プールへのがれき落下…。とても事故が収束したとはいえない状況が続いている。
今回は9つの施設で同時に停電が発生。トラブルがあった場所の特定が遅れ、使用済み燃料を保管する共用プールの冷却システム復旧が20日にずれ込むなど、復旧見通しが立つまで時間がかかった要因となった。
東電のこれまでの調査によると、3、4号機のプール冷却装置に電気を送る配電盤に何らかの不具合が発生。その影響で、この配電盤から電源を得ている4つの装置がすべて停止した。
さらに、影響が他の施設に及ばないように、複数の遮断器が自動的に稼働し電流を切断。その影響などで、汚染水を浄化するセシウム吸着装置なども停止したとみられている。
今回のトラブルを受け、地元からは東電に対する批判や、安全対策の徹底を求める声が上がった。
福島県生活環境部の古市正二次長は19日、東京電力の山本晋児・福島広報部部長を県庁に呼び、「県民に大きな不安を与え、帰還に向けた動きにも大きな障害になる」と厳しく指摘したが、全施設が復旧したことで、今後の焦点は、なぜ配電盤で不具合が発生したのかという原因究明に移る。
京都大原子炉実験所の宇根崎博信教授(原子力工学)は「電気設備なので雷や水などには弱いが、今も原因が分からないとなると、別の要因が考えられる」と話す。東電も「目視では異常はなかった」と、原因解明にはまだ時間がかかるとの認識だ。配電盤は仮設の施設で、そのことが影響した可能性もある。
宇根崎教授は「今回の最大の問題は、一つの要因で複数の機能が同時に損なわれたことだ。設計上の甘さがあり、今後総点検が必要だ」と指摘している。(原子力取材班)