the Saber Panther (サーベル・パンサー)

トラディショナル&オリジナルの絵画芸術、化石哺乳類復元画、英語等について気ままに書いている、手書き絵師&リサーチブログ

プレヒストリック・サファリ⑱ (中新世後期 南米・ブラジル) プルスサウルス 'The Nightmarish Caiman'

2015年10月24日 | プレヒストリック・サファリ

Prehistoric Safari - The late Miocene Brazil






舞台設定
中新世後期・南米大陸パンアマゾニア地域 

現在のブラジル北西部に該当する地域での、800万年前頃の情景。密林奥深くまで分け入って川辺まで来ていたトクソドン科の「一角獣」が、怪物カイマンの襲撃を、紙一重でかわした瞬間…!です。


Species
(From front to back)

トリゴドン属種  Trigodon gaudryi
前頭に一角を生やしたトクソドン科の動物

プルスサウルス属種  Purussaurus brasiliensis
プルスサウルス属の最大種

フォベロミス属種  Phoberomys pattersoni 
ウシほどの大きさのげっ歯類


Description
全長10~12.5m、体重8.4トンほど(Aureliano et al., 2015)に達したと考えられている古代の巨大カイマン種、プルスサウルス brasiliensis は、史上最大のワニの一つに数えられています。

ガヴィアル科種に限らず、傾向として古代の10m級のワニ(いわゆる'super crocs')には、吻部が細長い形状の種類が多いと言えます。
アリゲーター科種らしい幅広で頑強な造りの頭骨(頭骨長1.4m)を持つプルスサウルス属は、
この点で際立った例外と言えるでしょう。

他のいずれの「スーパークロック」と比べても顎の力が突出していたであろうことから、史上最強のワニの盛名を冠する存在でもあります。
その咬筋力は7トンほど(Aureliano et al., 2015)と推定されていて、この数値はあらゆる四肢動物の中でトップ級であるとも言われているのです。

トリゴドン gaudryi は一角を有する点を除けば、他のトクソドン科種同様に重厚な体つきをした大型獣ですが、プルスサウルス種の一噛みでもまともに喰らったならば、ひとたまりもなかったことでしょう。


Super crocs' heaven
中新世後期の南米にはプルスサウルス種以外にも10m級の「スーパークロック」が複数種(系統もクロコダイル科、ガヴィアル科、アリゲーター科と複数にまたがる)共存しており、大型ワニの全盛と称すべき様相を呈していました。当時、南米の湿地帯では大型ワニの大繁栄を促すに理想的な生態系が展開し、ニッチの競合も緩やかであったことが窺えます。


Enigma
不思議なことに(私が原因を把握しきれていないだけなのですが)、その後 鮮新世に推移すると巨大種の多様性は突如として縮小し、代わって遥かに小柄な種類のワニが台頭してくることになります。生態環境の急変が原因に挙げられますが、無敵とも言えるプルスサウルス属種も、自らのサイズの大きさが結果的にはあだとなったと指摘する研究者もいます(Aureliano et al., 2015)。

このようにドラスティックな変化をもたらすに至った古生態(paleo‐ecology)上の要因について考察してみることも、大変興味深いことでしょう

 


[The scene]
The late Miocene Pan-Amazonian region(present day north western Brazil), South America, 8 million or so years back.

A group of 'the unicorn' toxodontid, Trigodon gaudryi who had been wandering deep into the wet forest and found the open river, were ambush-attacked by Purussaurus brasiliensis, one of the largest and arguably the
strongest of all 10 m long ancient 'super crocs', from the dark water!

From front to back:

Trigodon gaudryi
(A Toxodontid that had a unicorn on its forehead)

Purussaurus brasiliensis

(Check the description)

Phoberomys pattersoni
(An extinct 'mighty mouse' the size of a cow)


[Description]
Purussaurus brasiliensis was the largest species of the monstrous ancient caiman genus who is estimated to have reached 12.5 m in total length, weighing about 8.4 tons(Aureliano et al., 2015).

Cranial characters of P. brasiliensis were not unlike typical caimans' : extremely broad and robustly built and the species is believed to have had one of the most powerful or THE most powerful bites(7 tons bite force) ever among tetrapods(Aureliano et al., 2015).

Trigodon gaudryi, except for its very unique horn, was as similarly large bodied and pompous as other toxodontids but even a single bite from the nightmarish caiman would've inflicted lethal enough damages on the
unicorn. The same held true for giant rodents and virtually no animal could be safe from P. brasiliensis during the fearful Miocene epoch in South America.

[Enigma]
Intriguingly, diversity of South American giant crocodyliformes suddenly diminished and invincible Purussaurus sp. and other contemporary giant species were being quickly replaced by significantly smaller relatives through the early part of the Pliocene. The paleo-ecological causes for this major shift should be an interesting topic of study.


"プルスサウルス  The Nightmarish Caiman"

イラスト&テキスト ©サーベル・パンサー the saber panther (All rights reserved)


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18 Comments

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Unknown (Unknown)
2015-11-08 22:42:39
ガビアルというとインドガビアルのイメージしかないですが、昔は南米にもいたんですね!
Gryposuchusがそれにあたるんでしょうか。
プルスサウルスが大型獣も襲うのに対して、グリポスクスは魚食主体というように棲み分けしていたんでしょうね。
返信する
Unknown (管理人)
2015-11-09 00:14:32
そうみたいですね。当時の南米パン・アマゾニア地域
の湿地帯では、他にプルスサウルスmirandai、モウラ
スクス属(アリゲーター科)の大型種などが繁栄を謳
歌していましたし、沿海部を支配していたのは、ピス
コガヴィアリス属種をはじめグりポスクス亜科の大型
種たちでした。いずれも「super crocodilians」の呼
び名にふさわしく、8~12m級の大型種の多様性という
ことでは、後にも先にも、後期・中新世の南米が、他
の時代・地域を圧倒していたのではないしょうかね。

この凄まじいメンツの中にあっても、プルスサウルス
brasiliensis こそは最重量級、かつ「最強」の存在
であったと考えられていますね(頭骨が幅広で頑強で
あるので、この巨体にして「デスロール」が可能だっ
たと考える学者もいます(Blanco et al.,2014))。
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Unknown (ma123)
2015-12-09 19:29:10
次は、アメリカマストドンを書いて下さい。
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Unknown (管理人)
2015-12-15 22:54:56
何か理由とか目的とかありますかね?
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Unknown (ma123)
2015-12-16 12:55:31
アメリカマストドンが好きだからです。
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Unknown (管理人)
2015-12-16 23:44:49
どうも。そういうことであれば、やり甲斐ありますけどね。
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Unknown (ma123)
2015-12-17 16:07:37
書いていただけるならとても嬉しいです。
あと、羽毛の生えたティラノサウルスや、4足歩行をしているスピノサウルスも書くことはできませんか?
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Unknown (管理人)
2015-12-18 00:24:57
光栄です。描けると思いますが、恐竜に関する私の知識はてんでおぼつかないので。詳しいひ
とに助言などしてもらう必要もあるかと思いますが。すぐにも他の中新世の超級ワニを扱った
作品を上げるつもりなんですが、ワニの描写同様、恐竜だって楽しく取り組める筈ですね。

それにしてもアメリカマストドンがお好きとは。素晴らしい。マストドンはその際立った頑強さで
もって、P for Pと言ってもよいくらいの、長鼻類中の一偉観ですから。
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Unknown (ma123)
2015-12-18 12:48:04
アメリカマストドンの絵には、アメリカライオンとバイソンをいれて下さい。
ところで、アメリカライオンには、タテガミはあったのでしょうか?
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Unknown (管理人)
2015-12-19 04:23:50
ネコ科。得意ではあるんですけど、取り組まなくなって久しくなるので。まあネコ科を入れるにせ
よ入れないにせよ、マストドン一つとっても、価値ある復元をものしようと思えばかなり下準備
も要りますよ。

>アメリカライオンのタテガミ

ユーラシアホラアナライオンの例のように、ミイラでも出れば話が早いんですけどね。ライオン
そのものであったにせよ、別種と見なすにせよ、アメリカライオンがPanthera leoにごく近い
存在であることは確かでしょう。北米の平原で同様にプライドをつくる習性があったとすれば、
雄にタテガミがあった可能性も高いと言えそうです。
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