1月16日は私の66回目の誕生日。
祝ってくれるはずのケイ子がいない。
昨日、救急車で入院した。
二三日前から体調の悪いケイ子を寝かしたまま、朝、一人事務所にいた。そこに携帯電話。
「だんだん悪くなる」。ろれつの回らないその声を聞いて、ぞーっとした。背筋か寒くなった。
頭が真っ白になった。そしておろおろした。どうしょうか。こまったなあ。医者に行くか。
ちょっと待て陵太郎に相談する。などと口走る。
この状況から逃げ出したかった。
救急車を呼んだらと仕事中の陵太郎。そうか。そうだ。
すぐ帰るとケイ子に電話。コートを着て飛びだす。
ベッドに抜けがらのようにぼんやり腰掛けていた。
病院嫌い医者の嫌いの恵子を説得口論しながら119を押したが通じない。
ふと、足をすりむいただけで救急車を呼ぶ。タクシー変わりに呼ぶ。
そんなTVの番組を思い出す。
この場合はどうか。ネットで調べる。そして電話相談。
即座に119番に電話しなさい。
携帯で掛けたが繋がらなかった。
携帯からはだめなのでは?
繋がりますよ。再度挑戦。送信ボタンを押してなかったのか。と気づく。
隊員3人は手慣れていた。タンカーに乗せられて救急車に。
着いた先が済生会病院。CTスキャン、MRIと検査がつづく。
「今日は何の日か知っているか」「えっ?」「16日 、誕生日」。
ベットに力なくグッタリ横になっている恵子が手を伸ばしてきた。
その手を握ると「おめでとう」ニコッと笑顔をくれた。
これが66回目の誕生プレゼントである。
暗澹たる気持ち。
ビール一本飲んでクィーンサイズのヘッドへ。一人寝る。