私の母は、もともとアルコールは全然受け付けない体質である。
にもかかわらず、母の日には毎年欠かさず、ワインを送っている。
なぜか。
父を亡くして落ち込んでいたのを見かねて、子供たちが、ワイのワイのはやし立てて、
彼女をイタリア旅行に旅立せたのが、「母の日ワイン」のそもそもの始まり。
イタリア旅行といっても、万事お任せ、安心ラクラクのパックツアーです。
初日からバチカン美術館ではぐれて迷子。本人より添乗員さんをあたふた心配させ、
以下のスケジュールをズタズタにしたみたいです。
で、彼女が一番感激したヴェネチュアでは、ツアー仲間と連れだって、
夜、有名レストランに行ったそうな。なんでも一昔前の画家や作家のたむろしていたお店らしい。
そこで旅行の安全を祈っての乾杯時に、手にしたのが赤ワイン。
盛り上がった雰囲気につられてカタチだけと一口含んだ時、おもわず「あら、おいしい」。
とにかく、初めてのワイン体験です。
その話を聞いて、母の日には、ワインを贈ることが始まったわけ。
元来はアルコールだめの体質でしたから、母が果たしワインを飲んでいるものか、
知人にプレゼントしているものか、わからない。贈り物好きな母であるから、
その可能性は大であるが、いまだ、確かめたこともない。
しかし、毎年、贈るワインは一本。産地はイタリア。
それも必ずパーカーポイントがついていること。その点数を添え贈っている。
で、です。母の日の、ちょうど一ヶ月後。ご丁寧にも、私が贈ったワインとまったく同じものを、
お返しとして、送ってくる。毎年である。しかも、いつも必ず2本である。
そのワインの発送店まで同じである。
どうも、こちらからの送り状を見て、そのお店に頼んでいるようだ。
まさか、お店に返送、プラス一本して、送り返しているのではないと思う。
さて、今年の母の日は、
キャティ・クラシコ フォントディに、決めました。
ちなみに、パーカーポイントは、87点である。
ところで、冗談なんて口にしない母が、
「ヴェネチュアもよかったけど、ヴェニスにも行って見たかったわ…」
あまりにも、残念そうな口ぶりだったので、思わず、「今度、行ってきなよ」
「うん、そうするわ」。
ヴェネチュアで口にしたワインのおいしさに、母は恋いこがれているようだか、
まだ、出会えていないらしい。
母がそれに出会えるまで、イタリアワインを送り続けるつもりである。
はたして、彼女はヴェネチツィア・ワインにめぐり会えるものか。
キャティ・クラシコ フォントディ