ありとキリギリス

ありとキリギリスの両面性を持った内面を見つめて交流できれば

創作童話

2014-12-23 01:31:51 | 日記

九雀物語」第4話
                                   
それでなくとも小さな2羽の子雀は更に小さくなりながら、声の主を確かめようと後ろを振り向いてみると、そこには今まで見たことのない大きなカラスが
今にもつつきそうな嘴で構えながら、鋭い眼光でこちらを睨んでいました。

その異様な怖さに逃げ出すこともできず、2羽の子雀はすくみあがるだけでした。

相手を見ることもできず震えていると、大きなカラスは低く重みのある声で
「何をしてるんだ」
と一言聞いてきました。

あまりの突然なことと、目の前のカラスの大きさに怖れながらカイが小声で
昨日から今までのことを話しました。

すると、大きなカラスは、その厳しい眼光をゆるめながら
 「雀の連中はいつも集団で飛び回っているのに、お前たちのような子雀が
  勝手なことをしていいのか?」
 「俺たちカラスでさえ、少し気を緩めると人間にやられるだけでなく、タカ 
  やハヤブサに狙われるんだぜ」
 「お前たち雀にも決まったことがあるだろう」

少し怖さのほぐれたトキが、一度、親たちから離れて別の世界を冒険したくなって、
カイを誘って飛び出したことを話しました。

大きなカラスは、そんな子雀の話を聞いてゆっくりと話し始めました。
 「俺の名前は、ライだ」
 「他のカラスの連中も俺のことは知っているはずだ」
 「親が狐に襲われて殺されたから、小さかった俺は誰にも負けないカラスになろうと生きてきたんだ。
  他のカラスより身体が大きく強くなったから、仲間ができたんだぜ。」
 「お前たちのような子雀が親から離れて好きなことをしようとしたって、
  何ができるんだ。」
怖ろしいカラスと思っていた子雀は、少し心がほぐれてライの話に引き込まれて行きました。
         第4話終了


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