ありとキリギリス

ありとキリギリスの両面性を持った内面を見つめて交流できれば

創作童話「九雀物語」第5話

2014-12-23 01:33:24 | 日記

「九雀物語」第5話   

大きな体のカラス「ライ」は子雀のカイやトキのことを懲らしめる様子もなく
今まで通ってきた生きざまを少しづつ話してくれました。
そして、ふと思い出したように、

 「そうだ!俺の仲間のカラスが食べ物を採っている下の所を見てみろ!」
 「俺の仲間の近くに小さな雀がいるだろ」

そう言われたカイとトキが下を見てみると、確かに5、6羽のカラスの近くに
一羽の小さな雀がカラスの仲間のように食べ物を採っているのが見えました。

 「ちょっと待ってろよ」

と言ったカラスのライが食べ物を採っている仲間のカラスのいる方に向かって少し高い声を出すと、カラスたちは一斉に、ライの方に振り向いたのです。
そして、小さな雀だけを自分のいるところに呼びました。

カイとタケは、カラスのライが自分のカラスの仲間のように小さな雀を呼び寄せたので、少し驚いてしまいました。

カラスのライは、雀が傍に来てからカイとトキに向かって

 「お前たち、少し驚いただろ! 実はこいつは女の子雀なんだ」
 「それに、片方の目が見えないんだ」
 「いつだったか、俺が森の近くを飛んでいるとき、雀の連中が、同じ雀を
  いじめているのが見えたので、おかしなことをするなと思って近くで
  見ていたんだ。 いじめているのも、いじめられてるのも子雀だったな」
 「どうやら、こいつの目のことで仲間はずれにしていたんだな」
 「他の鳥のことなんか、どうでもよかったけど、少し腹が立って、いじめている子雀
を、俺が追っ払ってやったんだ」
 「それから、こいつは雀の仲間のところに戻らないで、俺の行くところに付いてくる 
ようになって、俺の仲間もカラスの連中と一緒に扱ってくれるようになったんだ」
「だけど、いつまでも俺たちの仲間ではいられないから、 
どうだ!お前たちが、一緒に連れて行かないか」

思いもかけないことを言われたカイとトキは、驚いて顔を見合わせましたが
カラスのライの威圧におされて、了解のうなずきをしてしまいました。




        第5話終了


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