マンション管理士綾さんのブログ

マンション管理士は「正義の味方・月光仮面」?

マンション管理組合の赤字解消について

2024-10-15 18:48:26 | ブログ
あるマンション管理組合から、管理組合会計の赤字を何とかしたいとの相談があったが、自分が緊急入院したため、面会の日程が先延ばしになったので、
資料も何もないベッドからの、「一般論としての赤字解消のポイント」と題して、2つの文書をメイル送信したものです。
参考になればと、ここにUPいたします。

マンション管理組合財政の赤字解消策について  文書1  マンション管理士綾 好文
総論として、すべてに通じる原則は、「入るを量りて、出るを制す」ことです。
管理組合は儲けのための企業ではありませんので、マンションの長期ビジョンを持ち、役員、組合員の意識共有にして、より良い管理を目指すことです。
昔と違って、現在の建物は管理をきちんとすれば100年は持つといわれ、国もビンテージマンションの勧めをしています。
一方でマンションを巡る2つの老いが進む中、管理不全マンションが社会的に大きなマイナスをもたらすことを経験する中で、2年前にマンション管理計画認定制度を発足させ、管理不全マンションに対しては、行政が金も口も出す方針変更を行い、適正な管理には適正な財政が必要との観点から、管理費と修繕積立金の一層厳格な分離管理を求め、長期修繕計画及び修繕積立金のガイドラインを引き上げ、多くのマンションで、管理計画認定を受けようとすると管理費等(修繕積立金)の引き上げが課題となっているマンションが増えている現状にあります。適正なお金がなければ適正な管理もできないことになります。

節約の主な課題
1, マンション総合保険料を見直し適切にすること
今年5月、Sマンションの理事会で起きたことですが、これまで5年契約で54万円であった保険の更新が、値上がりしたので215万ですと見積もりがでた。当然質問が出たのに対して保険代理店の説明として、付保割合の変更は規約の改正でできなくなった、これまで8000万円で加入していたが新価16800万円で提案しているとウソの説明をした、また新価(マンションを新しく建て替える場合に必要な額)はマンションの所在により、保険協会が定めており、会社によって違いはない。時々変更があるが、10年以上も高いままで保険をかけていたことが明らかになった。
巷で食品会社が必要以上に値上げをする「強欲値上げ」が問題になっているが、「保険会社よ、お前もか!」だと、理事さんたちが怒り、ウソ説明を指摘したマンション管理士の提案で、マンションドクター保険の見積もりをとることにし、所定の手続きを進めて、マンション管理士による適正化診断結果をもとに保険見積もりを算出、保険料5年1括で62万円となり、大幅な保険料の低減を行った。
マンション管理士顧問料3万円の支払いで153万円の節約、50か月分の顧問料を払ってもまだ安い結果となった。
*日本マンション管理士会連合会と日新火災保険会社が共同で、「マンションの築年数が古いだけでなぜ火災保険料がこんなに高くなるのか? きちんと管理して漏水事故などがない建物を確保しているのに、現実に漏水事故がない期間が続いているのに、おかしいよ、科学的でない」との多くの意見に応えて、管理士会がマンション管理適正化診断制度を作り、その診断結果に基づいて、高い評価が取れれば、火災保険料を安くする制度としてマンションドクター保険制度が作られました。
評価はS,A,Bに分かれ、S評価が取れれば、最大保険料が半分近く下げられる制度になっています。
 その後、2年前から始まったマンション管理計画認定制度(これもマンション管理士が診断する)の認定計画に合わせて診断項目、診断内容が変更され、適正化診断の結果をもって管理計画認定制度の申請ができるようになりました。

2, 機械式駐車場の廃止問題
若者を含む社会の車離れが進む中、独占的少数企業、保守・管理費が高いため多くのマンションで廃止する組合が増えています。利用率や長期見通しで、機械式駐車場を廃止する検討も必要かと考えます。

3, 利益相反関係にある管理会社に任せきりにしない組合理事会の確立
管理組合の主人公は区分所有者であり理事会が主権を持って管理会社から自立しなければなりません。ところが、まだまだマンションを管理しているのは管理会社だとの利益相反関係を無視した危険な誤りを信じている人がいる。管理会社の言う通り従っていればよいとの考えは極めて危険であり、管理会社にとってこれほどありがたい役員はいないことになる。管理会社はこういう人を理事長に据えるために輪番の変更やくじ引きに細工を凝らして不正な手続きをすることを幾度か経験した。
管理組合の財布を自分の財布と思い込んでいるフロントもいます。管理組合の主権者である理事長や理事会が指示もしないのに見積もりを出してきて、この工事をやる必要があるなどのやり方をする会社は要注意です。管理会社はフロントにこのマンションでいくら稼げとノルマを課しているところがほとんどです。
 この5月で30回続いている富士見市マンション交流学習会で、これまで参加している元理事長さんが自分のマンションが管理会社に乗っ取られたと、2人の理事長が講師を買って出てくれて、その管理会社と契約してから、半年後にはすべての工事を管理会社が独占受注することになり、年額数億円を管理会社が独占して、他の業者への発注を妨害するとの具体的話をしてくれた事実があります。2つとも大手の管理会社です。

4, 定額管理費の適正化
(管理会社の強い抵抗がある、謀略まがいのこともやる管理会社がある。(詳細は私のブログをご一読ください)
管理会社に管理委託している場合でマンション管理士を顧問としている場合、管理士がいなければ、もっと儲かるのに、管理費を下げろというなら経費の見直しをしてマンション管理士の顧問をやめさせる事例が後を絶たない。曰く、管理士は何もしない、会議に出ているだけで何をやったとの誹謗中傷の発言をあおる。管理士はあくまで管理組合の側に立つ専門家で、法と管理委託契約に基づいて、公正な管理業務が行われていることを日常的にチェックすることの大切さを理解しない組合員が多くいる結果でもあります。
5, 発注工事の合い見積もりは管理会社に取らさない。
これまでの日本の談合事件や管理会社が合い見積もりをとる場合、まず間違いなく、目指す業者より高く見積もるようになる、つまり形だけ合い見積もりをとった形にする事例が散見します。
これを見抜くには、長年の組合運営での培われた経験が必要ですが、理事会の引継ぎが正しく行われていれば管理組合の歴史とともに蓄積されるものです。また仕事で営業を担当した経験のある人なら、日本での談合制度の現実をよく経験してきた人といえるほど、常識になっていることです。管理会社に合い見積もりを取らせると、理事会がなんでも聞いてくれると思われる関係になっていれば、形だけ合い見積もりを取り、適正に競争した中で発注した形をとることができます。
6, その他
①マンションの建築・販売会社が、一定の法的制限がありますが、そのマンションの管理規約をつくり、販売時点で各購入者に承認の押印を求め、全員が賛成したとして、それをもって管理組合規約として発足させます。
 販売戦略として早期の完売を求め、管理等(管理費、修繕積立金)を不当に安く設定し、買いやすい商品との印象を与えて早期完売を目指す販売会社が多いのが現実です。
 これらのケースでは、早晩赤字になる危険を販売時点から内包しているもので、管理士に相談があれば、第1回の総会、管理組合創立総会において、管理規約と管理費等の見直しをするように助言するケースが増えています。売ってしまえば、あとは知らない、「我亡き後に洪水よきたれ」との態度の販売会社が多数あるということです。
②もっと酷いのは、そのマンションの管理を自社資本100%の子会社である管理会社に管理させる規約を購買者に認めさせて(規約改正しなければ管理会社を変更できない。規約改正は4分の3必要)、自社の持ち分の管理費を不当に低額に設定したり、修繕積立金や管理費の一覧表を空欄にしたりして、35年も、居住者、管理組合が気付かなかった事例までありました。これを顧問に入った管理士が発見、指摘して、管理組合として、公正な管理費等の支払いを要求して、粘り強く交渉し、月25万円の管理費等を月220万余の支払いに改正させた事例があります。
この管理会社は、35年さかのぼって不公平な差額●億円を求めて裁判を起こそうとしていた管理者(元、大手の不動産会社役員)を、些細なことで犯罪者扱いにして反対者を組織し、「理事長は犯罪者とのビラをまくなど謀略的な行動」で、ひと月で7キロもやせるなど、体力的に耐えられなくなった理事長がマンションを売却、転居した事実があります。
それほど管理組合と管理会社の関係は明らかな利益相反関係にあり、利権が絡むと金と力を持った者勝ちの行動が起きることを警戒する必要があります。(ブログ参照)

赤字対策文書2            マンション管理士 綾 好文
管理費及び修繕積立金はどのようにして決めるか?  
管理費は、通常3年から5年の決算書に基づいて、毎月の支出額を3~5年の平均値を出す。日々の支出を勘定科目ごとに平均値を出し、その合計を計算根拠として必要額を算出する。毎月の支出額を3~5年の平均値を出すことです。
これを区分所有者の毎月の負担額を出す根拠として計算する。
年額平均を12で割り、区分所有者の数で割る。(この場合、概算として平均額を出すことになるが、ご存じの通り、専有面積割合により負担することになるので、その割合に調整することが必要)
規約に添付された専有面積割合=負担割合一覧表があるはずなので、負担割合で合計1となる割合を総額に掛けることで、各戸の管理費負担額一覧が出来上がります。
管理費の変更を考える場合、規約に含まれると変更に4分の3以上の賛成が必要になるので、管理費細則など名称は別にして、規約ではなく細則で定めることにしておけば、過半数の賛成で変更することが可能です。
  
管理会社や販売会社が初めに決めてくるのは、文書1でご紹介したように、いろんな思惑もあって決めてきますが、大きな経験と蓄積もあって、この規模のマンションなら、この程度の管理費が必要と多数の経験値から出す事が出来るようです。彼らが決めた管理費等の数字を、頭から信じていると、照会した事例の様に危険です。
 特に等価交換方式により建設されたマンションでは、負担した建設費に合わせて多くの専有面積を大手が所有することになりますが、その分だけ、自分に都合の良いように、管理費等の負担割合を決める、それも自分で不平等とわかるものは隠すことも含めて、規約等で表現することになります。
 文書1の事例は、規約の負担割合1欄表に、管理費の金額は明示されていたが修繕積立金は空白でしたと報告しましたが、明示されていた管理費の割合が、所有する専有面積より極端に少ない、住戸8個分の管理費しか負担していなかったことが、管理士の指摘により明らかになりました。
 全国のこの関連で多くの裁判闘争があり、その裁判の判例の蓄積の上で、新しく法第30条が新設され、「規約は衡平に定めなければならない」との規定が入り、これを根拠に交渉して、普通の組合員・区分所有者と同じ負担割合することで、管理費の10倍近い引き上げが実現したのです。
この大手会社は、議決件数は規約改正を縛る狙いもあり4分の1以上も持っているのに、管理費の負担は200戸の内、住戸8戸分しか払っていなかった。しかも規約で自分の子会社が管理会社として規約上も決められていて、その管理会社を信じていたことにより、この事実が隠され30年余も変更することができないまま、負担が少なくされていました。理事長は大企業による搾取だと明言、さかのぼっての返金を求める裁判を検討することを表明し、準備中に些細な失敗を誇大に宣伝され、犯罪者呼ばわりされて、首を取られてしまいました。

修繕積立金はどうやって決めるか?

長期修繕計画で今は30年以上のスパンで2回以上の大規模修繕を含む長期修繕計画に含めて、その財政計画を決めなければ、ならないとする国交省のガイドラインがあります。計画があっても総会で承認議決が必要です。
そこには19項目の工事項目の見積もりが入っていること、また、計画最終年度で黒字であること、借金がないことなどの要件を満たすことが求められます。つまり30年以上のスパンの計画で赤字を出さない修繕積立金を負担しなければ、管理計画認定制度の認定を受けられない結果になっています。
計画の毎月集めなければならない積立金を、戸数で割る、負担割合で計算して出すのが、修繕積立金です。
管理不全マンションが不全になる大きな原因が、財政不足で必要な修繕もできないことが挙げられます。そこで管理計画認定制度の発足を合わせて、国交省はガイドラインの引き上げを行い、これまで以上に積立金と管理費の区別管理を強く求めています。相互に流用があれば認定しないというのです。当初のガイドラインの積立金のあるべき範囲に入っていた積立金を持っていたマンション管理組合でも、5年ごとの見直しをしていないところは、管理計画認定制度のために国交省が引き上げたガイドラインには届かないマンションが増えたのです。

当初、長期修繕計画書は、管理会社が無料で作成、A4版数ページ、又はA3数枚の物でしたが、国交省が長期修繕計画の作成ガイドラインを公表してから、マンション管理業界から、それだけの内容、ボリュウムの計画書を無料で作ることはできないと断られ、国交省が「有料にしてもいい」と認めてから、管理会社の儲けの材料にされています。

60戸程度のマンションで長期修繕計画の作成を依頼すると大体4~50万近くの代金を取られることになりました。そのため、弱小管理組合では、長計を作らない、作れないところが出てきています。これでは弱小組合の切り捨てになり、管理不全マンションを増やすことになるのではとの心配が広がっています。
これまで無料で作ってくれていた程度の物でもそれなりに有効に活用ができていたのですから、管理会社と交渉して、これまで作成、提出されていた程度のもでもいいから、作ってもらう交渉も必要になっています。
あるいは内容に合わせて金額を低減してもらう交渉も可能です。









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