OCNブログからGOOブログに引っ越すに当たり、一つ古いものですが、
ブログのサブタイトルとも関連する記事を公開することとしました。
以下の文面は、一般社団法人マンション管理士会会報第106号(平成24年6月)の巻頭言として公開されたものです。
マンション管理士は「正義の味方、月光仮面」?
マンションの管理の適正化の推進に関する法律が、平成12年議員立法で成立した背景には、当時、マンションス トックが386万戸(居住者1千万人)から1年で406万戸に急増している中、マンション管理を巡る多くのトラブル、 中でも深刻で看過できない問題が表面化し、俗にマンション法とも呼ばれた区分所有法だけでは十分に対応が出 来ないことがありました。
これらに対応すべく区分所有法の改正が重ねられると共に、マンション管理適正化法が制定され、平成13年 8月1日の施行に合わせて、法の定めを受けて、国としてこれまで放置してきたマンション管理組合の運営に対して、その責任の重視と自覚を明確にする必要から、「管理組合による望ましい管理のあり方」を示したマンション管 理適正化指針を国土交通省告示として示しました。
この法律で、マンションという言葉が初めて法律に登場し認知されるとともに、これらのトラブルを未然に防ぐた めの仕掛けとして、
第1に、マンション居住のプロとして高度な知識を持つマンション管理士の創設によって未然に 防ぐこと、
第2に、管理組合に対する情報提供、後見的役割を担うマンション管理適正化推進センターの設置によ り、適格な情報提供を
行うこと、
第3に、マンション管理業者の登録制度の創設による、管理業者の水準と資質の 向上を図り、合わせて不適格な業者に対応することの3分類の予防対策が提案され(第150回国会建設委員会平成12年11月22日の山本有二議員の提案理由説明の概要)法律が成立したことはご承知の通りです。
未然にマンション管理のトラブルを防ぐことが期待されているマンション管理士制度の創設について、当時の報 道には、深刻なマンションを巡るトラブルに直面している人々から、「正義の味方、月光仮面張りの期待が寄せら れている」(あるコラム)との報道が見られたほどでした。
さて、マンション管理士を業として、7年。多くの先輩諸氏の導きのもと、機会を得て数多くの相談事例に接する ことが出来ましたが、この間の実感は、「土地建物を巡る不動産業界、建設業界の闇の深さと深刻さ」に驚き、「正 義の味方、月光仮面たりうるか」の自問の日々が続いていることです。
この間の経験でも、特に等価交換により建設されたマンションや、デ ベロッパーや建設会社が自社ビルとして建設し、自社部分以外を分譲販売したマンションなどを中心に、販売業者が区分所有法とマンション管理の知識を知らないためか、あるいは十分に承知しておりながら、 居住者の無知に付け込んでか、「自社部分は管理組合と無関係」を装い当然負担すべき管理費を払わない、原始規約の持分割合に自社持分の専有部分面積を明示しないでごまかす、あるいは過少に計算させ る。建築確認時点では駐車場や駐輪場で許可を取りながら、販売時点 では販売会社の不動産店舗に改造され、子会社の管理会社は、親会社の不正に口をつぐむ、法定の特殊建物調査なども、自社系列の建築士にやらせて、悪事の露見を防ぐなど、も ろもろの手口に出会い、驚きと怒りを持って事の処理に当たってきました。
管理士が組合運営に関与することによって、これらの事実が明らかになり、10年越しの管理費ごまかしを清算して2千万近い追徴で和解に漕ぎ着けた例など、不動産会社のコンプライアンス対応によって解決は比較的容易となりますが、中には、当初の動機は別として、販売の過程で自社関係者を区分所有者として居住させ、結果として管理組合の中枢を支配する事例まで見られました。 F マンション、建設会社、販売会社の同族会社である未登録管理業者が、居住する自社関係者を中心として組合理事会を支配し、管理会社会議室で理事会や総会を開催、2千万近くの使途不明金があると主張する組合員を逆に提訴するところまでこじれた事例も見られます。2年越しで国交省や警察に何度も足を運んで、未登録業者の管理行為をやめさせるよう訴えても、事態は動かず、国交省の「登録業者には厳しく指導できるが、未登録御者には資格を取って登録してくださいと指導するだけ」との現実に、月光仮面はどこに居るのかと天を仰いで、裁判闘 争にのぞむ決意を固めたと支援を求めてきました。