★作家、市民運動家であり、在日運動にも深い愛情を持って観察、行動を共にして来られた磯貝さんに、今回の「都相太随想集」刊行委員会委員長を無理を言って受けて頂いた。自らも三千里鐡道副理事長として、著者と多くの時を共有してきた磯貝治良氏から、委員長としての「刊行のことば」が寄せられた。作家の感性と深い洞察力には、舌を巻くほどだ。
ほぼ出版まで1カ月を残すだけになった。事前広報を兼ね、さわりの部分だけを少しだけ紹介する。N
「刊行のことば」
磯貝治良(作家)
人は誰でも一篇の小説あるいは詩を書く。人は誰でも一冊の書物を持つ。それが人生だ――と言われる。都相太さんにとって、この一冊がそれにあたるかどうかは決め付けないほうがいい。このさき極め付きの一冊が登場しそうな予感がするから。とはいえ、『都相太随想集』が氏にとって生涯のモニュメントになることはまちがいない。
都相太さんが多様な顔を持つマルチ型人間であることは、定評になっている。いくつかのグループ会社の総帥としての実業家の顔。実業を支える作法として、斬新な着想とユニークな新機軸を連発する技術者の顔。豚、山羊、鶏その他もろもろの生きものを有機肥料で育て偏愛する命(いのち)ズム主義者。食物連鎖を尊重し自然の輪廻に愛着するエコロジスト。そして、言うまでもなく平和主義者。さらに付け加えるとすれば、詩人である。
都相太さんが在日の在りようを語り批判するとき、さらには朝鮮半島の歴史と現在に向かい合うとき、そのまなざしにはロマンティシズムの光芒が宿る。もちろんそれは空想の浪漫主義ではない。剛直な、批評的な、実利的な、ロマンティシズムだ。詩人のロマンとは、抒情に浸るものではない。思考は具体的であり、感性はドキュメンタルでさえあるはずだ。
都相太さんは三千里鐡道運動のなかで常に具体的な行動を提起し、そのいくつかをダイナミックに実現させてきた。その提出から行動、結果に至る過程には真正のロマンが底流している。氏と多くの時を共にしてきて、わたしが達した結論が、それだ。都相太さんは詩を書いたか? そんなことは問題ではない。
『都相太随想集』は古希を期して刊行された。そうには違いないが、何かの記念であることをヨコにおいても、登場すべくして登場した一冊である。三千里鐡道10周年を記念して2010年に刊行された『非武装地帯に立つ』に載せられたものを一部含め、氏がさまざまな場で発表、発言した文章のほとんどが、ここに収録されている。
書名は『随想集』となっているが、稀有な思考と感性と情熱を持った在日二世の精神生活の軌跡が、文章の随所に刻まれている。都相太さんは面映そうに苦笑を浮かべるだろうが、この一冊は都家のみなさんのみならず、わたしたちの財産になるだろう。
ほぼ出版まで1カ月を残すだけになった。事前広報を兼ね、さわりの部分だけを少しだけ紹介する。N
「刊行のことば」
磯貝治良(作家)
人は誰でも一篇の小説あるいは詩を書く。人は誰でも一冊の書物を持つ。それが人生だ――と言われる。都相太さんにとって、この一冊がそれにあたるかどうかは決め付けないほうがいい。このさき極め付きの一冊が登場しそうな予感がするから。とはいえ、『都相太随想集』が氏にとって生涯のモニュメントになることはまちがいない。
都相太さんが多様な顔を持つマルチ型人間であることは、定評になっている。いくつかのグループ会社の総帥としての実業家の顔。実業を支える作法として、斬新な着想とユニークな新機軸を連発する技術者の顔。豚、山羊、鶏その他もろもろの生きものを有機肥料で育て偏愛する命(いのち)ズム主義者。食物連鎖を尊重し自然の輪廻に愛着するエコロジスト。そして、言うまでもなく平和主義者。さらに付け加えるとすれば、詩人である。
都相太さんが在日の在りようを語り批判するとき、さらには朝鮮半島の歴史と現在に向かい合うとき、そのまなざしにはロマンティシズムの光芒が宿る。もちろんそれは空想の浪漫主義ではない。剛直な、批評的な、実利的な、ロマンティシズムだ。詩人のロマンとは、抒情に浸るものではない。思考は具体的であり、感性はドキュメンタルでさえあるはずだ。
都相太さんは三千里鐡道運動のなかで常に具体的な行動を提起し、そのいくつかをダイナミックに実現させてきた。その提出から行動、結果に至る過程には真正のロマンが底流している。氏と多くの時を共にしてきて、わたしが達した結論が、それだ。都相太さんは詩を書いたか? そんなことは問題ではない。
『都相太随想集』は古希を期して刊行された。そうには違いないが、何かの記念であることをヨコにおいても、登場すべくして登場した一冊である。三千里鐡道10周年を記念して2010年に刊行された『非武装地帯に立つ』に載せられたものを一部含め、氏がさまざまな場で発表、発言した文章のほとんどが、ここに収録されている。
書名は『随想集』となっているが、稀有な思考と感性と情熱を持った在日二世の精神生活の軌跡が、文章の随所に刻まれている。都相太さんは面映そうに苦笑を浮かべるだろうが、この一冊は都家のみなさんのみならず、わたしたちの財産になるだろう。
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