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日本の集団的自衛権-韓国政府のホンネとタテマエ

2014年07月20日 | 三千里コラム

釜山に入港する米原子力空母ジョージ・ワシントン号(2014.7.11)


7月1日、日本政府は集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。河野談話の“検証”など歴史認識の反動には敏感な韓国政府が、どういうわけか軍事大国を目指す日本の意思表示には沈黙している。朝鮮半島有事の際には、日本の集団的自衛権行使が“北朝鮮に対抗する有効な手段”とでも見なしているのだろうか。

李明博政権に続き朴槿恵政権も、米日韓の三国同盟を強力に推進するようだ。閣議決定のその日、ハワイでは三国の制服組トップ(米韓は参謀本部議長、日本は統合幕僚長)が初めて一堂に会し、“北朝鮮の核・ミサイル脅威”への対処を協議している。周知のように、ハワイ・オアフ島には米太平洋軍司令部が位置しており、在日米軍と在韓米軍はその隷下にある。

日本の集団的自衛権行使が東北アジアの緊張を高め、地域の平和と安定に大きな脅威となることは言うまでもないだろう。そうでなくとも、「東北アジアの火薬庫」と呼ばれる朝鮮半島では、米韓の合同軍事演習が間断なく展開されている。7月11日、横須賀を母港とする米原子力空母ジョージ・ワシントン号が、釜山の海軍作戦司令部基地に入港した。16日~21日までの米韓合同演習に参加するためだ。

注目すべきは、ジョージ・ワシントン号がその後、21日~23日に済州島の南方海上で実施される米日韓の合同演習、「Search and Rescue Exercise」(捜索・救助訓練)に参加することだ。三国の合同演習は2012年に始まり、毎年行われている。だが、捜索・救助が目的の“人道的な訓練”に、なぜ米原子力空母や各国のイージス艦が動員されるのか、いささか理解に苦しむところだ。

どうやら“人道的な訓練”はあくまでも表向きで、実際には同時期に展開されるもう一つの訓練、「Pacific Dragon:太平洋の虎」(米日韓のミサイル防衛訓練)が真の目的のようだ。

原子力空母は「移動する軍事基地」と呼ばれる。米海軍第7艦隊所属のジョージ・ワシントン号(9万7千トン)を主力とする部隊は、戦闘飛行団や所属艦艇の乗務員を含め約6千名の海軍将兵で構成されている。そしてイージス艦は、空母船団の保護と上陸作戦の支援、ならびに海上におけるミサイル防衛を核心的な機能とするものだ。投入される戦力と訓練の内容を見れば、とうてい“捜索・救助”が主目的とは考えられない。

さらに、訓練が実施される場所が問題だ。済州島の南西沖は、中国の心臓部に向かう関門とも言える海域である。そして、尖閣問題で紛糾している東シナ海にも近接している。中国が極めて敏感に反応せざるを得ない海域で、敢えて米日韓が三国合同演習を展開するわけだ。しかも、日本政府が集団的自衛権の行使を宣言した直後にである。このような訓練が定例化すれば、三国が集団的自衛権を共有する日もそう遠くはないようだ。果たして、安易に中国への牽制(というよりも挑発)に同調することが、韓国政府の賢明な選択なのだろうか。

筆者は、李明博政権と同様に、朴槿恵政権の掲げる「反日」もポーズに過ぎないと思っている。表面上は集団的自衛権に難色を示すかのように振る舞うが、実際には日本との軍事協力を着々と推進しているからだ。日本軍国主義による最大の被害者とも言える朝鮮民族が、いかに敵対的な分断状況にあるとはいえ、南が北を圧迫するために日本の軍事大国化を支援するのなら、朴槿恵政権は民族史の厳しい審判を免れないだろう。

7月11日、ジョージ・ワシントン号の入港に抗議する釜山地域の平和運動団体は、次のような内容の声明を発表した。

「日本の再武装における第一歩が米日韓の合同軍事演習となった。日本の集団的自衛権行使が朝鮮半島の平和に対する深刻な脅威となることは、三歳の幼子でもわかることだ。その日本に朝鮮の海を開いてやり、軍事大国化への先導役を担うとは胸が張り裂けんばかりである。」

朝鮮半島と東北アジアの平和に緊要なのは、相手を挑発し緊張を高めるだけの合同軍事演習ではないはずだ。地域の安全保障と平和協力を摸索する対話と交渉を、二国間であれ多国間であれ、速やかに開催することだと思う。朝鮮半島の平和体制なくして東北アジアに安定と平和はもたらされない。南北の両政府は2007年の10.4首脳宣言で、以下のように合意している。

「南と北は現在の休戦体制を終息させ、恒久的な平和体制を構築していくべきとの認識を同じくし、直接関連した3カ国または4カ国の首脳らが朝鮮半島地域で会い、朝鮮戦争の終戦を宣言する問題を推進するため協力していくことにした」(宣言第4項)。

どこかの他国が、朝鮮半島に平和を提供してくれるわけではない。南北の政府当局は10.4宣言の精神に立ち戻り、速やかに高官対話を再開するよう切に求める次第である。(JHK)

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