内分泌代謝内科 備忘録

保存期腎不全でもサイアザイド系利尿薬は十分な降圧効果を発揮する

保存期腎不全患者におけるサイアザイド系利尿薬の降圧効果を検討した偽薬対照ランダム化比較試験

NEJM 2021; 385: 2507-2519

ALLHAT 試験 (JAMA2002; 288: 2981-2997)ではサイアザイド系利尿薬(クロルタリドン、日本では使用できない)はカルシウム拮抗薬(アムロジピン) およびACE 阻害薬 (リシノプリル)と比較して、心血管イベントの抑制効果は劣らないことが示されている。しかし、腎機能が低下している患者でのサイアザイド系利尿薬の降圧効果を支持するエビデンスはほとんどなかった。

対象は 24時間自由行動下血圧測定で高血圧が確認された保存期腎不全の患者。偽薬または 12.5 mg クロルタリドンをすでに処方されている降圧薬に追加し、12週までの血圧低下の程度を比較した。クロルタリドンは 4週毎に最大 50 mg まで増量できる。

ベースの eGFR は 23 mL/min/1.73 m2 で、血圧は 140-143/73-75 mmHg。12週後の24時間自由行動下血圧測定で収縮期血圧がクロルタリドン群では -11 mmHg (95%信頼区間: -13.9~-8.1 mmHg)、偽薬群では -0.5 mmHg (95%信頼区間: -3.5~+2.5 mmHg)低下した。群間差は-10.5 mmHg (95%信頼区間: -14.6~-6.4 mmHg, P 0.001未満)だった。

尿アルブミン/クレアチニン比はクロルタリドン群で有意に低く、降圧による腎保護効果がありそうだった。一方、クロルタリドン群では可逆的な eGFR 上昇、低カリウム血症、高尿酸血症、高血糖が多かった。

eGFR 45 mL/min/1.73 m2 未満でサイアザイドを中止していたが、その必要はなさそう。またクロルタリドン群では 4週後でも 12週後でも血圧低下の程度は変わらないので、初期投与量で十分降圧効果が得られるよう。サイアザイド系利尿薬は低カリウム血症の副作用があるので、ACE阻害薬、ARB、スピロノラクトンと組み合わせて使用するのが良いかもしれない。

 

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2110730

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「循環器」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2022年
人気記事