内分泌代謝内科 備忘録

心房細動

心房細動
JAMA 2025; 333: 329-342

重要性
米国では、約 1,055 万人の成人が心房細動(artificial fibrillation: AF)を有している。心房細動は、脳卒中、心不全、心筋梗塞、認知症、慢性腎臓病、死亡率などのリスクを有意に増加させる。

観察
心房細動の症状には、動悸、呼吸困難、胸痛、前失神 (presyncope)、運動不耐性、疲労などがあるが、心房細動患者の約 10〜40%は無症状である。心房細動は、臨床検査や装着型デバイス、 あるいは心臓植え込み型電子機器の検査によって、 偶発的に発見されることがある。心房細動と診断されずに脳梗塞を発症した患者では、植え込み型ループレコーダ (implantable loop recorder)(すなわち、皮下テレメトリー装置 [subcutaneous telemetry device])により、 間欠性心房細動 (intermittent AF) を評価することができる。2023 年の米国心臓病学会 (American Collage of Cardiology: ACC)/米国心臓協会 (American Heart Association: AHA)/米国臨床薬理学会 (American Collage of Clinical Pharmacy: ACCP)/心臓リズム学会 (Heart Rythm Society: HRS) ガイドライン作成グループは、以下に示す心房細動の進展の 4 つの段階を提案した。

ステージ 1: リスクあり。心房細動に関連する危険因子(肥満、高血圧など)を有する患者と定義する。
ステージ 2: 前心房細動 (pre-AF) 。心房細動は認めないが、心電図や画像検査で心房の病理を示す所見を認める。
ステージ 3: 発作性心房細動(7 日以上持続する心房細動エピソードの繰り返し)または持続性心房細動(7 日以上持続する心房細動エピソード)のサブタイプ。
ステージ 4: 永続的心房細動。

すべての病期において、心房細動の発症、再発、合併症を予防するための減量や運動などの生活習慣や危険因子の修正が推奨される。脳卒中および血栓塞栓イベントの推定リスクが年間 2%以上の患者では、ビタミン K 拮抗薬または直接経口抗凝固薬による抗凝固療法により、脳卒中リスクがプラセボと比較して 60~80%低下する。ほとんどの患者では、出血リスクが低いことから、ワルファリンよりもアピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバンなどの直接経口抗凝固薬 (direct oral coagulant: DOAC) が推奨される。抗凝固療法と比較して、アスピリンは有効性が低く、脳卒中予防には推奨されない。ACC/AHA/ACCP/HRS ガイドライン 2023 では、一部の心房細動患者に対して、洞調律を回復・維持するための抗不整脈薬やカテーテルアブレーションによる早期のリズムコントロールが推奨されている。カテーテルアブレーションは、症候性発作性心房細動患者において、症状を改善し、持続性心房細動への進行を遅らせるための第一選択治療である。また、駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)を有する心房細動患者に対しても、QOL、左室収縮機能、死亡率や心不全による入院率などの心血管転帰を改善するために、カテーテルアブレーションが推奨される。

結論
心房細動は脳卒中、心不全、死亡率の増加と関連している。心房細動の発症,再発,合併症を予防するためには,生活習慣と危険因子の改善が推奨され,脳卒中または血栓塞栓イベントの推定リスクが年間 2%以上の患者には経口抗凝固薬が推奨される。

はじめに
米国では、 AF は生涯に 3 人に 1 人の割合で発症し、 2019 年までに約 1,055 万人 (95% CI, 1,048 万人〜1,062 万人) が発症すると推定されている 。心房細動に伴う重大な合併症には、 脳梗塞、 心不全、 心筋梗塞、 慢性腎臓病、 認知症、 死亡率などがある。この総説では、心房細動の疫学、 病態生理、 診断、 管理に関する現在のエビデンスをまとめる(ボックス記事)。

ボックス: 心房細動に関するよくある質問

心房細動患者のうち、脳卒中および血栓塞栓症予防のために抗凝固療法を受けるべき患者は?
虚血性脳卒中または血栓塞栓症イベントの推定リスクが年間 2%以上の患者では、抗凝固療法の利益は大出血のリスクを上回ります。CHA2DS2-VASc スコアには、うっ血性心不全 1 点、高血圧 1 点、65 歳以上 1 点、75 歳以上 2 点、脳卒中または一過性脳虚血発作の既往 2 点、血管疾患 1 点、女性 1 点というように、脳卒中リスクの高い患者を特定するリスクスコアがいくつかある。抗凝固療法は、出血などの禁忌が生じない限り、無期限に継続すべきである。

心房細動のリスクが高い患者にはどのような治療が推奨されますか?
リスクの高い患者の心房細動を予防するためには、減量、適度な運動、禁煙、飲酒量の減少、最適な血圧コントロールなどの生活習慣や危険因子の修正が推奨されます。

新たに心房細動を発症した無症状の患者は、どのように治療すべきでしょうか?
70 歳未満の新規心房細動患者には、たとえ無症状であっても、除細動と抗不整脈薬の投与によるリズムコントロールが有効です。心不全や左室収縮機能障害のある患者に対しても、リズムコントロールを考慮すべきです。脳卒中または血栓塞栓イベントのリスクスコアが年間 2%以上の場合は、抗凝固療法を開始すべきです。

方法
1990 年 1 月 1 日から 2024 年 8 月 15 日までに発表された心房細動の疫学、病態生理、臨床像、予後、管理に関する英文論文を PubMed で検索した。最新のガイドライン、無作為化臨床試験、およびサンプルサイズの大きい研究を優先して組み入れた。本レビューを構成する 107 本の論文には、48 件のランダム化臨床試験、19 件のメタ解析、12 のガイドライン、コンセンサス文書、または科学的声明、23 件の縦断的観察研究、2 件の横断的観察研究、および 3 件のレビューが含まれる。

疫学
心房細動の発生率、有病率、および生涯リスクは増加しているが、人口の高齢化、発見率の増加、および心房細動や他の心血管疾患による生存率の増加によるものと考えられる。フラミンガム心臓研究 (Framingham Heart Study) 参加者サーベイランスの 50 年間(1958-1967 年および 1998-2007 年)にわたる調査において、1000 人年あたりの年齢調整罹患率は男性で 3.7 から 13.4、女性で 2.5 から 8.6 に増加し、有病率は男性で 20.4 から 96.2、女性で 13.7 から 49.4 に増加した。

心房細動の発生率と有病率は、 地域や性別、 年齢などの人口統計学的要因によって異なる。Global Burden of Disease project では、 2021 年には世界で 5,255 万人 (95% CI, 4,349-6374 万人) が心房細動または心房粗動 (atrial flutter) に罹患しており、 最も有病率が高いのは北米、 オーストラレーシア (Australasia, オーストラリア、ニュージーランド北島·南島、ニューギニアおよびその近海の諸島を含む地域区分)、 西ヨーロッパの高所得国であると推定されている。世界的な有病率は、女性(2,500 万人)に対して男性(2,800 万人)で高かった。高齢は、心房細動の高い発生率と関連している(年齢が 5 歳上昇するごとのハザード比 [hazard ratio: HR], 1.66 [95% CI, 1.59-1.74])。

高齢、 喫煙習慣、 高身長、 高体重、 高血圧 (収縮期、 拡張期、 高血圧治療)、 糖尿病の有無、 心疾患 (心不全または心筋梗塞) の有無は、 心房細動の高率と関連している 。臨床的リスク (CHARGE-AF スコア) と多遺伝子リスク (48.2% [95% CI, 41.3%-55.1%]) の両方の上位 3 分の 1 に属する人と比較して、下位 3 分の 1 に属する人は、心房細動の生涯リスク(22.3% [95% CI, 15.4%-29.1%]) が半分以下であった。

心房細動のリスク上昇に関連するその他の因子としては、 中等度以上の飲酒 (標準的なアルコール飲料を 1 日 1 杯以上の習慣的飲酒、 または大量飲酒 [binge drinking] )と定義)、 睡眠時無呼吸症候群、 甲状腺機能亢進症が挙げられる 。しかし、男性の持久的アスリートではリスクが高い。危険因子と心房細動に関するデータのほとんどは観察的なものであるが、メンデルランダム化研究では、脂肪率、喫煙、飲酒、高血圧を含む複数の危険因子間の因果関係が支持されている。

病態生理学
心房細動を引き起こす異所性心房性期外収縮 (ectopic atrial premature beats) は、一般的に肺静脈と心房の接合部から数 cm 肺静脈に伸びる心筋細胞(sleeves, スリーブ)から発生する。心房性頻拍が心房細動を引き起こすこともあるが、心房細動の持続は、電気的リエントリーや心房細動の持続を促進する疾患特異的な心房の電気生理学的、構造的、病理組織学的変化によることが多い。例えば、高血圧はレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を活性化し、心房の線維化と肥大を誘導し、心房の伝導を遅らせてリエントリーや心房細動を促進する。これらの影響により、心房性期外収縮が増加し、不整脈活動を持続させる病理学的変化が起こる。高血圧、肥満、心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症) などの心房細動に関連する疾患は、心房の病態や心房細動と関連している。

心房細動のスクリーニングと検出
心房細動が発見される確率は、心電図(electrocardiogram: ECG)のモニタリング期間が長くなるほど高くなる。無症候性心房細動を検出するために、一般集団で心房細動のスクリーニングを行うことの利点は、現在のところ不明である。植え込み型ループレコーダ(implantable loop recorder: ILR)は心臓のリズムを約 4 年間継続的にモニターできる皮下デバイスである。LOOP 試験(Implantable Loop Recorder Detection of Atrial Fibrillation to Prevent Stroke)では、4 つの合併症(高血圧、糖尿病、脳卒中の既往、心不全)のうち 1 つ以上を有する 70〜90 歳の患者 6004 例が、ILR 群と通常治療に無作為に割り付けられた。中央値 64.5 ヵ月の追跡期間中に心房細動と診断されたのは、ILR 群の 31.8%であったのに対し、対照群では 12.2%であった。心房細動と診断された患者では経口抗凝固薬 (oral anticoagulant: OAC) が開始されたにもかかわらず、ILR 群に無作為に割り付けられた患者では、主要転帰である脳卒中または全身性動脈塞栓症のリスクに有意差(HR, 0.80[95%CI, 0.61-1.05])はみられなかった(100 人年当たり 0.88 イベント[95%CI, 0.68-1.12] v.s. 対照群、1.09 イベント[95%CI, 0.96-1.24])。

多くの人が心房細動を評価するウェアラブルデバイスを使用している。Apple Heart Study では、スマートウォッチによる心房細動の通知を受けた人のうち、その後 ECG パッチモニタリングで心房細動と診断されたのは 34%に過ぎなかった。

心房細動の存在が知られていない脳梗塞や全身性血栓塞栓症の患者において、 脳卒中二次予防のための OAC が有効な患者を同定するために最大限の感度を求めるのであれば、 ILR は心房細動の検出確率を高めるための妥当な診断手段である。脳梗塞患者を対象とした無作為化臨床試験において、心房細動の検出率は、通常の治療を受けている患者や 30 日モニターを装着している患者では、1 年後の時点で 1.8〜4.7%、3 年後の時点で 3%であったのに対し、ILR を行った患者ではでは 1 年後の時点で 12〜15%、3年後の時点で 30%であった。

敗血症や非心臓手術などの非心臓疾患で入院中に診断された心房細動は、入院後の心房細動再発、脳卒中、死亡率と関連している。重症敗血症患者において、 新たに発症した心房細動は、 人口統計、 併存疾患、 敗血症関連因子を調整した上で、 院内脳梗塞発症のリスクを 2.7 倍 (2.6% v.s. 0.6%) 高め、 院内死亡のリスクを 7% (56% v.s. 39%) 高めた。

2023 年の ACC/AHA/ACCP/HRS ガイドラインでは、 非心臓疾患で入院中に心房細動と診断された患者に対して、 心房細動再発のリスクが高いことをカウンセリングすることを推奨している。長期的な OAC 投与は、 退院時に開始すべきか、 あるいはその後の経過観察中に心房細動が再発するまで延期すべきかは、 まだ明らかではない。

心房細動と診断されていない患者で、 ILR、 ペースメーカー、 植え込み型除細動器などの心臓植え込み型電子機器 を装着している場合、 上室性頻脈のエピソード ([atrial high-rate episode: AHRE; 心房細動、 心房粗動、 心房頻拍を含む、 心房拍動数が毎分 190 回を超える無症候性心房頻脈性不整脈と定義される) の検出率は、1~2.5 年の追跡調査で約 24.5~34.4%である。このような患者は、基礎疾患として心筋症や伝導疾患を有している場合もあれば、有していない場合もある。意義のある AHRE の持続時間の閾値は、20 秒以上から 24 時間までと研究によって異なるが、6 分以上の AHRE は心房細動の発症と関連している。15,353 人の参加者を対象としたメタアナリシスでは、AHRE は脳卒中のリスクを 2.4 倍(100 人年当たり 1.89 人(抗凝固療法あり)v.s. 0.93 人(抗凝固療法なし))増加させ、AHRE の持続時間とともに増加すると報告している。6,548 人の患者を対象とした 2 つのランダム化臨床試験のメタアナリシスでは、AHRE が 6 分以上持続した患者において、OAC(v.s. 抗凝固療法なしまたは低用量アスピリン)が脳卒中発症率の低下と関連するかどうかが検討された。このメタアナリシスでは、DOAC は脳卒中の相対リスク(relative risk: RR)を 32%(2.0% v.s. 3.0%)低下させたが、大出血の RR を 39%(4.8% v.s. 3.2%)増加させた。対照群(DOAC を投与していない AHRE 患者)における脳梗塞発症率は患者年あたり 1%であり、AHRE による脳卒中リスクは有意であったが、心房細動と診断された(12 誘導心電図で検出された)患者における文献推定の患者年あたり 2%より低かった。

CHA2DS2-VAScスコア 2 以上の患者において、24 時間以上持続する AHRE に対して OAC を開始することは妥当である。CHA2DS2-VASc スコア 3 以上の患者では、5 分以上持続する AHRE に対してOAC を開始することは妥当かもしれないが、出血リスクを慎重に考慮すべきである。

臨床症状
心房細動の典型的な症状には、呼吸困難、胸痛、前失神、労作時不耐性、疲労を伴う動悸がある。無症候性心房細動は、 日常診療の際や、 装着型モニターや心臓植込み型電子機器による問診で発見されることがある。無症候の時点で心房細動が見つかることは、 男性 (男性 10%、 女性 3%) と高齢者 (平均年齢 74 歳、 有症状者 62 歳) に多い。糖尿病は、無症候性心房細動患者に多くみられる。無症候性心房細動は、 虚血性脳卒中、 全身性血栓塞栓症、 心筋梗塞、 心不全などの心房細動に関連する臨床転帰の評価中に発見されることもある。

心房細動と心不全は、 互いの素因となる疾患であり、心房細動発症時に併存していることが多い (図 1)。心房細動と駆出率が低下した心不全 (heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF) を診断された患者で、一般的な病因 (例えば、虚血) が除外された場合、頻脈を介した心筋症を考慮すべきである。

心房細動の診断は、12 誘導心電図で P 波を伴わない不規則な心房活動(細動波)が確認されるか、リズムストリップで 30 秒以上持続することで確定される。心房細動は、発作性心房細動 (間欠的な心房細動が 7 日以下持続)、持続性心房細動 (持続的な心房細動が 7 日以上持続し、かつ/または除細動が必要)、または長期持続性心房細動 (心房細動が 1 年以上持続) に分類される。心房細動のサブタイプは、最初の臨床症状によって決定され、心房の病態の重症度を反映する。場合によっては、診断時に心房細動のサブタイプが明らかでないこともある。

新たに心房細動と同定された患者の評価には、 心の形態を評価し、心房細動の可能性のある原因 (弁膜症など)や心房細動に伴う転帰(心室機能低下など)を同定するための経胸壁心エコーを行うべきである。血液検査では、血算、一般生化、甲状腺機能などの基本的な項目を確認することが適切である。新たに心房細動と診断された患者では、 狭心症や駆出率の低下などの特別な適応がない限り、 心臓負荷試験などの追加検査をルーチンに行うべきではない。

血行動態が不安定であったり、 症状の強い心房細動、 心不全を合併している心房細動、 高心拍出の心房細動の場合は、 救急外来への紹介が必要である。心房細動に起因する血行動態の不安定性に対しては、 緊急除細動を考慮すべきである。特に、抗凝固療法を受けていない患者や、心房細動の持続時間が 48 時間を超えており、左房血栓を除外するための経食道心エコーや心臓 CT による画像診断がすぐに実行できない場合には、血栓塞栓症のリスクを慎重に考慮しなければならない。

分類スキーム 心房細動の病期
心房細動はもはや弁膜症性心房細動と非弁膜症性心房細動に分類されることはない。

4 段階の心房細動の病期分類が提案されている(図 1)。肥満や心房細動の家族歴のような修正可能な危険因子と修正不可能な危険因子を持つ人は、心房細動の危険性があるステージ 1 に分類される。心房細動の前段階であるステージ 2 は、左房拡大、頻回の心房頻拍、非持続性心房頻拍などの心房病変があるが、心房細動と診断されていないものと定義される。心房粗動、心不全、冠動脈疾患、心臓弁膜症、肥大型心筋症、 神経筋疾患、甲状腺機能亢進症など、心房細動の発生率が高い疾患を有する患者は、心房細動予備軍と考えられる。しかし、ランダム化臨床試験では、心房細動の監視が有害な転帰を予防することは証明されていない。ステージ 3 の心房細動は、臨床的に明らかな心房細動であり、以下の 4 つのサブタイプに分類される。

3a:発作性心房細動 (paroxymal AF)(7 日以上持続する心房細動エピソード)

3b:持続性心房細動 (persistent AF)(7 日以上持続する心房細動エピソード)

3c:長期持続性心房細動 (long-standing persistent AF)(1 年以上持続する心房細動エピソード)

3d:カテーテルアブレーションによる治療が奏功した心房細動

カテーテルアブレーション後、心房細動エピソードは症状が軽くなり、頻度も減り、持続時間も短くなる。ステージ 4 の心房細動は、年齢や心房細動の持続期間などの患者および臨床的要因に基づいて、リズムコントロールを行わないことが決定された永続的な心房細動である。

予後
9,686,513 人の患者を対象としたメタアナリシスでは、心房細動と診断された患者がいない場合と比較して、心房細動は、参加者 1,000 人·年あたり、脳卒中で約 3.6、心不全で 11.1、虚血性心疾患で 1.4、慢性腎臓病で 6.6、死亡率で 3.8 の絶対リスク増加と関連していた(表 1 には RR を含む)。

表 1. 心房細動にともなう様々な有害事象の相対リスク、5年リスク、生涯リスクと制限平均損失時間
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2828110?guestAccessKey=220eef25-751e-4963-9b5c-7fe1ff9ce1d4&utm_source=twitter&utm_medium=social_jama&utm_term=15922817354&utm_campaign=article_alert&linkId=728739320#jrv240031t1

メタアナリシスでは、心房細動はアルツハイマー病(調整済みOR[aOR]、1.4)および血管性認知症(aOR、1.7)のリスク増加と関連し、脳卒中を発症していない患者(n = 324,494)では、認知障害または認知症(調整済み HR[adjusted HR], 1.4, 絶対リスクは不明)と関連することが報告されている。DOAC とワルファリンを比較評価した無作為化臨床試験では、アピキサバン(HR, 0.79)を投与された患者の年間脳卒中または全身性塞栓症発生率は、ワルファリンの 1.6%に対し、1.3%であった。

3,491 人の心房細動成人患者を対象とした地域ベースのコホートでは、追跡調査 100 人年あたりの発症率は、HFrEF で 2.13(95%信頼区間、1.88-2.40)、駆出率が維持された心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)で3.32(95%信頼区間、3.01-3.66)であった。心房細動は心不全発症率の増加と関連しているが(表 1)、無作為化臨床試験では、心房細動患者における心不全を予防する治療法は確立されていない。


4種類のOAC(アピキサバン、ダビガトラン [dabigatran]、リバーロキサバン [ribaroxaban]、ワルファリン)のうち1種類を服用している心房細動患者9769人を対象とした研究では、DOACの使用は急性腎障害の発生率が低いことと関連していた(HR、0.68[95%CI、0.58-0.81])9。

治療
心房細動のリスクがある患者(ステージ 1 または 2)または心房細動がある患者(ステージ 3 または 4)に対する推奨される治療は、減量、運動、目標血圧のコントロールなどの生活習慣と危険因子の改善である。しかし、高血圧治療を除き、これらの生活習慣や危険因子が心房細動を予防するというランダム化臨床試験のエビデンスは存在しない。また、抗不整脈薬(antiarrhythmic drug)やアブレーションによる治療を受けている心房細動患者に対しても、生活習慣や危険因子の改善が推奨されている(図 2)。

図 2. 心房細動の治療指針
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2828110?guestAccessKey=220eef25-751e-4963-9b5c-7fe1ff9ce1d4&utm_source=twitter&utm_medium=social_jama&utm_term=15922817354&utm_campaign=article_alert&linkId=728739320#jrv240031f2

一次予防 危険因子
2023 年 ACC/AHA/ACCP/HRS ガイドラインでは、 ステージ 1 および 2 の心房細動患者に対して、 肥満、 糖尿病、 喫煙、 高血圧の治療、 運動不足や不健康な飲酒への対処を含む、 生活習慣と危険因子の改善を推奨している。ランダム化臨床試験データの二次解析では、集中的な血圧コントロール(すなわち、収縮期血圧を 140 mmHg 未満と比較して 120 mmHg 未満に低下させること)は、心房細動リスクの低下と関連していた(1000 人年あたり6.21 v.s. 8.33イベント;HR, 0.74 [95% CI, 0.56-0.98])。 糖尿病、高血圧、腎臓病の患者 63,604 人を対象とした 20 件のランダム化臨床試験のメタアナリシスでは、ナトリウム-グルコース共輸送体-2 阻害薬 (sodium-glucose cotransporter-2 inhibitor) が心房細動リスクの低下と関連していることが報告されている(RR, 0.82[95%CI, 0.72-0.93];絶対リスクは不明)。

二次予防
2023 年 ACC/AHA/ACCP/HRS ガイドラインでは、 治療成績の改善のために、 減量、 運動、 禁煙、 飲酒の最小化または中止、 最適な血圧コントロール、 包括的ケアプログラム (表 2) をクラス 1 で推奨することが強調されている。

表 2. ACC/AHA/ACCP/HRS ガイドラインの心房細動二次予防のための生活習慣と危険因子の修正によって得られるメリット

脳卒中と認知疾患の予防
脳梗塞または血栓塞栓イベントの推定リスクが年間 2%以上の患者(例えば、男性ではCHA2DS2-VASc が 2 以上、女性では 3 以上)では、OAC の有益性は大出血のリスクを上回る。CHA2DS2-VASc スコアは、うっ血性心不全で 1 点、高血圧で 1 点、65 歳以上で 1 点、75 歳以上で 2 点、脳卒中または一過性脳虚血発作の既往で 2 点、血管疾患で 1 点、女性で 1 点である。

機械弁のない患者や中等度から重度の僧帽弁狭窄症では、ワルファリンよりも出血が少ない DOAC が望ましい。アブレーション後、 OAC は少なくとも 3 ヶ月間は継続すべきである。現在進行中の臨床研究では、 アブレーションを受け、 心房細動が再発しなかった患者における OAC 中止の安全性を評価している。

DOAC 間で有効性と安全性を直接比較した決定的なランダム化臨床試験はない。米国老年医学会は、他の DOAC と比較して出血率が高いため、1 日 1 回投与で服薬アドヒアランスが改善する場合を除き、65 歳以上の成人心房細動患者にはリバーロキサバンの使用を避けるべきであると推奨している。アピキサバンとリバーロキサバンは、限られた薬物動態データに基づき、透析を受けている患者に承認されている。

OAC の対象となる心房細動患者で、抗血小板薬による治療を必要とする臨床症状を有していない場合、OAC の代替となるアスピリン (aspirin) 単独またはアスピリンとクロピドグレル (clopidogiel) の併用は、出血リスクは同等であるにもかかわらず、心房細動における心塞栓性脳卒中の予防効果が OAC より低いため、有害であると考えられている。プラセボと比較して、アスピリンは脳卒中リスクを低下させないが、大出血リスクの上昇と関連している。OAC に抗血小板薬を追加することは出血リスクを増加させるため、急性冠症候群または経皮的冠動脈インターベンション (percutaneous coronary intervation: PCI) 後にのみ推奨される。PCI 後の抗血栓レジメンを評価した無作為臨床試験に基づくと、PCI を受ける心房細動患者には、ワルファリンの代わりに DOAC を推奨すべきである。出血リスクを軽減するために、PCI 後早期(1~4 週間)にアスピリンを中止し、抗血栓療法 3 剤併用療法(OAC、アスピリン、P2Y12阻害薬)ではなく OAC + P2Y12 阻害薬(チカグレロル [ticagrelor] やプラスグレル [prasugrel] よりもクロピドグレルが望ましい)を継続すべきである。

現在のガイドラインでは、1 年以上前に冠動脈血行再建術を受けた心房細動と慢性冠動脈疾患の患者では、ステント血栓症の既往がない限り、OAC 単独療法を推奨している。心房細動患者 2,236 例を対象とした AFIRE(Atrial Fibrillation and Ischemic Events With Rivaroxaban in Patients With Stable Coronary Artery Disease)試験では、大出血の予防において、リバーロキサバン単剤療法は、リバーロキサバン+アスピリンまたは P2Y12 阻害薬よりも優れており(HR, 0.59[95%CI, 0.39-0.89];P = 0.01)、主要心血管イベントについては非劣性であった(患者年あたり 4.14% v.s. 5.75%;HR, 0.72[95%CI, 0.55-0.95];P < 0.001)。

HAS-BLED や HEMORR2HAGES などの出血リスクスコアは、心房細動で出血リスクの高い患者における OAC 投与開始の意思決定に役立つが、これらのスコアには脳卒中リスクの高い因子も含まれているため限界がある。出血リスクスコアは、出血の修正可能な危険因子や、より頻回の経過観察の必要性を特定するのに役立つかもしれない。

輸血を必要とする出血を繰り返す患者や脳出血患者には、OAC は禁忌である。このような患者では、自己拡張型の傘のような器具を用いた経皮的左心耳閉塞術(percutaneous left atrial appendage occulusion: pLAAO)が脳卒中予防のための合理的な選択肢である。OAC 不適格患者における pLAAO の有益性に関するランダム化臨床試験からの直接的なエビデンスは存在しない。pLAAO は、ワルファリン不適格患者における pLAAO とワルファリンを比較したランダム化臨床試験に基づいて、米国食品医薬品局(the US Food and Drug Administration: FDA)から承認された。長期の OAC が禁忌である患者においては、pLAAO の使用は妥当である。その場合は、少なくとも 45 日間の OAC 投与後、6 ヵ月間の抗血小板薬 2 剤併用療法 (dual antiplatelet therapy) と生涯にわたるアスピリン(325 mg)が必要である。5 mm を超えるデバイス周囲のリークやデバイス血栓症を認める場合では pLAAO 後に長期の OAC 投与が必要となる。

心拍数とリズムのコントロール
心房細動の管理についての主な戦略としては、房室結節の不応期を延長する薬剤を用いて心室拍出量を低下させるレートコントロールと、洞調律の回復または維持を目的とした治療介入を行うリズムコントロールの 2 つがある。心拍コントロールかリズムコントロールかの選択は、OAC の使用可否や使用期間には影響しない。リズムコントロールには抗不整脈薬、除細動、アブレーションがある。Atrial Fibrillation Follow-up Investigation of Rhythm Management (AFFIRM) および Rate Control vs Electrical Cardioversion for Atrial Fibrillation (RACE) 試験では、心房細動の治療戦略が比較され、死亡率や脳卒中などの臨床転帰に有意差は認められなかった。

最近の研究では、発作性・持続性心房細動患者において、心房細動診断後 1 年以内にリズムコントロールを開始すること(早期リズムコントロール)が、心房細動、脳卒中リスク、死亡率を減少させるという点で、心拍コントロールよりも有益であることが報告されている。無症候性心房細動患者においても、早期のリズムコントロールの有用性が認められている。

抗不整脈薬やカテーテルアブレーションによるリズムコントロールの効果が期待できない患者や、リズムコントロールのリスクが高いと考えられる患者にとっては、リズム治療を試みないレートコントロールが適切な戦略である。例えば、アミロイド心筋症や肺性心疾患の患者は、アブレーション後に心房細動を再発する可能性が高いので、心拍コントロールがより適切である。レートコントロールはステージ4(永続的)の心房細動患者にも適している。心拍数のコントロールは、メトプロロール (metoprolol)、エスモロール (esmolol)、アテノロール (atenolol) などの β 遮断薬や、ベラパミル (verapamil)、ジルチアゼム (diltiazem) などの非ヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬 (nondihydropyridine) の単独または併用により達成され、房室結節を介した電気伝導を遅らせる。房室伝導を遅らせる薬剤は、症状をコントロールし、安静時心拍数が 100~110 拍/分未満になるように漸増すべきである。ペースメーカー植え込みによる房室結節アブレーションは、リズムコントロールが有効でない患者や、リズムコントロールの候補でない患者で、症状をコントロールし、生活の質(quality of life: QOL)を改善するのに有用である。

薬理学的リズムコントロール
抗不整脈薬は、心房細動の発作時に洞調律に戻す目的で屯用(pill-in-the-pocket)されたり、心房細動の抑制目的で毎日服用されたりする。フレカイニド(flecainide) またはプロパフェノン (propafenone) と房室結節治療薬 (AV nodal agent) の併用による pill-in-the-pocket 療法は、頻度の低い心房細動エピソードの間欠的治療に有用であるが、急性心房細動発作の洞調律復帰に対する有効性と安全性 (催不整脈作用) は、まずモニターされた病院環境で検証されなければならない。投与後少なくとも8時間は患者を観察すべきである。

早期のレートコントロールとリズムコントロールを比較したランダム化臨床試験では、房室結節治療薬による治療と比較して、抗不整脈薬の連日使用による死亡率や脳卒中リスクの改善は証明されなかった。しかし、2020 Early Treatment of Atrial Fibrillation for Stroke Prevention Trial (EAST-AFNET 4) では、リズムコントロールが早期 (すなわち、心房細動診断後 12 ヵ月以内) に開始された場合、毎日の抗不整脈薬服用またはカテーテルアブレーションによるリズムコントロールが、レートコントロール治療よりも臨床的に有益であることが報告された。ほとんどの患者(87%)は初期にフレカイニド(35.9%)、アミオダロン (amiodarone)(19.6%)、ドロネダロン (dronedarone)(16.7%)など抗不整脈薬による治療を受けたが、2 年後までに 19.4%がアブレーションを受けた。この試験は、心血管系死亡、脳卒中、心不全または急性冠症候群による入院の主要複合アウトカムがリズムコントロールとレートコントロールで 21%減少した(100 人年当たり 3.9 人 v.s. 5.0 人)ため、早期に中止された。EAST-AFNET 4 試験では、リズムコントロールの有益性は無症候性心房細動の患者にも及ぶことが報告された。抗不整脈薬は心房心筋細胞選択的ではなく、心室心筋の電気生理学的特性を変化させる可能性がある。したがって、心筋梗塞の既往やHFrEF(40%)などの合併症の有無が抗不整脈薬の選択に影響する(図 2)。

カテーテルアブレーション
肺静脈から発生する局所的な異所性インパルスがしばしば心房細動を誘発し、これらの発生源をアブレーションすることによって心房細動が有意に減少するという発見が、洞調律を維持するのに有効なカテーテルアブレーション法の開発につながった(表 1)。アブレーションは心房-肺静脈接合部の心房組織を破壊し、肺静脈からの異所性インパルスが心房に到達するのを防ぐ(すなわち、肺静脈隔離)。A4 study では、発作性心房細動患者 112 人を抗不整脈薬またはラジオ波アブレーションによる治療に無作為に割り付けた。主要エンドポイントは 3 分以上の心房細動または心房細動症状の報告であった。1 年後の追跡では、アブレーションを受けた患者の 89%が心房細動フリーであったのに対し、抗不整脈薬治療を受けた患者では 23%であった(P <0.0001)。アブレーションにより、症状、QOL、運動能力の有意な改善も認められた。

EARLY-AF(Early Aggressive Invasive Intervention for Atrial Fibrillation)試験は、症候性で未治療の発作性心房細動患者 303 例を凍結融解壊死療法(cryoablation)群と抗不整脈薬群に無作為に割り付け、ILR を用いて心房細動の再発をモニターした。主要エンドポイントは 30 秒以上の心房細動(または心房頻拍性不整脈)の初回再発で、副次的エンドポイントは心房細動の全負担 (overall burden of AF) であった。OAC の投与は脳卒中のリスク(CHA2DS2-VASc≧1)に基づいて、群分けに関係なく決定された。1 年後の追跡では、心房細動の再発はアブレーションを受けた群(42.9%)では抗不整脈薬を受けた群(67.8%)と比較して有意に少なかった(HR, 0.48 [95%CI, 0.35-0.66])。心房細動の平均持続時間はアブレーション(0.6%)と抗不整脈薬(3.9%)で有意に低かった。心房細動 (主に発作性心房細動) の患者 693 人を登録した 5 つの臨床試験のメタアナリシスでは、1 年後の心房細動フリーの割合は、ラジオ波アブレーション (77%) v.s. 抗不整脈薬 (29%) で 2 倍以上であったと報告されている。構造的心疾患の有病率が低い (例えば、左室機能が正常、左房拡大が正常から軽度、冠動脈疾患や糖尿病の有病率が低い) 持続性心房細動 (長期持続性を含む) 患者におけるアブレーションは、発作性心房細動の患者と同等の結果が得られている。

CABANA(Catheter Ablation Versus Antiarrhythmic Drugs for Atrial Fibrillation)試験はアブレーションの臨床転帰に対する有効性を検証したものである。この試験には発作性または持続性心房細動で CHA2DS2-VASc スコアの中央値が 3 であり、過去に 2 種類以上の抗不整脈薬による治療歴のある患者 2,204 例が登録された。治療群にかかわらず全例が脳卒中リスク(CHA2DS2-VASc ≧2)に基づいた抗凝固療法を受けた。CABANA の報告によると、アブレーションは主要複合エンドポイントである死亡、障害を伴う脳卒中、重篤な出血、心停止を有意に減少させなかった。この試験の統計学的検出力は、予想を下回るイベント発生率、高いクロスオーバー率、追跡不能によって制限された。にもかかわらず、CABANA ではアブレーションにより QOL が有意に改善したことが報告された。CABANA の事前に規定したサブグループ解析では、アブレーションを受けた患者(intention-to-treat 解析)は内科的治療と比較して、65 歳未満では死亡率が低かったが、75 歳以上ではそうではなかった。

心不全におけるアブレーション
心不全と心房細動の併存は、心不全または心房細動のみの患者に比べて死亡率の上昇と関連している。HFrEF の心房細動患者における抗不整脈薬の有用性は限られているが、複数の無作為化臨床試験とメタアナリシスにより、アブレーションによるリズムコントロールが内科的治療よりも優れていることが示されている (表 3)。

表 3. 心房細動に対するカテーテルアブレーションに関する無作為化比較試験
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2828110?guestAccessKey=220eef25-751e-4963-9b5c-7fe1ff9ce1d4&utm_source=twitter&utm_medium=social_jama&utm_term=15922817354&utm_campaign=article_alert&linkId=728739320#jrv240031t3

追跡期間中央値 38 ヵ月後、アブレーションは死亡または心不全による入院の複合エンドポイントの有意な減少と関連していた(アブレーション 28.5% v.s. 薬物療法 44.6%;HR, 0.62[95%CI、0.43-0.87])。心不全と心房細動を有する 977 人の患者を対象とした 3 件の試験のメタアナリシスでは、アブレーションは内科的治療と比較して、死亡率(RR, 0.61 [95% CI, 0.44-0.84])と心房細動による入院(RR, 0.60 [95% CI, 0.49-0.74]、絶対率は不明)を減少させることが報告された。

心房細動と心不全を有する患者におけるアブレーションの効果を検討した無作為化臨床試験はほとんどない。CABANA は、参加者の 80%近くが駆出率 50%以上の心不全患者である唯一の大規模無作為化臨床試験(n = 2,204)である。NYHA クラスが 2 以上の患者を対象とした事前に規定したサブグループ解析では、アブレーションは、全死因死亡率の 43%減少(アブレーション 6.1% v.s. 薬物療法 9.3%)、心房細動再発の 44%減少(アブレーション 56% v.s. 薬物療法 72%)、および 5 年後までの QOL の持続的改善(調整平均差5ポイント)と関連していた。

心房細動の管理と転帰における不公平
心房細動の管理および転帰は、 性別、 人種、 民族、 健康に影響を与える非医学的要因として定義される健康の社会的決定要因 (social determinants of health: SDOH) による不公平と関連している。女性、 黒人、 ヒスパニック系の心房細動患者、 低所得や低学歴の患者、 保険が不十分または未加入の患者、 農村部や物質的困窮が特徴的な地域に住む患者は、 ガイドラインに沿った治療を受ける可能性が低く、 転帰が悪化する可能性が高い。カナダのオンタリオ州で行われた研究では、心房細動と診断されてから 1 年後、物質的困窮度が最も低い地域の患者は最も高い地域に住む患者と比較して、循環器内科を受診する可能性が低く(五分位数 5 の 27.9% v.s. 五分位数 1 の 34%; aHR, 0.84)、OAC を含むガイドラインに基づいた治療を受ける可能性が低いことが報告されている (五分位数 5 の 53. 9%;五分位群 1 では 56.8%;aHR, 0.97)。また、アブレーションを受ける可能性が低く(五分位群 5 では 0.1%;五分位群 1 では 0.3%;aHR, 0.45)、脳卒中(五分位群 5 では 1.8%;五分位群 1 では 1.4%;aHR, 1.15)の増加や死亡率の上昇(五分位群 5 では 17.9%;五分位群 1 では 14.1%;aHR, 1.16)など、転帰が不良だった。

米国メディケア&メディケイドサービスセンター(Centers for Medicare & Medicaid Services)と合同委員会(Joint Commission)は、健康格差の是正を目的として、SDOH 報告要件を制定している。

限界
このレビューには限界がある。第一に、関連する研究が含まれていない可能性がある。第二に、多くの臨床試験に黒人やヒスパニックの参加者がかなりの割合で含まれておらず、SDOH によるばらつきが検討されていないため、エビデンスの一般化可能性は限られている。第三に、含まれるエビデンスの質は体系的に検討されていない。

結論
心房細動は、 脳卒中、 心不全、 死亡率の増加と関連している。ガイドラインに基づいた心房細動管理には、心房細動の発症、再発、合併症を予防するための生活習慣や危険因子の修正が含まれ、脳卒中や血栓塞栓イベントの推定リスクが年間 2%以上の患者には OAC が推奨される。症候性発作性心房細動や HFrEF を有する一部の心房細動患者には、抗不整脈薬やカテーテルアブレーションを用いた早期のリズムコントロールが推奨される。

元論文
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2828110?guestAccessKey=220eef25-751e-4963-9b5c-7fe1ff9ce1d4&utm_source=twitter&utm_medium=social_jama&utm_term=15922817354&utm_campaign=article_alert&linkId=728739320
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