アンジオテンシン変換酵素阻害薬による重度の高血圧:腎動脈狭窄の珍しい特徴
Hypertension 2009; 54: e17-e18
アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme: ACE)阻害薬は高血圧、心不全、腎疾患の治療に頻繁に使用されるが、腎動脈狭窄(renal artery stenosis)患者では急性腎不全を引き起こす可能性がある。我々は、進行した慢性腎臓病(chonic kidney disease: CKD)と RAS を持つ患者における ACE 阻害薬の新しい副作用について報告する。
我々は、CKD と両側腎動脈狭窄を持つ 3 人の患者において、ACE 阻害薬のラミプリル(ramipril)の開始または用量調整中に 4 回の重度の高血圧を観察した (表 1)。
表 1. 患者背景
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/HYPERTENSIONAHA.109.137745?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed#TBL1
いずれの症例においても CKD の原因は、動脈硬化性腎血管疾患だった。また、血行動態的に有意な腎動脈狭窄については、3 患者においてドップラー超音波と腎血管造影で、2 患者においては磁気共鳴血管造影で証明されている。自動振動測定装置(Dinamap Proシリーズ, GE Healthcare)を使用した血圧測定では、ラミプリル投与後に一時的な低血圧または相対的な低血圧を認め、その後に反跳性に重度の高血圧が観察された(図 1)。
図 1. ラミプリル投与後の血圧低下と反跳性の高血圧
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/HYPERTENSIONAHA.109.137745?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed#FIG1
この現象は、患者 1 ではラミプリルを 7.5 mg から 10.0 mg に増量した後に、患者 2 では 10.0 mg のラミプリル追加時に、患者 3 では 5.0 mg のラミプリル追加時に発生した。アンジオテンシン受容体拮抗薬を服用していたのは患者 2 のみだった。各症例でラミプリルを中止すると、血圧が低下し、降圧療法の必要性が減少した(図 2)。
図 2. 1 日の平均血圧はラミプリル開始後に悪化し、中止後に改善した。
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患者 1 では、ACE 阻害薬を再投与した際に重度の高血圧が再発した。このエピソードでは、血圧 240/120 mmHg で高血圧性脳症と全身性発作を併発した。ラミプリル中止 2 日後、患者の収縮期血圧は単剤の降圧薬で 120-130 mmHg の範囲だった。
高血圧悪化の他の原因は除外された。維持透析中の 2 人の患者は、臨床検査で体液量が正常と考えられた。これらの患者の透析記録を確認しても、追加の限外濾過の指示はなく、体液過剰ではなかったと考えられる。3 人目の患者は毎日体重を測定し、ラミプリル開始後数日間で高血圧が悪化したにもかかわらず、体重は 1.2 kg 減少した。いずれの患者も、対象期間中に輸液は行われていない。ラミプリルの開始または用量調整中、他の降圧薬や組換えエリスロポエチンの用量は一定だった。
我々は、両側腎動脈狭窄と CKDがある場合に ACE 阻害薬療法に続発する重度の高血圧について述べる。メカニズムは不明だが、輸入細動脈が慢性的に閉塞している状況下で、ACE 阻害薬を投与すると糸球体内圧がさらに低下し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性化をもたらす。その結果、反跳性の高レニン血症と高血圧を引き起こしたと我々は推測している。この仮説は、観察されたエピソード中の血漿レニン濃度の測定によって裏付けられる可能性がある。興味深いことに、患者 3 では、ACE 阻害薬投与後に高血圧発作と同時に急性腎不全を引き起こした。これらは、糸球体内圧の低下という同じプロセスによって媒介されると考えられ、ACE 阻害薬の副作用である可能性がある。臨床医は、腎動脈狭窄が知られているまたは疑われる患者を治療する際にこのことを認識しておく必要がある。
Edmond M. Cronin
Sean F. Leavey
John Francis Walker
腎臓内科
ウォーターフォード地域病院
ウォーターフォード、アイルランド