内分泌代謝内科 備忘録

成人の喘息

成人の喘息
N Engl J Med 2023; 389: 1023-1031

喘息 (asthma) の既往歴があり、毎日低用量の吸入グルココルチコイド (inhaled glucocorticoid) と必要に応じて短時間作用型 β2-アゴニスト(short-acting β2-agonist: SABA)による治療を受けている 47 歳の女性が、経過観察のために受診した。週に 4 日、屋外で娘のサッカーの試合を観戦しているときに息切れがするという。過去 1 年間に喘息の増悪があり、春と秋にグルココルチコイドの内服治療を受けている。この患者をどのように評価し、ケアを管理すべきか?

臨床的問題
米国における成人の喘息有病率は約 7.7%であり、国内および世界で最も一般的な慢性非感染性疾患 (noncommunicable disease) の一つである。米国の成人のうち、喘息は女性、黒人またはプエルトリコ人、低世帯所得者に偏って発症する。米国における喘息関連死亡率全体は、2001 年の 100 万人当たり 15.1 人から 2017 年には 100 万人当たり 9.9人に減少しているが、米国における喘息による死亡の発生率は、白人よりも黒人やプエルトリコ人の方が一貫して高いままである。さらに、重症の喘息は喘息患者全体の 5-10%が罹患しているものの、喘息関連費用の 50%以上を占めている。

臨床上のポイント
·喘息ガイドラインでは、喘息の確定診断は、喘鳴、咳嗽、胸部圧迫感、息切れなどの特徴的な呼吸器症状の存在と、スパイロメトリーでの呼気気流閉塞の変動に基づくべきであるとされている。

·喘息管理の 3 つの主な目標は、症状のコントロール、増悪リスクの軽減、薬剤の副作用の最小化である。

·毎回の診察では、吸入方法、服薬アドヒアランス、併存疾患、環境誘因への継続的曝露、喘息の正しい診断の確認を行う。

·軽症喘息患者では、吸入グルココルチコイド-ホルモテロール (inhaled glucocorticoid-formoterol) の併用療法を必要に応じて行うのが望ましい治療法であり、別の選択肢としては、吸入グルココルチコイド-アルブテロール (inhaled glucocorticoid-albuterol) の併用療法を必要に応じて行うか、低用量維持吸入グルココルチコイドと短時間作用型 β2-アゴニスト緩和薬を必要に応じて併用する方法がある。

·中等度から重度の喘息に対しては、吸入グルココルチコイド-ホルモテロールの維持療法 (maintenance therapy) と症状緩和療法 (reliever therapy) の併用療法が、吸入グルココルチコイドと長時間作用性 β2-アゴニストの維持療法と必要に応じて短時間作用性 β2-アゴニストの症状緩和療法を併用する治療法と比較して望ましい。

全米喘息教育・予防プログラム専門家委員会第 3 次報告書では、喘息を「変動性かつ反復性の症状、気流閉塞 (airflow obstruction)、気管支過敏症 (bronchial hyperresponsiveness)、および基礎にある炎症によって特徴づけられる複雑な疾患」と定義し、「喘息のこれらの特徴の相互作用が、喘息の臨床症状および重症度、ならびに治療に対する反応性を決定する」と指摘している。治療法は、スパイロメトリー (spirometry) で変化する気流閉塞の所見を含む喘息の確定診断に基づいて決定されるべきである。

喘息の典型的な症状は、他の呼吸器疾患や非呼吸器疾患の症状と重なる。肺機能が正常で胸部 X 線写真が正常である慢性咳嗽では、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎 (allergic and nonallergic rhinitis)、鼻副鼻腔炎 (rhinosinusitis)、鼻ポリープ症 (nasal polyposis)、胃食道逆流症 (gastroesophageal reflux disease)、ウイルス咳嗽後症候群 (postviral tussive syndrome)、慢性気管支炎 (chronic bronchitis)、好酸球性気管支炎 (eosinophilic bronchitis)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬による咳嗽を考慮すべきである。慢性喘鳴を呈する患者の鑑別診断には、声帯機能障害、気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患、気管支原性がん、異物誤嚥などが含まれる。喘息と混同されやすい息切れの原因としては、慢性閉塞性肺疾患、心不全、肺塞栓症、サルコイドーシスなどがある。

アトピー (atopy)(例えば、アトピー性皮膚炎 [atopic dermatitis] やアレルギー性鼻炎)の既往歴や喘息の強い家族歴は、喘息を示唆する。喘息は小児期に発症することが多いが、多くの小児は思春期に症状が寛解し、成人期に再発する。喘息の典型的な誘因としては、運動、寒気、吸入性の屋内外アレルゲンなどがある。新たに発症する成人喘息症例の最大 10-25%は、仕事に関連した曝露(木粉、穀物粉、動物のふけなど)に起因している。この相関関係は、仕事と症状の間に時間的関係があるかどうかを判断するために、職業歴の評価と既知の感作物質との接触を特定することが重要であることを示している。

成人喘息患者の約 7%がアスピリン増悪型呼吸器疾患 (aspirin-exacerbated respiratory disease) にも罹患しており、これはアスピリン (aspirin) やシクロオキシゲナーゼ-1 阻害薬 (ccyclooxygenase 1 inhibitors) 摂取後 30-120 分以内の咳、胸部圧迫感、喘鳴を特徴とする。肥満、不安、うつ病、閉塞性睡眠時無呼吸症候群も喘息の悪化に寄与する可能性がある。

喘息治療の戦略とエビデンス
喘息管理の 3 つの主な目標は、喘息症状のコントロール、喘息増悪リスクの軽減、および薬剤の副作用の最小化(例、グルココルチコイド内服療法の副作用)である、 喘息コントロールの目標は、日中および夜間の咳、胸部圧迫感、喘鳴、息切れの強さと頻度の減少、学校、仕事、運動に関する症状を含む、喘息症状による制限のない通常の日常生活の維持、正常またはほぼ正常な肺機能である。喘息リスクの軽減は、重篤な増悪の予防に重点を置く。重篤な増悪とは、3 日以上の経口グルココルチコイドによる治療、救急外来受診、入院に至る悪化と定義できる。

治療は、患者教育、喘息誘因のコントロール、症状および肺機能のモニタリング、薬物療法に重点が置かれる。このような取り組みには、誘因を特定し緩和するための戦略に関する患者の教育、迅速な症状緩和のために使用する薬剤とコントロールの維持のために使用する薬剤の提供、症状の軽減とリスクの最小化のための毎日のコントローラー療法の遵守の奨励、処方された吸入器ごとの正しい吸入技術の指導などが含まれる。このような患者教育が喘息増悪の発生率を低下させるという研究もある。

個人別に作成した喘息行動計画は、患者が家庭での喘息管理を支援するために使用できるツールである。特定の室内アレルゲン(既往歴および特異的 IgE 血液検査または皮膚検査で陽性であることが確認されている)に曝露した後に症状が出現する患者には、多角的なアレルゲン特異的緩和策が推奨される。症状モニタリングは、5 項目の喘息コントロールテスト(Supplementary Appendix の 図S1、NEJM.org で本論文の全文とともに入手可能)など、喘息コントロールを評価するための、患者が行う簡単で有効な尺度の使用によって支援することができる。

気管支喘息の重症度とコントロール
気管支喘息の重症度とコントロールは、来院前 4 週間に発症した日中および夜間の症状、過去 1 年間に経口グルココルチコイドの使用に至った増悪回数、肺機能などを考慮して分類される。ガイドラインでは、コントロールされていない気管支喘息患者には治療のステップアップを、安定した治療レジメンで気管支喘息が 3 ヵ月間コントロールされた後は治療のステップダウンを推奨している。

喘息治療のガイドライン
図 1 は、Global Initiative for Asthma(GINA)科学委員会による、12 歳以上の喘息管理に関する最新のアルゴリズムを、軽症喘息、中等症喘息、重症喘息のカテゴリー別に示したものである。

図 1. Global Initiative for Asthma (2023) による成人および思春期の個別化された喘息治療
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcp2304871#f1

症状緩和療法
時々喘息症状が出現する患者では、吸入グルココルチコイドと β2-アゴニストの併用による随時治療が現在採用されている治療法である。適切な吸入グルココルチコイドと β2-アゴニストの組み合わせは、入手可能性と価格によって異なる。

吸入グルココルチコイドを含む維持療法を受けている中等症から重症の喘息患者を対象とした多国籍無作為化イベント主導型試験において、アルブテロール (albuterol) 180 μg とブデソニド (budesonide) 160 μg の用量(アルブテロール 90 μg とブデソニド 80 μg を 2 回吸入)を必要に応じて投与されたアルブテロール·ブデソニドの併用療法は、必要に応じてアルブテロール単剤を投与した単独療法と比較して、重症増悪の発生を 27%減少させた。中等度から重度の喘息を有する黒人およびラテンアメリカ系成人を対象とした実際的な非盲検無作為化試験では、SABA 吸入器を使用するたびにグルココルチコイドの吸入を受けるように割り付けられた参加者は、SABA 吸入器のみを使用した参加者と比較して、重度の増悪が 15%減少した。

症状緩和療法として、吸入グルココルチコイドに長時間作用型 β2-アゴニスト(long-acting β2-agonist: LABA)を併用するか SABA を併用するかを比較したデータは限られている。ホルモテロール(formoterol) は速効性 LABA であるため、LABA でありながら症状緩和薬としても機能するという点でユニークであり、吸入グルココルチコイドとの併用では症状緩和療法として有効であることが証明されている。しかし、吸入グルココルチコイド-ホルモテロール併用緩和薬と吸入グルココルチコイド-SABA 併用緩和薬を直接比較したデータは不足している。ブデソニド-ホルモテロールによる維持療法を受けるように割り付けられた患者を対象とした研究では、ブデソニド-ホルモテロールをリリーバー(reliever, 症状緩和薬) として投与するように割り付けられた患者では、SABA テルブタリン単独をリリーバーとして投与するように割り付けられた患者よりも重症喘息増悪の発生が少なかった(相対リスク 0.78, 95%信頼区間 (confidence interval: CI) 0.67-0.91) 。吸入グルココルチコイド-ホルモテロール併用療法は、英国では症状緩和療法として承認されているが、EU や米国では承認されていない。全体として、維持療法および症状緩和療法としての吸入薬併用療法の規制上の承認は混乱しており、国によって大きく異なる。

ブデソニド-ホルモテロールとベクロメタゾン-ホルモテロール (beclomethasone-formoterol) は、すべての重症度の喘息治療における症状緩和薬としての使用を支持する臨床エビデンスがある吸入グルココルチコイド-ホルモテロール製剤である。2 つの異なるクラスの LABA を使用することによる安全性の懸念から、吸入グルココルチコイド-ホルモテロール併用療法は、ホルモテロール以外の LABA を含む吸入グルココルチコイド-LABA 併用療法との同時使用は推奨されていない。したがって、GINA では、使用する LABA の種類(すなわち、速効型ホルモテロールまたは標準型 LABA)によって治療法 (treatment tracks) を分けて記述している。GINA はまた、吸入グルココルチコイド-ホルモテロールが運動誘発喘息に対して SABA よりも予防効果が高いというエビデンスを踏まえ、運動前の予防として吸入グルココルチコイド-ホルモテロールの使用を推奨している。

ステップ 1 と 2: 軽症喘息の治療
ステップ 1 では、軽症喘息に望ましい治療法(GINA トラック 1)は、症状緩和のために必要な低用量吸入グルココルチコイド-ホルモテロール併用療法である。コントローラー治療 (吸入ステロイド単独) はステップ 1 の治療としては推奨されなくなった(表 1)。

表 1. GINA track 1 の治療薬と用量: 抗炎症-症状緩和療法
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcp2304871#t1

代替治療(トラック 2)としては、SABA を服用するたびに吸入グルココルチコイドを使用する方法(ステップ 1)と、毎日の低用量吸入グルココルチコイドと必要に応じて SABA または必要に応じて吸入グルココルチコイド-SABA を併用する方法(ステップ2)がある。吸入グルココルチコイドを必要に応じて β2-アゴニストに追加して症状緩和を図ることの有益性を示すエビデンスは明らかであるが、どのような組み合わせが最良であるかについての比較データは限られている。

上記の治療法は、吸入グルココルチコイドとホルモテロールの併用療法と SABA の単剤による症状緩和療法、および吸入グルココルチコイドとホルモテロールの併用療法と毎日の吸入グルココルチコイドと SABA の併用療法を比較した 2 件のコクランメタアナリシスによって支持されている。2997 人の参加者を対象とした 2 件のランダム化比較試験では、低信頼性のエビデンスとして、必要に応じて吸入する SABA と比較して、必要に応じて吸入するグルココルチコイド-ホルモテロールは、グルココルチコイド内服が必要になった喘息増悪のオッズを有意に減少させ(オッズ比 0. 45;95%CI, 0.34-0.60)、喘息に関連した入院または救急部もしくは緊急治療センターへの受診のオッズ(オッズ比 0.35;95%CI, 0.20-0.60)を有意に減少させた。8065 人の参加者を対象とした 4 件のランダム化比較試験では、定期的な維持療法としての吸入グルココルチコイドと必要に応じて投与される SABA と比較して、必要に応じて投与される吸入グルココルチコイド-ホルモテロールは、グルココルチコイド内服が必要となる喘息増悪のオッズ低下とは関連していないことが、確実性の低いエビデンスで示された(オッズ比 0. 79;95%CI, 0.59-1.07) 。一方、喘息関連の入院または救急部もしくは緊急治療センターへの受診のオッズは減少した(オッズ比 0.63;95%CI, 0.44-0.91)。

軽症喘息の成人患者を対象とした別のネットワークメタ解析では、必要に応じて吸入されるグルココルチコイド-ホルモテロールの使用は、維持吸入グルココルチコイド+必要に応じて投与される SABA または必要に応じて投与される SABA 単独のいずれよりも、重症喘息増悪のリスクが低いことが示された。Symbicort Given as Needed in Mild Asthma(SYGMA)1 および 2 試験でプールされたデータについての事後 (post hoc) 解析では、必要時にブデソニド-ホルモテロールを投与された患者は、毎日ブデソニドを投与された患者よりも重症増悪が 26%少なかった。一方、低用量吸入グルココルチコイドまたはロイコトリエン受容体拮抗薬と必要に応じて投与される SABA の併用で喘息が良好にコントロールされている患者においては、吸入グルココルチコイド-ホルモテロールを必要時に使用する場合と、毎日吸入グルココルチコイド単独を使用する場合との間で、重症喘息増悪の発生頻度に差はみられなかった。

患者の行動や嗜好、治療へのアクセスや費用なども、治療法選択の意思決定プロセスにおいて考慮されるべきである。吸入器の作動をリアルタイムで追跡する電子投薬モニターを使用した臨床試験では、患者による吸入グルココルチコイドの使用量の報告は客観的に測定された使用量よりも多く、患者の吸入グルココルチコイドの使用量は時間とともに減少することが示されている。ブデソニドの連日投与+SABA の必要時投与にブデソニド-ホルモテロールの随時投与を追加することを評価したランダム比較試験の参加者のサブグループを対象とした調査では、ブデソニド-ホルモテロールの連日投与を受けた参加者の 90%がブデソニド-ホルモテロールの連日投与を希望し、ブデソニドの連日投与+SABA の必要時投与を希望した患者は 40%だった (? 90 + 40 = 130%)。喘息の専門家の中には、患者のアクセスを向上させるために、吸入グルココルチコイド-ホルモテロールを処方薬から市販薬に変更することを提唱している者もいる。

ステップ 3, 4: 中等度喘息に対する治療
ステップ 3 およびステップ 4 の治療で勧められるのは、低用量または中用量の吸入グルココルチコイド-ホルモテロール配合剤(ブデソニド-ホルモテロールまたはベクロメタゾン-ホルモテロールのいずれか)による単回維持療法および症状緩和療法(single maintenance and reliever therapy: SMART)である。SMART レジメンは、迅速緩和療法と維持療法の両方に必要な吸入器が 1 つだけであるため、コストが削減され、患者の治療が簡略化される。ステップ 3 とステップ 4 の代替治療としては、維持療法の低用量または中用量吸入グルココルチコイド-LABA と必要に応じて SABA を併用するか、必要に応じて吸入グルココルチコイド-SABA を併用する方法がある。無作為化試験のメタアナリシスでは、GINA ステップ 3 でコントロール不能の喘息患者をステップ 3 またはステップ 4 のいずれかで SMART に切り替えた場合、吸入グルココルチコイド-LABA 維持療法+ SABA リリーバーというステップ 4 のレジメンにステップアップした場合と比較して、最初の重症喘息増悪までの時間が延長し、リスクが 29%減少した(ハザード比 0.71;95%CI, 0.52-0.97)。さらに、喘息がコントロールされていないステップ 3 またはステップ4 の患者において、SMART に切り替えると、同じ治療ステップで治療を継続した場合と比較して、最初の重症喘息増悪までの期間が延長し、リスクが30%減少した(ハザード比 0.70;95%CI, 0.58-0.85)。

ステップ 5: 重症喘息に対する治療
重症喘息は、高用量の吸入グルココルチコイドと 2 剤目のコントローラー薬(LABA など)の併用、またはほぼ継続的な経口グルココルチコイド治療が必要となる症状と肺機能の障害が組み合わさったものと定義される。ステップ 5 (重症喘息)に該当する患者は、専門家による評価(すなわち、アレルギー免疫専門医または呼吸器内科専門医)、表現型の決定、および追加治療のために紹介されるべきである。喘息の表現型の重症度は、以下のバイオマーカーに基づいて決定される。すなわち、1. 少なくとも 150/μL の血中好酸球レベル、2. 少なくとも 20 ppm の呼気一酸化窒素(fractional exhaled nitric oxide: FeNO)、3. 少なくとも 2%の喀痰好酸球、4. 皮膚プリック試験または特異的 IgE の血液検査における通年性アエロアレルゲンへの感作、および 5. 30-700 IU/mL の総 IgE レベルである。患者毎に固有のバイオマーカープロファイルは、生物学的製剤の選択の指針となる(例えば、通年性アエロアレルゲンに対する感作と総 IgE 値の上昇を認める場合はオマリズマブ [omalizumab]、血中好酸球値の上昇を認める場合では、他の喘息生物学的製剤を選択する)。長時間作用型ムスカリン拮抗薬(long acting muscarinic antagonist: LAMA)は、中用量または高用量の吸入グルココルチコイド-LABA による治療にもかかわらずコントロールが持続しない喘息患者に対する追加治療として考慮される。 メタアナリシスでは、中用量または高用量の吸入グルココルチコイド-LABA に LAMA を追加することで、重症喘息増悪のリスクが 17%減少することが示された。

生物学的製剤は、特に高用量の吸入グルココルチコイドや経口グルココルチコイドによる治療を避ける、あるいは最小限に抑える目的で、追加治療として検討される。重症喘息の治療に使用される生物学的製剤は、オマリズマブ、メポリズマブ (mepolizumab)、レスリズマブ (reslizumab)、ベンラリズマブ (benralizumab)、デュピルマブ (dupilumab)、テゼペルマブ (tezepelumab) の 6 剤であり、生物学的製剤の選択には、バイオマーカーを含むさまざまな臨床的・実用的要因を考慮する必要がある。生物学的製剤を比較した直接比較臨床試験のデータは不足しているが、これらの薬剤はいずれもプラセボと比較して有効性を示しており、重症喘息増悪の相対リスクが 30-70%低下している。

よく分かっていない領域
治療のステップアップを推奨する前に、患者のアドヒアランスと吸入技術を客観的に評価するためのより良いストラテジーが必要である。臨床的に重要な喘息のアウトカムに関するデジタル吸入器 (digial inhaler) および臨床医ダッシュボード (clinitian dashboard)(服薬行動や吸入の質に関するリアルタイムのデータを患者と医療従事者に提供する)の有効性を評価する臨床試験が必要である。

digital inhaler for asthma
https://www.news-medical.net/health/What-are-Digital-Inhalers-and-how-do-they-Work.aspx

clinitian dashboard
https://www.news-medical.net/health/What-are-Digital-Inhalers-and-how-do-they-Work.aspx

薬剤の選択をより適切に行うためには、血中および喀痰中の好酸球数、FeNO 値、血清総 IgE 値およびアレルゲン特異的 IgE 値などのバイオマーカーの役割を評価する研究がさらに必要である。

ガイドライン
本論文の推奨は、全米喘息教育・予防プログラム専門家委員会第 3 次報告書(およびその 2020 年重点更新版)および GINA(およびその 2023 年更新版)のガイドラインと一致している。GINA は毎年ガイドラインの更新版を発表しており、ここに示す推奨は、最新の GINA および全米喘息教育・予防プログラムの報告書および更新版と一致している。

結論と推奨
このヴィネットに書かれている 47 歳の女性に関しては、彼女の障害(日中の症状)とリスク(喘息増悪)は、治療のステップアップを正当化するものである。症状の場所と増悪の時期から、アレルギー性喘息と花粉によるアレルギー性鼻炎の併発が疑われる。私なら、彼女の治療法を GINA トラック 2 (代替療法)からトラック 1 (優先療法)に変更し、維持療法および症状緩和療法として低用量ブデソニド-ホルモテロールへの変更を含め、ステップ 2 からステップ 3 のケアに治療を増やすよう助言するだろう。吸入グルココルチコイド-ホルモテロールリリーバは、SABA リリーバ単独療法と比較して、治療ステップ全体にわたって重篤な増悪を減少させる。維持療法と症状緩和療法に吸入グルココルチコイド-ホルモテロール合剤を使用することで、治療レジメンが簡略化され、薬剤を変更することなくステップアップやステップダウンが可能となる。私はまた、吸入手技を見直し、患者とともに喘息行動計画を文書で作成し、3 ヵ月後の経過観察を計画する。(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra050380 の吸入手技ビデオを参照)

元論文
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcp2304871
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