魚屋夢遍路

流されているのか、導かれていのか、突き進んでいるのか、当事者には計り知れない。

ホームレスとエンゲル係数

2012-11-18 09:21:16 | 旅行

 この後、地蔵寺ー安楽寺ー十楽寺ー熊谷寺ー宝輪寺と順にお参りを終え、昼前には早くも10番札所の切幡寺へ到着、だんだんと参拝の仕方にも慣れてきた。
お寺は山の中腹にあるらしく、ふもとの駐車場から歩く。が、登れど、登れど、参道つきることなく、汗が吹き出る。
やがて、山門らしき所に到着。ふと横を見れば、なんと、ここにも駐車場があったではないか!あらためて、情報収集の甘さを悔やむ。
 ここからは、石段。鋭い勾配だ、見上げれば、天がいざなっているかのようだ。さらに追い討ちをかけるのが、子らのおんぶに抱っこ攻撃。普段の運動不足がたたる。

  せがまれて、肥満児を背負いて 
   そのあまりの重きに泣きて
       三歩あゆめず   泣く僕

 もしかしたら、これは自動石段でどこかにスイッチがあるのでは、などとも思いたくなる。が、ここは忍者屋敷ではなくお寺だ。
精も根も尽き果て、仮死状態になりかけた頃、名所らしき「厄除け坂」にさしかかる、上から降りてくるお遍路さんから
「ようお参りで、あと少しですよ。」
と、優しい声
 こういう場合、うちの子らは親離れが早い。温存した体力で、いっきに駆け上がっていく。
もう歩けないと、私はしばらくアメーバになることにした。三歳児の方を背負った、今はかけがえのない戦友の情さえ感じる鬼嫁も、ナメクジに変身していた。
 上の方から、鐘の音がゴーンと一つ、涼しい風と降りてきた。疲れた身に、耳に、心地よい。さらに、ゴーンともう一つ、ふたつ、みっつ、よつ、ゴーンごんごんごんご・・・  
「こらーーーーーー」
 背筋が寒くなり、温度変化に敏感な私達夫婦は、それぞれすぐさま、アメーバとナメクジから人間にもどり、石段をはい登った。
 鐘突き堂で、仁王のようなお遍路さんに、言葉優しく諭されているのは、まごうことなく、うちのお子様たちだ。
すかさず米搗きバッタになりさがったこの夫婦は
「すいません すいません ちょっと目を離した隙に・・モゴモゴ・・・モゴモゴ、今度から帰るときに控えめにやりますので・・」
「いやいや、奥さん、お参りの後に鐘を突くのは「出金」といって縁起が悪いので、お参りの前に、静かに一度お突きなさい。それと、鐘を突いてはいけないお寺もあるので、用心してください。」
 顔は仁王さんで心は観音様の、お遍路が教えてくれた。さらに
「ここから見る徳島平野は最高です。あの大きな河が、四国三郎の吉野川ですよ。」
 ハテ、四国三郎とはどのようなお笑い芸人だったろうか? もしかしたら、トリオで一郎と二郎もいるのかどうか? 徳島限定のタレントか? それとも篠田三郎の本名か? 仁丹は食べるのか? 聞こうと思ったがやめた。宮島の平家農協の二の舞の予感がしたからだ。
 初めて、遍路は甘くないと感じた切幡寺であった。
「開店記念、うどん半額」 第十一番札所藤井寺への、街道沿いに立て看板あり。
行き過ぎたのもなんのその、こういう場合は労を惜しまず、引き返すのが低所得者層の掟だ。
プレハブ店舗で客もそんなにいない。半額とあらば、ゲソ天、ちくわ天など盛り盛りにしたが、4人で千円行かない。
まずいのかなとおもいきや、けっこういける。どころかかなり旨い。やはり、四国はうどんのレベルが高い。
なんとなく雰囲気が、広島の町内会限定8人様満席御免お好み焼食堂に似ている。
広島県人が他所で、お好み焼を口にした時と、同じ戸惑いを、四国の人はうどんで、そうなのだろうか? などと、想像をしてしまう。
ちなみに、うどんの製法を日本に伝えたのはお大師さんであると、どこかに書いてあった。弘法大師は調理師でもあったのだ。次の寺ではお大師様の像を、少し身近に感じそうだ。
 国道129号を藤井寺へと左折、当家お遍路チームの面々、車が上下するたびに、パンパンの腹から、うどんが噴出しそうで、顔がひょっとこになっている。。
腹ごなしに、少し歩こうかと思えば、お寺は駐車場の真ん前におわす。ズボンのベルトを締めなおし、門前で合掌して、午後の参拝開始。
 カシャカシャと、お遍路さんの杖を突いて歩いていると、大阪のおばさん達にまた会った。
「これこれ、そないにあらましに杖したら、あきまへん。これはな、金剛杖ゆうてな、お大師様の分身やで、粗末にしたらあかんで、宿に着いたら、まず、杖の先を洗って、床の間へ納めるんや。昔はな、お遍路さんが行き倒れたら、これを、卒塔婆にしはったらしいわ。」
 ひえ~、留吉とこの杖でチャンバラしてもうたがな。バチ当たったらどないしょ、けったいなしきたり多いな、難儀なこっちゃ。アレ、関西風タコヤキ語が伝染してきたがな、かなんな~
「ほいでな、橋の上では、杖つこたらあきまへんで、お大師様はな、修行中に橋の下で寝はったこともあるそうやで、失礼にあたるそうやさけな」
 ほうか~ わいといっしょや~、わいも少しだけホームレスしたことあるヮ~ なんかお大師はん、他人のような気しまへんようなってきて、もうてまんねんやなあんさんほんま~
 本当にバチが当たりそうなので閑話休題。
 それにしても、参拝のお遍路さんたちのほとんどが白装束に菅笠で、その他の遍路グッツを身にまとっている。
最初は、妙な違和感を覚えたが、見慣れるとかっこいいのだ。だが、これを家族4人揃えると、我が家の一ヶ月分の食費をはるかに上回る。
社会のピラミッドの、最底辺を構成している私たちが、そのような贅沢をするには、余りにもエンゲルに失礼である。
よってうちは(ファッションセンターしまむら)の半額ワゴンでならべくお遍路さんに近い「多少難あり」品で、身を固める事にした。
といっても、白の短パンと、丁シャツに太マジックで=南無大師遍照金剛=と、鬼嫁に書かせただけのものだが・・またまたバチ当たりな・・
 いや、絶対にバチは当たらない。なぜなら、弘法大師にせよ、マグマ大使にせよ正義の味方は、いつも貧乏人にはやさしいのだ。
 しかし、わたしらお遍路さんの意味を、取り違えているような・・・



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