与一から出て来た生き物の記録

奇妙な生き物。早朝の自宅ガレージ奥の「与一」の中から、様々な働きをする者たちが生まれています。その有様と効能の記録です。

しさくのたのしみ・3 「よよの声」

2010-08-21 07:53:01 | しさくのたのしみ

 さ く の た の し み


Poem



 



「よよの声」


 


「よよ」は迷子になってしまいました


せっかく仲間たちと遊んでいたのに 


もう どこにいるのか分からなくなってしまったのです



 


アスファルトの「へり」を 


もと来た道を見つけようと歩いていると


民家のベランダには はためく色とりどりの洗濯物


ひらひらとはためく 洗濯物はとても楽しそう


「よよ」は 自分もあの物干しざおにつかまって


ひらひらと はためいてみたくなりました


”よおし ぼくも はためいていよう 風とともだちだ”



 


「知らない家に 勝手に入ってはいけないよ


おじゃましますって 言わないとダメなんだ」


そんなことばを思いだしたのは


民家のベランダによじ登り


物干しざおにつかまって はためきだしてから


ずいぶんたってからのことでした


”わっ!しまった!”


あわてた「よよ」が いちもくさんに 


物干しざおからおりようとした時です


みどり色の 短い「しっぽ」がひっかかり


干してあった ちいさなくつしたが


風といっしょに飛んでいってしまったのです


”ああ!どうしよう・・・”


「よよ」はまっさおになって追いかけましたが


そう簡単には つかまりません


くつしたはたぶん 赤ちゃんのくつした


なくなったのがわかると 大問題だ


きっと お父さんと お母さんは 一生懸命さがすにちがいない 


くつしたは もうどこかに飛んでいってしまい


 とても とても 見つかりません


「よよ」の飛び出した目から なみだが出そうです


「よよ」は ”ごめんなさい”を言うために


その民家の玄関口で 家族が帰って来るのを


待つ事にしました



玄関口には大きなくつや赤いくつ ちいさなくつや


サンダルが ばらばらに ありました


「よよ」は それを見ているだけで 


家族の楽しい語らいが聞こえてきそうで 


なんだか うれしい気持になりました



「よよ」はだいぶん待ったけれども いつまでたっても


誰も帰って来る気配はないのです


そのうち うとうとと うたた寝してしまいました


うとうとしている間に 「よよ」は夢を見ました


仲間たちが「よよ」をさがして 集まって来る夢



”みんな ありがとう” そう言って目覚めると


誰もいません そして


もう 外は暗くなっていました


それでも「よよ」は いつまでも いつまでも 待っていました



 


 


あなたの家の玄関口に 「よよ」は待っていませんか?


あなたの帰りを 待っていませんか?


うれしそうな声で ”ごめんなさい”って聞こえたら


それは「よよ」かも知れません


 


 


 


おしまい 


 


 


 


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「しさくのたのしみ・2」 おおおつ子

2010-08-18 06:43:17 | しさくのたのしみ

し  く   の  


P o e m



 



「おおおつ子」


 


どす どす どす どす 


夜の国道163号線の片側歩道を


大きな”女”が走ってきた


彼女の名前は


”おおおつ子”


地響きの様にも聞こえる 走る足音で


生魚のような体臭とともに


走ってきた


 


 


以前にも僕は 彼女と会っている


新婚早々の我が家の夏


 唐突にやってきた彼女は あわてた様子で こう言った


ー水で、良いか?・・水・・・ー


2本の500mlのペット・ボトルを強く掴んでいる


よく冷やして持ってきたに違いない ペット・ボトルに付いた水滴は


走ってきた距離の長さをあらわし


おそらく水は もう生ぬるい


妻と僕 二人分の”水”?


その意味を 推し量りかねて 口にはできなかった


第一 気持がわるい


 それが”おおおつ子”の最初であった


 


 


それから”おおおつ子”を見るようになった


同じく163号線の 


ホンダ・プリモの向かいにある 交番所で


激怒する”おおおつ子”の姿があった


「指名手配のポスター」を 何度も棒で叩きながら


”おまえかっ  おまえかっ 悪い顔” 


と 怒っていた


あわてて出てきた警官が 注意すると


ポケットから黒いちいさなもの 


あわててまさぐり出し


これを届けにまいりました!!


一喝し 警官をもたじろがせた


黒いちいさなもの” それはおそらく


道路沿いに落ちていたのであろう 


キティーちゃんの 携帯ストラップ


何度も自動車に踏みつけられ続け


黒いちいさなもの”に変色・変形した ストラップ


町中に落ちているゴミを 


いちいち”落し物”と銘打って 届けて来られるなら


警察もたまったものではない


案の定 「お嬢さん、ありがとうね」とだけ言って


警察は”黒いちいさなもの”を受け取るだけだった


 


 


どす どす どす どす


真剣なまなざしの”おおおつ子”が 


夜の国道163号線の片側歩道を走る


大きな手には 


どこかから摘んできたのであろう「花」を


握りしめ そして 


あくまでまなざしは 強く真剣に光っている


それを何処の誰に届けにいくのだろう?


それは わからない


しかし きっと


彼女思う所の良いことを


おこなうに ちがいない


 


 


 


 


 


 


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「しさくのたのしみ・1」 稲のメッセージ

2010-08-13 07:43:46 | しさくのたのしみ

し さ く   の し み 


P o e m



 



「稲からのメッセージ」


 


川は氾濫し


茶色い泥水は”しぶき”を上げ


われらの 幸福の水田に押し寄せ


錯綜する根っこごと 弾き飛ばし


われらを翻弄する


 


 


みみずたち おけらたち


その他の ちいさい者たちよ


われらの根元に集いなさい


われらと共に


この安住の水田


とどまり続けるため


共々に たたかおう


 


 


いつか来る


愛する”実り”の時をめざし


いつか来る


報恩の ”収穫”の時をめざし


いつか来る


皆の ”よろこび”の時をめざし


共々に たたかおう


 


 


みみずたち おけらたち


その他の ちいさい者たちよ


この濁流に 流されてはならない


いかに豪雨が荒れ狂おうと


決して


流されないでいよう


われらは”大木のようなもの”


自らを定め


決して


しりぞく事はない


 


 


みみずたち おけらたち


そして なつかしい友達


数千年の記憶の中に生きるものたちよ


おたまじゃくしや その子供たち


かぶとえび なにかの幼虫たち


その他の


 全てのちいさい生き物たちよ


この濁流に 決して流されないでいよう


この洪水に 敢然と立ち向かおう


あくまで 太陽の光を希求しよう


徹して


皆の喜びの時をめざし


共々に たたかおう


 


 


皆さま、暑い夏いかがお過ごしでしょうか??


この「詩」は知ってる人は知っている、「生き物たちの物語」の、「和解マンの話」のクライマックスで登場した、「稲」からのメッセージです。興味のある方は「生き物たちの物語」のカテゴリーから入れますよ~


今回より、またまた新コーナー「しさくのたのしみ」。あっちこっちに書きちらした「詩作」を、多少バージョンアップしてこのコーナーに集めてみようと思います。「詩作」とは”ことばの遊び”的な要素もありますが、抽象的なイメージの中に作り手と読み手の自由な想像力の交流が行える”たのしみ”もあると思うのです。小説の様に状況設定などの限定されたイメージというものがない為でしょう。読み手が勝手な解釈をして楽しんでもいいし、書き手も自由気ままにイメージを広げて遊べる


今回の「稲のメッセージ」は、何年も前のある大雨の日に、僕が「田んぼ」の近くを通りかかった時に思いついたもの。 川の水がまっ茶色に濁って水田に流れ込み、その中でそれこそ”流されぬ”ように踏ん張っているような「稲」でありました。着想元はそんな感じです。


この新コーナーも、今後ともよろしくお願いしま~す 


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