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井 川 美 術 館
Young man be not forgetful of prayer .
7
「デッサン」
このぐしゃぐしゃの絵は、少し前に自分の作品を整理していたら出て来た「デッサン」。 一時「デッサン」ばっかりに凝っていた時がありました。たぶん、その頃の作品。 だいたい、一日に4~5枚くらいは何でもいいから描く、みたいな感じでやっていた。 そうしてやっていると、まったく描かない日を何日かはさむと、描けなくなっている事に気づく。 いやいや、描けない、というよりは、「形をつかむ」という事ができにくくなっているんです。 だから、一日でも”サボる”と上手くなれない(笑)とか思っていた。
実際、本気で上手な方の話を聞くと、同じ趣旨の事を言ってます。 今僕は、仕事と家の事でいっぱいいっぱいで、ほとんど「デッサン」はしていないので、かなり「スキル・ダウン」していると思う。
これも同じ「くしゃくしゃのスケッチブック」の1ページ。
「デッサン」とは別に「クロッキー」というトレーニングがあります。 いわゆる「速写」。 「パッ」と形をとらえて、「パッ」と描く(笑)。 線はなるべく一本の線で、かたちをとらえて、一発で決める。 いろんな人のいろんなやり方がありますが、僕はたいがい1枚目を上の様な”ガっつり描き込”んだデッサンを描いてから、だんだん描くタイムを短くしていく。 すると案外「パッ」とできてしまう。 上の2枚がだいたい1~2時間かけて描き込むのに対して、下はたぶん10分かかっていない
これ とかはたぶん10秒とか・・そんな感じだと思う。
自分の「足」。 ”ざつい”けども、一応「かたち」はほぼちゃんと取れている・・と思う。
これは5~6分・・ってとこかな? こうやって「ざざ~」っとかたちを取って、良い感じだったら、ちょっとずつ描き込む。
こんな調子の風景も出て来ました。
物置かな? それとも警備室かなにか? よく覚えていません(笑)
これは「そらの物語」でお馴染みの「京橋」。 JR京橋駅を降りてすぐの立ち食いうどん屋さん。 今でもありますよ。
このうどん屋さん、若いころは一晩遊び歩いて、飲みすぎて気分が悪くなったまま、でも「小腹がすいた」って時にお世話になりました。
「わかめうどん」のおいしい事!!
で、同じく「京橋」
高架の向こうのビルは「サウナ・グラン・シャトー」。 僕は入った事はないけども大阪ではちょっと有名です。
「見て描く」という作業からちょっと離れて、「見て、それをそのまま映し取ろう」という勢いそのままに描いた素描が下。
「見てない」けども、「見て描いた」みたいに・・・。
この”おっさん”、おなか出すぎ(笑)。 「手」の所はちょっと「生き物たち」の原型です。 えんぴつでの素描ではなくボールペン。
たぶん、下絵なしでいきなりボールペンで描いています。
これもそのシリーズ。 ”ぽっこりおなかシリーズ(笑)”。下の男性の「ぽっこりおなか」は、ぽっこりにするかやめとくか、ちょっと考えてから「ぽっこり」にした後がそのまま残っている。
そうこうするうちに、ちょっとなぶり描き・・・ではなく何かを見て描いていて、違うかたちができそうで・・・・で、できなかったという作品。 「生き物たち」の誕生する前ですね
~。 いわゆる「微生物時代の生き物たち(笑?)」。
そして、ちょっとマンガチックにはなったけども、「かたち」にはなった「生き物」。 でも、描いてみてどうも”しっくり”来ないんで、「バッテン印」の、「失敗作」。
どうでしょうか?こうして見て行くと、いかにも「絵描きさんのBlog」を見ている感、ありませんでしたか?
「デッサン」というと、”基本”であると、教えられてきました。 確かに、「デッサン」から離れて良い作品作りはできないです(僕は、ですが)。 基本はやっぱり「見て描く」ところからでないと、想像して描くにも”広がり”がなくなってしまうんです。 ただ、こうして見ていると「デッサン」は「基本」であると同時に「結論」でもあるようにも・・・思えます。
たまにはこんな感じの「独り言チック」なのもやってみたくなって、やってみました。
次回は「そらくん」、UPして行きたいとおもってます
いよいよ夏まっさかり皆さん、夏バテしないようにね
~
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57
ー 小話1 ー
斎元の学習
「斎元」は、はじめて「そら」と二人で出かけた時から、
”学ぶ事”が多かった。
@1・・・「そら」は待ち合わせの時間と場所の確認を何度も繰り返し、
それにずっと付き合った後でないと、無事な当日を迎える事ができない、という事。
「そら」からの「確認メール・確認電話」は10回20回と執拗に続く。
そのやり取りを1回でも怠ると、「そら」は時間や場所を間違えてしまうのだ。
他に「そら」は、どこも「行きたい所」がない、という事。
「そら」は「斎元と一緒」であればそれだけでいいのだ。
だから自然と行き先を決めるのは「斎元」の役回りとなる。
@2・・・「そら」の”バッテンナンバー”のスクーターは、「斎元」には大問題だった。
「盗難車」は、”よろしくない”。
「初・デート」の折にも「そら」は平気で”それ”でやって来たが、
「”それ”はいけない」という会話から「初・デート」は始まった。
「斎元」は「自転車」を買ってやる事を約束したが、きわめて低所得の「斎元」にとって、
「一万円を超える買い物」は、かなりな”奮闘”が必要だった。
電気・ガス・水道・電話料金を一カ月支払わずにおく事で、
その資金はどうにかなり、その話しは現実となった。
@3・・・「そら」は”手をつなぐ”事が大好きだ、という事。
はじめは「人目」が気になる「斎元」だったが、それははじめだけだった。
どこに行く時も、スッと「斎元」の左側。
「斎元」はそんな「そら」が可愛くてならなかった。
「斎元」は時折強く抱きしめたくなったが、それはさすがにできなかった。
しかし、そうして欲しい「そら」の気持ちも「斎元」は分かっていた。
「人のいない所で・・」と思っていたが、
そうした状況になっても、なぜかその「勇気」が湧かなかった。
@4・・・「そら」は一つの会話が「尻切れトンボ」に終わっても、
何んら気にしない、という事だ。 「あの話しは何んやたっけ?」などとは言わない。
また、「えびすメンバー」の誰がどうした、という話しが多かったが、
全く同じ話しを何度繰り返しても、「そら」は違和感を感じない。
だから「斎元」も「あ、またその話し・・」と思っても気にしない事にした。
「そら」が嬉しそうに話しているのを見ると、「斎元」も嬉しくなるからだ。
@5・・・「そら」に何かを説明する時は、あまり長い例えや言い回しをすると、
わからなくなってしまう、という事。
「そら」は、わからなくなると、黙ってしまうのだ。
「話しの内容」は理解できていなくても、
「「今の話し」を自分が理解できなかった」、という事は理解できるからだ。
だから、「斎元」の親友の田川も一緒の時など、
仕事の話しで盛り上がったりするが、「斎元」は必ずその内容を、
「そら」が分かるような言葉に並べかえて、もう一度話すのだ。
この”学習”は「斎元」にとって、楽しくてしかたがなかった。
「そら」の事が分かれば分かる程に、「斎元」は自分の生命の奥底に、
”勢い”が生まれるのを感じるのだ。
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56
「よし、おれは・・」
出会ったばかりで お互いをまだ
よく理解してもいない
なのに きみがここにいないという事が つらい
このつらさは 君と長年連れ添い
苦楽を共にして来た夫婦のように
徹して根本的だ
いくらでも メールをすればいい
いくらでも 電話で話せばいい
おれたちは それ程自由なのに
”一緒でなくなる”だけで もう 君への想いに束縛され
心は動けない
明日また 会えば良いのに
離れている間 君の感触が蘇り
君のにおいが蘇り 君のことばが蘇る
それが つらい
会う回数を重ねるごとに
別れてからの 会いたさが きつくなる
そら 君も 同じ気持ちでいるのだろう
そら 君は”しあわせ”になる為に 生れて来た
そら 君は”しあわせ”になる為に 生れて来た
よし おれは
君を守れるほどの 強さを持とう
よし おれは
君の為に 生涯を定めよう
よし おれは
君に対する偏見や差別や無理解や
それに類する全てに 立ち向かおう
君の心の安心と 君の笑顔を生み出す事のみに
おれが生まれた意味を 見出したから
君は 「ありがとう」が言えない
そのかわりに 「ありがとう」は
おれの中に有る
よし おれは
君の”しあわせ”の為に
「ありがとう」 と 生きよう
2008年 初夏
斎元 よしお
「はたらき協議会」以降、いかなる突発時にも対応できる態勢だった私たちを
まるで嘲笑うかの様に、「サソリ達」に動きはなく、
出し抜けに「告白」を送って寄こした「月の者256N」=「希崎」も、
その反応を止めている。
「和解マン」の動きも、それらしき兆候はなく、
何事もなかったかのような、静かな初夏をむかえようとしているのだ。
かといって私たちの現行の”警戒態勢”を解く事はできない。
それは、海外に逃亡したのであろう「サソリ」の行動パターンも、
「月の者256N」=「希崎」の仕掛け方も、出し抜けであるからだ。
そうした中でも、”何かの兆候”の様な、幾つかの出来事はあった。
一つが、「カマクイ」を追っていた「メジ式」からの報告だ。
「暴漢達はサソリではなく、カマクイと連携している」との事だった。
世の中を騒然とさせた、「サソリ」がオフィス・和解マンの事務所を占拠し、
大挙集まった群衆の目の前で、居並ぶ警官隊を出し抜いて逃走した事件(45話・「一の妄の生中継・1」~51話「そらの告白」http://blog.goo.ne.jp/seiichi999_2009/e/523467842e4beff91a80fffb5a066305)。
これはその後も「オフィス・和解マン事件」としてTVなどで
特集番組が組まれるなど、世相を大きく賑わせた。
そうした中、血気盛んな暴漢達の中には「事件」以降、
「サソリの復活」をカリスマ的に信奉する者も多く出ていた。
「メジ式」が「カマクイ」の行方を追う中で、まず多く収集できたのが、
現在 唯一「サソリ」とのパイプとなっている「カマクイ」に
暴漢達が”「サソリ」の今”をたずねるメールだ。
「サソリ様は今どこに?」。 「サソリ様の復活は?」。
これに対する「カマクイ」の返信は「待機せよ」、もしくは、「時を待て」、
「今は、ゆるやかに6号を追え」。
「カマクイ」の返信に「サソリ」という単語は一切出て来ない所から、
「カマクイ」はこの暴漢達とのやり取りを傍受されている事を警戒しつつ、
必要最低限の指示を出しているのがわかる。
この「メジ式」からの報告に「よも清さん」は、
「そのメールのデータを全て記録しておいて下さい」との返答をした。
もう一つの出来事は、「Hiたかお」からで、「斎元」と「そら」の関係の、
劇的な進展に伴って、「斎元」が「和解マン」と直接連携が取れている、
という事が明らかとなった事だ。
「斎元」と「そら」との出会いをめぐって、「和解マン」から送られて来た、
「和解マンのおみくじ」と「その説明書き」(参照・34話「和解マンのたすけ船」 35話「おみくじの内訳」http://blog.goo.ne.jp/seiichi999_2009/e/3d57527fd1f55e95169fe1a5eab6c7f3)。
これによって「和解マン」は確かに存在していて、しかも
”良いはたらき”もする、という事がわかった。
これはおもしろい。 私たちの皆が心躍る出来事だ。
「Hiたかお」と「斎元」の対話の進み具合によって、
「はたらき協議会」で決まった新たな人事でもある、「分解えら子」と、
「ゆきりん&ぽち」の「はしみ荘(斎元の自宅)」への配属により、
今後さらに煮詰まった、新たな情報も出て来るだろう。
私たちは今後起こって来る様々な出来事に対して、もう一つ新たな態勢で望む事とした。
それは、今まで物語は「よも清さん」か私たちの語り手が物語る形式をとってきたのだが、
それにぷらすα、「斎元」にも折々に物語ってもらう事としようと思う。
「語り手」の増員である。 これによってさらに多角的な表現が可能となるだろう。
というのは、彼は今はまだそうでもないが、私たちの「大調査」において、
必要欠くべからざる位置にいて、なをかつ私たちが気が付きもしなかった、
視点で局面を切り開いてくれるからだ。
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55
「”取り”はHiたかお」
いったん騒然とした場内は、一拍あけて言葉を継ぐ「FA637」に集中した。
「この”希崎”という人物が、”発病した”と言っている年月日なのですが、何か記憶にありませんか?そう、この協議会の開催直前に”おがたの尻”から出てきた「ファイル」の中にもこの”1990年代”があり、気になる記述があるんです。 では、もう一度、”あのファイル”をご覧ください。」
月の者256N 不定期・発信
1900・06・22 初起動 確認
1919・03・01 返還拒否 確認
1920・12・07 生き物バージョン5220076mbpより離脱 確認
1920・12・08 再度 返還拒否 確認
1940・05・21 誤作動頻発 進化の可能性 確認
1951・01・20 生き物バージョン0008099mbpより離脱 データ解凍に失敗 確認
1953・04・? 誤作動 確認
1962・10・06 全てのバージョンから離脱 未確認
1966・?・? 動きアリ 未確認
1990・?・? 動きアリ 未確認
199?・?・? 他生命とのリンクの可能性 検知 未確認
2004・?・? 「おがた」への発信 確認
「赤線の部分です。 月の者は”与一発足”の百年以上前の1900年に初起動を起こし、いく度も”返還”を拒み、その後も”誤作動”を繰り返しながら進化し続けた、そして199?年に”他生命とリンク”した。 この「他生命」とは「人間」ではないでしょうか? わたくしの憶測ですが、「リンク」された”人間”が希崎であって、それを希崎は”病気が発病した”と認識し、診察を受けた。 その「リンク」によって何んらかの症状があったのかも知れません。 医師がどう診断したのかはわかりませんが、「致死に及ぶ病」であると診断し、年月日も切って希崎に告げた。 そして、どの様なとらえ方なのかも全く分からないのですが、”告白”の中にあった”同義的に許す事のできない犯罪”を犯し、滅びる事を切望している。 これは、あくまでわたくしの飛躍した憶測かも知れませんが・・・。 しかし、 「返還」などという単語が普通に出て来るはずはないですし、ましてや「月の者256N」という名称に至っては・・・。
今の所、この希崎からの出し抜けのメッセージに対しての返答はまだ何もしていません。 ただ、メッセージの中の”同義的に許す事ができない犯罪”というのが何を指すのかは分かりませんが、”今年”と期日を限定しているからには、わたくしたちの対応もあまり悠長な事は言っていられないと思うのです。 皆さんの意見をお聞かせ下さい。 わたくしからの報告は以上でございます」。
場内は静まりかえった。 誰もがこの報告に対してどう対処したら良いものか、困惑し、思案していたのだ。 静まりかえった場内に、帰って間なしに眠ってしまった「一の妄」と「ケリー・糸3番」の”いびき”が小さく聞こえている。 「希崎」という人物の出し抜けの「告白」に対しての「FA637」の”飛躍した憶測”は、それを聞いていた全ての生き物たちにとって”飛躍している”ようには思えなかった。 ”飛躍”どころか、おおむね”その線”で正解ではないか? 皆、「よも清さん」の返答を待った。 しばらくの沈黙ののち、全ての生き物たちと同じく、長い首を折り曲げて深く思案していた「よも清さん」が、顔をあげた。
(よも清さん) 「・・・・・・・・見つけましたね。 この人物は恐らく”月の者”です。 ただ・・・その確証が何もない。 「希崎」という人物に「月の者」が”憑りついている”様な状態なのか、それとも「月の者」そのものなのか?・・・・。 いずれにせよ、まずはしっかりとした情報を集める事です。 その上でないと正しい判断はできませんし、もし私たちが判断を誤ってしまえば多くの人々が被害を被る事になってしまいかねません。 すでに「告白」の中でも、強く「犯罪を志向している事」をみずから述べています。 それに、この「告白」という”かたち”を取っての文書も、単純に”急に告白をしてきた”ととらえて良いものなのかどうなのか?・・。 自分自身の態度をハッキリと示しておいて、その上でこちらの”出方”を見ている様にも思えます。 いずれにせよ、不明な点が多すぎます。 ただ、「サソリ」や「カマクイ」たちとは「犯罪を思考している」という点では似ているようですが、少し違う次元で物事を思考する人物であるという事が、この文書から伺えます。
私たちの「大調査」において大切な事、それは、「調査の範囲」をどんどん”限定”し、狭めて行く事です。 もし違っていれば、「はじまり」にもどればいいのです。 この人物を「月の者と限定」し、今後の「大調査」を進めましょう。 「FA637」一名だけでは危険が多すぎます。 もしもの時を考え、誰か”相方”を連れて行って下さい。 そして、その人物に対しての返答は
”はじめまして。 私たちはあなたを「止める者」であり、あなたの「末裔(まつえい)」です。
今後ともよろしくお願い致します。”
としておきましょう。 送信名は ”与一” でいいでしょう」。
(FA637) 「わかりました。 では相方については熟慮の後にお伝えいたします」。
全ての生き物が緊迫していた。 しかし、今すぐに何かができる訳ではない。 どこまでも続いて行きそうなこの「協議会」の、ちょうど良い切り上げ時だと思った司会・生き物が、「協議会」の閉会の言葉をのべようとした時、会場の外側に位置する所から、慌てた口調の大阪弁が響いた。 「まいどまいどまいど~!!まだやってんですかぁ??お~疲れぇ~~ッス!!もう、終わってる思てましたがなぁ~!!!」。 「Hiたかお」が帰って来たのだった。 会場のあちこちから「たかおくんだ!!」というどよめきが起こった。 いつもなら「Hiたかお」は皆に愛想をふりまいて一つ二つは”おもろい事”を言っては盛り上げるのだが、勢いはいつもと変わらないのに、何か様子が違っていた。 居並ぶ生き物たちの中央突破をする様に、真っ先に「よも清さん」の前に進み出て、こう言った。
(Hiたかお)「よよよよよ、よも清さん!!!」。 (よも清さん) 「ああ!!たかおくん!!!お疲れ様でした!!本当にお疲れ様でした!!」。 (Hiたかお) 「よも清さん!!”そら”についての新しい報告なんですが・・・」。そこまで言って、なぜか急に言葉に詰まってしまった。 (よも清さん) 「??そらくんの新しい報告ですか?」。 (Hiたかお) 「はい、斎元さんへのメールがあまりに”ひつこくて”・・・で、やっと寝てくれたと思ったら・・・・」。 (よも清さん) 「思ったら??・・・」。 (Hiたかお) 「・・・思ったら・・・ですね・・・」。 と言うなり、「Hiたかお」は又言葉に詰まってしまい、その”鳥”を思わせる丸い瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。 (よも清さん) 「思ったら・・・たかおくん、どうしたのですか?何か起こったのですか?!」。 「よも清さん」だけではなく、そのやり取りを聞いていた全ての生き物たちが身構えるふうだった。 ”私たちのそらくん”に何があったのか??もし、何かあったら、どのような対応も厭わない・・・そんな思いで、皆が身構えていた。 (よも清さん) 「どうしたのですか?もしかして、神経的な新しい症状が・・・・・」。 (Hiたかお) 「いえ・・・ちがいます・・・。 泣いてるんです・・・」。 (よも清さん) 「んん??泣いてる?」。 (Hiたかお) 「はい。 眠ってからしばらくして・・嬉しそうな寝顔で、で・・・泣いてるんですよ・・」。 感きわまった「Hiたかお」の感涙は、”感きわまりすぎて”、「Hiたかお」の報告を困難にする程の勢いで、とめどない。
(Hiたかお) 「嬉しかったんですよ!きっと!・・・。斎元さんと手をつないだ事、それからメールのやり取りができるようになった事、親しくなれた事・・・・。よっぽど嬉しかったんですよ!!呼吸は完全に睡眠の状態でしたから、熟睡していました。 あんな・・・あんなに嬉しそうな笑顔で眠るそらは初めてなんです!!ボクはもう・・・あの子の気持ちを考えると、嬉しくて、嬉しくて・・・もう・・・もう・・・」。そこまで話して、ついに”オイオイ”泣き崩れる「Hiたかお」のオーバーな報告に、同感の涙を浮かべる生き物たちもいれば、笑いながらも賛同の拍手を送る生き物たちもいた。 場内は急にあたたかい空気が流れた。 (よも清さん) 「たかおくん!!それは、最高じゃないですか!!この協議会の最後を飾る、とても素敵な、そして何より素晴らしい報告でした!本当にご苦労さまでした!!たかおくん、あなたの真心からの”奉公”が実を結んだのです!!この任務をあなたにお願いして、まさに大正解でした!!たかおくん!あなたでないとできない、とても素晴らしいお仕事です!!皆さん、そう思いませんか?!!」。
満場の大拍手と喝采が爆発した。 しばらく続く全ての生き物たちの「大はしゃぎ」が収まるのを待って、司会・生き物の閉会の挨拶が響いた。
「それでは皆さん!、本当に長時間の協議、本当にお疲れ様でした!”希崎”について、そして”サソリとカマクイ”について、その他にも様々な新しい課題も多々出てきてまいりましたが、「協議会」としては、以上をもちまして閉会とさせて頂きます!!本当にお疲れ様でした!!!」。
波乱に満ちたこの「協議会」は、更なる波乱を約束するように終わった。 「協議」の中で、「分解えら子」や「メジ式」の新たな人事も行われたが、「Hiたかお」についても「24時間態勢で「そら」のもとに常駐」と、シフト変更がなされた。 もとよりこれは「Hiたかお」自身が望んでいた事でもあり、「そら」の今後を考慮しての事でもある。 「大調査」そのものも24時間態勢となり、城東区内全域と京阪沿線の各定点に散在していた全ての生き物たちについても、その全てが「希崎」のいる「やさしさ倉庫」の所在地でもある「鴫野町と、野江付近」にさらに範囲を限定し、進める事となったのである。
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54
「FA637の報告」
朝方まで続いた「そらメール」のおかげで、
遂に一睡もできなかった「斎元」が、徹夜の決意を固めた午前5時。
「そら」が熟睡したのを確認した くたびれ気味の「Hiたかお」と「ゆきりん&ぽち」は、
「協議会・本体」へ向けて、待ちくたびれた「おがた」に乗って出発した。
ちょうどその頃「協議会・本体」では、3人の帰りを待たずに、
「協議会最後」となる「FA637の報告」に移っていた。
それは、閉会予定時間をはるかに超過してしまっていた為でもあり、
「そら」と行動を共にしていて一番”心労”の多かった「Hiたかお」が帰った時点で、
生き物たち全員の拍手で3人を迎え、それをもって”閉会”とし、
特に、よくしゃべるわりに案外神経の細かい「Hiたかお」の労をねぎらい、
ゆっくり休ませてあげようという、生き物全員の共通した思いでもあったからだ。
私達は全員が全員とも、”がんばった仲間”を賛嘆し、
その労をねぎらう事が 何よりも大好きなのだ。
「一の妄」と「ケリー・糸3番」などは「協議会・会場」に帰るなり、
”撃たれて死んだように”眠りこけてしまったのだが、
会場の隅の方に誰かが丁重に運び、
そして風邪などひかぬ様に、誰かが”ふとん”をかけている。
「協議会」に参加する全員も、この波乱に満ちて長時間に及ぶ「協議」に、
疲れない訳がないのだったが、
「誰かが誰かの為に、何かをする」事で、
その”疲れ”は半減する事を、皆、熟知しているのだ。
(司会・生き物)「さて!この協議会最後となりました、FA637からの報告に移りたいと思います!!それでは、FA637、お願いします!!」。
(FA637) 「長時間の協議!!本当にお疲れ様でございます!!そしてまた、最後の”取り”を頂き、本当にありがとうございます!! とても重要な報告でありますので、順を追ってご報告いたします。まず、この”NO.3”という業務用のPCについてですが、「よも清さん」とのやり取りの末、”静観”の態勢でのぞんでおりました。 ”静観の態勢”に至るいきさつについて、知らない方も多いかと思いますので、簡単に説明いたします。
わたくしの調査におきまして、個人のPC内部や企業のデータ・ベースに入り込む際、まず始めにウイルスの類か新種のスパイ・ウェアと感知され、入り込む前に排除されますので、こうしたセキュリティを解除した後でないと調査が始まらないのは、皆さんもご存じの事と思います。 ところが、この”NO.3”だけは簡単に入り込めた、というか、”わたくし以外のウイルスの類はキチンとブロックし、わたくしのみ、入り込めるようにしてあった”という所から始まります。 恐らく、何らかの仕方でわたくしの存在を認識していて、その上でわたくしの正体をつきとめようとしているのか、もしくはコンタクトを取ろうとしているか、そのどちらかではないか? という所で、しばらくはこちらから「動作」は起こさず、”静観”の態勢でのぞんでいた訳であります。 しばらくは何の動きもありませんでした。 その間にこの”NO.3”の社内での役割について、いくつか調べてみました。 「優しさ」という”商品”を取り扱うこの企業の中で、”NO.3”は主に「ダメージ・在庫」や、「不明品番の管理」、あと「イレギュラー・入出庫」などの、通常業務以外のトラブルの対応に使われている事がわかりました。 また、この”NO.3”を使っているのは「希崎」という人物で、この社内でかなりな重要ポストにある事もわかりました。 この「希崎」の動向の中にこそ、私達の「大調査」の全ての結論があるのです。 その理由ですが、”静観”の態勢のわたくしに対して、ついに”発信”をして来たのであります。 この”発信”は、間違いなく「希崎」なのです。 この「希崎」、まだまだ不明な点が多いのですが、大変な人物です。 なぜなら、その”発信の内容”そのものが、あまりに不可解である、としか表現できないのです。 では”発信”の内容です。(とのFA637の言葉に合わせて、協議会・中央のPCが作動し、FA637の説明に合わせて、その”発信”の内容を映し出す。)
wwwwww @@@@@
「始めのうちは、このような”試し打ち的”な発信でありました。 考えてみるとそれもそうです。 向こうからして見ると、自分の使うPCに何かが入っている、ウイルスなどではない何か、でも、それが何かはわからない。 わからないけれども、”出て行った形跡”はないので、入り込んだまま、じっとしている・・・。こんな感じではないでしょうか。 そして、数日の間、動きはなく、そして出し抜けに・・・これです。
はじめまして。 あなたは”何らかの生命”ですね。
あなたは言語を持つのでしょうか?
私はこうした日本語でのみ、発信いたします。
さて、結論を先に申し上げます。
告白です。
私を”裁いて”下さい。
それを私は強く望んでおります。
私は、同義的に許す事のできない犯罪を決行したいのです。
そして、極刑に相当する裁きをうけ、
この生涯を終えたいのです。
私の中で”返還”という言葉が重く、狂おしく、
そして甘美な旋律で響いております。
”極刑による裁き”こそが、私の望む死であり、
その事を”返還”というのであります。
1999年に、私の不治の病は発病しました。
そして、いよいよ本年が、最後の年となります。
病状が進行する中で、常に頭痛のように頭の中に響き渡る声。
””月の者.256N””・・。
これは、私の病の名称なのか? 私自身の”本当の名前”なのか・・。
いずれにせよ、荘厳な最後を遂げたい・・この実感こそが、私の真実であります。
ゆえに、 もう、時間がないのです。
あなたが、この”告白”に賛同する者であったとしても、
そうでなく、”私を止める者”であったとしても、
私のこの告白の意味する事が、認識できるのではないかと思い、
出し抜けに、告白してみたのです。
”アクション”を起こして下さい。日本語で、失礼いたしました。
希崎
以上がその内容です。
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53
「あまえんぼ」
出来事が 重なったから / ”おれたち”は 出会えた / すこし話した 白金を散りばめた様な夕暮れは / 薄い水色が 残っているのに / 沈みかけた太陽が 未だ暖かく / 飛び散ったように広がる 白い雲の / 輪郭を輝かせ 陰影を際立たせる / それは全てを讃える 地球の歌 / つかまえた”きみ”の ちいさな手は / もう はなした / 今 おれの全部は はなした後で / ”きみ”につかまえられた
(そら)「なあ、なあ、さいもと!なにごちゃごちゃかいてんの?」。 (斎元に代わって田川)「いやいや、そらくん、こいつアレやねん、詩が思い浮かんだらその場で書いときおんねん(笑) ”ヘン”やろ?(笑)」。 (斎元)「”ヘン”とかって言うな!今、傑作の予感がしてんねんって・・ちょっと待ってな・・・もうちょっと書いてから・・・」。 (そら)「なあ、さいもと、おれにもかいて!”けっさくのやつ”書いてぇや!」。 (斎元・自分の携帯に思い浮かんだ詩句を書きつけながら)「うん、そらくん、ちょっと待ってな・・・これ、できたらそのままそらくんの携帯にも送るわ」。 (そら)「そら”くん”の「くん」はいらんで(笑)!おれとさいもとの仲やろ? 「そら」とか「おまえなあ」とかのよびすての方がええで! だっておれらはバッチリ”愛ができとる”からな!」。 (思わず噴き出しそうになりながら田川)「えええっ?”愛”って(笑)・・・。しかも”バッチリ”(笑)?!!これ、笑ったらあかんトコ??」。 (そら)「あはは!!ええで笑って(笑)!!だって、男どうしで”愛”ができたら、それはもう、”ヘンタイ・プレイ”ってことやからな!!そんなもん、さすがのおれでも笑ってしまうで!!」。 (斎元も吹きだしながら)「あかんあかん!笑わさんといて!!書かれへん(笑)!!」。 (Hiたかお)「はっはっはっは!!!おまえの反応、めっちゃおもろすぎ!!腹いたい(笑)」。 (そら・自分の言葉がみんなに受けた事に気を良くして)「なあなあ、たかお!たかお!!おれの今の”発言”ってアレか? 「ボケ」てんの? 「突っ込ん」でんの?」。 (Hiたかお)「はっはっはっは!誰も「突っ込まれ」へんレベルでおもろかったで! どう「ボケ」たんか、誰も説明できへんな(笑)!!」。 (斎元)「あ・・・詩の言葉が・・・どっか行ってしもた(笑)」。 (田川)「あはは!よしお、あきらめろ(笑)」。 事件で集まった人々が引き上げ始める中、「斎元」・田川・「そら」・Hiたかお達が、それぞれの連絡先の交換や一通りのやり取りを終えた所で「そら」の携帯が鳴った。 「カイ」からの電話だ。 「1号が帰ったから、みんな集まってこれからの話しをしよう」との事。 もう少し話したかった「斎元」と田川だったが、「そら」の「ああっ!!1号が帰ったから、おれ帰るわ!なんか、カイギするから!!行くぞ、たかお!!」の一言で”あっさりお開き”となった。 しかし、”あっさり”していたのはこの解散の仕方だけだった。
「はしみ荘」に帰った「斎元」は、今日一日で起こった出来事が整理できずにいた。 結局の所はハッピー・エンドであった様な・・・。 「斎元」愛用のPCに向かい、さっきの詩作の仕上げにかかろうとした時、一本のメール。
「なにしてんの?」。
ーー あ!早速の”そら”メールや。 さっき、別れたトコやのに・・・ーー
「今、自宅に帰って、さっきの詩の続きを・・・」と、返信メールを書きかけて、少し考え、「いま、じたくにかえって、さっきのつづきをかいてたよ そらは、いま、なにしてるの?「カイギ」??」。 と「斎元」メール。 一拍あけて「そら」メール。 「おれわ かいぎわおもろないからおとなしいのです」。
「あはは
!むづかしいはなしをするのかな?」。
「そやな びーるとおさけとか かてきてやてるな
まあえんかいのかいぎやな
」。
「”えんかい”!おもしろそうやんか!そらも、おさけのむの?」。
「おれはのむけど あかあなるのでやめとくわ こんどさいもとのうちでえんかい
やろうぜ」。
「あ!いいね
~!!でも、そらは”みせいねん”やから、ないしょのえんかいをやろうか
」。
「そやな おれはみんせねえでもどうどうとえんかいやるで ふたりでやろ
」。
「よっしゃ
!!ふたりでやろう
!! なんか、おいしいもんかってきとくな
」。
ひとしきりのそうしたやり取りの後、メールは途絶えたが「斎元」の”ウキウキ感”は、「斎元」自身笑ってしまう程に抑えようがない。 まるでちょっとした恋愛小説の主人公が”念願の彼女をGETした”様な、のうてんきな自分。 読み辛い「そら」の”オール平仮名メール”が、その”難易度”が高まる程に「斎元」のたまらない高揚感も高まってしまう。 よくよく考えると夜食もろくに取っていない。 今晩は「どんべえ」ですまそうか・・・・とカップメンにお湯を注ぎ、さあ食べようか、というタイミングで、
「なにかんがえてるの?」。
と又、「そら」メール。
「あはは・・えらいタイミングやなあ・・」。 「どんべえ」をかき混ぜながら返信メール。 「まだおきてたの? おれのほうは、「そら」のことかんがえながら”どんべえ”をたべてるで!!おいしいじょ
~!!」。
「おれも さいもとのことかんがえてどんべえたべたいな
」。 「そら」のメールに「
」だとか「
」が入っていると、なぜか”ときめいて”しまう「斎元」。
「さっきの”えんかい”でなにか たべなかったの?」。
「たべた とおふうととりのおにくとごはんはたべた
おいしいじよ
」。
「あはは!それやったら、もうハラいっぱいやろ?”どんべえ”はむりちゃうか(笑)?」。
「そやな どんべえはないけどさいもとのこどかんがえてにこにこや
」。
「おれも、「そら」のことかんがえたら、なんかニコニコや
」。
「ほんならおなじやな
おれ どつかとんでいきそうやで
さいもと よこでたかおがはよねろとうるさいのでもおねます
こいつはほんまうるさいわ
」。
「あはは
!りょーかい!!たぶん、たかおさんは、おれのしごとのことかんがえて、そういうてるのやろうな?メール、たのしかったで
!!じゃあ、おやすみ~」。 ふっと時計を見ると、もう夜中の1時。 「どんべえ」も食べさしで少し残っている。 PCも待ち受け画面のまま。 ちょっとした”メールのやり取りだけ”にこれほど集中した事が今まであっただろうか? 取りあえず寝床についた「斎元」は、もう一度自分の携帯電話に残った「そら」からの着信履歴を始めから何回も何回も読み返し、こらえきれない程の”愛しさ”に、身もだえしてしまうのをどうしようもないのだった。 何度寝返りを打っても収まりようのない幸福感は、いったい何時間続くのか・・。 明日はキチンと起きな、絶対ヤバい・・。やっと待望の”睡魔”に身をゆだねた時、
「なにしてんの?」。
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52
「はたらき協議会の”中じめ”」
波乱に富んだ”はたらき協議会”は
深夜にまで及んだ
というのも 逃走に成功した「サソリ」や
その中で現れた「カマクイ」という”人物”に対しての
今後の対応について 様々に意見が分かれてしまったからだ
それに 「サソリ」の行方についても 現在地は掴めていない
ただ 「ヘリ」の行く先には 「ヘリ」ごと潜伏できるような場所はないので
”海外に飛んだのではないか?”というくらいしかわからない
おかしな事は もし潜伏先が国内でなかったとしても
「通信」に通達した「FA637」が 「ヘリ」のような”大きなもの”を
見失う事じたい 今までにない事なのだ
そして今回の事件のまっ最中ではあったが
私達の皆が待ち望んでいた「斎元」と「そら」のつながりも
予想外の展開で 成就された
これほどの喜ばしいことはない
私達は皆 この二人の恋を祝福した
しかし この事についても いく通りもの論議が起こった
というのも ほんの一瞬ではあったが 「そら」は
「斎元」とつながる事によって ”今までにない兆候”を示したからだ
ー 神経症的な兆候 ー
もしかすると「そら」のこの”兆候”は 今後更に強く現れてくるのではないか?
私達はこのことに対して 明確な回答を持っていないし
例えば”癲癇(てんかん)の発作”となると
何の知識も持っていない
それにしても「そら」が「斎元」といる時の 無防備な程に嬉しそうな顔を見ると
私達の誰もが嬉しくなり 合わせて 困惑もするのだった
”「はたらき協議会」、最後の取り”は 「FA637」からの報告となっていたが
その報告を前に あまりに次々に起こった突発時についての
今後の体制の組み換えを含む ”中じめ”を行う事となった
「はたらき協議会」は 当初言っていた通りの
流動的な「協議会」となり 開催時間も深夜にずれ込む事となった
(司会・生き物) 「・・・・という事で、多くの意見やアイデア・問題提起、本当にありがとうございました!!それではここで、ある程度の”今、出ている問題点のまとめ”を行いたいと思います!! 1・・・・行方がわからなくなっってしまった「サソリ」をどうするのか? 2・・・・「サソリ」の「月の者に進化する」との発言は、いったい何んなのか? 3・・・・「カマクイ」という人物は何者なのか?どこにいて「サソリ」とやり取りをしていたのか? なぜ”狙撃隊の位置や人数”まで、瞬時に把握できたのか?今、「サソリ」と共にどこかに潜伏しているのか? 4・・・・「そら」くんの”神経症”の兆候が次に出た時、いったいどう対処するのか? おおまかに大別すると以上の4点に集約されると思います。この4点は4点とも時々刻々に変化すると思われますので、現時点での対応の仕方について、「よも清さん」にまとめて頂こうと思います。では、「よも清さん」、お願いします」。 ここで、話しだそうとした「よも清さん」を遮って、「FA637」が話しだした。
(FA637)「すみません!!その”2点目”の「月の者」についての「サソリ」の発言ですが、”まとめ”をする前に注意点があるのです。 というのが、後ほど私の報告の中で細かくお話ししますが、彼(サソリ)がもし「月の者に進化する」というのであれば、それは「月の者」ではなく 「月の者に準じるもの・・か、月の者2号」という感じになるかと思います。 というのは、本物の「月の者」は、すでに実在しているからです。彼が”「月の者」に進化する”事はないでしょう。 ただ、彼は何らかの仕方で「月の者」とかかわっているのかも知れません。 それが注意点です。 途中ですみませんでした」。
(よも清さん) 「FA637、重要なお話、ありがとう!では、それを踏まえた上で、今後の対処の仕方を考えると、1点目・2点目の「サソリ」については、次に動きを起こしてからでないと、対処の仕方がないのが現状です。そして、その行動パターンも予測不能です。ですから、それなら、もとより予測はせずに、いったん「放置」でいいのでは?と思うのです。 ”危険人物”ではありますし”危険な動き”を「唐突に」起こして来るのでしょう。 そうであるならば私達の対応も「唐突な対応」に通達しておきましょう。 それと、彼の「月の者・発言」ですが、私は、これは”たまたま”だと思います。 「和解マン」の時がそうだったでしょう? 「和解マンとつながっている」という素振りをしていて、実はそうではなかった、という事が。 今回の「月の者・発言」についても、同じパターンである可能性があります。 どうも彼は、そうした運命を持っているのか、”たまたま、そこにいる”事が多く、それが続いてしまう運命の様です。 そうした”たまたま”の積み重なりの中で、自身の「使命」を感じ、自信をつけてしまい「進化」しているのでしょう。 「全裸」は、彼の自分自身に対する”自信と確信”の現れなのではないでしょうか?”たまたま”の使い方において、彼は天才的だと言って良い。 厳重注意の上で、今は「放置」です。
次に3点目の「カマクイ」という”人物”ですが、この”人物”は、「人物」なのでしょうか? 私は恐ろしい予感がしております。 「人間」ではないような気がするのです。 (一斉に場内はどよめく)考えてみると、「サソリ」が籠城している時、「カマクイ」は外にいてサポートしていました。そのサポートの仕方が”おかしい”様に思えてなりません。 どこからサポートしていたのかはわかりませんが、あの”数秒”のあいだで「そら」を追う20名の暴漢への指示の変更をし、同時に”狙撃隊”の位置も確認し・・・。まるで「FA637」の通信技術のようです。もし「人間」であれば、かなり高価な、それこそ軍事的な機材を必要とするでしょうし、暴漢達にはどの様な仕方で、急な指示の変更を伝えたのでしょう? メールでしょうか?メールで「暴漢達の誰が「そら」を追って、誰が狙撃隊を・・」という細かな指示を発信する時間があったかどうか、微妙です。 暴漢達は「無線」は持っていませんでした。 まるで”私達、生き物”のやり取りそのままのような気がするのです。 ありえない事ですが、「私達の知らない、私達のような様々な”機能”を備えた生き物」である、と考えた方が自然かもしれないのです。 どうでしょう? もう一点、ひょっとすると「サソリ」の「月の者・発言」の裏には、この「カマクイ」が何らかの仕方で絡んでいるのではないでしょうか? この「カマクイ」については、今は何の情報もありません。 動きを掴んでおかないといけないのは、「サソリ」よりも、むしろこの「カマクイ」の方です。
この「カマクイ」についての「身辺調査」には、新しいメンバーに一任しようと思っています。
「メジ式」です。(呼ばれた「メジ式」は少し照れ気味に進み出て、一礼。場内、大拍手)
この「カマクイ」の動きを把握する事で、ひょっとすると予測不能の”「サソリ」のこれから”が掴めるかもしれません。 私の”カン”ですが、今、「サソリ」と「カマクイ」は別行動だと思います。 「サソリ」の籠城から逃走までの行動はあまりにセンセーショナルすぎましたし、あちこちに散在する多くの暴漢達を指揮するには、潜伏したままでは困難だと思うのです。 「完全武装」、などと言っていましたね。 そのような準備は「公」になってはいない者で、しかも自分に代わって自分の意思を分け持つ者に託すのが価値的でしょう。 たぶん・・ですが、今は「別行動」です。 当面、「メジ式」には、軽い”身辺調査”からお願いします。
次に4点目の「そら」くんの新たな”兆候”についてですが、この事について私もそうですが、私達の中で何か知識のあるものはいないのです。不がい無いばかりなのですが、どうしていいのか分からないのです。 ただ、注目なのは「斎元」さんの”とっさの言葉による対応”です。 「まちがってない」・「大丈夫」を連呼していましたね。 恐らく「斎元」さんは、「そら」くんの”暴力行動”は認められないけれども、あからさまに凹んでしまった”「そら」くんをどうにか元気付けたい、との思いが溢れての「言葉」だったのでしょう。 「斎元」さんの優しい人柄が、そうしたとっさの言葉に現れている様です。 それによって、ひとたび歯車の外れかけた様な「そら」くんの神経は、驚くほど簡単に改善されました。
今後、私達と「斎元」さんとの、もっと深い接点を持つ事で、私達の”「そら」くんの守護”はよりいっそう強く確かなものになるでしょう。 そこで「斎元」さんには、「ゆきりん」と「ぽち」、そして、私達の中では小々口うるさい所もありますが、最も”心優しい生き物”でもある、「分解・えら子(ぶんかい・えらこ)」さんに付いて頂こうと思います。
(呼ばれた「分解・えら子」も一歩進み出て、一礼。 場内、大拍手)
長くなってしまいましたが、私の方からは以上です!!」。(場内・大拍手・歓声)
(司会・生き物)「よも清さん!丁寧なお話し、ありがとうございました!!時間もかなり押しておりますが、最後の”FA637”からの報告に移る前に、いったん休憩をはさみたいと思います!!」。
私達の”中じめ”が「よも清さん」の話しを中心に進んだこの日の夕刻
京橋の激しい人だかりから逃れた「そら・斎元・田川・Hiたかお」は
あらためて見上げた夕焼け空が 今までにないほど美しいと思った
「斎元」は 落ち着いたところで 作業着のポケットの中で熱くなった
「そら」の携帯電話を 「そら」に手渡した
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51
「そらの告白」
「皆さん!!!!たった今、警察側からの”投光機”による合図がありました!!という事は、「犯人の逃走を阻止しない」という事なのでしょうか???・・・・これは・・・これは、前代未聞です!!警察側からの発表は何もありませんが、いよいよ”クラクションによる「合図」”が一分後に迫りました!!警察側は犯人グループを完全に包囲しているにもかかわず、これだけ多くの人々の目の前で”犯人を取り逃がす”という事なのでしょうか?すでに尊い命も失われております!!何か打つ手があるのでしょうか?わたしたちは今はただ・・・ただ、こうして見守る以外、なすすべがありません!!」。
群衆の緊迫が、京橋界隈全体を包んでいるというのに、不思議な静けさ。 そこに居合わせる全ての人々が、まもなく現れる犯人がなんらかの仕方で取り押さえられ、逮捕される劇的な瞬間を思い描こうとしているのかも知れない。 しかし誰もが”その仕方”が想い描けず、あるのは犯人の”凶悪な笑顔”だけでもあった。 人質は未だ拘束され、その身の安否さえ確認できず、「これ以上の殺害は、しない」という犯人の言葉を信じる以外にない。 「警察はどう対応するのか?」・・・・。暗い予感が多くの人々に分け持たれる中、各局のアナウンスのみがむなしく、そして大きく聞こえる。
そして、
警察によるクラクションの合図。
一回目・・・・
二回目・・・・
三回目・・・・
クラクションの音は、ゆっくりと緊迫して、
そこに居合わせる全ての人々の心の中にまで大きく響く様だ。
四回目・・・・
五回目・・・・
「ガタッ!!」
というもの音とともに人質となっていた4名の女子事務員が、やはり拘束されたまま出てきた。次いでその事務員を盾に2名の暴漢が、取り囲む警官隊を威嚇するような、”犯人グループ”としてはもっともな姿勢で警戒しながら。 その後ろに「滝沢 何んパオ」。 そして「滝沢 何んパオ」の後ろからゆっくりと現れた「サソリ」の姿を見て、全ての人が言葉を無くしてしまった。
一糸まとわない”全裸”。
自身に集まる全ての群衆の視線を押し返す程の、強い眼光を放ち、その上で悠々としている。 各局の生中継のカメラの何台かは慌ててカメラを止めようとしたが、もう、間に合わない。
「・・・・・な・・何んなのでしょう??!!は・・・犯人が・・」。
解説の言葉が出てこないアナウンス。
「は・・犯人が・・・狂人か?・・・・」。
「サソリ」は、唖然とする警官隊と群衆を一旦”睥睨(へいげい)”する様に見まわし、
素早く何らかの手の合図をした後、うれしそうな笑みを浮かべる。
全ての人々が騒然とする中へ突風が巻き起こった。
「ヘリ!!!!!
ヘリが急降下してきま・・・・」。
「カマクイ」の用意した「ヘリ」がこの市街地の真っ只中に降下してきたのだ。
「京阪モール」や「ホテル京阪」のショウ・ウィンドウに、吹き飛ばされた自転車やバイクが撃ちつけられ、砕け散る破壊音と人々の悲鳴が一気に巻き起こった。 一旦”騒ぎの中心へ、中心へ”と集まった「人の流れ」は、「悲鳴」と「どよめき」と共に発狂したように慌てて”外へ、外へ”。 各局の取材陣も「ヘリ降下」による突風で、カメラが機能せずアナウンスもままならない。 この「サソリの奇行」と唐突に降下して来たヘリにより、群衆もろともに競うように走りだそうとするが、誰もが誰かの邪魔になるばかりで、折り重なって転倒し進めない。その上へ落下するバイクや自転車。 怪我人の悲鳴。 痛ましい”人間の津波”が巻き起る。 警官隊は息を飲んで、ここで鳴り響くはずの”射撃音”を待ったが、群衆の悲鳴と、態勢を立て直したアナウンスが随所で大きくなるばかりだ。 すでに失われた”切り札”。 「犯人です!!犯人が今、出て来ました!!”全裸”です!!何んなのでしょう??何の主張でしょうか?全く理解できません!!気が違ったのでしょうか?・・そして・・・そして・・あああっ!!犯人が降下したヘリに乗り込みます!!約束どうり、「何んパオ」以外の事務員は開放されました・・・が・・警察の反応がありません!!そのままです!!そのまま、笑みを浮かべた犯人が・・犯人が乗り込んだヘリがゆっくりと上昇して・・・・・・」。
パニックの波は「そら」達3人と、それを追う暴漢をも巻き込んで「津波」の様に広がって行く。
多くの人々が未だかつてない事件に遭遇した驚きと、
今すぐにでも身に迫るような危機感に満ちていた。
実質、落下したバイクや自転車の下敷きとなった為の死傷者もあちこちにいる。
しかし、「そら」達3人はその波にもまれながら、
全く別世界の危機感に満ちていた。
・・・ 「そら」くんが・・ヤバい。
「おれはあかんかったおれはあかんかったおれは・・・」。
「斎元」に引っ張られるがままの「そら」は、小声の早口でそう つぶやくのみ。
「Hiたかお」も「・・・お、おい・・・」から先の言葉が出てこない。
間断なく次々にぶつかって来る人々。 「斎元」が口火をきった。
「そらくんは・・・・
そらくんは、立派にがんばった!!そらくんは、
おれを守ろうとして、そんで、一生懸命にがんばった!!
だから、そらくんは、まちがってない!!!」。
「おれは・・・・・・???」。
「そう!まちがってない!”あかん”事ない!!
だって、おれにくれたメールだって、一生懸命に自分の事を
上手に説明してくれたやろ??あれだって、バッチリまちがってない!!」。
「おれは・・・バッチリ・・まちがってない?・・・まちがってない」。
「そら」の瞳に光が戻った。
「それは、アレか?おれはまちがってないことは・・
サイモトと同じイケンでまちがってないって話しやな!!!」。
一拍考えて「うん!!大丈夫!絶対に大丈夫!!まちがってない!!」。
「斎元」は押し寄せる人の波に分断されぬ様、「そら」の手を強く握る。
「そら」は包まれたような気持ちでいっぱいになり、嬉しくなった。
「斎元」は、「そら」の小さく細い指先が、”ぶよぶよ”した「斎元」の手に
食い込む勢いで力強く握り返す感覚で、「そら」の心が了解できた。
「そらくんは、一生懸命にがんばった!だから大丈夫!大丈夫!!」。
「おれは・ ・ ・ ・ だいじょーぶ・・」。
この二人のやり取りを後ろから見ていた田川は、
同じく人の波を交わしながら、そして同じく、嬉しくなった。
「おれは、それやったら、たまらんわ!!
なあ、サイモト!!たまらんくらい、サイモトがすき!!!」。
「お・お ・ ・ ・おれも・・・そらくんが・・・すき ・・・」。 急に小声の「斎元」。
「もっとでっかい声で言えよ!!
おれは、サイモトがすき!!!」。
「おおおおれも、おれもそそ・・そ、そらくんが好き!!」。
「この人ら、みんなに聞こえたらいいねん(笑)!!
あははは!おれは、サイモトがすき(笑)!!」。
「おれも、そ、そらくんが好き!!大好き(笑)!」。
まもなく人の洪水から抜け出ようとする3人の後方で、
思わず笑ってしまう田川。 「Hiたかお」はこの顛末が、
「はたらき協議会・本体」に、無事中継できた事を確認し、
田川と同じく、思わず微笑んでしまうのだった。
多くの人々が、轟音と共に上昇する「ヘリ」に集中していたが、
「斎元」たちには、そんな事はどうでも良かった。
100メートル程も上昇すると、京橋駅近辺に密集する群衆は、
「アリの群れ」のように見える。 そんな中でも今の「サソリ」の、
研ぎ澄まされた感性は、その中の「6号」をめざとく見つけていた。
「6号・・しばらくは・・・しあわせに暮せ・・また、会おう」。
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50
「カマクイ」
・・・・・・なぜこの子は、
おれの言葉を、そこまで重く受け止めるのか?・・・・
「斎元」は「そら」の極端な変化が理解できない。
いったん勢いを無くしてしまった3人にとって、群衆の勢いは圧倒的だ。
立ち尽くす3人をもろともに押し流してでも、”事件の中心へ、中心へ”と
流れようとする。 まもなく”犯人の指定した合図”の瞬間だからだ。
上手く会話の矛先を変えようとした田川は
この突然の失速・停止に対し、何のリアクションもできないでいる。
「よしお・・・とにかく、これ以上、いらん事言うな・・」。そう祈るような思いで、
ぶつかって来る群衆にぶつかり返すくらいが関の山で、
逃走どころでは無くなったのを、どうしようもない。
一番うしろにいる田川から見ると群衆のあちこちに、
「暴漢達」らしき姿が見え隠れするのがわかる。
・・・ おれたちを探している!!・・・
しかし、失速・停止の「そら」と、それに見合う反応が見つからない「斎元」の、
”ぬぼ~”っとした後ろ姿に苛立ちこそするが、かと言って、
ではどう対応するのか考えるゆとりも、かける言葉も見つからないのだ。
(「Hiたかお」が「そら」の肩の上から)
「おい!!そら、おまえ、好きやキライや言うてる場合とちゃうで!!
ごちゃごちゃ言うてんと早よ行こ!な、行こ行こ!!」。
(そら)「・・・・・うん・・」。
”斎元救助”の為に現れた時の、男らしい闘争心に光る「そら」とは
一転し、今 騒ぎ立てる群衆にもまれて立ち尽くす「そら」は、
”置き去りにされた子ども”のようだ。
「そら」の心は 急激に凍りつき、ひびわれる感覚でいっぱいになった。
「めっちゃ、がんばってんけど・・・おれは、あかんのんか?・・・・・
それやったら・・・それやったら・・・もう、全滅やん・・・おれは、あかんかった・・・・」。
まったく常識を欠いた訳ではない”群衆”は「そら」にぶつかり、
一瞬「あ、ボクごめんね」という手のしぐさこそするが、
”騒ぎの中心の白熱”は、いよいよ常軌を逸している。
「Hiたかお」が「なあ!!おいって!!そらっ!!進もう!!
めっちゃ流されてるがな!!おいィって!!!」
と「そら」の顔を覗き込んで、そして息をのんだ。
左右の眼の間、額の位置に”青い筋”がうすく浮かび、
「不安・パニック」の神経的な兆候が兆している。
「Hiたかお」は「そら」の持つ”療育手帳”の中に、
「心因反応・癲癇の発作アリ」と書いて消してあったのを
ふっと思い出し、ぞっとした。
「・・・・お、おい、大丈夫か・・・おまえ・・・・・目が・・・」。
「そら」の瞳は焦点を失い、”散らばっている”。
ーーー画像は「一の妄」の視点で、サソリ達が籠城する事務所の入り口からサソリたち(特にサソリは”見えない設定”が反映されず、一の妄とケリー・糸3番が見えてしまうので)に見つからぬように息をひそめて中のやり取りを窺う。 中の誰かが持っているはずの「銃器」の位置も探しながら ーーー
(サソリ・かかって来た携帯を取って)「おお、カマクイか。”用意”はできたか?」。 (電話の相手・カマクイという”男”の低く くぐもった声)「はいサソリ様。 万全でございます。 そちらの上空にもう到着しておりますよ」。 (サソリ)「了解。ところでカマクイ、何か感じないか?何かがいるぞ。 人ごみの中だ。狙撃隊?おれが出た所をヤルつもりだろう? 奴らの”選択肢”はそれしかないはずだ・・・。そこから確認できるか?」。 (カマクイ)「・・・・・・・・さすが、ですね、今、確認できました。 3名、いや4名。ごく少数ですので、恐らく精鋭でしょう。どうされますか? ”合図”まで、もう時間があまりありませんが」。 (サソリ)「今、6号を追っているのは何名だ?」。 「20名がバラバラに追っております」。 「6号を追うのは3名でいい。 後の者は全員でその狙撃隊の背後に付けさせろ。 タイミングが大事やな。 一回目の投光機での合図の直後にしよう。投光機の後、突然に襲いかかるように指示してくれ」。 「承知いたしました。では それで”チェック・メイト”ですね。”身動きができない”のはこちらではなく、警察の側に転じます。良い展開ですね」。 「連中には”報酬”も”クスリ”も弾む、と付け足してやれ、はっはっはっ!!本当に良いショウになりそうだな」。 「はい。では段取りにかかります」。
ーーー(「一の妄」より、協議会・本体の「よも清さん」へ)「よも清さん、今のやり取り、聞き取れましたか?飛び掛かって取り押さえましょうか?サソリを叩きましょうか?バシバシに!!」。 (よも清さん)。「はい、聞き取れましたよ。 一の妄、飛び掛かるのも叩くのも、止めておきましょう!今の場合、サソリが無事に逃げおうせた方が、被害者が少なく済みそうです。 いいタイミングを見つけて一旦引きあげましょう!それよりも、電話の相手が気になります。 サソリの直感も気になるところですが、その”カマクイ”という人物、外に隠れている「狙撃隊」の位置をどうやって確認したのか?よく分かりません。 まるで、「FA637」がそこにいる様じゃないですか?・・・・多々気になります・・・が、しかし、良いです。引きあげましょう。 「Hiたかお」くんの方が緊迫しているんです。 「そら」くんに異変が起こっているのです」。 (一の妄)「よも清さん、了解しました!!「そら」に異変ですか?「そら」は無事ッスか??「たかお」は何をしてるんですか?ごっつい気になるんですけど・・・取りあえず、引き上げた後で状況を教えてもらえますか?」 (よも清さん)「わかりました。取り急ぎ、「そら」くんは、無事は無事なのですが・・。細かくはこちらと合流した時にお話しします。気をつけて!!」。
JR・京阪京橋駅周辺のあちこちで、TVカメラに向かい実況中継を続ける各局のアナウンスも、いよいよ慌て気味に、そして、力のこもったものになり、”騒ぎ”そのものをより一層騒々しい空気にする様だ。
「いよいよ犯人が姿を現す瞬間が近づいてきました!!さああ!!大変な騒ぎとなっております!!これは緊急生中継です!!あちらの方(国道の方へカメラが移り)をご覧ください!!大変な渋滞となっております!!警察の交通封鎖にもよるのでしょうか?大変な渋滞となっております!!えっ?12キロ?10キロ?・・という事です!!10キロ近い渋滞がこちらの現場を中心にええっと・・京都方面??京都・・あ、失礼しました!!京都方面から大阪市内にかけて、約10キロの渋滞となっております!集まった人もこれ・・大変な事になっております!JR京橋駅から京阪京橋駅にかけての通路や、”第二トリガイビル”周辺の幹線道路の全てが、「人」で身動きが取れなくなっております!!今、わたくしが立っておりますここから緊迫する現場が見えますが、犯人が立てこもった事務所を中心に、警官隊とパトカーが円陣を組む様に包囲しているのがわかります!!まもなく・・ですね?はい、まもなく、犯人が指定した”合図”の瞬間です!!警察側は”合図”をするのでしょうか?犯人達は出て来るのでしょうか?そして、人質となっている事務員の方々は、本当に解放されるのでしょうか?!!そして・・・・・・・」。
ー警察による、投光機での合図ー
界隈を埋め尽くしている多くの人だかりが一瞬だけ静まりかえった。
”投光機による合図”。これは「犯人の逃走を阻止しない」という合図だ。
一瞬だけ静まりかえった群衆の全てが、犯人がまもなく姿を現すだろう瞬間へ向けて、
一斉に”どっ”と動いた。
「騒ぎ」から少し離れた所で、若干の”乱闘音”が起こったが、
白熱した人々は、誰一人として気づかない。
この”乱闘音”は、警察側の「最後の切り札」が
失われた事を意味する。
この白熱した「群衆の流れ」に、
勢いを失った「そら」は、力無く飲み込まれてしまった。
「あっ!!」。
田川が思わず声をあげた。
「斎元」が怒るような勢いで群衆を突き飛ばし、
3人の逃走のベクトルの先頭に躍り出た。
後方の田川から見て、胴長短足の不格好な「斎元」が、
慌て気味に、しかし確実に。
そして、人でもみくちゃになった「そら」の、
力を失った細い手を取って言った。
「そらくん!行こう!!」。
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「斎元の失言」
京橋駅前の異常なまでの人だかりが一気に動いた。
京阪電鉄側の「ホテル・京阪」や「京阪モール」のあちこち、JR京橋駅からも、
この「事件」の目撃者たろうとする群衆の勢いに、
各局のTV中継の競うようなアナウンスがさらに”火を注ぐ”様だ。
「出て来ました!!!今度は・・今度は”教祖”の「何んパオ」が出て来ました!!!何でしょう??あ!!歩み出て・・警官隊が・・警官た・・・・ん?んんん??何か、歩み寄った警官隊に身振り手振りを交えて・・・何かを指示している・・ようです。ん??マイク・・・??「何んパオ」に言われて、慌てて警官隊が・・・マイクを持っていきました!!何んでしょうか??まさか、ここで・・・演説??」。
ーーー 若干のマイク・ノイズ、ハウリング・・・・・ ーーー
「あ・・・あ、あ、あああ・・・・マイク、OKですか?? あ、え、い、う、え、おおお・・・。マイク、大丈夫ですか??てす・・てす、てす。(ぽん、ぽん、というマイクを叩く音)ええ~、皆さん!こんにちわ!わたくしは”滝沢 何んパオ”であります!!この様に多くの方々がお集まり下さる中、わたくしめの様な若輩が、何をお話しさせて戴くかと申しますと、これはまさに「受難である」という事であります。 そして此処にお集まり戴いている皆さまは、まさに その目撃者である、という事であります!!これは、ルック、ミ~です!!まさに、ルック!ミ~!」。
「何んパオ」の”素っ頓狂に張りのある大声”が、一斉に集中する”群衆”の更なる強い集中を生む。 「サソリ」が、”籠城”を始めてから、ただでさえ熱くなった「京橋全体」を「?????」という妙な空気が広がり、次いで、町中にひしめく様な人の渦の、そこかしこから、ざわめきが起こっている。「犯人グループからの伝言です。 ”我々の逃亡を阻止してはならない。 もし阻止するならば、更なる死傷者を出すのみである”・・との事です。 わたくしは、今、わたくし自身が命の危険にさらされている、という事を前提として申し上げる訳でありますが、犯人たちの要求通りにして戴きたいのです。 その上で、いったん逃げた犯人の逮捕の為には、どの様な労も惜しまないのであります。
これは、あの中(事務所を一瞥し)にいる、首謀者の了解を得ての、演説であり、ひょっとすると、わたくしの最後の”説法”であるのかも知れません。 今から5分後に、人質となっている事務員と共に、犯人達は出て参ります。 警察の皆さん、犯人の要求どうりにするのであれば、3分後に投光機で合図をして下さい。 そして、4分後に、今度はゆっくりとクラクションを5回、鳴らしてください。 ゆっくり・・・ですよ!! それを確認した後、5分後に犯人達は出て来ます。 犯人達の逃走の仕方については聞かされておりませんが、今、人質となっている事務員は、犯人が此処から発つ直前に開放されます。 そして、わたくしが引き換えに犯人達と行動を共にします。 わたくしが開放されますのは、犯人達が完全に安全な状態であると、首謀者が確認した時点であります。
わたくしと、教団の皆さんに、どうか”和解マン”のご加護のあらん事を!!そして、本日ここにお集まりの全ての皆さまに、幸あらん事を!!以上です!!」。
「何んパオ」はそう一方的な演説を結び、再び「サソリ」たちが籠城する事務所へ戻っていく。 警官隊の動きは未だ開放されていない事務員の事を配慮してか、慎重だ。 犯人に対しての呼びかけすらできない程に。 その有様を、”現場”周辺を取り巻く各局のマスコミ・報道陣がカメラを前に様々に語っている。 この強い群衆の”集中”から、少し距離をおいた死角となる位置に、密かに「狙撃隊」が配置され、「サソリ」達が人質と共に出て来る”5分後のその時”へ向けて、犯人狙撃の照準を定めていた。
「斎元」の不用意な一言。
狂ったように騒ぎ立てる群衆をかき分けて逃走する「そら」に続き、
「斎元」、田川。 この模様は「はたらき協議会」のPCからも、
「Hiたかお」の視点での映像として映っている。
「ネコ」、「ヘビ」達と分散した後、「そら」の本能的な、
”追手をかく乱する才能”に導かれた「斎元」も田川も、
会話すらままならぬ程に、ついて行くだけで精いっぱいだ。
今、町中に渦巻く騒ぎの渦は、”かき分けて”というよりは、
”こちらからぶつかっていって進む”といった方が正解だ。
「走って!」。 「しゃがんで!」。 「普通にして!」。
先頭を行く「そら」のそうした一言一言は、
暴漢達を撒くのにはことごとく的を得ていて、
機械で計測した行動の様に的確で、間違いがない。
・・・・この子、スゲえ・・・・ 「斎元」も田川も、端的にそう思った。
自分達を追ってくる暴漢達が、
明らかに自分達を見失っているとわかる様な、
「鬼ごっこ」としては、見つけられる可能性はまだまだあるが、
ちょっとだけ有利なポジション。
この”微妙にゆとりある逃走劇”は、怒りに我を忘れた「そら」の怒りを、
「なぐるのは、やめよう・・」の一言で沈めた「斎元」が
開いたのではあったが、「斎元」の”非暴力思想”は、
その「一言」のみで止めておけばよかったのだ。
(Hiたかお、(そらの肩につかまりつつ))「おまえ、こんなんさしたら、ホンマ、天才的やな!!負けるわ」。 (そら)「あはは!だから言うてるやん!!、何んでもおれに任しといたら、何んでもかんでもOKやって!!」。 (Hiたかお)「何んでもって(笑)・・・。急に飛び出して散々にみんなに心配かけた人が、よう、言うわ(笑)!おまえ、みんなと斎元さんに感謝しなあかんぞ!ねえ、斎元さん!」。 「そら」の肩の上から普通に話しかける「Hiたかお」の形状が、どうしても慣れる事ができない「斎元」だったが、「いえ・・・いえ」とだけ言って、言葉を濁す。 「斎元」には、”この生き物が話しかけてくる”事じたい驚きだったが、それ以上に、このドタバタの中で再会した「そら」の変化に、付いて行けていないのだ。 はじめてコンビニで見かけた時の笑顔の「そら」。 土砂降りの中で、泣いていた「そら」。 その時のはじめての会話。 怒りに我を忘れ、鉄パイプで殴りかかる「そら」。 あの暴漢は即死していないだろうか? 「斎元」の困惑は、この「そらの暴力」によってさらに深まる。 「斎元」はいかなる場合でも、「暴力」には賛同できないのだ。 それが、まさか”想い続けていたこの子が・・・”と思うと、微妙な動揺は隠せない。 そして、成り行き上、町全体が”おかしくなった中”を一緒に逃走しながらの、今。 田川は「Hiたかお」に少し”ビビり”ながらも、「たかおさん・・・・っていうんですか?あなたは?」と、満面不思議いっぱいで、しかしちょっと面白くなってきている。 「”感謝しなあかんのは、こちらの方ですよ!!「そら」くんが助けに来てくれなかったら、どうなってたか・・・。 こいつは(と斎元を指し)、そんな事も考えんとモノ言うもんやから・・・。まあ、結局はそれで良かったんかも知れませんケド・・・」。 (Hiたかお)「結果オーライですわ。 だいたい、こいつは(と「そら」の肩の上で、「そら」の頭をポンと小突きながら)”そういう事”、多いんですよ。 やってる事はめちゃくちゃやねんけど、周りの人が何んとかしようとして、で、結局はそれで良かったって事になる(笑)。本人はよくわかってない(笑)・・・。 あ、ところで、「お友達さん」、すみません、お名前は?」。 (田川)「ああ、すみません!!ぼく、田川です。 斎元の保護者です(笑)よろしくお願いします!」。 (斎元)「保護者かよ(笑)!」。 (そら)「おい、たかお!おまえ、しゃべりすぎやぞ!!あいつらまだ、あっちこっちおるで!! アレやったら、さっきの時に、全員”シバ”いたったら良かったで!!おれは”ちっこい”けど、気合いで勝つからな!」。 (Hiたかお)「じゃなくて・・・だから・・・・」。 (斎元)「たかおさん、ですよね?、そらくん、おれはね結果が良くても、その中で人を傷つけたのは、良くなかったと思うんですよ・・・」。 「斎元」のこの一言で、群衆にぶつかりながら進む3人と「Hiたかお」に、”サっ”と軽い緊張が走った。 田川は ーー 今、その話しの流れ、やめといた方が・・・・ ー そう感じた。
「確かに・・・確かに「そら」くんの言うとおりやねんケド・・・。
おれは・・・おれは、やっぱり、暴力は受け入れられへん・・・。
どんな場面でも、暴力はキライなんです・・・」。
「Hiたかお」も、先頭を行く「そら」の顔をチラッと見て、この話しの流れはもっと時間のある時に、ゆっくりと「そら」に話して聞かせる話題であり、今、「そら」の勢いを止めてはいけない・・・そう感じた。 「よしお!おまえ、会いたかった「そら」くんに急に会えて、ひょっとして、ちょっと”壊れ気味??(笑)” 落ち着け(笑)!!ところでたかおさんって・・・」。 機転をきかせた田川がそう言って話題の矛先を変える。 「どういう”生き物”なんですか(笑)おれ、めっちゃ気になってるんですけど・・」。 (Hiたかお)「では、説明しましょう!!ボクはですね、与一っていう・・・」。この話題にのって、滔々と説明を始める「Hiたかお」。
この逃走の行く先を開く「そら」の足取りが、明らかににぶり始めた。
「そら」がちらっと「斎元」の方を振り返ると、うつむいてしまったまま、
しかしこの逃走を怠る訳にもいかずに進む斎元。
「うけいれられへん・・・・・」。
「・・・・キライ・・・」。
斎元の言葉を繰り返す「そら」。
そう呟いたとたん「そら」は、急に動力をうしなったあわれなおもちゃの様に
立ち止まってしまったのだ。
「おれ・・・。
おれ、サイモトにそんなんゆわれたら・・。そんなん、おれ・・・・・。
おれ・・・全滅やん・・・」。
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