晴走雨読

サロマ湖ウルトラマラソン挑戦記 その3

夜9時にベッドに入ったもののなかなか寝付けず。
ウトウトしたものの11時頃に目が覚める。
どうも頭が重い感じがして寝られそうにない。
ロキソニンを睡眠薬代わりに飲んでなんとか眠る。
1時半頃隣の部屋の物音で起こされる。しかたないので私も起床。

外を見ると・・・雨が降ってる。

走る格好に着替えて全て準備を整えてから食事へ。
レストランはなんと1時半から営業してる。お弁当的なものが置いてあるだけかと思ったら普通に料理が置いてある。
マラソン大会の宿では朝食をちょっと早めに提供してくれる所もあるが、全く普段と変わらない時間の所も多い。
午前1時半からフルサービスの朝食は凄い。従業員の皆さんありがとう。
でも走る前にはあまり食べられず。お雑煮と菓子パンをふたつほど頂く。

3時にバスでスタート地点の湧別町へ向かう。
外は相変わらず雨が降り続いている。
バスの中はしゃべる人もなく静まりかえってどよ~んと重い空気が漂ってる。
大会前のさあ頑張るぞって雰囲気は微塵も感じられない。
なんか囚人護送車みたいだった。

約50分でスタート会場の湧別運動公園に到着。

雨が酷いので更衣室でもある室内競技場みたいな所でみんな待機。下は砂なので座ることもできず。






スタート前からこんな雨に降られるのは初めてだし、予報を見ても一日中降り止む気配なし。
こんな天気の中100kmを走り切る自信全くなく、モチベーションもゼロ。

15分前に建物を出てスタート地点に向かう。

実はシューズは雨対策を念入りにしていて、両面テープとビニールで防水処理。
最後まではもたないものの、しばらくは足が濡れるのをふせげるだろうと思っていたが・・・

スタート地点に行くまでにほぼ剥がれてしまいました。お粗末。

ちなみに当初はスマホを持って走る予定でしたがこの雨で断念。よって走ってる時の画像は全くありません。



そして午前5時いよいよスタート。
スタート直後にはウィンドウブレーカーから雨が滲みて中のウエアまでずぶ濡れ。

少し走るといきなり渋滞が。道路が冠水していてみんな水たまりの中ををザブザブと。多少の雨対策は全く通用しません。

一度近くをぐるっと回ってきてスタート地点に戻る。仮設トイレが空いていたのでここで一度目のトイレに寄る。寒かったのでその後もトイレが近くて大変な大会だった。

湧別の街中からいよいよサロマ湖とオホーツク海に突き出した細い半島の先端に向かう。
海が近くなると風も強くなってきて濡れた体から体温を一気に奪っていく。

走れば身体も温まってきて寒さも感じないだろうと思っていたが、考えが甘かった。
もっと早いペースで走ればそうだったかもしれないが、ウルトラでは前半からそんなに飛ばせないし。

トイレはそこそこの数用意されていたが、この寒さでどこも大渋滞。脇道があるとそこに入って立ちションする人が目立ちはじめる。

15km付近で公衆トイレを見つけ2度目の小用。比較的空いていてほとんど並ばずにすんだ。

20km地点、半島の先端三里番屋で折り返し。向かい風が強くて体温がどんどん奪われる。雨対策を完全に失敗した事を悔やむ。

こんな悪天候にもかかわらずエイドなどで地元の中高生が声を枯らして声援してくれる。
特に「かぶり水」という暑さ対策のための給水が5kmおきにあるのだが、この雨では全く無用の長物。立ってるだけの中高生ボランティア気の毒。

25km付近で仮設トイレに駆け込む。6~7人並んでいて待ってる間に身体がどんどん冷えてガタガタ震えがでてくる。

身体が温まらないので足の関節がギシギシいってるような感覚がずっとあり、30km過ぎると遂に右足の付け根付近から痛みを感じるようになってしまう。

ちなみに手袋はずっとしてました。当然雨でずぶ濡れです。手を握ると水がジャーっとしたたり落ちるほど。それでも手袋なしよりは手が冷えないのでした。


ここまではずっと農場や牧場の中の広い道がコースだったが、30km過ぎから国道238号線通称オホーツクラインに入る。
歩道のない国道で狭い路側を走るのだが、いたる所水たまりがあって走りにくい事おびただしい。
おまけにすぐ隣を走るトラックに水しぶきを掛けられ最悪。
歩道がある所でも水たまりのために走るラインは1本しかなく、前の人を抜くには一旦車道に出たりしなければならず、そういった状態がずっと続くので予想以上に足に負担がかかる。

右足の痛みは付け根から膝、そして足首に変わっていく。そのうちに右足全体が痛いような感覚に。
国道は結構なアップダウンがあり40km前なのに登りでは歩きが入るようになってしまった。

40km付近のエイドには公衆トイレと仮設トイレ両方あり空いていたので並ばずに利用できた。
ここまでほぼ10kmに一度トイレに行ってる。普段フルでも途中トイレに入るなんて事はほとんどない私です。やはり体が冷えるとトイレが近くなるんですね。

立ちションは相変わらず多い。この寒さでは仕方ないかもしれないが、誰かも言ってたけど女子は立ちションなんてできないのだから不公平だ。
法律違反でもあるのだから、見つけたら即刻失格にしろ、という意見にも頷ける。

ただそうした場合全員がトイレに並ぶ事になるから渋滞は更に伸びる。すると女子選手も待ち時間が増えてタイムに影響が出てしまいます。
私が女子選手だったら、「男は道端で立ちションしてろ!」って思うかもしれない。



いよいよ待ちに待った55kmのレストステーション。預けてあった荷物を受け取ります。
雨はほぼ上がっていたのでタイツとアームカバー以外全部着替える。シューズとソックスも予備があったので履き替える。
ついでにロキソニンも飲む。

着替えてサッパリしてさあここからもう一度頑張ろうと外に出ると・・・また大粒の雨が降り始めた。
そしてあっという間に全身ずぶ濡れになり元の木阿弥。着替えにかけた10分が全く無駄になってしまった。

足の痛みをこらえつつ歩いたり走ったりを繰り返す。
ロキソニンが効いてきたのか、あるいは脳内物質のせいなのか、走れる距離がだんだん伸びてくる。

60km付近で国道を外れサロマ湖沿いの田舎道へ。とは言ってもここらの田舎道はめちゃめちゃ広くて綺麗。人家も工場もないのになんでこんなに道路が立派なのか。まあ公共工事のためでしょうね。

65km付近の通称「魔女の森」と言われている道路はほんとに素晴らしい雰囲気で、できたら晴れてるときに走りたかった。

私設エイドで有名な斉藤商店では暖かい、というか熱いタオルがうれしかった。ブルーベリーを食べたら冷凍してあってまた冷えた。

ここからはサロマ湖沿いの道路で歩道が狭くて走りにくい。おまけに風も強くて体温がどんどん奪われる。
ほぼ低体温症の初期症状で、こりゃ完走は無理かなと思い始める。

73kmのエイドに到着。ここは泊まってるホテルのすぐ前。
応援バスの停留所にもなってる。
カミさんがホテルの部屋へ行って着替えを持ってきてくれた。ビニールポンチョも。
機転を利かせてくれたカミさんに感謝。そしてこのホテルに泊まっていてよかった。

ユニクロのフツーのアンダーウエアに登山用のミッドレイアー、その上にポンチョ。さらにその上に今まで着ていた薄手のウィンドウブレーカー。
全く寒さを感じなくなり生き返りました。

しかし試練はまだまだ続きます。
80kmからは試練の「ワッカの折り返し」が始まります。
せっかくゴールに近づいたのに反対方向に10kmも行って帰ってくる。
強い雨に加えオホーツク海から吹き付ける強風が行く手を遮る。
おまけに道路は狭いのに反対方向からもランナーが来る。
いたる所で道路が冠水していて対面するランナーにぶつかりながらシャボジャボ渡る。
走っても走っても前に進まない。距離表示の1キロが長い。
まさに地獄のワッカでした。

エイドの待機所にはアルミシートに身をくるんだ多数の選手が回収車を待っていた。
ほとんど意識を失いかけてフラフラ歩いてる人も。あのおじさん大丈夫だったろうか。

やっとの思いでワッカの折り返しに到着。立派な橋が架かっていてその橋を登って下った所が折り返し。
こんななんにもない所になぜ立派な橋が。きっとサロマ湖ウルトラマラソンのランドマーク的な意味もあるのかな?

いよいよあと10km。ひたすらゴールに向かって走るだけ。
残り時間を計算してみる。予想外に時間が少ない。
キロ7分ペースで走らないと制限時間内にゴールできない。
ここまで頑張ってきたのにゴールできないなんて冗談じゃない。今回旅費だけで30万円も払ってるのに。(セコイ)

頑張ってペースを上げる。しかしすでに体力は残っていなかった。徐々に気持ち悪くなってきてペースダウン。
とぼとぼ歩いてると隣にサロマンブルー(10回完走のベテラン)のゼッケンを付けた方がいたので
「これじゃ完走は無理ですねえ」
と話しかけると
「なに言ってんですか、残り1時間半あるからほとんど歩いたってゴールできますよ」
この頃すでに脳に血流が行ってなくて、ほとんど思考能力がなかったのです。
距離と時間の計算もできなくなっていたのでした。

ゴールが見えてきた事で再び元気が出てきて少しずつ走れるように。

そして遂にゴール会場の常呂スポーツセンターが見えてくる。
こんな厳しい天候で、途中完走をあきらめかけたのにこうして100kmを完走できる。
なんだかよく分からない感情で胸の奥から熱い物がこみあげてくる。決して胸焼けではない。
目からも熱い物が一筋。

そして遂に感動のゴール!

ずっと応援してくれたカミさんと熱い抱擁・・・なんて事はありません。





笑ってるように見えますが実は涙をごまかすための泣き笑い顔です。
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