今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

南西シフト態勢下での急ピッチで進む徳之島の軍事化(→奄美ー薩南諸島の)をバクロする!

2019年12月13日 | 自衛隊南西シフト
 自衛隊統合演習による「民間空港の活用」として進行する徳之島空港の軍事化


 (情報公開文書、以下同)

 この間、筆者は、南西シフト態勢による奄美大島・種子島(馬毛島)の軍事化・要塞化について、厳しい批判をしてきたが、この「薩南諸島」の南端である徳之島で急速に進む軍事化についても厳しい批判をしなければならない。
 徳之島では、すでに、陸自・西部方面隊による「鎮西演習」などで、地対艦ミサイル演習などの演習・訓練が頻繁に行われていた。
 だが、今回明らかになったのは、この「鎮西演習」とは、別に、空自の航空総隊演習、日米共同統合演習などで、徳之島、とりわけ徳之島空港が頻繁に使用されていたということだ。

 「陸海空協同対艦攻撃作戦」「協同防空作戦」演習で使用されている徳之島空港

 2017年度、2018年度の航空総隊司令部・防衛部による、自衛隊統合演習(29・30JX [FTX]むさし18-1)によると、「訓練項目」として、「他自衛隊及び民間飛行場を……活用するため人員及び航空機を展開、運用を演練」とし、その訓練項目の中に「陸海空協同対艦攻撃作戦」「協同防空作戦」「基地警備訓練」などが上げられている。
 
 つまり、徳之島空港で行われている演習は、奄美空港における中継基地としての訓練ではなく、文字通り空自の航空戦闘演習が行われているということだ。
 例えば、「陸海空協同対艦攻撃作戦」とは、空自の対艦戦闘攻撃機F-2を使った訓練・演習であることは明らかだ。しかも、陸海空の「協同訓練」とされていることから、地対艦・地対空ミサイルとの「友軍相撃」を防ぐための協同訓練も行われているのだ(陸自教範『地対艦ミサイル連隊』などによると、友軍相撃防止が大きな課題)。

 南西シフト態勢下の兵站拠点・訓練拠点としての薩南諸島

 すでに、繰り返し当ブログでも書いてきたが、奄美大島・種子島などの薩南諸島は、日米の南西シフト態勢の機動展開拠点、兵站拠点、訓練拠点として位置付けられている。「鎮西演習」などでの訓練・演習、機動展開訓練などの、市街地を蹂躙した演習・訓練が頻繁に行われているのだ。もちろん、この地域は、奄美大島にみるようにすでに巨大基地建設(2箇所)が行われ、南西シフト態勢の一大拠点となっている。
 問題は、これら奄美大島・種子島などに加えて、ついに徳之島がこの南西シフト態勢下の一大演習場として組み入れられていることだ。このことは、徳之島自体に南西シフト態勢下の新基地が造られることが時間の問題となっていることを意味する。

 かつて、徳之島には旧日本軍・陸軍の旅団が駐留し、一大基地であったが、ここに再び自衛隊は基地建設を虎視眈々と狙っているのである。すでに、徳之島では、自衛隊の誘致運動まで始まっていることは、述べてきたとおりだ。

 先島―南西諸島の島々に連帯する運動の構築を

 徳之島ー奄美大島ー種子島(馬毛島)は、南西シフト態勢の兵站拠点・機動展開拠点・訓練演習拠点として位置付けられおり、この地域(薩南諸島)の島々の軍事化が急速に進んでいる。全国メディアが報道規制している中で、今や、この琉球弧全体(第1列島線)が軍事化・要塞化されようとしているのだ。私たちは、この恐るべき事態をいつまで見過ごすのか? もはや、メディアが報道しないから知らない、といういい訳は通用しない。 

 そして今現在、宮古島・石垣島では、この南西シフト態勢下のミサイル部隊配備を阻むたたかいが、必死に繰り広げられている。
 宮古島では、保良ミサイル弾薬庫建設を止めさせるために、連日にわたって建設現場で抵抗運動が続いている。
 石垣島では、市議会保守派の住民投票条例廃止という前代未聞の暴挙に、住民たちが議会内外で起ち上がっている。

 宮古島でも、石垣島でも、未だに「ミサイル基地」はできてはいないのだ! ミサイル部隊の配備を止めているのだ。まだ、遅くはない。この南西シフト態勢という、対中国の「島嶼戦争」=海洋限定戦争づくりは止められるのだ。

 私たちは、このために、「先島―南西諸島の軍事化・要塞化に抗し、同地域の非武装化を求める共同声明」の賛同の呼びかけ! を行っている。ぜひとも、全国から賛同署名をよせていただきたい。ここから「先島―南西諸島軍事化」へ反撃しよう! 全文は以下に。https://blog.goo.ne.jp/shakai0427/e/00827ecc81d5af6c9c14194092bd04ef?fbclid=IwAR2M85e6_qQvU6MDx5uiBrakvshgAnZZ-2I60zMuFpv4a5qMIdSzGO_42rs





(徳之島での演習「むさし18」とは航空総隊演習)


(徳之島の天城町・徳之島町・伊仙町による防衛省への誘致の陳情、2018/5/27)



 
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石垣島・平得大俣地区の基地選定に係わる用地取得の重大な疑惑について――ゼネコンによる基地配置の図面まで造られていたカラ岳周辺

2019年07月16日 | 自衛隊南西シフト
基地予定地・平得大俣選定の重大な疑惑疑惑


ゼネコンが作成した、カラ岳周辺の基地配置図面「Ⅰproject」と新石垣空港から見たカラ岳

 筆者は、6月下旬から、造成工事が始められたばかりの、石垣島・陸自ミサイル基地の現地調査・視察に訪れた。この造成工事の進捗状況の実態を把握するためであり、造成工事に係わる問題点を筆者なりに探るためである。

 この調査で、石垣島のミサイル基地建設予定地に係わる重大な疑惑が明らかとなった。
 結論から言えば、現在決定・着工されているジュマール・ゴルフ場を中心とする平得大俣地域への基地用地選定には、大きな疑義、土地売買利権さえも絡む疑惑があるということだ。

 つまり、石垣島における基地建設予定地は、もともとは新石垣空港周辺地域――カラ岳北部・南部地域であった可能性が大である。

 この度、筆者に寄せられたのは、大手ゼネコンの関係者を介しての地元の有力者からだ。
 基地建設に係わる「Ⅰproject」という図面を見てほしい。ここに示された基地予定地は、石垣空港北――カラ岳の南北にわたる地域であり、詳細な基地予定地図面ができあがっている。



 沖縄防衛局作成の「平得大俣の施設配置案」と見比べてとよく分かる。「平得大俣配置案」に配備予定の、庁舎等の施設や弾薬庫・射撃場の配置なども、全く同様の配置である。違いは、基地の規模だ。平得大俣地区の46ヘクタールに対し、この基地は68ヘクタールという大規模なものである。
 そして、需要なのは、この一帯は、住宅地もほとんどなく、環境面からしても、本来、「最適地」たりうるものだ。

 第2次選定エリアの疑惑

 ところで、筆者の情報公開請求で昨年提出された自衛隊の南西シフト態勢に係わる320点・約5千頁の文書がある。
 その中の1つに「南西地域資料収集整理業務報告書」(2014年3月、防衛省装備施設本部・アジア航測)という文書があり、これは民間委託によって、南西シフト態勢下で琉球列島弧の島々への部隊配置調査――西表島・石垣島・宮古島・奄美大島などの琉球列島弧の島々への自衛隊配置計画の最初の調査資料である(第1次選定エリアは、先島156箇所、奄美群島217箇所)。

 この中の石垣島については、「1次選定エリア」として、57箇所が、2次選定エリアとして7箇所が明記されている(16頁~および158頁~)。
 そして、2次選定エリアの最終的予定地として決定されたのが、平得大俣地区(59・60地区)、カラ岳地域(57地区)、「サッカーパーク・あかんま」などであった。

 問題は、この7箇所のうち、周辺に農地・住宅地がほとんどなく、環境負荷も少なく、用地買収の必要性も少ない地域は、添付のようにカラ岳周辺であることは明らかということだ。同文書では、以下のように記述する。

 「適地エリアは●●の●●北側に位置する。南部は●●からの傾斜によって少し高台となっている。北側は、東側の海に向かって斜面になっている。このような形状から造成工事は容易である」(177頁●●は「黒塗り箇所)
 「産業および周辺状況 放牧地およびサトウキビ畑、牧草地が適地エリアの主な利用」(同頁)

 新石垣空港まで南830メートルの距離にあり、カラ岳(標高135・9メートル)の北側に位置するこの場所こそ、詳細な図面が作成されていることから明らかだが、石垣島基地建設の本当の予定地であったということだ。

 石垣市と「幸福の科学」との癒着

 ところで、この石垣島における自衛隊用地の問題に関しては、かつて沖縄大学の髙良沙哉氏が現地調査を行っている(『「地域研究』2016年9月)。
 同氏によれば、石垣島・平得大俣への用地の選定は、政治的選定であり、また現在の予定地されている平得大俣地域自体も、2次選定エリアとされている場所から大きくズレていると指摘されている(髙良論文http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/20.500.12001/21390/1/No18p1.pdf)。

 重要なのは、繰り返し述べてきたが、予定地されたジュマール・ゴルフ場の所有者は、「幸福の科学会員」であり、自民党の市議でもある。だから、この用地選定には、選定自体に「何らかの大きな工作」が働いたと思われるのだ。

 その問題は、このジュマール・ゴルフ場の売買契約の非公表だ。
 石垣市民の情報公開請求に対して、沖縄防衛局はジュマール・ゴルフ場の売買金額を非公表とする決定を行った。しかし、沖縄・熊本の各防衛局は、造成工事着工前に、筆者の情報公開請求に対して、宮古島・奄美大島とも、地権者との売買契約書の全てを公開しているのだ。

 この状況では、ジュマールと石垣市との癒着、利権絡みの売買が行われているのではないか、という疑惑は深まるばかりである。
 
 防衛省施設案にあるように、平得大俣の基地予定地は、深い谷を埋め立てグラウンドなどを造るとされている。しかし、予定地の南東部は、深さ9~15メートル、長さ600メートル以上にわたる大きな谷があり、工事の難度も、周辺の環境破壊も計り知れない場所だ。しかも、写真にあるように、予定地は地下に直径数メートル以上の琉球花崗閃緑岩が、ゴロゴロあるような場所である(沖縄防衛局『陸自石垣島測量調査』)。


 予定されているヘリコプター空港ー基地建設も決定されていた
 
 石垣島基地建設の、第2次選定エリアに関して明らかになったもう一つの大きな問題がある。
 このゼネコンが作成したカラ岳予定地の基地建設図面には、約14ヘクタールにものぼる、「ヘリ空港基地」が予定されていたということだ。図面を見てほしい。
 カラ岳の南、新石垣空港の北西側に沿って、「ヘリ部隊」として明記された図が描かれている。


 これは、例えば奄美駐屯地の「ヘリパット」という小さな規模ではなく、巨大なヘリ空港基地として予定されていることだ。
 もともと石垣島では、当初からヘリ基地の建設がウワサをされていたが、やはり図面まで描かれてヘリ基地建設が進んでいたということだ。

 間違いなく、仮に石垣島住民らが、基地建設を承認したとし、現在の基地建設が終了した後には、この「ヘリ基地」建設が大きく動くことは間違いない。「島嶼戦争」、特に離島にとっては、軍事的・作戦的に「ヘリ運用は必要不可欠」ということになるからだ。 

 新石垣空港の近くにヘリ空港基地建設計画があるということは、石垣空港の軍事利用とも関係する。石垣空港、宮古島空港などは、例のF35Bの配備決定――「いずも」型護衛艦の改修空母の決定とともに、「島嶼戦争」の重要な航空基地として計画されている。

 つまり、進行する陸自・石垣島のミサイル基地建設は、さらなる石垣島の一大軍事化の始まりに過ぎないのだ。
 この凄まじい南西シフト態勢下のミサイル基地建設、石垣島基地の造成工事着工に、今こそ全国から反対の声を挙げよう。
 石垣市当局とジュ・マール楽園らの、癒着ー利権構造を徹底的に暴こう!

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沖縄島に配備されようとしている、南西シフト態勢下の地対艦ミサイル部隊――琉球列島弧でのミサイル戦争を阻むために!

2019年05月21日 | 自衛隊南西シフト
 沖縄島に配備される地対艦ミサイル部隊


 まず、沖縄島における陸自地対艦ミサイル配備の報道から見てみよう。
 2018年2月27日付朝日新聞、同月28日付の琉球新報は、おおよそ以下のように報じている。
 「沖縄本島に地対艦ミサイル部隊配備検討 中国牽制を強化 沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を中国海軍の艦艇が航行するのが常態化していることから、政府は地対艦誘導弾(SSM)の部隊を沖縄本島に配備する方向で本格的な検討に入った。すでに宮古島への部隊配備は決まっており、海峡の両側から中国軍を強く牽制する狙いがある。
 複数の政府関係者が明らかにした。国家安全保障局や防衛省内で部隊の編成規模などの検討を進め、今年末までに策定される新たな防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画(中期防)に盛り込む方向だ。」(朝日新聞)
 
 琉球新報も、ほぼ同内容の記事だ(上写真)。この報道以後の昨年12月、新中期防策定で沖縄島でのミサイル部隊配備は決定された。新中期防では、新たに地対艦ミサイル部隊の3個中隊を新編成すると明記しており、この3個中隊が、宮古島・石垣島とともに沖縄島へ配備されるミサイル中隊であるということだ。

 防衛省は、すでに宮古島にミサイル部隊司令部を置く、としていることから、沖縄島のミサイル部隊も、この1個中隊を構成するものといえる。ただ、地対艦ミサイル連隊の基本編成は、4個中隊で編成されることから、奄美に編成された地対艦ミサイル部隊が、この沖縄島・宮古島のミサイル部隊と同一連隊に編成されるのかは、明らかではない。

 「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」は沖縄島ー宮古島配備か?

 問題は、沖縄島における地対艦ミサイル部隊の配備が、この12式地対艦ミサイルに留まらないことだ。すでに、新防衛大綱・新中期防においては、「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」の編成を決定しており、この部隊の配備先が、沖縄島ー宮古島になる可能性が大である。
 いわゆる「島嶼戦争」下の琉球列島弧=第1列島線の通峡阻止作戦(海峡封鎖)において、宮古海峡が重要なチョークポイントになることは明らかだが、この宮古海峡の両岸には、高速滑空弾大隊が配置が予測される(早期装備型のブロック1は、2025年度を目途に実用化、性能向上型のブロック2は2028年度までに実用化される)。


 沖縄島などへのミサイル部隊の配備は、これだけには留まらない。次から次へと新たなミサイル部隊が、開発・配備されようとしている。図は、すでに防衛省が予定している巡航ミサイルだ。


 これには、米軍の「AGM-158C LRASM」(射程370~926㎞)、スエーデンの「RBS-15Mk.3」、ロシア/インドの共同 開発による「BrahMos」を提案候補にされている。いずれにしても、自衛隊にとっては、初めての巡航ミサイル導入であり、これらの巡航ミサイルは、島嶼間のミサイル戦だけでなく、中国大陸の沿岸も射程内に入ることになる。


 そして、陸自の地対空ミサイルに加えて、空自もまた、スタンド・オフ・ミサイルの導入配備をすでに決定している。この戦闘機から発射されるミサイルは、千㎞前後の射程を持ち、文字通り、沖縄島から中国大陸に向けて発射が可能であり、大陸が射程内に入るのだ。

 ミサイル戦の戦場と化する沖縄島ー琉球列島弧

 沖縄島での地対艦ミサイル配備に始まり、高速滑空弾部隊配備(極高速滑空弾の開発も!)、巡航ミサイル部隊配備と、今まさに、先島―南西諸島ー沖縄島が、ミサイル戦の戦場とされつつある。
 この凄まじい実態が、沖縄島の人々にどの程度知られているだろうか? あるいは、このミサイル戦場と化しつつある「現実」が、どの程度のリアリティをもって伝わっているだろうか?

 残念ながら、南西シフト態勢下の、「島嶼戦争」=海洋限定戦争の実態、琉球列島弧=第1列島線をめぐる海峡戦争=通峡阻止作戦の実態が、伝わっている、知られているとは言えない。2018年の米政権「国家安全保障戦略」(NSS)」などの「対中ソ競争戦略」の発動、つまり、新冷戦の宣言以来、米中・日中の軍拡競争が激化していることは、知られている。だが、今始まっているのは、新冷戦下(「Warm War」ともいう)の軍拡競争とともに、「平時から有事へとシームレス」(防衛白書にいう)に進行していく戦争の危機なのだ。


 言い換えると、琉球列島弧=東シナ海の内側へ、中国船舶・軍艦を、いつでも封じ込める、中国の世界貿易・経済を封鎖する態勢づくりが進みつつあるということだ。これを天皇制国家・旧日本軍は「砲艦外交」と称していたが、まさしく軍事力を背景とした力の外交政策なのだ(空母配備は、その砲艦外交の道具。例えば米空母の朝鮮半島近くへの遊弋は、軍事的圧力の行使。また、先の国会で、日米豪英のACSA締結に続き、仏加のACSAが成立し、安倍・トランプのインド太平洋戦略が発動されつつあることも注意)。

 沖縄島ー先島―南西諸島の戦場化に抗す!

 昨年秋、岩屋防衛大臣は、琉球新報にインタビューにおいて「南西諸島は日本防衛の最前線だ」と宣言した。この岩屋の言動を認めてはならない。これを許容してはならない。岩屋は、再び沖縄ー南西諸島を戦場化することを宣言したのだ。沖縄の人々を盾にして「本土防衛」することを宣言し実現しようとしているのだ。

 日米軍、特に自衛隊の予定する「島嶼戦争」は、文字通り先島―南西諸島の「海洋限定戦争」(第1列島線封鎖態勢)として想定されている。つまり、沖縄ー南西諸島ですさまじいミサイル戦争ー機雷戦→海上・航空戦を予定しているということだ。この「島嶼戦争」においては、島々はまさしく一木一草も生えない土地となるだろう。
 そしてまた、一旦開始された戦争が限定されるということはない。この戦争は、不可避的に西太平洋での「通常型大戦」にまで、少なくとも発展する(制服組官僚どもは「島嶼限定戦争」を夢想するが、一旦始まった戦争は「自己運動」し暴走する)。
今進行している事態は、このような重大な危機の始まりなのだ。

 この危機的事態を止めるためにこそ、沖縄島でのミサイル部隊配備を食い止め、宮古島を初めとする先島でのミサイル部隊配備を食い止めねばならないのだ。




 
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奄美大島・瀬戸内分屯地は、巨大弾薬庫(約31㏊)=兵站基地だった!

2019年04月15日 | 自衛隊南西シフト
 奄美・瀬戸内分屯地は、南西シフト態勢の巨大弾薬庫=兵站基地

(駐屯地開設の記者会見する奄美警備隊司令、そのエンブレムは「草薙剣」とハブ!)

 自衛隊の機関紙「朝雲新聞」は、2019年4月11日付で、驚くべき記事を配信した。以下がその内容だ。

 「瀬戸内分屯地は標高500メートル級の山々が連なる山間部の高台にあった。瀬戸内町の市街地から国道58号線を北東に向かい、幾つものトンネルを抜け、曲がりくねった道を20分ほど進むと、緑色に塗られた施設が見えてきた。ここが分屯地だ。
 『三日月』のような細長い形の分屯地の総面積は約48万平方メートル(ヤフオクドーム6.9個分)で、広さは奄美駐屯地に匹敵する。ここの敷地の約3分の2が弾薬や武器を保管する火薬庫となっています。完成は来年度以降になりますが、現在導入された装備品の弾薬はすでに配備が完了しています』と菅広報室長。」(2019/4/11付「朝雲新聞」)http://www.asagumo-news.com/homepage/htdocs/news/newsflash/201904/190411/19041102.html

 私の4月4日付のブログ「宮古島の5倍、石垣島の2・2倍という巨大基地に変貌した陸自奄美駐屯地!」の記述では、この瀬戸内分屯地の弾薬庫面積に関し、南海日日新聞を引用して、この南海紙の報道内容は正確だろうか?と疑問をなげかけていた。以下の記述がそうである。

 「3月31日に報道陣に公表された、この「火薬庫」は、南海日日新聞によると、『30万6551㎡が大型ミサイルの弾薬や小銃などを保管する火薬庫。完成は来年度以降となるものの、現在配備された装備品の弾薬はすでに配備が完了している」

 この疑問の根拠としたのが、図に示された防衛省の情報公開文書の内容だ。ここに示されているのは「貯蔵庫A×5棟 各1000㎡」というものだ。しかし、私自体も、この「貯蔵庫5000㎡」という記述に惑わされたようだ(下記図参照)。


 つまり、この「奄美駐屯地(瀬戸内)施設一覧表」([瀬戸内地区 貯蔵庫地区])に明示された施設等は、明らかに隠蔽し、誤魔化そうとする施設図だ。合計すると、ここに示された施設等面積の合計は、17.144㎡(1.7㏊)、朝雲に明記された約31万ヘクタールの18分の1に過ぎない。
 どういうことか? つまり、この図には弾薬庫(火薬庫)は、その面積を含めてまったく明記されていないということだ。
 
 間違いなく、この明示された施設図は、地上・地表に建てられる施設だけであり、弾薬庫(火薬庫)は、全てが地下に造られるということだ。つまり、瀬戸内分屯地B地区(貯蔵庫地区)の地下が、全て弾薬庫になるということだ。瀬戸内分屯地全体の面積48㏊の、半分強がB地区(貯蔵庫地区)であるとされているから、この約31㏊は図を見るまでもなく、弾薬庫が「地下構造物」として造られることは明らかだ! 約31㏊というと、宮古島駐屯地(22㏊)の約1.5倍の巨大さだ!

(情報公開文書で出された瀬戸内分屯地)

 自衛隊は、宮古島・石垣島・与那国島でも、弾薬庫(火薬庫)を「貯蔵庫」と誤魔化したり、「保管庫」と言ったり、その基地建設地域によってそのつど言い換えている。その典型がこの瀬戸内分屯地の弾薬庫(自衛隊内の通常の名称)である(岩屋防衛大臣は、この誤魔化しがバレたことから、今後、火薬取締法に基づく「火薬庫」に名称を統一するという)。

 31㏊の巨大火薬庫(弾薬庫)は、南西シフトー先島―南西諸島へ投入する巨大兵站基地

 先のブログでも書いてきたが、3/26の開設の奄美大島の2つの駐屯地が、南西シフト態勢への兵站施設・機動展開基地であることを、建設予定の馬毛島(種子島)基地の戦略的位置付けとともに述べてきたが、この瀬戸内分屯地の巨大弾薬庫が、その先島―南西諸島に投入される全部隊の「武器・弾薬」を中心とした兵站基地であることが明らかとなった。
 この奄美大島の基地が兵站基地であることを示す、防衛省の情報公開文書を再度掲載する。そして、この兵站基地=機動展開拠点の戦略的位置付けを示す、防衛省の情報公開文書を示しておこう。これは、拙著『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』にも引用しているが、2014年統合幕僚監部作成による「自衛隊の機動展開能力向上に係る調査研究 調査報告書」と題する文書である。
 この文書によっても、奄美大島ー種子島(馬毛島)が、自衛隊の南西シフト態勢の機動展開拠点であり、「前線基地 先島諸島」→「戦闘地域」への兵站拠点として策定されていることが明らかだ。


 マスメディアが奄美大島の基地建設に報道管制を敷いている理由

 この文字通り隠蔽された奄美大島・瀬戸内分屯地の巨大弾薬庫を見ると、全国の全てのマスメディアが、奄美大島における基地建設について、当初から現在まで一貫して沈黙している理由がわかる、というものだ。そしてまた、この奄美大島と並ぶ馬毛島(種子島)の基地が、米軍のFCLPなどよりも遥かに重大な、自衛隊の南西シフト態勢の基地であることを隠蔽している理由もだ!

 宮古島駐屯地弾薬庫への、中距離多目的誘導弾(ミサイル)の保管の隠蔽問題といい、この奄美大島の巨大弾薬庫自体の隠蔽といい、自衛隊の先島―南西諸島全体が、欺瞞と隠蔽に満ち満ちたものだ。
 戦後初めての自衛隊の新基地を、先島―南西諸島へ造るにあたって、防衛省・自衛隊は、こうした数々の住民だましの手口ー宣撫工作を駆使しようとしている。だが、私たちは、これらの事実一つ一つを暴き、この恐るべき基地建設=基地増殖を食い止めねばならない。

*参考「馬毛島問題での東京新聞を始めとするメディア報道を糺す――日米の巨大軍事要塞島と化す馬毛島のたたかいの重大局面に当たって」https://blog.goo.ne.jp/shakai0427/e/e9cf6ebfc6e9c95e996229ec79949b0a?fm=entry_awp

*参考文献 『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』プロローグの立ち読み
https://hanmoto.tameshiyo.me/9784907127251










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奄美、与那国駐屯地に公然と配備された自衛隊の情報機関・情報保全隊―このスパイ機関が宮古島に配備されたのは確実だが、これは重大な住民への背信行為だ!

2019年04月10日 | 自衛隊南西シフト
 奄美駐屯地への情報保全隊(旧調査隊)の配備を無批判的に報道するメディア
 
 まず、冒頭の写真を見ていただきたい。


 これは、しばらく前に私のところに届いた手紙だ。「保全隊が暴走しています」という文とともに、自衛隊情報保全隊の部隊章INTELLIGENCE SECURITY COMMANDが送られてきた。手紙は、おそらくこの部隊に所属する隊員のものであり、保全隊の暴走を危惧する立場からの「告発」だろう。
 問題は、本来は自衛隊内の秘密情報の保持などで、隊員を監視する機関であるはずのこの部隊が、今、公然と、先島―南西諸島に配備され、住民の調査・監視に乗り出しつつあることだ。

 奄美大島・与那国島に配置された情報保全隊――果たして宮古島には配置されたのか?

 まず、自衛隊情報保全隊が、奄美大島などへ配備された事実から確認しよう。
 写真は3月31日、陸自奄美駐屯地から発表された、奄美駐屯地配備部隊の庁舎案内図だ(4月1日付「南海日日新聞」)。このB庁舎の下から3番目にある配置図には、「西部情報保全隊奄美情報保全派遣隊」が配置されている建物が掲示されている。B庁舎の一番下に掲示されているのが、自衛隊内の犯罪を取り締まる警務隊だ。こんな小さな部隊に警務隊が配置されているのも不思議だが、自衛隊情報保全隊の配置は、それにもまして不自然だ。この目的は何か? 



 前提的に確認する必要があるのは、問題は、奄美駐屯地とともに、2016年3月に配備された与那国駐屯地にも、自衛隊情報保全隊が配備されたということだ。与那国島の場合、沿岸監視隊という、わずか160人の部隊だ(配備予定の空自移動警戒隊を含めても約200人余り)。
 この状況からすると、自衛隊情報保全隊は、奄美大島・与那国島だけでなく、宮古島にも配備されたということであり、続く石垣島にも配備されるは確実だということだ。

 治安出動態勢下に隊員監視から住民監視へと変遷した旧調査隊
 
 本来、「部隊等の運用に係る情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行う」(「自衛隊情報保全隊に関する訓令」第3条「(情報保全隊の任務」)として、部隊内の「隊員らからの秘密漏洩」のために設置された自衛隊情報保全隊(旧調査隊)は、防衛大臣直轄の「常設統合部隊」として、2009年に新たに調査隊から名称替えしてスタートした。この組織は、全国に中央保全隊ほか東北・西部など5つの保全隊が設置されていることから明らかだが、本来の保全隊の組織的配置は、陸でいえば「方面隊規模の大部隊内」への配置。これが、わずか160人の与那国、約600人規模の奄美、そして約800人規模の宮古島駐屯地に配備されるのは、異例の状況である。

 さて、この情報保全隊が、隊員らの調査・監視業務から、大きく離れて、もっぱら住民の調査・監視、スパイ(諜報活動)に任じるようになったのは、自衛隊の主要任務である「治安出動」と関係している。
  すなわち、1960~70年安保闘争による反戦運動の社会的広がりの中で、自衛隊はその最重要任務の1つとして、この時代に治安出動態勢に突入した。もっとも、この自衛隊の「国民を敵にして暴力的鎮圧」を行うという、血なまぐさい任務は、当然にも自衛隊員に動揺を生じさせることなった。

 この自衛隊の恒常的な治安出動態勢づくりは、治安出動態勢下における情報収集、対住民・市民対策として、旧調査隊の工作員を集会・デモなどに監視・潜入させるとともに、これらの部隊が日常的に「隊員監視」という業務から「住民監視」へと任務を変えていくことになったのである。

 住民を調査・監視し、「島嶼戦争」の「対スパイ戦」の任務にあたる情報保全隊 

 あまり知られていないが、自衛隊法の第78条「自衛隊の治安出動」には、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」と規定され、第79条2には、「治安出動下令前に行う情報収集」として、「防衛大臣は、事態が緊迫し……治安出動命令が発せられる……ことが予測される場合において、当該事態の状況の把握に資する情報の収集を行うため特別の必要があると認めるときは、……自衛隊の部隊に当該者が所在すると見込まれる場所及びその近傍において当該情報の収集を行うことを命ずることができる。」と規定されている。
 
 重要なのは、この治安出動の規定は、国内の大規模デモなどを「間接侵略事態」(デモなどは外国からの教唆・煽動)として認定し、武力鎮圧を正当化していることだ。自衛隊が「災害派遣」などで、あたかも「国民を守る」かのような虚構に惑わされている人々にとって、この国民の正当なデモなどを「外国の教唆・煽動による間接侵略」とする規定は驚くことであろうが、これが自衛隊の本質であり、実態なのだ。

 陸自教範『野外令』『対ゲリラ・コマンドウ作戦』が策定する間接侵略論と情報保全隊の住民工作

 まず、陸自教範『野外令』は、第5編「陸上防衛作戦」の第7節「警備」の項で、警備の目的として「敵の遊撃活動、間接侵略事態等に適切に対処」、「間接侵略事態の様相は、多種多様である。……地域的にも局地的な事態から広範囲にわたる事態があり、その程度も非武装の軽度の様相から武装化した勢力による一般戦闘行動に準じる様相」、「間接侵略事態の主体勢力は、識別が困難であり、地域と密着した関係部外機関との協力なくしては、対処が困難である。また、武器使用に当たっては、非軍事組織に対する行動であることに留意」という(社会批評社刊『自衛隊の島嶼戦争ー資料集・陸自「教範」で読むその作戦』所収)。

 そして、結論として「多様な様相に適切かつ主動的に対処するため、早期から関係部外機関と緊密に連携した継続的な情報活動により、適時に情報を入手することが重要」「対象勢力に関する情報を……継続的に確保することが必要」としている。
 
 明らかなように、ここでいう間接侵略事態の対象は、武装したゲリラだけではなく、「非武装程度の様相」の「非軍事組織に対する行動」、つまり、基地・自衛隊に反対する、あるいは戦争に反対する市民・住民ということである。
 つまり、自衛隊は「陸上防衛作戦」の「島嶼戦争」下に、島々の住民対処――これは戦時下の住民避難としての対象ではなく、自衛隊の軍事行動を阻害し、妨害する反対勢力として、住民を対象化しているということだ。
 陸自教範『対ゲリラ・コマンドウ作戦』の第3編「不法対処行動」についても、自衛隊の治安出動下においての、情報収集活動や住民対策を規定しているが、これは別の機会に述べよう。



 自衛隊情報保全隊の住民監視・調査が暴露された裁判

 2007年、自衛隊のイラク派兵に反対する東北6県市民107人らが、自衛隊の情報保全隊の調査・監視の対象となり、精神的苦痛を受けた、として国・自衛隊を訴えた裁判では、仙台地裁・仙台高裁は国に賠償を命じる判決を下し、国・自衛隊はこれに上告せず判決は確定した。
 ここで、情報保全隊が情報収集した内容は、「日本共産党、社民党、ジャーナリストなど報道関係者や、市民や聖職者による自衛隊イラク派遣反対の活動」「反戦運動、また集会などの調査」、その「活動日時・場所・内容、活動に携わった団体の名称や活動の規模、活動団体の代表の氏名など」、「及びそれらの活動が自衛隊関係者または国民世論への影響や活動の今後の見通しの分析」などとされている(Wikipedia)。

 つまり、情報保全隊は、当時のイラク反戦運動に係わる、全国の全ての団体や個人・ジャーナリストなどの情報収集を行っていたということだ。
 このケースは、内部告発によって情報保全隊の調査資料が暴露され、裁判になったというまれな事件である。しかし、かつての1970年前後からの反戦運動では、自衛隊の調査隊が、集会・デモに潜入し、摘発されるケースはたびたびあった。いわば、自衛隊の市民監視態勢は常態化しており、自衛隊もまた、治安出動態勢の一環として正当化していたのだ。

 奄美・与那国、そして「宮古島駐屯地に配置」された自衛隊情報保全隊は撤退せよ!

 だが、現在、先島―南西諸島に配置された自衛隊は、あたかも災害派遣などから「住民を守る」という詭弁を使って、島々の軍事化を図っており、その任務や意図を住民から押し隠し続けている。「住民を守る」とする自衛隊が、なぜ、情報保全隊という諜報機関を配備し続けているのか? この自衛隊当局のウソ、欺瞞を徹底して追及しなければならない。

 例えば、与那国・奄美・宮古島において、防衛省説明会では情報保全隊の配備は、一切説明もない。配備部隊自体が隠されているのだ(奄美では新聞に掲載だが!)。宮古島のミサイル弾体問題と全く同様、自衛隊は住民に対して、配備部隊の編成をも隠し続けているのだ(与那国駐屯地での情報保全隊の配備は、私の請求した情報公開文書で明らかになったのだ)。

 こういう状況が続けば、宮古島駐屯部隊などの、住民から隠された部隊の増強は、留まることはない。一旦配備された部隊の、自治体を無視した大増強が続くことは、沖縄島を見れば一目瞭然である。

 現在、先島―南西諸島の、緊急の重要な問題は、この自衛隊の住民を欺き続けるミサイル弾薬庫などの危険物の排除、住民から隠された部隊配備、そしてなし崩し的に始まる部隊の増強を阻むたたかいとなるだろう。
 
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宮古島の5倍、石垣島の2・2倍という巨大基地に変貌した陸自奄美駐屯地!

2019年04月04日 | 自衛隊南西シフト
 これが、住民からも、メディアからも隠されて巨大化した奄美の自衛隊基地だ! 


 3月26日に編成され、3月31日に開設記念式典を行った奄美駐屯地・奄美瀬戸内分屯地という2つの基地。政府・自衛隊は、防衛副大臣、陸幕長以下の西部方面隊幹部50人を引き連れて記念行事を行い、報道陣に初めて、基地の全容を公開した。編成され配備された部隊にも驚くが、もっと重大な事態は、この公開された基地のとてつもない巨大さだ。

(奄美駐屯地[大熊地区])

 この奄美駐屯地(大熊地区)の敷地面積50万4674㎡(50.5㏊)瀬戸内分屯地(瀬戸内町節子地区)の面積48万279㎡(48㏊)という、初めて公表された基地……この大きさは、宮古島駐屯地(千代田地区、22㏊)の5倍、石垣島に予定する駐屯地(46㏊)の2.2倍という面積、福岡ヤフオクドームの7.3個分、6.9個分という大きさだ。

 問題は、この巨大な基地の面積は、この日、初めて報道陣に公開されたということであり、地元の防衛省説明会でもこれまで一切、提示しなかったということだ。かろうじて、鹿児島建設新聞が、この敷地面積を公開していたのだが、この建設業界にさえ、自衛隊はウソをついていたか、建設業界と自衛隊ぐるみで隠蔽を図ったということだ。

(奄美・瀬戸内分屯地、左が瀬戸内分屯地A地区、右が瀬戸内分屯地B地区[弾薬庫地区])

 下記の資料に、2017年の工事開始時の建設業界の発表記事があるが、ここには、奄美駐屯地30㏊、瀬戸内町節子地区28㏊と、はっきり明記されている。要するに、建設業界には、それぞれ半分ほどの敷地面積が公表されたということだ。

 宮古島でも、石垣島でも、与那国島でも、防衛省はあらかじめ基地の敷地面積を公表していた。当然である。だが、このようにウソまでついて、この巨大基地建設を隠していた意図は何か? 

 その内容を結論から言うならば、この奄美大島の基地が、南西シフト態勢下の巨大な「兵站基地」であり、「機動展開拠点」であることを、奄美市民はもとより、メディアからも、国民からも隠しておきたかったということである。
 全てのマスメディアが、3月26日に奄美駐屯地が開設されるまで、一切の報道について沈黙を守ったことがその証拠である。この日まで、在「本土」マスメディアは、1分・1行たりとも、鹿児島のマスコミを含めて、この奄美大島の基地建設について、報道しなかったのだ。貝のように沈黙し続けたのだ(変節した朝日新聞が、奄美大島の基地建設について沈黙し、完全報道規制しているだけでなく、マスコミでは唯一ジャーナリズム精神を発揮している東京新聞でさえ、奄美基地については完全に報道規制しているという、とんでもない、恐るべき状況が現れている)。

 自衛隊情報保全隊(調査隊)が編成配備された奄美駐屯地


 この日、メディアに発表された資料によれば、奄美駐屯地には、警務隊とともに、自衛隊情報保全隊が配備された(上図のB庁舎の配置図参照)。この悪名高い自衛隊情報保全隊とは、自衛隊の対住民情報機関(スパイ)で、かつて調査隊と呼ばれた組織だ。反戦集会などに潜入し、市民・住民の動向調査をするスパイ組織で、今まで多くの反戦集会などで隊員が摘発され、告発された。近い所では、イラク反戦への住民動向調査で、市民多数から裁判所に訴えられ、裁判でそのスパイ活動について認定、賠償されられたこともある(2016年高裁判決確定 https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG16HG1_W6A210C1000000/)。

 問題は、なぜ、わずか300人という規模の部隊に自衛隊情報保全隊が配備されたのか、ということだ。本来、自衛隊情報保全隊は、陸自でも方面隊規模の部隊配置である。この理由は、与那国駐屯地配備の自衛隊情報保全隊と同様である(情報公開文書参照)。つまり、先島―南西諸島配備は、住民の強烈な反対の中での配備であり、今後もこの反対運動の広がりは予想される、したがって、絶えず住民の動向調査が自衛隊にとって必要不可欠と判断したということである(したがって、宮古島駐屯地の自衛隊についても、間違いなくこの情報保全隊は配備されている!)。
 ちなみに、陸自が「島嶼戦争」で予定する、対ゲリラ・コマンドウ作戦では、住民の動向調査が、大きな作戦となっている(陸自教範『対ゲリラ・コマンドウ作戦』)。

 南西シフト態勢下の重大な兵站拠点、機動展開拠点に位置付けられた奄美大島基地


 さて、奄美駐屯地50.5㏊、瀬戸内分屯地48㏊という巨大基地の出現は、自衛隊の南西シフト態勢にどのような意味をもつのか? 
 結論すれば、奄美大島(種子島ー馬毛島)が、先島―南西諸島における「島嶼戦争」=海洋限定戦争の、一大兵站基地・機動展開拠点として、位置付けられていた、ということである。上図の拙著『自衛隊の南西シフト』所収の情報公開文書は、「薩南諸島」(種子島から沖永良部島)の軍事的位置付けが明記されている。
 すなわち、薩南諸島は、「南西地域における事態生起時の重要な後方支援拠点」であり、「奄美大島の名瀬港は海自輸送上の重要な中継拠点」、「空自通信の南西地域の航空作戦の基盤」であり、「薩南諸島は、陸自ヘリ運用上の中継拠点」である、ということだ。
 つまり、南西シフト態勢下の、兵站拠点、機動展開拠点であるが、言い換えれば奄美大島は、「海上兵站」拠点、種子島(馬毛島)は、「航空兵站」拠点だということだ。

 瀬戸内分屯地の巨大弾薬庫!

 この実態を図示しよう。この文書は、地元住民が情報公開で提出させた文書である。

 図は、瀬戸内町節子地区の瀬戸内分屯地のB地区の図と配備表である。この中には、「貯蔵庫A×5棟」、「各1000㎡」というものが明記されている。これこそ、ミサイル部隊の弾薬庫である。別の図には、そのB地区の地下に予定される5本のトンネル上のミサイル弾薬庫が図示されている(第1ミサイル連隊[北海道の弾薬庫参照])。


 この5本の貯蔵庫には、おそらく、数百発のミサイル弾体の保管が予定されている。つまり、先島―南西諸島で、有事に使用するミサイル部隊の弾体すべての保管が予定され、この地域から、先島―南西諸島への兵站・弾薬供給が行われるということだ。

 ところで、3月31日に報道陣に公表された、この「火薬庫」は、南海日日新聞によると、「30万6551㎡が大型ミサイルの弾薬や小銃などを保管する火薬庫。完成は来年度以降となるものの、現在配備された装備品の弾薬はすでに配備が完了している」(4月1日付同紙、宮古島で問題となった、「中距離多目的誘導弾(ミサイル)弾体」も!)ということだ。

*注、2019年3月26日付朝雲新聞によれば、南海日日新聞記事による弾薬庫面積30万6551㎡というのは、正確な報道であったことが記されている。それにしても、この瀬戸内分屯地自体が、南西シフト態勢の兵站拠点出あることが、あらためて裏付けられた。
「『三日月』のような細長い形の分屯地の総面積は約48万平方メートル(ヤフオクドーム6.9個分)で、広さは奄美駐屯地に匹敵する。ここの敷地の約3分の2が弾薬や武器を保管する火薬庫となっています。完成は来年度以降になりますが、現在導入された装備品の弾薬はすでに配備が完了しています』と菅広報室長。」(朝雲新聞)


 だが、この新聞が明記する約30万㏊が、「火薬庫」というのは、正しいのだろうか? 図表には、合計5000㎡と明記してあり、他には大きな「整備工場」などが設置される予定である。これらが、巨大な兵站施設であることは確かであるが、もし、この新聞の記述に間違いがないとすれば、防衛省は情報公開文書にさえ、ウソの図表で公開したということになる。
 いずれにしても、この瀬戸内分屯地が巨大なミサイル部隊の弾薬庫であり、南西シフト態勢の兵站拠点であることは明らかだ。

 奄美大島などの対艦・対空ミサイル部隊配備は、兵站防衛部隊だ!

 さて、この情報公開文書で明らかになったもう一つの重大な内容は、「島嶼戦争」=琉球列島弧の海峡封鎖作戦の、巨大兵站・機動展開拠点として、奄美大島ー種子島などが位置付けられた、作戦化されたということだ。
 従来、日米の「島嶼戦争」において、奄美大島を含む対艦・対空ミサイル部隊の配備は、琉球列島弧の海峡封鎖作戦の一貫、つまり、奄美大島のミサイル部隊配備は、大隅海峡などの通峡阻止作戦の一貫として想定されていた。しかし、この情報公開文書をはじめとする計画が明記するのは、奄美大島などの薩南諸島は、先島―南西諸島への兵站物資の補給・機動展開拠点であるということだ。

(馬毛島ー種子島の軍事化を示す防衛省情報公開文書)

 そして、この兵站拠点を防御するために、海空作戦とともに、地対艦ミサイルを配備するのであり、この地対艦ミサイルを防御するために地対空ミサイルを配備するというものだ。さらに言うならば、この鈍重な、発射したら位置がすぐにバレる、対艦・対空ミサイル部隊を防御するために警備部隊を配備するということである(陸自教範『地対艦ミサイル連隊』『対ゲリラ・コマンドウ作戦』参照、拙著所収)。
 こうして、この兵站拠点など防御するために、次々と「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」(新防衛大綱)や、巡航ミサイル、PAC3などが配備されていくことは疑いない。
 なお、奄美駐屯地には、空自の移動警戒隊の配備が予定されており、同島の最高峰・湯湾岳には、空自の通信基地配備が予定されている(陸海空の配備!)

 拡大し増殖する奄美大島、そして薩南諸島の島々の軍事化

 宮古島への、ウソで塗り固められた、ミサイル弾薬庫設置の問題と同様、奄美大島、与那国島を含め、一旦、造られた軍事基地は増殖していくのみだ。
 奄美大島では、瀬戸内町古仁屋港で、海自の誘致運動が始まり、また徳之島でも、自衛隊の誘致運動が始まりつつあり、この一帯の沖永良部島まで、既に「鎮西演習」という西部方面隊の機動展開演習が繰り返し行われている。「生地訓練」という名の市街地訓練、機動展開訓練である。

(2018年10月、南種子町での統合機動演習[市街地])

 この凄まじい南西シフト態勢下の、薩南諸島の軍事化・要塞化の実態を、全国の心ある人々は、凝視して見てほしい。馬毛島の日米の、特に自衛隊の要塞化を、冷徹に見てほしい。
 そして、何よりも、孤立しながらも、必死にこの巨大な軍事化を阻もうとしている、抵抗している島々の、人々の、声を聞いてほしい。
 奄美大島でも、宮古島でも、石垣島でも、そして沖縄島でも、南西シフト態勢の軍事化とのたたかいは、これからが正念場だ。


*3月31日、奄美大島で提出された住民らの防衛大臣等への「請願書」
     請願書

防衛大臣 殿
統合幕僚長 殿
陸上幕僚長 殿
奄美警備隊兼奄美駐屯地司令 殿
奄美駐屯地瀬戸内分屯地司令 殿
西部方面特科隊第5地対艦ミサイル連隊第301地対艦ミサイル中隊隊長 殿
西部方面隊第2高射特科団第3高射特科群第344高射中隊隊長 殿

日本国憲法第16条「請願」および請願法に基づき、以下の請願を行う。

1、奄美警備隊および地対艦・地対空ミサイル部隊等の自衛隊の部隊は、奄美大島市街地での訓練・演習などでの、いわゆる「生地訓練」などを行わないこと、武器を携行し、武装した部隊の奄美市街地・周辺海岸でのいかなる訓練展開・演習・活動を行わないこと。

2、奄美大島の地対艦・地対空ミサイル部隊等は、アマミノクロウサギ等の生息地に配慮し、夜間における駐屯地外での移動・訓練・演習を行わないこと。       

3、自衛隊配備に関する奄美市民への説明会資料などにある、奄美の景勝地・江仁屋離島での訓練・演習を中止すること(防衛省説明資料「奄美大島への部隊配備について、統合演習等の実施範囲「瀬戸内町」、「鎮西25」演習以後の演習等)。

4、西部方面隊の「鎮西演習」等で行われている、94式水際地雷敷設装置などを使用した古仁屋港などでの、市街地・周辺海域での地雷施設訓練を直ちに中止し、今後とも行わないこと。 

5、自衛隊および米軍の奄美空港、旧奄美空港などを使用した、オスプレイ、軍用ヘリ、軍用航空機での訓練・演習を行わないこと。

6、自衛隊の各級指揮官は、休日等における隊員の事故防止に努め、市民の平穏な生活を保障すること。

 2019年3月31日
                     奄美市名瀬●町○○番地 氏名(奄美市民の連名)


*鹿児島建設新聞(2017/9/7)
防衛省は、奄美大島に新設する駐屯地の整備費として2016年度予算案に約86億7000円を盛り込んでおり、造成と実施設計に着手する。また、鹿屋航空基地では、アメリガ軍の訓練に伴う施設整備費として約11億円、湯湾岳で通信所開設に向けて約10億1000万円を配分した。 
 駐屯地を新設する場所は、奄美大島の2カ所。奄美市の場所は、「奄美カントリーの一部」で敷地面積は約30ha。16年度は約45億円。 
 施設概要は、RC造4階建約8200㎡と約6000㎡の隊庁舎2棟をはじめ、訓練施設(RC造平屋建て約1万1200㎡)、体育館(同2階建約1500㎡)のほか、食房・浴場・厚生施設、車両整備場ほか27棟。 
 瀬戸内町は、節子地区の町有地で敷地面積は約28ha。16年度予算は約41億円。主な施設は、隊庁舎がRC造2階建約6300㎡、体育館(同2階建約1500㎡)、食厨・浴場・厚生施設、車両整備場など23棟などの設置を計画。官舎は、阿木名地区を選定した。 
 鹿屋航空基地では、アメリカ軍岩国基地に展開している空中給油機KC-130型機の訓練用地として約5haのコンクリート舗装を実施。契約ベースの事業費は約22億円。 
 大和村と宇検村にまたがる湯湾岳には、航空警戒管制の通信開設所に向けて、用地取得と通信装置の製造を予定している。 
 また、南西地域における移動式警戒管制レーダーの展開基盤整備は、約3億円を計上。奄美市に整備する駐屯基地内に整備することにより、隙のない警戒監視体制を保持する。http://www.senmonshi.com/archive/02/02D56TLjT53226.asp?fbclid=IwAR1DZ6dhR1jU5GhuCuBUwfpydrttFwgHvng4q7kejDt48mkSRYogb4ilWCw
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*雑誌『世界』(2019年3月号)の誤謬について!

2019年02月12日 | 自衛隊南西シフト
*雑誌『世界』(2019年3月号)の誤謬について!


今月号の『世界』は、自衛隊の南西シフト態勢に関する特集。石垣島など地元で闘う住民たちの座談会もあり、大変遅まきながらも、重要な企画である。
問題は、この掲載内容に幾つかの重要な誤りや不十分さがあるが、メディアの報道がほとんどない中での、雑誌を読んだ人々が誤った認識を持たないためにも、いくつか注意を喚起したい!。
#自衛隊 #南西シフト #沖縄 #宮古島 #石垣島 #奄美大島 #種子島

①巻頭の石井暁論文――趣旨は南西シフト態勢下の対中戦略を批判しており、「尖閣」の位置付けに問題があるとしても、全体的には南西シフト態勢のしっかりした分析。しかし、以下の記載は、認識不足であり、誤解を招きかねない表現だ。

「(与那国配備完了後)今後、鹿児島県の奄美大島、沖縄県の宮古島と石垣島には警備部隊や地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊を配備する計画が進んでいる」

――「計画が進んでいる」という表現は、普通にはこれから基地建設が始まる、と受けとる。2014・5年にこの文章が書かれているのならいいが、この3月に部隊が開隊・配備される宮古島・奄美大島について、こんな悠長な表現をするとすれば間違いであり、事実認識の誤りだ。

②池尾靖志論文の南西諸島ルポの奄美大島住民運動について!
「(与那国島などでは激しい反対運動が起きた)これに対し、奄美大島では、一部住民らによる反対の声は聞かれるものの、積極的な反対運動は展開されていない」

――これを読まれる奄美大島の反対派の人々は、どう受けとるだろうか。メディアが完全に黙殺している中で、全国の人々も、そのまま、奄美では基地反対の運動はない、と受けとるだろう。
 だが、厳しく、孤立しながらも、「積極的な反対運動」は一貫して続いている。奄美の、こういう運動の困難さに全く配慮することなく、「積極的な反対運動はない」という書き方は、無責任の極みであり、厳しく批判すべきだ。


奄美市「憲法広場」での自衛隊配備反対集会


③池尾論文は、また、馬毛島の軍事化についても、「米軍のFCLP基地」とだけしか書かれてなく、馬毛島の南西シフト態勢下の位置、軍事化について全く理解が出来ていない。ここに至ってこういう認識では、池尾氏だけでなく、『世界』編集部の責任さえ問われかねない。
(同紙115頁では[池尾論文内]、私の提供した「自衛隊の南西諸島等配備計画図」が掲載され、そこには、自衛隊の事前集積拠点等の馬毛島の戦略的位置が明記されているのに!)

④池尾論文は、奄美大島には、「陸自警備部隊と対艦・対空ミサイル部隊」の配備のみが記述されているが、奄美にはこのほか、空自の移動警戒隊・通信基地という二つの部隊が配備されることが決定している。また、奄美にすでに配備されている部隊は空自「分とん基地だけ」と明記されているが、奄美の既存基地は空自通信所(30人)、海自分遣隊(10人)の二つの部隊である。

*いずれにしても、今号の『世界』は、大手メディアが、初めて自衛隊の南西シフト態勢の実状を伝える、そして、先島―南西諸島の人々の、生の声を伝える良い機会であり、一読してほしい。(自衛隊の災害派遣問題の連載記事もあり[島本慈子論文])
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『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』

2019年01月20日 | 自衛隊南西シフト
『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』
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馬毛島問題での東京新聞を始めとするメディア報道を糺す――日米の巨大軍事要塞島と化す馬毛島のたたかいの重大局面に当たって

2019年01月18日 | 自衛隊南西シフト

#自衛隊 #南西シフト #沖縄 #宮古島 #石垣島 #奄美大島 #種子島 #馬毛島
 事実を隠蔽して世論誘導を行う、東京新聞を始めとしたマスメディアの馬毛島報道は、ジャーナリズム精神を失っている!

 1/16付東京新聞の馬毛島基地化に関する報道は、今重大局面にある、馬毛島の軍事化について報じるものであり、筆者としても大変評価するものである。特に、報道は、現地における住民の反対運動の状況を伝えるものとなっており、重要だ。
 だが、筆者はあえて、この東京新聞を始めとするマスメディアに対して、厳しい批判を行うべきだ、と思う。というのは、この東京新聞の報道を始め、この間のマスメディアの報道は、防衛省が大々的に公表する「自衛隊使用」について、一言も言及せず、米軍のFCLP基地化だけを報じる、偏向報道、事実を意図的に隠蔽する報道となっているからだ。

 この事実を隠蔽した報道が、ジャーナリズムと言えるのか? とんでもない「世論誘導」ではないのか? その隠蔽の結果は、どのようなゆがみをもたらすのか、自覚しているのか、と。自衛隊の南西シフト態勢については、報道の自主規制・報道管制が凄まじく起こっているが、事実を隠蔽する内容は、もはやメディアとは言えない(この点で、自衛隊の奄美大島新基地建設を隠蔽してきた、東京新聞を始めとする全てのメディアは同罪だ。)

 1/16馬毛島報道で「茶番劇」を演じる東京新聞と自衛隊の癒着

 さて、こういう情勢の中で、先日の東京新聞は、馬毛島における自衛隊の使用について以下のように伝えている。
 「防衛省も『南西地域における防衛体制充実のため、自衛隊施設を整備するとともに、FCLPを実施するため検討を進めている』と明記としながら、他方では、「防衛省は馬毛島は『FCLPを実施すするための候補地で』、自衛隊の利用については『お答えできるものではない』としている」と。

 要するに、自衛隊の馬毛島使用については、「自衛隊(及び米軍)のF35BのFCLPの使用」は、行うが、FCLP以外の自衛隊の使用については、応えられない、という、何とも訳の分からない、内容になってしまっている。


 率直に言って、これは東京新聞記者と防衛省担当者の、「茶番劇」だ。なぜなら、事はどこかの、一般的未公表の基地建設が問題になっているのではない。すでに、防衛省が「ホームページで公開」している「自衛隊の馬毛島利用」についてであるからだ(防衛省サイト「国を守る」下記にリンク)。このサイトでは、米軍のFCLP使用ととともに、南西シフト態勢下の上陸演習拠点・事前集積拠点としての馬毛島の自衛隊利用が、100%公然と打ち出されている。

 そして、決定的に重要なのは、この東京新聞の担当記者に同行し、同紙の「防衛担当記者」の半田滋氏は、「現代ビジネス」の同日付で、何とこの馬毛島問題を大きく執筆しているのである。半田氏が、なぜ、自らの新聞ではなく、このSNSで同問題を投稿しているのか、疑問だが、決定的なのは、半田氏が、「馬毛島の自衛隊使用については、2011年から、地元に説明されている」と明記していることだ。以下のように言う。

「防衛省は島の取得後、自衛隊基地とし、米軍と共同利用する方針だ。完全な米軍基地とした場合、米軍のやりたい放題となり、周辺住民の不満を高めることになりかねないからだ。
2011年7月、防衛省が馬毛島のある鹿児島県西之表市に提出した資料によると、自衛隊基地としての馬毛島は、沖縄や鹿児島の離島防衛の集結・展開拠点としての活用を想定して、新たに滑走路、港湾施設、物資用倉庫を建設する。
通常は南西防衛のための上陸訓練、空挺部隊の降下訓練、上陸後の展開・対処訓練などに活用するが、説明資料にはもちろん「FCLP施設としての活用」も明記されている。」
(「現代ビジネス」半田論文) 

なお、この半田論文(「現代ビジネス」及び当人のFacebook掲載)は、2018年1月18日、16時ころ、一方的に削除されました。半田さん、この理由について、正面から応えなさい!
 https://gendai.ismedia.jp/preview/f1a17781b48c4113459d79b9d51c8df522802406?fbclid=IwAR2z7T3ks0avaXBlppm8N3JoT4_IL-CWkPXnjZkbLiw3ywQ-LaOs0OcwydA

 つまり、東京新聞のこの記事の執筆者の上司であり、馬毛島への同行者でもある半田氏が、一方では馬毛島の自衛隊使用を報じるのに対し、他方では東京新聞では、防衛省は自衛隊使用について「お答えできるものではない」というのだ(半田氏のいう地元説明会資料は、2011年に作成された防衛省の馬毛島利用に関する説明会資料「御説明資料」というもの。自衛隊使用について100%明記。「国を守る」の改訂版、下記のリンク参照)。

 結論は明らかだ。情けないながら、東京新聞は、防衛省にお願いして、「茶番劇」を演じて貰っている、ということなのだ。どうしてそこまでして、と読者は思うのは当然だろう。だが、考えてほしい。東京新聞は、特に馬毛島報道に力を入れてきたが(下記の2018年の記事参照)、その東京新聞でさえも、「事実を隠蔽」して報道してきたことを取り繕わねばならない、という状況になったからである。つまり、馬毛島軍事化は、自衛隊主力の巨大な要塞島の建設として進めることが決定されているからだ(そして、馬毛島の自衛隊使用についての隠蔽は、その巨大基地建設に関する自衛隊批判タブーとして行われてきたということだ)。

 馬毛島→種子島の巨大軍事化と南西シフト態勢――陸海空・米軍の数千人の要員配置!

 しかし、私が、東京新聞を始めとするマスメディアを、厳しく批判しなければならないというのは、今なお、東京新聞を始めとするマスメディアが、このような馬毛島の巨大要塞化、特に、自衛隊の南西シフト態勢下のそれを、隠蔽し続けるからだ。馬毛島には、どういう基地が造られるのか? 東京新聞などは、具体的事実を報じてきたのか?

・南西シフト態勢下の陸自の「上陸演習拠点」
・南西シフト態勢下の陸海空の「事前集積拠点」(兵站物資)
 ――南西シフト態勢下の、航空輸送拠点
・航空自衛隊のF35Bの航空基地兼FCLP
・米軍のFCLP
・米軍オスプレイの普天間基地の訓練軽減基地(自衛隊の水陸機動団のオスプレイ使用も予想される)
・航空自衛隊F-15の航空基地(F35B基地化を含むと予想される)
・海上自衛隊対潜哨戒機(P-3C、P-1)の航空基地
・災害派遣等の物資拠点(欺瞞的な!)
*種子島の陸海空のベースキャンプ、米軍のベースキャンプ(「国を守る」他に明記)
*十島村臥蛇島の射爆場化

 
 まさしく、戦慄するかのような、陸海空自衛隊、そして米軍の、文字通り要塞島だ。そして、重大なのは、この巨大基地に配置される自衛隊と米軍の要員だ。おそらく、米軍は100~300人規模と推測されるが、自衛隊は合わせて数千人は下らないだろう。人口3万5千人の種子島に数千人の自衛隊と米軍!
 これは、南西シフト態勢下の、先島―南西諸島への最大の兵員投入であり、最大の航空基地ー事前集積拠点ー上陸演習拠点→要塞島となるだろう。

 馬毛島ー種子島の一大軍事化・要塞化――「鎮西演習」を通じた種子島の演習拠点化と宣撫工作

 上に書いた、馬毛島の陸海空・米軍の要塞化に留まることはない。馬毛島の軍事化は、種子島全島の軍事化であり、馬毛島のベースキャンプとしての役割だけではない。馬毛島の軍事化は、種子島の軍事化に不可避的に繋がるのだ。
 実際、昨年10月の、中種子町での、日米海兵隊の共同訓練、そして、その時に使用された旧種子島空港は、間違いなく、この旧空港の軍事化の前触れ、地ならし、といわねばならない。すでに、東京新聞でさえ発表しているように、南西シフト態勢下の先島―南西諸島での民間空港の軍事化ーF35Bなどの基地化は、自衛隊制服組のプランになっている(与那国・石垣島・宮古島・南北大東島と発表。「いずも」型の空母改修よりも、こちらの軍事化は先行する!)

 結論は、東京新聞を始め、マスメディアの事実隠しと、世論誘導が行ったことは、地元住民に対する、この「自衛隊の要塞化隠し」である。つまり、米軍のFCLP基地だけを報道することにより、自衛隊による軍事化を徹底的に隠したのだ。
 この結果は、どうなったのか? 自衛隊はそのマスメディアの報道を見すえて、すでに5年以上前から種子島で「鎮西演習」などを繰り返し、自衛隊の演習・訓練に地元住民を慣れさせる、という宣撫工作を徹底した行ってきた。

 そして今や、種子島の地元では、中種子町・南種子町に表れているように、演習歓迎だけでなく「自衛隊誘致」の動きさえ出始めているのだ。――これが東京新聞などの世論誘導の結果である。自衛隊批判、自衛隊との対峙を、地元の人々がなそうとすることが、圧倒的に遅れたのだ。マスメディアが、馬毛島ー種子島の自衛隊使用を報道しないことによって(事実わい曲報道)、自衛隊は住民の「懐」入り込んだ、ということである。



 日米の南西シフト態勢下の馬毛島ー種子島、奄美大島――薩南諸島の軍事化、要塞化のとの闘い

 明らかなように、この馬毛島ー種子島の軍事化は、奄美大島の自衛隊基地造り(4月開設)と合わせて、同地域が南西シフト態勢下の、一大「機動展開拠点」として、作戦化されたことによるものだ。つまり、日米の「島嶼戦争」の、航空作戦拠点としてだけでなく、機動展開拠点として位置付けられたということだ。その意味からして、馬毛島ー種子島ー奄美大島は、自衛隊の南西シフト態勢の、戦力としても兵員としても、最大の軍事基地になろうとしていることだ。

 だがしかし、このような政府・自衛隊の、マスメディアと一体化した策動を的確に見抜き、真っ向から対峙していくなら、この地の運動は、石垣島・宮古島・沖縄島とともにする、大きなものとして広がり、かつ権力の意図を打ち砕くことが出来る。

 そして今現在、石垣島での自衛隊配備に対して、市民たちが「石垣島住民投票」を要求して起ち上がっているように、軍事基地といえどもそこで生きる人々の「住民自治」によって阻むことができるのだ。反動勢力は「国防はクニの専権事項」などというが、こんなまやかしに乗せられてはならない。「国防」「安全保障」といえども、そこに生きる住民たちの自治権ー平和的生存権・環境権を無視することはできないのだ。

 そして、重要なのは、地元種子島では、馬毛島の軍事化に対する反対の声が、市民の多数を占めていることだ。西之表市市長(馬毛島の行政区)も、前回の市長選において、馬毛島軍事化反対派として当選したのだ。先島―南西諸島の自衛隊配備反対の闘いの教訓は、市民多数が反対し、市長を含む自治体が反対したとき、政府・防衛省は、基地建設を強行することが出来ない、ということだ。

 繰り返すが、南西シフト態勢下の、マスメディアの報道規制だけでなく、今やこの馬毛島問題に見る、「世論誘導」さえ始まってるのであり、これを正視し、切り込む闘いなしには、私たちは、この巨大な、とてつもない「島嶼戦争」=海洋限定戦争という戦争態勢(対中抑止戦略下の)を打ち砕くことはできないということだ。


*「御説明資料」(防衛省の種子島における説明会資料・2011年発行)
http://www.city.nishinoomote.lg.jp/material/files/group/9/88705920.pdf

*防衛省サイト「国を守る」(種子島の基地化・2012年)
http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/saihen/pdf/kuniwo_mamoru.pdf

*2018年1月8日付、馬毛島のFCLP(Field-Carrier Landing Practice:空母艦載機着陸訓練)基地化を報じる東京新聞、しかし、自衛隊の基地化については一言も触れない!



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本格的に動き始めた自衛隊の宇宙軍事化――淮天頂衛星システムの軍事利用の公然化について

2019年01月17日 | 自衛隊南西シフト
 石垣島・宮古島・種子島などに設置された準天頂衛星システム

 (石垣島の淮天頂衛星システム、レーダードーム)#自衛隊 #南西シフト #沖縄 #宮古島 #石垣島 #奄美大島 #種子島


 宮古島・石垣島・種子島などには、写真に見るように巨大なレドームが設置されている。これは淮天頂衛星システム――日本版のGPS、衛星測位システムと言われており、日本には6箇所設置されている。石垣島、宮古島のほか、久米島、沖縄恩納村、種子島、茨城県常陸太田市だ。つまり、南西諸島にそのほとんどが設置されていることから、これは明らかに自衛隊の島嶼防衛戦、とりわけ、そのミサイル戦争のためのものだと判断できる。このシステムでは、GPSの誤差が現在の 10メートルから、一挙にわずか数十センチにまで精度を高められると言われている。
 
 政府は表向きでは「市場の創出と競争力強化」などの効果があるとしているが、宇宙の安全保障分野に関する利用指針となる「国家安全保障宇宙戦略(日本版NSC」の中では、 「日米同盟は我が国安全保障政策の基軸であり、本年中に予定されている『日米防衛協力のための指針』の見直しに宇宙政策を明確に位置付け、測位衛星(準天頂)、SSA及びMDA等の日米宇宙協力により日米同盟を深化させる。特に、準天頂プログラムについては、米国のGPSとの補完関係の更なる強化を図りつつ、アジア・オセアニア地域の測位政策に主体的な役割を果たす。」(「国家戦略の遂行に向けた宇宙総合戦略」2014 年 8月 26日、自民党政務調査会・宇宙・海洋開発特別委員会)と、その軍事的位置付けが明らかにされている。

(宮古島の淮天頂衛星システム・レーダードーム)

 また、以下のような主張もある。
「……準天頂はGPS衛星の補完・補強をするだけでなく、日本列島や朝鮮半島における安全保障活動の支援をすることが期待できる。現在の米軍も自衛隊もGPSの軍事信号に大きく依存しているが、準天頂衛星が加わることで、GPSを受信しにくいビル陰での市街戦や山岳地帯でのゲリラ戦、さらにはミサイル防衛のような精密な測位を必要とする防衛手段の強化に資することができる。」(鈴木一人[北海道大学公共政策大学院准教授]雑誌『WEDGE』7月号・2010年6月 23日)
(ここまでの記事は、拙著『オキナワ島嶼戦争―自衛隊の海峡封鎖作戦』からの引用)

 自衛隊と米軍の淮天頂衛星システム利用を報道する読売新聞

 そして、遂に本日の読売新聞は、自衛隊による淮天頂衛星システムの活用、日米共同の活用開始を公然と打ち出し始めた。従来、淮天頂衛星システムは、「自動運転技術」などの民間活用だ、と欺瞞を弄していた政府・自衛隊の意図は、これでその軍事利用が明らかとなったのだ。読売は、以下のようにいう。

 「海自では現在、敷設艦と潜水艦救難艦の2隻に準天頂衛星の受信機を先行的に設置し、運用を行っている。これを踏まえ、政府は21年度をメドに、いずも型護衛艦など4隻のヘリコプター搭載護衛艦に受信機を設置する方向だ。ほかの護衛艦や潜水艦、航空機、ヘリコプターなどにも順次、受信機を搭載する案もある。」
 
 要するに、海自の全ての艦艇はもちろん、自衛隊の全ての航空機、艦艇、そして各種巡航ミサイル部隊の本格的運用に、この淮天頂衛星システムが運用されるということだ。
 石垣島・宮古島・種子島などに設置されたこのシステムが、南西シフト態勢の中での島々に配備される対艦・対空ミサイル部隊の運用の重要な兵器として位置付けられていることも、他言は要しないだろう。

 南西シフト態勢による先島―南西諸島の軍事化は、もはや留まるところを知らない。似非軍事評論家などが、南西シフトは「陸自のリストラ対策」などと、反戦運動勢力を、今なお必死に懐柔しようとしている間に、また、マスメディアが報道規制をしている間に、今や急ピッチでこのような東シナ海戦争態勢=「島嶼戦争」=海洋限定戦争態勢が進行しつつあるのだ。これと本格的に対峙するたたかいが求められている。 

(種子島の淮天頂衛星システム・レーダードーム)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中露の脅威を念頭…日本版GPS、海自が活用へ(2019/1/17読売電子版から)

 政府は、米国の全地球測位システム(GPS)衛星が機能不全に陥った場合に備え、自衛隊による日本版GPS衛星「準天頂衛星」の活用を本格化する方針を固めた。中国やロシアが衛星への攻撃能力を高める中、GPSの代替機能を確保するためだ。2021年度にも海上自衛隊の護衛艦に導入する。

 各国軍の活動では、人工衛星の通信ネットワークが不可欠となっている。海自艦艇も、作戦などに必要な位置情報の把握をGPS衛星に大きく依存しており、「GPS衛星が攻撃されれば、自衛隊の運用がまひする恐れがある」(防衛省幹部)とされる。

 日本とアジア・オセアニアの上空を8の字形に周回する準天頂衛星は、日本独自の測位衛星だ。これまでに4基が打ち上げられ、昨年11月に本格的な運用が始まった。23年度頃に7基体制となり、日本周辺では米国のGPSに頼らない測位が可能となる。

 海自では現在、敷設艦と潜水艦救難艦の2隻に準天頂衛星の受信機を先行的に設置し、運用を行っている。これを踏まえ、政府は21年度をメドに、いずも型護衛艦など4隻のヘリコプター搭載護衛艦に受信機を設置する方向だ。ほかの護衛艦や潜水艦、航空機、ヘリコプターなどにも順次、受信機を搭載する案もある。

 自衛隊と在日米軍が共同で、準天頂衛星を利用できる方法も検討する予定だ。(以下略)
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190116-OYT1T50016.html?from=ytop_ylist
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