○○さま
11/12の「命どぅ宝の会」のシンポジウムでは、大変お世話になりました。沖縄島での久々の講演で緊張しましたが、先島・沖縄島の各地から集まられた皆さんの熱気で無事やり終えました。ありがとうございました。
さて、メールでの、国場幸之助(自民党国防部会長)の件ですが、まさしく書かれているとおりですね。国場幸之助は軍事問題では素人でしょう。
彼をたてるのですから、72年自衛隊の沖縄進駐の時の桑江一佐と同様の役目でしょう。しかも、その就任が今年の8/31と。
沖縄の第2段階の、凄まじい軍事化―住民避難態勢―シェルターづくり、これらの「県民合意づくりの先兵」ということですね。
ところで、「台湾有事」のシナリオを書いてほしいという要望があるということですが、「台湾有事」―沖縄戦のシナリオを書くには、少し時間が掛かります。制服組のOB連中もこのところ作っていますが、あまり現実性のないシナリオばかりですからー。
ただ、日米共同統合演習(「台湾有事」の日米共同作戦計画)に見るように、当局の間では、だいぶ前からシナリオは出来ているでしょう。そして、そのシナリオ通り、安保関連3文書の策定で、第2段階の琉球列島のミサイル要塞化―攻撃基地化が始まり、住民の避難計画も始動した、ということです。
(第3段階もそのうち始まります。「機動展開予定」の陸自部隊と米海兵隊・陸軍(一部)の先島などへの常駐化など(自衛隊の輸送力の根本的脆弱性を見るべき!)。
このシナリオについて、詳しくは時間をかけて考えたいと思いますが、やはり、僕は前から何度も書いていますが、「島嶼戦争」=海洋限定戦争という日米の作戦計画をしっかり認識すべきだと思います(2016年『オキナワ島嶼戦争: 自衛隊の海峡封鎖作戦』参照)。
例えば、「台湾有事」は、中国側からは、台湾への経済封鎖で始まり、これが、「海峡戦争」へ、そして相当時間をかけて「海上戦闘」へと広がるでしょう(米国の台湾政府への「独立の使嗾」という前提での問題)。
しかし、中国の台湾本土侵攻という事態は、全くあり得ない想定です(ここ20年以上)。見ての通り、台湾海峡は約140キロ以上、この海峡を越えることは、現在の中国軍どころか、10~20年先の同軍の軍事力でも不可能に近いでしょう(ナチスさえも、約40キロのドーバー海峡を越えられなかった。保守反動連中の中国軍の沖縄島・本土侵攻などとんでもない荒唐無稽)。 あるいは、事態は「台湾有事」からではなく、東・南シナ海から、戦火が始まることもあり得ます(同時事態の進行も!)。
米日ー英仏豪軍の南シナ海での「航行の自由作戦」においては、今現在、中国との緊張関係から、いつ火がついてもおかしくない事態です。
いずれのケースでも、私たちがしっかり見据えねばならないのは、「先島戦争」(戦闘の初期、最初の段階では、沖縄島は巻き込まない)という「海洋限定戦争」への認識です。2012年「日米の『動的防衛協力』について」(統合幕僚監部)は、米軍と沖縄島をなんとか巻き込みたい、という自衛隊の意図が露骨に出ています。また、トシ・ヨシハラも最近の著作で、中国側が沖縄米軍を巻き込まない戦争態勢づくりを指向していることを、中国側評論家の文書で紹介しています。
ウクライナ戦争(現在のところは、限定・制限戦争)を見れば明らかですが、沖縄島(米軍本体)を戦場にすると、直ちにアジア太平洋戦争に発展します。もちろん、先島戦争は、数年間だけで、その後はアジア太平洋戦争に発展し、十数年後には世界戦争→核戦争になっていくでしょう。いったん、戦争が始まれば、その広がりも不可避です。
しかし、多くの人は、この「現代の戦争の性格」を認識できていないと思います。いきなり、核戦争になるとか(中距離[核]ミサイル配備論も!)、「台湾有事」が、いきなり、日本本土やアジア太平洋の戦争になるとか。
日米中の経済的相互依存関係(世界経済も)をみても、各国の支配層が、この戦争を「限定」したいという意図が、よくわかると思います。自らが自滅したら元も子もないですから、連中も「限定戦争」に留めておきたいという思惑があるでしょう。
もちろん、かつての日米戦争をみても、この戦争は「限定戦争」には留まりません。新冷戦(熱戦)が何年も続き、日米中とも「経済ブロック化」(サプライチェーンの再構築を進めながら)が進み、そして、次第に「通常戦型のアジア太平洋戦争」へ発展し、ついには核戦争へ行き着く、ということでしょう。
これは、沖縄にとって、文字通りの意味で「沖縄戦再来」です。沖縄だけが犠牲になる戦争です。
とてもきつい言い方ですが、日米政府・自衛隊は、まず、沖縄―琉球列島を戦場にし、盾にして、ヤマト政府が生き延びるー、ということです。これは南西シフトの全ての文書から明らかです。
「戦域」を限定する、これは、現代世界の政治・軍事関係からすれば、不可避的に行われる戦略ですね。ウクライナ戦争は、それを証明していますが、別にウクライナ戦争がなくても、初めから想定される事態です。現代国際政治の軍事外交(砲艦外交)政策をみれば、明らかです。
繰り返しますが、事態は、「先島諸島―沖縄の戦場化」という「島嶼戦争」=海洋限定戦争として始まり、これが何年も続きます(覇権戦争)。したがって、先島住民の避難(安保3文書に初めて明記)、シェルター造りという、とんでもない状況が発表されているのです。
与那国島などは、要塞島として無人化する、宮古島などでの「海峡戦争」(チョークポイント)ということから、宮古島の相当部分(保良地区など)の無人化(拙著で北方シフトの例を挙げています。)も、計画化されていると思います。
実際、日米の第2段階・第3段階の軍事化が始まれば、3個機動師団・4個機動旅団・1個機甲師団のうち(有事動員予定)のうち、数個機動師団は「平時配置」にされるでしょう(輸送力の脆弱性から、同じ理由で住民避難も平時から!)。
防衛研究所が数年前に、フォークランド戦史という本を公開していますが、1個旅団1万人の部隊を3カ月補給するのに、100隻の輸送船団を要したということを書いています。
自衛隊の輸送力からすると、全くの問題外ですから、安保3文書でも機動展開部隊(航空・海上の輸送力)の大増強を謳っています。
繰り返しますが、日米中の経済的相互依存関係からも、先島戦争=海洋限定戦争態勢――新冷戦(熱戦)が何年も続き、日米中とも「経済ブロック化」が進行し、そして、最終的にアジア太平洋戦争に行き着くということです。
また、安保3文書の策定は、「台湾有事」態勢作りだけでなく、それを軸にしていますが、同時に、対中軍拡競争を日米が仕掛けたという側面も見るべきだと思います(昨日の発表だけでも、米国の台湾への軍事援助100億ドル!)。日本の軍費費2倍化もそうですね!
現在の全ての状況は、この対中軍拡競争―「新冷戦」(熱戦)という、日米中の覇権抗争、戦争が本格的に始まったということです。これを構造的に変える日本政治体制の転換が必要なことは言うまでもありません。
やはり、この状況を変えるには、沖縄―本土の、特に本土の反戦運動の根源的なたたかいが必要です。
この前の沖縄講演でも話しましたが、本土の平和運動も、良心的知識人も、この事態の認識が、全く出来ていないという根本的問題があります。未だに軍拡一般に反対とか、改憲反対とか、だけで、その軍拡も、戦争も、沖縄―琉球列島から、只今現在、凄まじい形で始まっていることを見ようとしないのです。
少し長くなりましたが、「シナリオ」はそのうちに、なんとかー。
では、「良いお年」とは言えませんが。今年の沖縄は寒いようですから、お体に気をつけてください。
(註 国場組とは、沖縄島の最大の「ゼネコン」)
写真は、サイパン島・バンザイクリフ