
最近、小津安二郎監督の映画「東京物語」(昭和28年)と成瀬巳喜男監督の
「めし」(昭和26年)とをNHKテレビで観た。 映像・音声デジタル技術の
補正を得た名画は、上映当初の雰囲気をそのまま伝えた。モノクロ映画の
素晴らしいスクリーン復活であった。
名画はフィルム銀幕の難点である音響の不具合を修正されて、現場の実音と
俳優女優の生の声が鮮やかに再生された。また、フィルムの傷は修復され、
明暗コントラストの補正で、風物と人物が鮮やかに浮かび上がっていた。
不思議なことに出演者がかなり身近に感じられるようになり、演出の監督と
カメラマンのファインダーから登場人物や風物を見るような気持ちになった。
こういうのをカメラアイというのだろうか。原節子の美しさが再び私の
目の当りにちらちらとしてきた。裏声が混じったような愛くるしい女性の
声が耳に残り、一段と彼女のフェロモンを感じた。
杉村春子の演技力のすばらしさ、東山千恵子の存在感、その他島崎雪子ら
俳優の好演が印象的だし、大泉晃や上原謙が面白い三枚目ぶりを演じていて
私の脳裏に焼付いた。
会田昌江さん、いや原節子さんはおよそ50年前に引退されてから公の場に
お出になっていないけれど、こうして銀幕で会えることはとてもうれしい。
これらの作品から、私の青春時代に見た風物と日本人の生き方を垣間見る
ことが出来てとてもよかった。
この映画を観て、監督や脚本家の制作意図がよくわかることに気づいた。
名画と評される所以がわかる。どうも私は人生行路の体験で、映画が
主張するところを理解できるようになったということであろう。
「作家の主張が理解できる年齢になった」と思いたい。
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