10cm口径DSS振動板ユニットの開発状況続報です。関係者もお客様も首を長くしてお待ちで「そろそろ中間報告せよ」という事になりましたので、謹んでご報告させていただきます。
ところで、国際特許出願のための「PCT出願」なるものがありまして、その手続きが終わりましたため、振動板の中身(補強構造)の露出が増やせる事になりました。上の写真が、トラス構造補強の様子です。この上からドーム形の外殻をかぶせて接着すると、UFO形のDSS振動板本体が出来上がります。
こちらは、DSS振動板を破壊(!)している様子です。気が遠くなるほど何度も作り直しますので、その度にユニットを廃棄してしまうと勿体ないし、費用もばかになりません。そこで、ボロボロになるまで何度もバラし、新しい振動板を組み込んで、音質評価を繰り返します。DSS振動板は構造剛性が非常に高いので、上手く壊さないとボイスコイル等の他の部分が傷んでしまいます。そこで、少しづつムシり取る様にして分解しなければなりません。
写真は普通の(しょぼいフェライト磁石の)磁気回路ですが、音決めが納得の行く段階になると、豪華強力磁気回路のユニットに組み込みます。(磁気回路の強弱で音の何が変わるのかといった話題は、また別の機会に)
閑話休題
10cm口径DSS振動板の製品化に向けての改良状況について・・・
本日、コアメンバーによる内部レビュー(試聴会)を行いました。残件の高音の付帯音については解決の目途が立った事が承認されました。後は、製品化に向けての歯止めとして、もう一息の詰めを行います。振動板部品の加工精度を更に向上して、隙間なく接合する事で、細かな歪み音を更に排除出来れば完成となります。
ところで、6cm口径(振動板直径4cm)の時は、DSS振動板本体の部品は4個で済みましたが、10cm口径(振動板直径7cm)の場合は、現状でなんと23個で、約6倍に増加しています。即ち、ピストンモーション振動板の大口径化は、指数関数的に難易度が上がると言えます。更に、1個の部材を特殊な形状に仕上げるのに約10工程必要なので、故宮博物院の秘宝「象牙多層球」の様な手間のかかる精密作品(言い過ぎ(笑))となります。しかし、従来のスピーカーでは出せない音質が得られる点で、大量生産品には無い、趣味の高級品としての揺るぎない価値があると考えます。
更に別の話題です。何年も改良作業を続けて、現在の様に最後の詰めの作業をやっていても、日々新発見があります。特に最近の嬉しい新発見は、ボイスコイル周りの補強構造の工夫によって、音抜けが更に向上した事です。この手の事は、周波数特性等の議論では毛頭解明できない領域のノウハウになりますが、しかしこの様な細かな音作りの積み重ねがものを言います。繊細で柔らかな上品さと、ダイナミックでパンチの効いた音の両立が益々強化されました。皆様には、極上の音楽の醍醐味をお届けしたい思いで、開発のラストスパートをかけているところです。
追伸
島津Model-3 の価格についてお問い合わせをいただいております。あくまでも予定価格ですが、¥998,000-(ペア・税別)です。
付け加えて、この価格でも、恐ろしく手間のかかるDSS振動板ユニットの製作原価がまかなえるのかが問題になっています。今後の製造工程の効率化で、なんとかペイ出来るであろうという賭けに出なければなりません。ここは腹をくくるしかないという経営判断の場面であると、油汗を流しているところです。