極上のCDアルバム

2024年03月19日 | オーディオ談義

 

 今日は演奏、録音共に優れた一枚をご紹介したいと思います。

 

・ NYS-15415 ベートーベン三大ソナタ集 江口玲(製作 タカギクラヴィア(株))

 

 江口玲(あきら)氏は前回のアップでもご紹介しましたが、私の最近のイチオシのピアニストです。同氏は著名なピアノコンクールで入賞した等のいわゆる「分かり易い」有名人ではないのですが、ニューヨークタイムズ紙やレコ芸等にしばしば高い評価が掲載される知る人ぞ知るの実力派です。技術は一流でも音楽性は?な演奏家が多い中で、ホロヴィッツ以来の名ピアニストと言っても褒め過ぎではないと私は思っております。(ご本人もホロヴィッツが大好きとの事です)

 さてまずは、このピアノソナタの演奏についてです。私は芸術を言葉で表す事には長けておりませんが、例えてみれば豪華な洋食と言うよりは極上の懐石料理の様です。味は勿論、器から盛り付け、色合いまで、隅々まで繊細で且つ洗練された完璧な料理の様です。或いは、迷いなく一気呵成に描きあげられた書画の様な説得力もあります。「芸術」はしち難しいからと思われる方にもお勧めしたいと思います。現代はコンクール至上主義で、上手か下手か、綺麗で傷が無いか、といった機械的な評価ばかりをするからつまらないと感じるのではないでしょうか。極上の料理と同様に、素直に「美」を愉しめば良いと思うのです。江口氏の演奏には極上の美があると思います。

 そして録音についてです。まず予め申し上げておきたい点として、現代の録音物には共通の物足りなさを感じております。それは演奏のアーティキュレーション(演奏音の様々な表情変化)の再現が乏しい事です。また、生演奏で当たり前に聴くフォルテの音力感も出ません。明らかに技術スペックが劣る昔のSPレコードでさえ、ずっとリアルな演奏の表情が出ます。ところがこのCDについては、生演奏で当たり前に聴こえる音がしっかり入っています。江口氏の「極上の懐石料理」たる細やかなアーティキュレーションが良く聴きとれますし、フォルテのダイナミックな響きも生演奏さながらに愉しめます。(低音や高音がどうかとか、歪むかどうかとか、その様な事ばかりで音を扱っていると、音楽性がなくなってしまうのではないでしょうか)

 このCDですが、ハイレゾではないし、SACDでもなく、普通のCDです。録音媒体の技術スペックを論じるのも結構ですが、それ以前の「録音そのもののセンス」がもっと問われて然るべきだと感じた一枚です。

 

追伸

 このCDを聴いた知人の知り合いのオーディオ業界人も、「デモ効果抜群のCDだと思うので是非入手したい」と言っておられたそうです。私もデモに使いたいと思います。重低音がズドーン、とかいったデモ効果ではなくて、「音楽の愉しさがどれだけ高度に再現出来るのか」での差別化が出来ればと思います。

 また、先日の藝大での企画「蓄音機で聴くウラディミール・ホロヴィッツ」で再注目をされている模様で、タカギクラヴィア社のCD在庫が品薄になっているらしいです。上記のピアノソナタ集も手に入りにくいかも知れませんが、是非同社に(増刷を)リクエストしてみて下さい。

 

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