『MJ無線と実験』誌の編集部より表彰状を頂戴しました。誠に光栄です。ありがとうございました。ところで、日付をご覧になると違和感があるかと思いますが、今年は諸般の事情で発送が大幅に遅くなってしまったとの事でした。
さて、オーディオ製品関連の雑誌は過去に沢山ありましたが、次々に廃刊となり、残念ながら本格的技術専門誌としてはMJ誌しか残っていないのが現状と思われます。そしてそのMJ誌では、様々な技術分野で地盤沈下の起きている「技術立国日本」を再興する一助として、注目技術をピックアップして盛り上げて行こう、との編集方針をお持ちの様です。当社独自のDSS振動板についても、注目すべき新技術として継続的に取り上げて下さっています。
この様な同誌の編集方針には立派な矜持を感じます。ところで、コーン型及びドーム型振動板には100年もの歴史がありながらも、なお残る未解決課題があります。そこで、当社としましては、この未解決課題を本質改善する新技術の確立に真正面から挑み続ける所存です。このことが、日本再興に僅かながらも助けとなりましたら幸いに思います。
そして、前回のアップに引き続き、10cmDSS振動板スピーカー改良の現状にも触れさせていただきます。
10cmユニットにつきましては、現行のModel-3を更に改良するというミッションです。しかし、新技術を標榜しながらも、実際には音の味付けを変えているだけ、という「よくあるモデルチェンジ」でお茶を濁すつもりは毛頭ありません。また、まだ歴史の長くないDSS振動板には、改善の難しい未解明な技術要素があります。そこで、今回は徹底的に技術解明を行い、より高い基礎技術を確立しようと考えております。これが時間のかかっている理由です。
申し添えて、ここでの基礎技術確立とは、最も再生の難しいクラシック音楽の生楽器のアーティキュレーションの克明な再現や、生音の力強い音力を再現しつつも煩くならない音質、そしてコンサートホールのプレゼンスの高度な再現といった能力の確立と考えています。勿論100点満点などというものはあり得ません。将来継続するであろう詳細な改良を予め全て終わらせるという意味ではなく、DSS振動板スピーカーに欠くことの出来ない最重要な要素やノウハウを明確化し、冗長性を排して洗練し、今後の大口径化等の基礎として確立するところまでが現在のミッションです。
ところで、たとえオーディオメーカーであっても、ある程度規模のある企業では、「音作りという数値化できない感性」を扱う事が非常に難しくなります。音楽性よりもスペック論ばかりを喧伝するのも、ここに大きな原因があります。ましてや法人経営では合議制が常識であり、この事は感性を求められる製品作りに決定的なダメージをもたらします。高度な感性を求める製品作りには、こだわりのあるオーナー経営者が自ら開発に関わるとか、イタリア・ルネッサンス時代の様にパトロンが職人に自由に創作させるような体制が必須です。そのうえ更に、DSS振動板スピーカーの場合は前例のないゼロからのモノづくりであり、前述のとおり時間もかかります。通常の営利企業では取り扱い不可能ですが、小規模なオーナー経営ならではのモノづくりがこれを可能としています。
閑話休題
新技術の開発はジグソーパズルと似ています。初めは外枠から作ると進めやすいと言われますが、最初の試作品も割とすぐに出来上がって、一応は機能します。しかし作業の中盤に入ると、いろいろな課題や謎が判明し、その解決が出来ずに悶々としながら長い時間が過ぎます。通常の営利企業では、ここで中止してしまいます。ところが諦めずに続けていると、少しずつ謎が解明されて、問題が解決し始めます。パズルでの残り数ピースという最終盤に入ると、延々と尾を引いていた諸々の問題が一つに繋がって、一気に完成に至ります。10cmDSS振動板スピーカーの改善も、ようやく最終盤に入ったものと感じております。
そろそろ新型10cmスピーカーのお披露目についてお話しできる段階になってきました。新製品は、単なるModel-3の改良版にはとどまらないものになると思います。従ってModel-3MkⅡではなく、Model-4としての発売を予定しております。そして、現行のModel-3をご購入くださった皆様にも、ユニット換装のオプションをご提供する予定です。大手メーカーには真似の出来ない対応かと思います。年末ごろから動きが出てくると思います。
それから、新たな10cmユニットが完成しますと、超高品位な広帯域中音用ユニットとして、これを核とした2Way、3wayシステムへの展開プロジェクトがスタートします。ユニットを多数個取り付けると良い音が出るとか、ミッドレンジユニットが、立派なウーファーとトゥイーターの単なる中継ぎに成り下がっている、といったシステムは考えていません。「音楽再生にもっとも重要な中音域」ひいては「芸術性や音楽性の再現」をないがしろにしない音作り、という当たり前を真摯に追及するスタンスのマルチシステムを想定しています。これらはModel-5及びそれ以降への展開となります。乞うご期待。