「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで紙とペンはいらなくなったぞ!」
博士の発明したものは頭に巻くベルトのようなもので、一ヶ所から短いアンテナが突き立っている。
「何か発想が浮かんだりした時、普通はどうするか? メモを取らなければならない。目の前に紙とペンがあればすぐに書き取れるだろうが、無い場合はどうするか? 必死で忘れないようにするしかない!」
博士はドンと机を叩いた。今にも崩れそうに積みあがっているメモの山がゆらゆらと揺れ、博士はあわてて押さえた。
「録音すると言う手もあるが、確認のために何度も聞き返すなど手間なだけだ。結局はあとで書き残す事になるのだ! さらに、何か作業している最中に全く別の発想が浮かんでしまったら、発想をとるか、作業を取るかで悩み、結局発想がどこかへ行ってしまう!」
また机をドンと叩く。今度はメモの山が崩れてしまった。博士は溜め息をついた。
「そこでこれだ」気を取り直し、博士は発明品を取り上げる。「これを頭に巻き、向こうの本体を作動させておけば、浮かんだままの発想がそのままそっくり記憶され、好きな時にプリントアウトできるのだ。しかもこれだと、別の作業をしていても全く問題は無い!」
博士はベルトを頭に巻き、本体を作動させた。本体の表面のパネルやランプがせわしく明滅を繰り返す。
「発想は無理にするものではない。できるだけ気を楽にし、あわてる事なく、じっくりと待つようにすればよいのだ。・・・おお、言ってるそばから新たな発想が浮かんできたぞ! 何て幸先がよいのだろう!」
博士の頭には次々と新たな発想が浮かんだ。世の中がひっくり返るような理論、システム、それらは色々な分野に及んだ。
「さて、そろそろプリントアウトしてみるか」
博士はかなりの量が蓄積されたであろう本体をぽんと叩いて言った。スイッチを切り替えると、印刷された紙が次々と備え付けのトレイにたまって行く。博士はにまにま笑いながら一枚を取り上げ、目を通した。
「ええと・・・『いやあ何て画期的な発想なんだこんなスゴイ発想が出来るなんて自分で自分が恐ろしくなってしまうこれぞ天才の証としか言い様がないね今まで誰がこんな発想をしただろうかもちろん誰もいない今後も現れるわけがない天才天才天才だイヤそれでも言い足りない・・・』」
印刷されている紙にはまだ延々と自画自賛の文が綴られ、五十枚目の最後に、やっと発想したアイディアが短く載っていた。
「やれやれ、どうやらこの機械は強い思いの方を第一に記録する性質があるようだ。これは発想を浮かべる前に、自惚れる自我を何とかしなければならないな」
博士は言って、恥ずかしそうに頭を掻いた。
正しい順番は行いだけのものではない。思いにもあるものなのだ。
博士の発明に温かい拍手をお願い致しまするぅ
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博士の発明したものは頭に巻くベルトのようなもので、一ヶ所から短いアンテナが突き立っている。
「何か発想が浮かんだりした時、普通はどうするか? メモを取らなければならない。目の前に紙とペンがあればすぐに書き取れるだろうが、無い場合はどうするか? 必死で忘れないようにするしかない!」
博士はドンと机を叩いた。今にも崩れそうに積みあがっているメモの山がゆらゆらと揺れ、博士はあわてて押さえた。
「録音すると言う手もあるが、確認のために何度も聞き返すなど手間なだけだ。結局はあとで書き残す事になるのだ! さらに、何か作業している最中に全く別の発想が浮かんでしまったら、発想をとるか、作業を取るかで悩み、結局発想がどこかへ行ってしまう!」
また机をドンと叩く。今度はメモの山が崩れてしまった。博士は溜め息をついた。
「そこでこれだ」気を取り直し、博士は発明品を取り上げる。「これを頭に巻き、向こうの本体を作動させておけば、浮かんだままの発想がそのままそっくり記憶され、好きな時にプリントアウトできるのだ。しかもこれだと、別の作業をしていても全く問題は無い!」
博士はベルトを頭に巻き、本体を作動させた。本体の表面のパネルやランプがせわしく明滅を繰り返す。
「発想は無理にするものではない。できるだけ気を楽にし、あわてる事なく、じっくりと待つようにすればよいのだ。・・・おお、言ってるそばから新たな発想が浮かんできたぞ! 何て幸先がよいのだろう!」
博士の頭には次々と新たな発想が浮かんだ。世の中がひっくり返るような理論、システム、それらは色々な分野に及んだ。
「さて、そろそろプリントアウトしてみるか」
博士はかなりの量が蓄積されたであろう本体をぽんと叩いて言った。スイッチを切り替えると、印刷された紙が次々と備え付けのトレイにたまって行く。博士はにまにま笑いながら一枚を取り上げ、目を通した。
「ええと・・・『いやあ何て画期的な発想なんだこんなスゴイ発想が出来るなんて自分で自分が恐ろしくなってしまうこれぞ天才の証としか言い様がないね今まで誰がこんな発想をしただろうかもちろん誰もいない今後も現れるわけがない天才天才天才だイヤそれでも言い足りない・・・』」
印刷されている紙にはまだ延々と自画自賛の文が綴られ、五十枚目の最後に、やっと発想したアイディアが短く載っていた。
「やれやれ、どうやらこの機械は強い思いの方を第一に記録する性質があるようだ。これは発想を浮かべる前に、自惚れる自我を何とかしなければならないな」
博士は言って、恥ずかしそうに頭を掻いた。
正しい順番は行いだけのものではない。思いにもあるものなのだ。
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