オチラは生きていた!
「繭玉の寝床」が出来た時、一瞬沸き起こった大地の底からの地鳴りと激しい揺れ、あれはやはりオチラだったのだ! モヘラの本質を本能的に察したオチラの警鐘だったのだ!
オチラはドーム周辺で逃げ惑う人々にその凶悪な顔を向け見回した。鼻孔を少し膨らませる。オチラは自分の嫌いな臭いを嗅ぎ取った。そして一声高らかに吼え立てると、人々に向かい歩み始めた。その踏みしめる足取りは思いのほか速く、また荒々しいものだった。
逃げ惑う人々は、ある者たちは将棋倒しとなり、ある者たちは呆けたようにその場に座り込み、ある者たちは思い出したかのようにオチラを拝み始めた。しかし、それら全ては瞬く間にオチラに踏み潰され、瓦礫を血海と化してしまった。オチラはさらに大きく吼えた。
オチラ出現。多くは全く予測をしていない事態だったが、それに備え万端の準備を行っていた国が一国だけ在った。
かつてオチラによって壊滅させられた古都ロンドン。数多の歴史を持つこの都市が、根こそぎ失われた事への怒りと悲しみは、イギリス国民の心に根深く刻まれていた。
オチラの抹殺―― それが根深く刻まれた怒りと悲しみとが出した回答だった。早速研究が始められた。イギリスは他国への援助要請はしなかった。これは自国の威信をかけた問題だったからだ。また、援助を要請して、それを楯に口出しをされる事を嫌ったせいもあった。各国は「ロンドンに祟られた憐れなイギリス」と嘲笑した。
オチラが地上へ出現しなくなってもまだ開発研究が続けられたため、無駄な研究、無駄な予算歳出と一部から声が上がり始めた。しかし、「息の根が止まったと確認できない以上、止める理由は無い」と総責任者のガブリエル・オットールコーウェン卿は頑強に言い放ち、開発研究を続行した。数日後、オットールコーウェン卿の射殺死体が汚泥と化したテームズ川で発見された。この事件は世間を震撼させたが、反対派の卑怯な手段に批判が集中し、逆にオチラ抹殺のための開発研究を世論が後押しする形となった。
オチラ抹殺の兵器は、モヘラがニューヨークに寝床を作った頃に完成した。世界の関心はすでにモヘラに移っており、開発された兵器は、それほど関心を集めなかった。
だが今、形勢は変わった。オチラが現われ、再び人類に恐怖を与え始めたのだ。再び破壊の限りを尽くそうとしているのだ。
国連はイギリスに開発した兵器の使用を要請した。だが、イギリスはオチラ出現と同時に高速爆撃機に兵器を搭載しニューヨークに向け発進させていた。アメリカ合衆国の承諾がないままの発進だったので、軍関係者は領空内への侵入を拒否するために空軍を出動させようしたが、大統領の素早い緊急事態宣言発令により回避された。
イギリス空軍の高速爆撃機は、吼え続け、モヘラの残した全てを悉く踏み潰し、口から吐く光線で焼き尽くしているオチラを捉えた。
次回「大怪獣オチラ対宇宙怪獣モヘラ 拾壱」を待て。
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「繭玉の寝床」が出来た時、一瞬沸き起こった大地の底からの地鳴りと激しい揺れ、あれはやはりオチラだったのだ! モヘラの本質を本能的に察したオチラの警鐘だったのだ!
オチラはドーム周辺で逃げ惑う人々にその凶悪な顔を向け見回した。鼻孔を少し膨らませる。オチラは自分の嫌いな臭いを嗅ぎ取った。そして一声高らかに吼え立てると、人々に向かい歩み始めた。その踏みしめる足取りは思いのほか速く、また荒々しいものだった。
逃げ惑う人々は、ある者たちは将棋倒しとなり、ある者たちは呆けたようにその場に座り込み、ある者たちは思い出したかのようにオチラを拝み始めた。しかし、それら全ては瞬く間にオチラに踏み潰され、瓦礫を血海と化してしまった。オチラはさらに大きく吼えた。
オチラ出現。多くは全く予測をしていない事態だったが、それに備え万端の準備を行っていた国が一国だけ在った。
かつてオチラによって壊滅させられた古都ロンドン。数多の歴史を持つこの都市が、根こそぎ失われた事への怒りと悲しみは、イギリス国民の心に根深く刻まれていた。
オチラの抹殺―― それが根深く刻まれた怒りと悲しみとが出した回答だった。早速研究が始められた。イギリスは他国への援助要請はしなかった。これは自国の威信をかけた問題だったからだ。また、援助を要請して、それを楯に口出しをされる事を嫌ったせいもあった。各国は「ロンドンに祟られた憐れなイギリス」と嘲笑した。
オチラが地上へ出現しなくなってもまだ開発研究が続けられたため、無駄な研究、無駄な予算歳出と一部から声が上がり始めた。しかし、「息の根が止まったと確認できない以上、止める理由は無い」と総責任者のガブリエル・オットールコーウェン卿は頑強に言い放ち、開発研究を続行した。数日後、オットールコーウェン卿の射殺死体が汚泥と化したテームズ川で発見された。この事件は世間を震撼させたが、反対派の卑怯な手段に批判が集中し、逆にオチラ抹殺のための開発研究を世論が後押しする形となった。
オチラ抹殺の兵器は、モヘラがニューヨークに寝床を作った頃に完成した。世界の関心はすでにモヘラに移っており、開発された兵器は、それほど関心を集めなかった。
だが今、形勢は変わった。オチラが現われ、再び人類に恐怖を与え始めたのだ。再び破壊の限りを尽くそうとしているのだ。
国連はイギリスに開発した兵器の使用を要請した。だが、イギリスはオチラ出現と同時に高速爆撃機に兵器を搭載しニューヨークに向け発進させていた。アメリカ合衆国の承諾がないままの発進だったので、軍関係者は領空内への侵入を拒否するために空軍を出動させようしたが、大統領の素早い緊急事態宣言発令により回避された。
イギリス空軍の高速爆撃機は、吼え続け、モヘラの残した全てを悉く踏み潰し、口から吐く光線で焼き尽くしているオチラを捉えた。
次回「大怪獣オチラ対宇宙怪獣モヘラ 拾壱」を待て。
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