突き出された紙ナプキンを見つめながら、コーイチは腰が抜け始め、床に座り込んでしまった。
「あ、あああ・・・」コーイチの目は紙ナプキンに釘付けのままだ。「消えた・・・ 消えてしまった・・・」
・・・ああ、もうダメだおしまいだこれで僕は別次元へ行かなければならなくなってしまったまだ心の準備がしっかりと出来ていなかったのに芳川さんは色々と事情を知っているから良いだろうけど僕なんか考えてみれば今日知ったばかりなんだいくら逸子さんのため鉛筆のため世界平和のためと言っても僕よりも適任な人がいたんじゃないだろうか何一つ有効な手段も見つけられないまま行ってしまわなければならないなんてこれは悲劇だああ絶望して死ねと言わんばかりの仕打ちじゃないかどうしようどうしよう・・・
「コーイチさん」紙ナプキンを放り投げて言った。厳しい顔をしている。「不安なのはわたしも同じです。でも、やり遂げないと・・・」
「・・・」
コーイチは返事をせずに洋子を見た。そして、がっくりとうなだれてしまった。
「コーイチさん・・・」洋子は涙目になった。「しっかりして下さい! わたしはコーイチさんだけが頼りなんです!」
「・・・頼りにしてるって言っても、僕たちは何の準備もしていない。敵の事も全く分からない。これじゃ手の打ちようが無い・・・」
「コーイチさんって素直なんですね・・・」すっかり落ち込んでコーイチの姿に、洋子は優しい表情になり、優しい声で話し始めた。「さっきの筆跡鑑定の事覚えていますか? あの強い意志表明に、私は賭けるだけの価値があると直感したんです」
「・・・賭けるだけの価値・・・」
コーイチの片方の眉がぴくりと上がった。
「そうです。わたしも海外支社で色々な国の人たちを見てきました。みんな自信にあふれ、ついて来いタイプでした。でもあんまり周りを見ていないんです。だから安心感がありませんでした。わたしはコーイチさんに会って初めて安心した気持ちになったんです」
「・・・安心した気持ち・・・」
コーイチのもう一方の眉が上がり、うなだれていた頭も上がり正面を向いた。
「コーイチさんには、ねじ伏せる様な力ではなくて、状況に応じて動ける柔軟な力があります」
「・・・柔軟な力・・・」
コーイチは顔を上げて洋子を見た。その目に輝きが戻り始めていた。
「コーイチさんは秘密を話しても大袈裟に動揺せずに受け入れてくれました。あのピンクに老人にも立ち向かってくれました。コーイチさんは芯は強い人なんです!」
「芯の強い人・・・」
コーイチは立ち上がった。
「コーイチさん意外に、この使命を果たせる人はいません!」
「僕しか・・・いない!」
コーイチは洋子の両肩に手を置き、にっこりと笑顔を見せた。
「芳川さん! 僕に全てを任せてくれ!」
「・・・コーイチさん・・・」
洋子はうるうるした瞳でコーイチを見返している。
「あああああ!」
いつの間にか戻ってきた谷畑が、二人を指差して泣き出した。
「また、また、また、二人して仲の良い所を見せ付けて!」谷畑は顔を覆ってうめいた。しばらくすると、文句の一つでも言おうと顔を上げた。「あ、あれえ?」
二人の姿はそこに無かった。
「あああああ! 二人だけでどこかへ行ってしまったあ!」
谷畑はまた泣き出した。
つづく
いつも熱い拍手、感謝しておりまするぅ
(公演は順調のようですね。ただロビーに困ったコーナーがあるとか・・・)
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「あ、あああ・・・」コーイチの目は紙ナプキンに釘付けのままだ。「消えた・・・ 消えてしまった・・・」
・・・ああ、もうダメだおしまいだこれで僕は別次元へ行かなければならなくなってしまったまだ心の準備がしっかりと出来ていなかったのに芳川さんは色々と事情を知っているから良いだろうけど僕なんか考えてみれば今日知ったばかりなんだいくら逸子さんのため鉛筆のため世界平和のためと言っても僕よりも適任な人がいたんじゃないだろうか何一つ有効な手段も見つけられないまま行ってしまわなければならないなんてこれは悲劇だああ絶望して死ねと言わんばかりの仕打ちじゃないかどうしようどうしよう・・・
「コーイチさん」紙ナプキンを放り投げて言った。厳しい顔をしている。「不安なのはわたしも同じです。でも、やり遂げないと・・・」
「・・・」
コーイチは返事をせずに洋子を見た。そして、がっくりとうなだれてしまった。
「コーイチさん・・・」洋子は涙目になった。「しっかりして下さい! わたしはコーイチさんだけが頼りなんです!」
「・・・頼りにしてるって言っても、僕たちは何の準備もしていない。敵の事も全く分からない。これじゃ手の打ちようが無い・・・」
「コーイチさんって素直なんですね・・・」すっかり落ち込んでコーイチの姿に、洋子は優しい表情になり、優しい声で話し始めた。「さっきの筆跡鑑定の事覚えていますか? あの強い意志表明に、私は賭けるだけの価値があると直感したんです」
「・・・賭けるだけの価値・・・」
コーイチの片方の眉がぴくりと上がった。
「そうです。わたしも海外支社で色々な国の人たちを見てきました。みんな自信にあふれ、ついて来いタイプでした。でもあんまり周りを見ていないんです。だから安心感がありませんでした。わたしはコーイチさんに会って初めて安心した気持ちになったんです」
「・・・安心した気持ち・・・」
コーイチのもう一方の眉が上がり、うなだれていた頭も上がり正面を向いた。
「コーイチさんには、ねじ伏せる様な力ではなくて、状況に応じて動ける柔軟な力があります」
「・・・柔軟な力・・・」
コーイチは顔を上げて洋子を見た。その目に輝きが戻り始めていた。
「コーイチさんは秘密を話しても大袈裟に動揺せずに受け入れてくれました。あのピンクに老人にも立ち向かってくれました。コーイチさんは芯は強い人なんです!」
「芯の強い人・・・」
コーイチは立ち上がった。
「コーイチさん意外に、この使命を果たせる人はいません!」
「僕しか・・・いない!」
コーイチは洋子の両肩に手を置き、にっこりと笑顔を見せた。
「芳川さん! 僕に全てを任せてくれ!」
「・・・コーイチさん・・・」
洋子はうるうるした瞳でコーイチを見返している。
「あああああ!」
いつの間にか戻ってきた谷畑が、二人を指差して泣き出した。
「また、また、また、二人して仲の良い所を見せ付けて!」谷畑は顔を覆ってうめいた。しばらくすると、文句の一つでも言おうと顔を上げた。「あ、あれえ?」
二人の姿はそこに無かった。
「あああああ! 二人だけでどこかへ行ってしまったあ!」
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