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ブラック・メルヒェン その3  「捨て猫ブチ」

2007年10月06日 | ブラック・メルヒェン(一話完結連載中)
 会社帰りのゆみこは近所の公園で子ネコを拾って帰りました。
 白と黒のぶちの毛並みがとてもかわいく、その場で「ブチ」と名付けました。近所のコンビニでキャットフードとミルクを買って帰りました。
 どうしてこんなかわいいネコを捨てたんだろう、前の飼い主はきっと引越しで邪魔になって捨てたのね、ゆみこはブチを抱きしめながら思いました。
 そんなある日、ブチは朝からぐったりとして、キャットフードにもミルクにも口をつけません。心配し、病院へ連れて行きましたが、どこも異常がないということでした。
 病院の帰りに、一番高いキャットフードとミルクを買いました。
 家に帰ってすぐにそのキャットフードとミルクをブチの前に出しましたが、チラッと見ただけで、またぐったりとしてしまいました。
 医者は、どこも悪くないんだから、そのうちパクパク食べ出しますよ、と慰めてくれましたが、ゆみこはそれでも心配で、ブチのそばから離れません。
 夜になってもブチはぐったりしたままです。ゆみこは自分の布団にブチを入れて、優しく頭をなで続けました。
「ブチがしゃべれたらいいのに・・・」
 ゆみこが呟くと、ブチはひょっこりと頭をもたげ、口をもごもごさせました。
「ゆみこ、ゆみこ」
 ブチがゆみこの顔を見てしゃべりかけました。
「まあ、ブチ、しゃべれるのね!」
 ゆみこは信じられないと言う顔をしながらも大喜びしました。
「ゆみこなら、僕の話を聞いてくれそうだからね」
「もちろんよ!」
 ゆみこはブチの顔を見つめながら続けます。
「ブチ、どうして食べないの?」
 ブチは大きな溜息を一つ吐きました。
「実は僕、ああいうのは本当はキライなんだ」
「じゃあ何がいいの?」
 ブチはにやっと笑いました。
「僕の目を見つめてごらん・・・」
 ブチはそう言うとゆみこの目を覗きこみました。ゆみこは目をそらせなくなりました。
 ブチは黄色くなりながらだんだんと大きくなり、顔が尖り出し、尻尾がばらばらと九本になり、「コン!」と一声鳴きました。
「俺が好きなのは、人間の肉だよ!」
 あっという間もなく、ゆみこは九尾の狐に丸呑みにされました。

「ふん、ちょっとかわいい子ネコに化けりゃ、こんなバカな人間がすぐに引っ掛かる。ペット時代様々だな!」
 九尾の狐は軽くげっぷをして言いました。

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