大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ 伍

　人々の脳裏にあの恐怖が蘇った。
　オチラ！
　その存在を久しく封じていたあの怪獣が、宇宙からの闖入者によって呼び覚まされたのだろうか！
　ドームを前に多国籍軍は動揺し、指令系統が乱れかけた。
　その時、司令官のハリス・ホーソンは揺れる地面に平然と一人立ち、ドームを睨みつけていた。その姿に兵は冷静さを取り戻し、さらには司令官に賞賛の拍手をする者も現われた。
　幸い、地震はすぐに治まった。オチラの気配はなかった。
　戦車隊は乱れた隊列を立て直した。ハリス・ホーソンは攻撃命令を発した。戦車隊が一斉にＲ‐５０９が設置した可燃物を攻撃した。炎が高く上がり、ドームを包んだ。
　兵たちから喝采の雄叫びが上がった。しかし、それはすぐに驚愕のそれへと変わった。
　燃え盛るドームから糸状のものが無数に伸び出し、戦車隊の方へと迫った。後退する戦車の数台に絡みつき、炎のドームへと引きずり込み始めた。
　後衛にいた歩兵たちが武器を手にし、上官の制止を振り切り救出に向かった。
　勇んで向かった兵たちだったが、糸状のものはそれらにも伸び、多くが絡みつかれ、引きずられた。恐慌状態に陥った兵たちは無闇に銃を乱射したりアーミーナイフを振り回したりし、仲間を死傷した。
　炎の中へと多くの戦車と兵士が引きずり込まれた。戦車は炎によって爆発をし、兵士たちは断末魔の悲鳴を上げた。
　その後、糸状のものはゆっくりと燃え盛る炎を包み始め鎮火してしまった。
　ドームは再び何事もなかったように「繭玉の寝床」と化し、静かに存在していた。
　人類はまた新たな恐怖と対峙しなければならなくなってしまった。

次回「大怪獣オチラ対宇宙怪獣モヘラ　六」を待て。