最近、家族とかを守るために、暴力をふるう父親を殺した息子の事件があったような無かったような。。。。。
記憶が曖昧ですし、ネットで探しても記事が見つからなかったので無かったのでしょうが、気になったので、同じような状況を描いた映画を久しぶりに見直しました。
今更の映画ですが、今年の春だったか、衛生放送でも放送していましたし。
○蜷川幸雄 監督
○秀一(二宮和也)
○クラスメイト、彼女・紀子(松浦亜弥)
○血のつながらない妹(途中までは血がつながっていないことを互いに知らない)、義父の連れ子・遥香(鈴木杏)
○義父・曾根(山本寛斎)
○母・友子(秋吉久美子)
○刑事(中村梅雀)
「松浦亜弥コレクターズエディション」のDVD(二宮さん版も売っていましたが、まあ、こっちを買いますね)。
●あらすじ
秀一は高2の17歳。女手ひとつで家計を担う母と妹との3人暮らし。しかし、10年前に母が離婚した曾根が出現し、その平和な生活は壊される。暴力と傍若無人な振舞い、1日中飲んだくれ、母の体に手を出す曾根。ついに妹にまで危険が及んだとき、家族思いの秀一の怒りは頂点に達した。
秀一は家族を守るため自らの手で曾根を殺害することを決意し、裏サイトや医学書から収集した情報をもとに完全犯罪のシナリオを練り上げる。
計画を実行し、曾根を感電死させたが、刑事が秀一を疑い、高校を休みがちのクラスメイトの男子が気付く。
そして、、、、、
●感想とか
「こんなにも 切ない殺人者が かつていただろうか・・・」
この映画のコピーです。少し大袈裟ですが、雰囲気は伝わるコピーです。
この映画はアイドル映画のようですがそんなことはなく、笑顔のほとんどない、切なく、シリアスな物語です。
演技が上手いとは言いませんが、アイドルの二宮(公開当時19歳)さんも松浦(公開当時16歳)さんも、十分に雰囲気と味のある繊細な演技をしています。
世間的には演技についての評判が今一つな様子で、演技だけを見ればその通りだろうとは思いますが、それだけではない魅力がある映画です。
2時間弱では短いのか、もう少し心理的な掘り下げがほしいところはあるものの、言葉を用いない演技とかに行間を読めるところはあるので、全体としてはあまり気にならない心理描写となっていて、佳作です。
思春期の気持ちのユレとか、自分が家族を守らなければいけないという使命感とか、中二病的な雰囲気もありますが、細かいところは置いておいて、思春期や思春期のユレというものを感じつつ、ドストエフスキーの名作小説の「罪と罰」のように殺人をしても良い場合はあるのか無いのか、しかしそれでも殺人をしてしまった者の気持ちがどうなのかを考えながら、雰囲気を味わえば良いと思います。
因みに、松浦さんは、テレビドラマの「最後の家族」(2001年、テレビ朝日系)で、演技が上手いとは言いませんが、壊れそうな家族で静かに耐えて頑張る、引きこもりの兄思いの、おとなしく芯のある妹役でいい味を出しています(家族が再生に向けて歩き出すところで終わる、暗いドラマ)。
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取り敢えず、参考として余談です。この映画での殺人の理由は、下の実際の事件ほどには殺人の理由にはなっていませんが(「罪と罰」程度には殺人の理由になっていますが)。
正当防衛は性質が異なるので置くとして、やむを得ない場合もありますから、私は、やむを得ない場合の殺人自体は否定しませんけれど、どこまでがOKでどこからがOKでないのかの境が難しいので、法律上の罪は罪として罰しないといけないだろう、とは思います。
この映画での秀一は有罪と思いますが、下の事件で罪に問うのは、ちょっと可哀想な気がしますけれどもね。だからこそ、執行猶予がついたのでしょうけれど。
例えば、法律を学んだ者なら必ず知っているはずの「尊属殺法定刑違憲事件」(1968年に父親を殺害、1973年に最高裁判決)。
これは、父親が暴力をもって実の娘に自分の子を5人産ませる(他にも中絶有り)など夫婦同然の生活(14歳から29歳の間)を強いていたところ、他の男性と結婚したいと言ったら怒って監禁したりしたので、心神耗弱により娘が父親を殺害した事件です。
当時の刑法200条では親とかの尊属を殺すと死刑か無期懲役のみだったところ(いろいろな減刑で懲役3年6ヶ月の実刑までには軽くできる)、刑が重すぎるから刑法200条は憲法違反だと最高裁が判決したものです。
結局、通常の殺人罪である刑法199条を適用して、懲役2年6ヶ月、執行猶予3年になったところです。
こんなのを見ていると、やむを得ない場合ってあるよね、と思うところです。
まあ、ウィキペディアに概要の概要が載っているので、そちらでも御覧下さい。この事件のやるせない雰囲気は、何となくでしかありませんが、ほんの少しは伝わると思います。というか、ほんの少しでも伝わってほしいです。
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さて、本題に戻って。
おとなしく無愛想でとっつき難く、昼の弁当を1人で食べるような紀子ですが、紀子は秀一が気になっていてデートに誘ったり。
紀子は秀一を良く見ているだけに、曾根が死んだ後の秀一の様子が変なこととかに気付き、刑事からの事情聴取にも嘘をつきます。
他のクラスメイトも秀一をかばって刑事に嘘をつきます。
秀一は、脅迫してきた休みがちのクラスメイトを事故に見せかけて殺し。。。
とは言え、刑事コロンボみたいな頼りない感じの刑事ですが、頭は切れるようで、秀一のアリバイを崩します。
秀一に高校生らしい詰めの甘さがあっただけ、秀一に余裕がなかっただけ、とも言えますが。
秀一の部屋に足を伸ばさなければ人が横になれるくらい大きなカラの水槽があり、青白い薄明かりに照らされた水槽に互いに手を当て、水槽越しに秀一と紀子が無言で語り合うシーンは、事件のことを含めて上手く言葉に出来ない思いのやり取り、上手く言葉に出来ない愛情のやり取り、上手く言葉に出来ない思春期の思いのやり取り。
切ないやり取り。
思春期や青春の青、未熟さの青というベタな表現なのでしょうけれど、青白い光を上手く綺麗に使った良いシーンです。
最後の少し前、秀一があらためて警察に行く前に高校の美術室に紀子を呼び出します。
そこで紀子が秀一に、いろいろな思いを抑えて、静かに言います。
「私ね、この地球上で殺されてもかまわない人間なんて1人もいないと思う。でも、人を殺さなきゃならない事情を抱え込んでしまう人間だって、残念ながらいるんだよね。」
思春期らしい真っ直ぐさや青臭さ、理想論、まだまだ知らない現実の存在、それを紀子は認識しつつ、高校生という子供ではなく大人でもない中途半端さを認識しつつ、でも、大人への階段を昇っている/昇らざるを得ない成長過程にある紀子、そのユレと戸惑いが表された台詞と表情だと思います。
紀子には秀一の決意が分かったのでしょう。
そして、、、、、
(私は何でも書いてしまう方なのですが、まあ、珍しく、そのシーンのことは書かないでおきますが)
で、最後の最後(写真の左の黄色いシャツのシーンのすぐ後)、秀一が去った美術室に1人になった紀子は、これまでの無表情を崩し、必死で涙をこらえます。
声を出さないところが、悲しみや悔しさを、より伝えてくれます。
これまでの無表情のままではいられないくらいの悲しみ、ということを表したいのでしょうが、声は出さない方が良いですが、涙を流しても良かった気もします(テレビの画質のせいで涙が見えなかったわけではない、と思う)。
その方が、それまでの無表情との落差が出た気がします(その方が分かりやすい、という意味では、それだと面白くないのかも知れませんが)。
【shin】
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