映画館で見た直後にも書きましたが、Blu-rayを見ての追加の、無駄に長い感想を書いておきます。
センチメンタルなところは好みが分かれるでしょうけれど、やっぱり良い映画でした。
なお、ユキノが少し嫌な女性のように見えるかも知れない感想になっていますが、ユキノはそれだけ追い込まれた状況ということですから理解は出来ます。結局、ユキノが嫌な女性かどうかは、映画で描かれなかった今後次第ということになります。
新海監督によるオーディオコメンタリー、新海監督が声を充てているビデオコンテ、秋月孝雄役の入野自由さんと雪野百香里役の花澤香菜さんと新海監督へのインタビュー映像などの特典付です。
最初に見たときより、花澤さんの声への違和感が少なくなりました(それでも、合っている、とまでは思えませんが。)。
慣れかも知れませんし、ユキノは見かけより精神的に幼いということにより確信を持てたのでやや幼めの声が合うように思えたのかも知れませんし、花澤さんの声が好きだからかも知れませんし。
そこ以外は、下の最初の感想への追加です。
→「言の葉の庭」感想。叙情的で綺麗な絵、センチメンタルな物語がいい!(2013年6月6日)
◎ その前に、6月に「言の葉の庭 Memories of Cinema」が発売されましたが、どうかなあ・・・(B5サイズ、フルカラー、80頁、1575円)。
映画の中のシーンに、台詞がいくらか。
シーンは雨や風景が中心、人はほんの少し。台詞と合わせて映画を思い出すことは出来ますが、ユキノやタカオが入ったシーンをもっと多くしてくれないと内容を思い出すにも中途半端ですし。
それなら、もともと46分と短い映画なので、映画を見返せば良いのでは、という感じです。
新海監督のインタビューもありますが、2頁と短く、かつ、これといった内容はありません。
風景がメインなので、それが好みでしたら問題はないかと思いますが。
◎ この映画を上映中の新宿バルト9にて、タカオがユキノのために作った靴。
ケースに覆われていたので、写りが悪いですが。
◎ さて本題の追加の感想です。
序盤の、生徒だと分かったので短歌を残して自分が誰であるかのヒントを与えるところについて、終盤で校内では結構有名だと思っていたからタカオも気付くと思っていた旨のことを言っていることとからめて。
4分過ぎ、タカオが生徒と分かったのに「会ってるかも」と小声(絵に集中していたタカオには、声は聞こえていますが内容までは聞こえていないかも知れない。)で言ってから短歌を残して去ったり、別の日に少し会話をしてからの別れ際に「じゃあ、また会うかもね。もしかしたら、雨が降ったら。」と言ったり、いつもビールを飲んでいたり(途中からコーヒーになり、タカオと会えなくなってからまたビールに戻る。)、この辺は教師としての規範からズレています。
生徒と分かったのなら、
二度と会わないように新宿御苑に来ないか(これは、ユキノは自分が校内で有名だと思っていることから、学校で会う可能性も高いと考えるはずであり、少しリスク在り。但し、タカオは先生とは気付いていないことをユキノも分かっていたから短歌というヒントを残して去ったはず。)、
せめて酒を飲まないか(これも同じですが、酒を飲まない分、問題は少ない。しかし、飲まずにはやってられないユキノの状態からして、非現実的な選択。)、
説明して口止めするか(タカオが口が堅いとユキノが思うか次第(実際、堅そうですが。)。その上で、ユキノは似たような公園を探せば良いだけ。都内には、小さいけれど緑に囲まれた公園は結構ありますが、屋根付の東屋のようにものがある公園は、そう多くはないかも知れませんけれど。新宿御苑がユキノの自宅から徒歩圏ですから、他の公園というのもあまり現実的な選択ではないのですけれど。)、
でしょう。
ただ、ユキノとは違った形ですが普通の道を外れている靴職人を目指すタカオ、普通に真面目そうなのに高校をサボって何かをしているタカオに仲間意識や共犯意識を持ったのでしょうし、タカオのような共犯者のような存在、つまり、タカオにそのつもりはなくてもユキノの現状を肯定してくれる存在(辛い時期に付き合っていた伊藤先生にはこれが出来なかった旨は、ユキノが回想している。)がないとユキノが救われにくかったということでしょう。
ユキノがそれを敏感に感じ取ったから(無意識かも知れない。)、以後の逢瀬も続けたのですし、短歌を残してまた会うことを期待したのでしょう。
○ なお、余談ですが、9月に高校を辞めて四国の実家に飛んでいますが、遅くとも年明けの2月には学校の教壇に立っていることから(学校なので、キリが良い1月からの採用かも知れない。)、非常勤だとしてもその数ヶ月前には採用面接を受けていると思われます。
地方だと採用数の割に教員希望者は多いので、精神面の病気で休んでいた教員をこんなに早く雇うということは、親のコネか、東京の高校の校長とかの口ききがあったと思われます。
校長とかだったら、生徒からの濡れ衣で高校を辞めたユキノへのせめてものお詫びということになります。
また、教壇に立てるようになったのが早いので、やはり、9月の階段のシーンでユキノは回復したのでしょう。故郷とは関係なく。
○ それは置くとして、ただですね、ユキノが依存症に見えるのですよね。全体として弱々しい雰囲気を出していて(実際、精神的に弱っているシーンばかりなのですが。)誰かが助けてくれるのを待っているような、それなのに自分からは行かないという無意識的なズルさがあるような、そして、誰かに好意を持たれたい愛されたい、つまり認められたいという承認欲求が強く、それなしではグダグタにしか生きられないという。
その相手は女ではなく男、しかも強い男(前カレは体育教師(年上らしい雰囲気。)、年下のタカオは自分の意志を強く持って努力しているという強さがある。)であることが必要なのでしょう。
中度以上のファザコンかも知れません。
16分過ぎで元カレなのに伊藤先生に電話して相談するところとか(会話の内容からして、何度も相談している様子。)、9分過ぎの「あるよ、おつまみも。」と言ってカバンから10枚以上の板チョコを出して「食べる?」とタカオに見せるときの甘えた&あどけない表情と声なんか、特にそう感じます。
ただ、「あるよ」のユキノというか花澤さんというかは可愛くて良かったです。
◎ 女性は、伊藤の妻(つまりユキノは不倫だった。)、伊藤の母親か姉妹、伊藤の今カノのどれか?
16分過ぎからの元カレの伊藤先生(体育教師。大きながっしりとした体で、頼りになりそうな雰囲気あり。)に電話して退職の手続きを依頼するところ(6月の末と思われる。)。
伊藤はマンションのベランダに出ていますがガラス越しの室内に1人の女性のシルエットが食事の片付けでもしている様子(動きの高さからして60~70センチの高さのテーブルなので、他に居間か寝室と、多分台所がある2K以上のはず。ベランダの左横も中でつながっていると考えればもっと広い家になる。)。
新海監督はオーディオコメンタリーで、ユキノの次の今カノの家という設定だけれども視聴者それぞれの解釈があって良い旨を言っています。
で、私なりに考えると、以下のとおり。
伊藤は普通の落ち着いた声(体育教師である伊藤にとっては、それでも抑えた大きさなのかもしれませんが。)で話していることから、隠す気はないとも言え、既に終わっていて妻や今カノにバレているからか、バレていないとしても後ろめたい気持ちはあるはずなので、妻であればもう少しコソコソと話しそうな気がしますけれど。
まあ、そもそも、わざわざベランダに出て電話で話すこと自体が怪しい行動とも言えますが、仕事関係で悩んでいる同僚の相談に乗っていると言えば誰もが仕方ないと思うでしょうし、女性の声がユキノに聞こえても良くは無いでしょうし人の声が少ないベランダの方が話しやすい内容ですから大丈夫でしょう。
伊藤は普通に話していることから、伊藤にとっては隠す必要の無い関係であろうと思われ、妻であればそうはならないのでは。
妻の可能性は低く、今カノの可能性は残ります。食事らしきものは2人分のように見えますから今カノが有力ですが(それとて順番に片付けたり準備していて単に2人分が残っていただけかも知れない。)、母親と2人暮らしも考えられますし、父親は帰りが遅いから食事は別とも考えられます。
一方、その電話中のユキノの回想シーンからして、ユキノは、バス内のコートと雪の日(ということは2月が最有力で、もしかしたら1月か3月と考えるのが東京では無難。)よりは前から生徒にイジメられていて、その頃の伊藤は頼りにならなかったようですが。
タカオとユキノが新宿御苑の東屋で初めて会ったのは6月、1年生であるタカオの他クラスの友達がユキノの授業を受けているので、ユキノは5月か6月に高校を休み出したのでしょう。
となると、今カノだと考えるとすると、バス内のコートと雪の日(通勤に使わないはずのバスの中に元気の無いユキノがいる。しかも夜12時過ぎ。これが伊藤家からの帰りと考えると、ユキノは伊藤家か伊藤家の近くで伊藤と会っていて伊藤と別れてきたところと考える方が妥当でしょう。そこは、伊藤の気持ちがユキノから離れているのを察知して妻とか親とかがいる伊藤家にユキノが行ったとも考えられますし、伊藤は1人暮らしと考えることもできます。)かその少し後から5~6月までの間にユキノと伊藤は別れ、かつ自宅に料理を作りに来る新しい彼女を見つけたということになるのでしょう。1~2ヶ月か、長く見ても3ヶ月の間に。
学校は狭い世界であり、若い教職員ばかりではありませんから、職場での出会いは少ないでしょうし、昔からの友達を除けば交友関係も狭くなりがちでしょうから、また、合コンが多いとは思えませんから、伊藤はそれなりにはモテそうですけれど、27歳のユキノよりは年上でしょうし、直ぐに彼女が見つかるものかなあ、と思います。しかも、年度末と年度始め付近は入試や卒業や入学で学校は忙しくなるはず。
まあ、ここは、お見合いの話があったのかも知れませんし、偶然の良い出会いがあったとか、紹介してくれる昔からの良い友人がいた、ということで説明は付きますけれど、確率の問題だけで言えばその時期に彼女を見つける方が難しく、母親か姉妹と考えた方がより妥当では、と思います。
ただ、ユキノは依存症でファザコンかも知れないと思っている私からすれば、不倫の方がユキノらしいとは思いますけれど、それだとユキノが嫌な女になってしまいそうなので、まるで別の話になってしまいそうなので、避けて欲しいとも思い、複雑な感じです。
結論としては、母親か姉妹が妥当とは思いますが、今カノでも何らおかしいとは思いませんし、どれでも解釈としては無理がない範囲で成り立つとは思います。
◎ 新宿御苑を見下ろすカラス。
前回書いたことへの補足。
24分過ぎ、梅雨も明けて雨が降らなくなってタカオが新宿御苑に来なくなり、コーヒーから再びビールに変わって、「27歳の私は、15歳の頃の私より、少しも賢くない。私ばっかり、ずっと、同じ場所にいる。」とユキノが思ってからの高層ビルに止まって新宿御苑を見下ろす1羽のカラス。
普段は教壇という一段高いところから生徒を見ているユキノ。生徒からイジメられて生徒との距離を感じ、宙に浮く感じ、宙に浮いているからモガイてもモガイてもどうにもならない感じ。もともと一段高い教壇から座っている生徒を見下ろしており、超高層ビルの高さが疎外感の強さを表しているのでしょう。
カラスが飛び立ったところは、その後のシーンでユキノに動きが見られるので、その暗示でしょう。
◎ 階段のシーン。
33分過ぎからの、新宿御苑で急な雨に降られ、ずぶ濡れになって行ったユキノの部屋でのシーン(9月の2学期始め、先生を辞めた日か退職挨拶に高校に来た日なので、もう先生ではない。)。
あらためて見ると、
そこで告白されて、頬を染めてしばし間があってから落ち着いた顔になって「ユキノさんじゃなくて、先生でしょ。」云々と言ってフッた後、
37分過ぎ、耐え切れなくなってタカオを追いかけて裸足でよろめきながらも駆け出し、転びながらも走り続けるユキノ、階段にたたずむタカオを見つけたシーンで、
タカオが「ユキノさん、さっきのは忘れてください。俺、やっぱりあなたのこと、嫌いです。」を皮切りに泣きながら、どれだけユキノが嫌いかを口にしつつ、こんなにまでユキノが好きだという思いを不器用にユキノにぶつけるところ、
それでタカオに抱きついて大声で泣きながらイロイロ言って、
「あの場所で私、あなたに、救われてたの。」とユキノが言い切って、
主題歌「Rain」(→歌詞へのリンク)の「言葉にできず 凍えたままで 人前ではやさしく生きていた しわよせで こんなふうに雑に」からが流れるシーン。
ここは、映画館で見たときは良いと思った程度でしたが、Blu-rayで見たときは感動したなあ。歌と映画が合っています。
ここの、ユキノというか花澤さんというかは、恋する少女の表情から大人ぶって無理をしてタカオをフリ、でも無理を通せなかったところの表情と声の変化、良かったです。やっぱり花澤さんは良いよね、と。
ここは思い出すだけでジーンと来ます。
○ 細かいことを言えば、室内での告白で四国の実家に帰るからとしてタカオをフルのなら、自分の高校の生徒だと分かった時点でもう会わないように新宿御苑以外の場所に行けよ、とは思いましたが、それが出来なかったのはユキノの弱さでしょうし、階段のシーンでは、明確ではありませんが、ユキノが告白を受け入れたに近い状態なので、ここで終わっていればハッピーエンドかな、と思えたのですが。
大人同士ならここでキスをして遠距離恋愛とは言えメデタシメデタシでも良かったのでしょうが、しかし、エンドロールまでのタカオの描写からすると曖昧というか、どちらかと言うと2人は終わったような雰囲気です。
階段のシーンの後にどのような会話があったのかは分かりませんが、互いにもう少し大人になるまでしばし保留の状態だったのではないでしょうか。次に連絡を取ったのが翌年の2月と思われることからも、そうではないかと。
新海監督はオーディオコメンタリーで、「ちょっとね、明るい何かを感じさせる終わり方にしたくて」とラストのシーンの理由を説明していますが、確かに、エンドロール後の手紙と靴のシーンで2人はつながっていることが示されました。
階段のシーンで終わるよりはハッピーではないですが、エンドロール中と少し前のシーンで終わるよりはハッピーな終わりです。
◎ エンドロール後の45分過ぎからラスト。
翌年の2月3日付けでユキノから初めてと思われる手紙が来て、雪の新宿御苑の東屋で手紙を読みつつ、ようやく完成したのでしょう、ユキノ用の靴を置き(※)、いつか会いに行くと思うタカオ。
(※靴を置きっ放しにしたのなら、多少の未練はあるとしてもユキノへの思いに区切りを付けたことになりますから、今後ユキノと付き合うことは無いです。立派になった自分を見てもらうために、いつか会いに行くということでしょう。ただ、それ自体、区切りを付けたのか疑いたくなる行動ですけれど。
回収したのなら、この後で、いつか会いに行くと言っているのは、再度告白するためでしょう。
どちらかは良く分かりませんが、後者のような気はしています。)
ユキノは四国で教壇に立っており、ほぼ回復したと考えるのが妥当です。もうタカオの靴はなくても歩ける状態。
勿論、この手の依存心の強い性格は簡単には変わらないのでしょうけれど。
ユキノの部屋からタカオを追って裸足で駆け出したシーンで裸足で駆けることが出来た時点と、直後の階段でタカオに抱きついて大声で泣くことが出来た時点で、ユキノはほぼ回復していると考えられます。
そこで靴職人を目指すタカオの役目はもう終わっていたとも考えられます。
ただ、手紙にはまた手紙を書く旨が記されていたので、これで付き合うことにならなかったら、ユキノは悪い女になってしまうなあ。
付き合うつもりがないのなら、「銀河鉄道999」のメーテル(cv池田昌子)が星野鉄郎(cv野沢雅子)にとってそうであったように、キッパリとタカオの「青春の幻影」となって欲しかったですけれど、メーテルのような覚悟が出来る人はそうはいないですし、この映画は現実的でもっと生々しい人間を扱った映画ですから、この映画はそれでも良いでしょう。
ラストはタカオのこの言葉。「歩く練習をしていたのは、きっと俺も同じだと、今は思う。いつかもっと、もっと遠くまで歩けるようになったら、会いに行こう。」
◎ 後は、身も蓋もない細かい余談。良いイメージでこの映画を締めくくりたいなら、以下は読むべきではありません。
タカオとユキノのその後と、タカオが作った靴の行方の推測について。
○ 四国で、もう1人で歩いているユキノには象徴としてのタカオの靴は不要になっています。
思春期の恋の思い出として、タカオの若さの象徴として、タカオが靴を捨てることが出来るようになるまで、タカオはユキノのことを、徐々に小さくなるにしても、ずっと思い続けるのでしょう。靴を捨てることが(=他の女性を好きになること。)、タカオが大人になるための試練でしょう。
なので、靴の意味は半減です。
タカオが作った新しい靴が無くても再び歩き出すことが出来たユキノにとっては靴は意味がありません。
2人が再び会って愛し合うようになれば、そのときにその靴を履くでしょうけれど。
なので、ユキノ側から見れば、2人が結ばれないとこの映画における靴の意味はほとんどないわけです。
一方、タカオにとっては、少年から大人になるためには自分で作った靴を自分で捨てるということが必要になりました。
靴というのは、ある程度使って役目が終わったら捨てるものですから、そういう意味では、タカオ側から見れば、成長過程に必要な取捨選択をせまるものとして靴の意味はあるわけです。
そういう意味では、2人が結ばれようと結ばれまいと、靴の意味はある程度あるわけです。
○ 自分が先生であるとタカオが気付くと思って短歌を残したというような台詞が最後の方でありましたが、だとすると、こんな駄目な先生を見せるというのもマゾっぽいです。ユキノがそれだけ弱っているということでもあるのでしょうけれど、結局、依存心の強い女と言うことでしょう。意識的ではないのでしょうけれど、弱さを見せて男の気を引くタイプ。
四国の実家に帰って教壇につきましたが、こんな性格の女で、かつ、美人で優しいから、直ぐに男に惚れられ、1人では居られない性格なのでその中から彼氏を見つけて結婚する気がします。(そうならないためには、タカオが早い時期に自信を持って強い気持ちでユキノに会いにいけるかどうか、です。)
依存心が強いので年上かグイグイ引っ張るタイプでないと駄目でしょう。言い寄ってくる男でユキノが気に入った男が既婚者ばかりの可能性も高く、あるいは、ユキノが好きになる男が既婚者ばかりの可能性も高く、その場合は、何回か不倫をしては傷付き、そのときに始めて、タカオのもとに戻ることも、あり得るでしょう。
そのとき、タカオが靴を捨てていれば、タカオはユキノの気持ちを受け入れず、捨てていなければ未練があるということでもあり、気持ちを受け入れるのでしょう。
しかし、ユキノのタカオへの気持ちが愛とは少し違うもの、男を好きになっても頼っても裏切られるから、自分を裏切らない年下で自分をずっと好きでいてくれていた男を選ぶという消極的な理由からであり(綺麗な言葉で言えば、愛するよりも愛される方が幸せ、というやつ。)、それにはタカオも薄々気付いた上で付き合い、結婚することになります。
それって、あまり幸せな感じがしませんけれど、現実世界でもありがちとは思いますが。
○ 一方、タカオがユキノをただの思い出にして別の女性と普通に幸せに結婚する場合、ユキノは幸せにはなれません。いずれにせよ、ユキノがこのままでは、どうあっても2人の結婚生活は幸せにはなりません。
依存心が強いユキノが、もっと大人にならないと、もっと自立した大人にならないと。
○ 幸せになれるパターン。
タカオが他の女を好きになる。ユキノが自立して大人の恋をする。
タカオがユキノを好きなまま、ユキノが自立して、タカオがタカオだからタカオを好きになる。
結局、ユキノ次第です。
ユキノは相当にモテそうなので(男性から見て、美人で可愛くて、弱さもあって守ってあげたくなるタイプ。男性(特に年上)から見た理想的な女性に近い感じ。こういう女性は結構いるのに、女性はこういう女性を嫌いなようですね。)、ユキノが自分自身をもっと見つめたり考えたり変えたりという機会は、なかなか来ない気もしますが。フッた相手か不倫相手の妻が怒ってユキノを刺し、瀕死の状態になるくらいのことがないと。
この映画は依存心の強い女性の物語でもあるわけで、実はそういう大人の女性は多いので、その好みにも合うかと思っているのですが、逆に直視できないのかもしれませんし、(新海監督のような)中年男性が初恋の相手かフラれた相手を思い出しながら、という視点で描かれているので、実際に女性に受け入れられるのかは分かりませんけれど。
【shin】
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