いいアニメでした。
今回は愛国心についてです。
→1期の感想。
→2期の感想1。「多数を救うためにどこまでの少数を犠牲にすべきか?平和とは?」
→2期の感想2。「ココと私兵は何故仲が良いのか?」
→2期の感想3。「死を恐れる醜いココと恐れないキャスパー」
○ アメリカのCIAの優秀なエージェントで、テロ対策などをほとんど違法な手段で行っているヘックス(cv久川綾)は上司のブックマン(cv磯部勉)の左腕で、祖国を思って働く強烈な、と言うか異常な愛国者です。
アメリカという祖国を、ヘックスなりに守るためにしていることです。
あくまでヘックスなりにであって、時々やりすぎることから却って国益を損ねることがあり(本人はそれが愛国と思っている。)、CIAの上司などからは、使える優秀な者とされている反面、煙たがられている部分もあります。
15話で、武器商人のココ(cv伊藤静)を利用しようというオペレーション・アンダーシャフトを推進する立場にあるブックマンは、ココを殺すことは望まず、利用することを望みます。
ヘックスは一応それに従うものの、ココがやがて怪物になってアメリカにアダをなすと判断し、ヨナを殺すことによって間接的にココを壊そうとしますが、ブックマンの右腕のアール(cv浜田賢二)に妨害されます。
アールの説得により、ブックマンはヨナの殺害を中止させようとしますが、ヘックスは従わず。
ヘックスはアールに殺されそうになったものの大怪我で済みますが、ココ部隊の活躍でヨナの殺害には失敗し、10人の隊員が3人に減り、逃げます。
ブックマンがココらにヘックスの仲間の位置を教えてココらを助けましたが、ヘックスは自分の邪魔をするブックマンを恨み、ヘックスが正しいことがいずれ分かると言います。
○ さて、ブックマンと祖国アメリカに見捨てられてココらに負け、逃げた穴倉で、「なんで?。私は正義。なのにこんな穴倉に隠れて。痛みに震えてなければならないの?。どうして?。私は正義。」とヘックス。
その「正義」、その「愛国心」が祖国アメリカの国益のためにならないと祖国アメリカに判断されただけですが。
○ ヘックスに私兵のアール(cv小西克幸)を殺されて復讐の鬼になったココ(cv伊藤静)が本気で怒り、アメリカ製のB52を向かわせます。
(B52はアメリカ軍の主力の長距離大型爆撃機。米軍マークを消して米軍にやらせた可能性はありますが、ココの扱う商品の1つでしょう。但し、現実世界では、B52を扱える武器商人なんてあり得ません。「エリア88」の武器商人は、当時の最新鋭のアメリカの超音速爆撃機のB1や、試作中のアメリカの戦闘機のX29や(問題があって、結局実用化されていない。)、退役予定のアメリカの原子力空母を調達してくるあり得なさでしたが。)
穴倉でB52の飛行音を聞いたヘックスは外に出て「B52だ。私の国の爆撃機。」と嬉しそうに言います。
その爆撃機が大量の爆弾を投下し、自分を殺しに来たと分かると拳銃自殺をします。
自分を殺しに来た祖国製の爆撃機を目の当たりにし、祖国アメリカを愛するヘックスが死んだのは、歪んだ愛国者として象徴的でした。
○ さて、話を戻して、ヘックスは正しかったのか?、それとも、ブックマンらのアメリカが正しかったのか?
(1) ヨルムンガンド計画が実施されると、相対的とは言え世界一の大国としてのアメリカから、ヨルムンガンド計画の次の地位の大国に成り下がり、アメリカの支配力が相対的に弱くなります。
その中でも、ココとある程度組んで、計画の前よりは他国に対して相対的に優位になれる可能性はあります。
ブックマンが担当するオペレーション・アンダーシャフトはこれに資するかも知れませんが、そもそも、戦争の元凶でもある国や自分以外の人間と、ココが組むとは思えません。
(2) ココがいなくなっても計画は止まらない段階だとココは言っていますが、強力で的確な判断ができる指導者、つまりココがいないと、計画の継続が少し微妙になるのでは、と思います。
既存国家から隙を突かれやすくなるのでは、と思います。
(3) ヨルムンガンド計画は人間の自由を制限するので、どの国よりも自由を大事にするアメリカの価値観と合いません。
アメリカは、国による規制、国による公共事業による雇用政策や経済政策、国による社会保障など、国の関与を他国に比べて極端に好まず、小さな政府指向が強いです。
(4) ヨルムンガンド計画によって世界が守られ、その守られる中にアメリカが入るということは、自分の身は自分で守るというアメリカの価値観とも合いません。
あれだけ銃による無差別殺人が起きているのに、アメリカは銃を持つ自由を大事にしています。
以上からすると、ヘックスが正しかったように思えます。
しかし、アメリカも世界もヨルムンガンド計画を察知できず、察知後、止められない段階になっても止めようとせず(止められないと判断したから止めなかったといえるほどには、計画の全容を把握していないと思われますが。)、ブックマンにいたってはヨルムンガンド計画がもたらす新世界を見たくなっているとか。
ヘックスのその「正義」、その「愛国心」が、その時点では、祖国アメリカの国益のためにならないと祖国アメリカに判断されただけですが(、世界全体のために利益かどうかは置くとして)、アメリカの国益にとってはヘックスの方が正しかったように思えます。
○ 愛国心についての余談
(1) 愛の対象である「国」が何であるかは書きませんが、愛国心とは「国」の言うことに従うことと仮に定義すれば、ヘックスの愛国心は愛国心では無く、ヘックスが忌み嫌うテロリストと同列の、愛国に反するもの、国益を害するものと言えます。
(2) そうではないとすると、愛国心の定義は難しく、各人が愛国と思うことが愛国となりかねません。
その場合において、愛国心という概念の存在が正しいものと仮定すると(つまり、愛国心を持つことが正しいと仮定すると)、誰かの愛国心と誰かの愛国心から来る言動が異なることもありますが、愛国心という概念が正しいとする人は、自分とは正反対の言動であっても他人の愛国心をも尊重しなければならないことになり、ヤヤコシイことになります。
共に愛国心を持つAとBとで、国がどうあるべきかという考えが異なれば、AとBとが持つ愛国心から来る言動は正反対にもなり得るわけです。
それでも、自分の愛国心を正しいものと考えるAは、正反対の言動をするBの愛国心を尊重しなければおかしいということになります。
AがBの愛国心を尊重しないということは、BがAの愛国心を尊重しないことを認めるということであり、それは、Aが自分の愛国心を否定するのと同じことになるからです。
Bの言動に意見することは問題ありませんが。
(3) 「国」の言うことに従うのが愛国心とは思いませんが、愛国心が何なのかは、難しいです。
【shin】
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