【ネタバレ】
◎「わたし達はおとな」
2022年6月10日(金)公開、監督と脚本は加藤拓也、PG12、109分。
木竜麻生(優実の役。デザインの勉強をしている大学生。)、藤原季節(直哉。演劇サークルの中心人物の大学生。)のほか、優実の大学の仲間の3人(菅野莉央(臼井)、清水くるみ(池田)、森田想(絵梨))、桜田通(将人。優実の元恋人。)、山崎紘菜(伊藤。直哉の元恋人。)など。
総合評価は上中下で上。
○青春と恋愛、妊娠と責任、でも日常。これは良いです。
ですが、劇的な出来事であっても劇的に描かないので、一般ウケはしないでしょう。
なお、回想シーンは現在のシーンよりも少し横に広い画面になりますが、それが気づきにくいため、今のシーンは現在なのか過去なのかに気を配らないといけないので要注意です。
・優実から、妊娠した事、直哉の子ではないかもしれない事を告げられた直哉があっさりと結婚することにしたところは不思議に思いました(結婚という言葉は使いませんが、意味としては結婚という事だった。)。これは、この先を見ていくと、優実を愛しているから、優実と結婚したいから、子供がほしいから、ではないので、女性には優しくすることにしているからという直哉の習性でしかないような。
Hするときはナマでする主義なので、元恋人の伊藤を妊娠と中絶をさせてもいますから、そこから少しは学んでいるのではと期待したのですが、伊藤とまだ同棲していましたし、優実と同棲するようになってからは家事を協力するどころか手伝いもしませんし。利己的な優しさということでしょう。優しく見えるだけで実は優しくはない、ということを直哉が自覚しているのかはよく分かりませんので、優しいふりをしている、のかまでは分かりません。
(もう1人の父親候補(将人ではない。)には何も言わない優実。Hすることに同意はあったようですが、ピルを飲んでいないからと優実が言っているのに飲んでいると思い込んで、あるいはハナから気にせずに中で出した後も、どうせ大丈夫だと気にもしていないし、その態度に更に優実が怒って出て行けと言っても何で怒っているのか分かっていないし分かろうともしない男というのも、そういう日本の男性は少なくはないだろうと思わせます。)
・別れることになって直哉が優実の部屋から出て行き、それが朝だったのですが、そのまま続くエンドロールで、自分の朝食の準備をして食べるまでの優実を定点カメラで映すところは、それでも日常はやってくると強く思わされます。ここまでの描き方からして納得のエンディング過ぎて、とても良いです。
○2021年9月16日配信の映画ナタリーでの加藤監督のコメント。
「私達の生活を非日常で俯瞰して体験する、そんなことがテーマの映画です。一口にラブストーリーと言われてしまえばそれまでなのですが繰り返し言わせていただきますとこれは生活の映画なのです。ドキュメンタリーじゃないですよ。アドリブもないですよ。映画だから。」
・公式HPから。
「おとなになっていくわたし達の、ほんのひと時の、だけど永遠の─あの時。
大学でデザインの勉強をしている優実(木竜麻生)には、演劇サークルに所属する直哉(藤原季節)という恋人がいるが、ある日、自分が妊娠していることに気付く。悩みながらも優実は直哉に妊娠と、ある事実を告白する。直哉は将来自分の劇団を持ちたいと願っていた。現実を受け入れようとすればするほどふたりの想いや考えはすれ違っていく…。まるで隣の男女の生活を覗き見しているような不思議な映画体験で私達をスクリーンに釘付けにし、その切迫感と「圧倒的にリアリティのある日常」を突きつける本作。同じ時を過ごして、お互いを求めたあの時、そして今、お互いが分からなくなって…
過去と現在が行き来し、感情のグラデーションが胸に迫る、これまでに見たことのない恋愛映画が誕生した。」
・「(not) HEROINE movies」とはそれの公式HPによると以下とのこと。
「『勝手にふるえてろ』『寝ても覚めても』『愛がなんだ』『本気のしるし』を手掛けたメ〜テレと、制作会社ダブがタッグを組み、“へたくそだけど私らしく生きる”、等身大の女性のリアルをつむぐ映画シリーズであり、次世代を担う映画監督と俳優たちを組み合わせ、それぞれの感覚と才能を思う存分発揮できる場を生み出し、輩出するプロジェクトです。
何ドンもされない。
胸キュンもしない。
恋とか愛とか生きるとか自意識とか、考えすぎてこんがらがって。
それでももがいて生きている“ヒロイン”になりきれない“ヒロイン”たちの物語です。」
○2022年9月16日(金)に第2弾の「よだかの片想い」が、12月16日(金)に第3弾の「そばかす」が公開予定、こちらも楽しみです。
【shin】