思い付きブログ

「犬王」感想。ロックのライブが長いアニメだったが曲が今一つでノレない

【ネタバレ】

◎「犬王」

 「ここから始まるんだ。俺たちは。」

 「二人のポップスターが600年を駆ける 狂騒のミュージカル・アニメーション」
 「見届けようぜ。」

 2022年5月28日(土)公開、監督は湯浅政明、脚本は野木亜紀子、原作は古川日出男の「平家物語 犬王の巻」、97分。
 犬王(cvアヴちゃん(ロックバンド「女王蜂」のボーカル))、友魚(ともな。平家の呪いで、父が死亡したときに盲目となった。友一、友有と名が変わる。)(cv森山未來)、足利義満(cv柄本佑)、犬王の父(猿楽(のちに能楽になっていく。)の一座の比叡座の棟梁)(cv津田健次郎)、友魚の父(平家の呪いで死亡)(cv松重豊)など。




 2022年5月の新宿バルト9にて。






 2022年3月のAnimeJapan2022にて。




 最近は金曜日公開の映画が増えましたが、土曜日公開とは珍しいな、と思いました。金曜日に見に行くことは難しいので、土曜日公開の方がパンフレットの売り切れの可能性が少ないなと思いつつも、客が少しは分散して土曜日が少しはすくのではとも思い、どちらがいいのかは難しいところです。まあ、できれば第2週までですがせめて第1週で売り切れないだけのパンフを用意してくれれば、どちらでもいいです。

 総合評価は上中下で下くらい。

 最初は見ないつもりでした。ミュージカルは苦手ですし、バディものはあまり好きではないので。時間もあったので、ものの弾みで見ました。見て損したとは思っていませんが、まるで好みではありませんでした。

宣伝には「狂騒のミュージカル」とありますが、ロックのライブが結構長いです。

・室町時代に現代のロックをやって大人気になった犬王と友魚。ボーカルのほかは、画面では琵琶やウッドベースのように大きい琵琶や笛や和太鼓の類いくらいですが、聞こえてくるのはエレキギター、エレキベース、ドラムといったロックバンドとコーラスなど、画面にはない音ばかりなのに違和感が。
 熱狂している観客にも映画館で見ている我々と同じ音が聞こえているという設定と考えるには無理があるので、CDなどで音楽を売ることも含めて我々に聞こえが良いようにしたということか、犬王らの魂がロックだという事を表したいからだと善意に理解するか。
 とは言え、後者のような、ロックが反社会性や反体制性を持っていたということは現代の若者は知らないと言ってもいいくらいにほとんど過去のことになっているような気も。

源氏の末裔である足利義満にとっては好ましくない「平家物語」をロックで歌っているのですが、曲として特に良いというわけではないので、最後のライブは仕方ないとしても、それでも最後のを含めて長めのライブシーンなので飽きました(曲が気に入れば、ライブシーンは楽しめるでしょう。しかし、1曲につき、一度聞いて、しかも半分も聞かないうちにシングルカットしても相当売れるレベルの曲だと思えるレベルでないと一回きりのライブでノルのは難しいです。)。当時としては犬王と友魚の見た目も音楽も目新しいこともあって、当時の観客が熱狂するのは良く分かります。

○平家が政権をとっていたのは1167ー1185年とされているようです。室町幕府の第3代将軍で源氏の末裔である足利義満(1358ー1408年)は犬王と友魚のライブを楽しみましたが、ソレとコレとは別で、自らの統治を強固にするため、自らが編纂させた「平家物語」以外を禁止し、それ以外の「平家物語」を歌っていた犬王と友魚にも禁じ、それを拒否した友魚は死刑(自分が自分でありたいと望んで、最初の名である友魚だと叫んで、命令を拒否した結果、死刑になった。)。更に、犬王の作品の記録も消えた旨の説明文も本作内でありました。犬王自体の記録もあまり残っていないようです。

 日本の近現代史も含めて、歴史というものは勝者や権力者が、作り、改竄(かいざん)し、残し、都合の悪い歴史は無視したり葬り去ったり嘘で上書きしたりという面があるというのは周知の事実ですが(それにピンとこない人は知識不足が過ぎます。)、それをさらりと描いています。
 さらりと描いているので、本作の本題は、虐げられてきた者である犬王と友魚の活躍と無念な結果だと思います。だからこそ、つまらないのにライブシーンを長々と描いたのだと思います(97分の映画ですが、ライブを長くしないと長編映画としての尺が不足するから、なんてことは、まさかないでしょうから。)。仮に歌詞を我々に届けたかったと言うなら、もっと明瞭に聞こえるように歌うか、字幕を付けるべきでした(1回見て聞き取れるのは半分くらいでしょうし、2回以上見ることを前提に作ったのなら、本作はそこまでの魅力はないことに気づけなかった制作者の失敗です。)。

・「平家物語」と言えば冒頭の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し。猛き人もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」が有名ですが、犬王と友魚も足利義満によって平家と同じように盛者必衰になったというのはね。

・なお、犬王の作品の記録も消えたと上に書きましたが、犬王は魔物みたいなものに呪われて生まれたので(魔物みたいなものがいるという世界観の設定です。)、片手が何メートルもあったり、2つの目が縦についていたりなど、通常の人間とはかけ離れた体です。それだけではなく、歌っていくうちに呪いが少しずつとれていって、通常の人間の体に近づいていくのですが、当時にそれが現実だったとは到底思えないです。犬王という人の存在自体はノンフィクションとのことですが(原作の「平家物語」も他の「平家物語」も未読です。有名な冒頭くらいは読んでいますが。)、本作は犬王の存在はフィクションではないかと思わせますし、少なくとも、記録が少ないがゆえに本作で美化され過ぎたのではないかと思わせます。


【shin】


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