【ネタバレ】
◎「ほつれる」
「見ないようにしてた、全部」
「彼女にはなぜ、夫ではない〈恋人〉が必要だったのか? 2人の男の間で揺れ動く心と、夫婦の真実が明かされていく衝撃の84分。」
2023年9月8日(金)公開、監督と脚本は加藤拓也、日本とフランス、84分。
門脇麦(綿子 役)、田村健太郎(文則 役。綿子の夫。)、染谷将太(木村 役。綿子の恋人。)、黒木華(英梨 役。綿子の親友。)、古舘寛治(哲也 役。木村の父。)など。
総合評価点は、上中下で上くらい。
後で知りましたが、「(not) HEROINE movies」の第1作である「わたし達はおとな」(2022年6月10日公開)の監督ですね。それも良かったです。
○淡々とした感じが単館系の映画っぽかったです(100館はいっていませんが、結構な数の上映館でしたから、単館系ではないですが。)。
画面全体も綿子も終始淡々とした感じなのですが、微妙な表情の変化で見せるというのはアニメではほぼ無理で、人間ならではです。変化しない表情で見せるというのも(俳優の表情は変化しなくても見ている人の気持ちに変化が生じるから実質的に変化する。)、アニメには難しいです。
家族、夫婦、恋人、親子が入り組んで、ややこしいです。
○不倫旅行から帰ってきて、昼食をとって別れて、交通事故で倒れている木村を見て救急に電話し、場所はと聞かれて切る綿子。そのまま何もせずに立ち去る綿子。
動揺していたということでしょう。木村より家庭が大事ということでもあるのだろうとは思いましたが、先を見ていくと、家庭もですが今の生活が大事という面も大きいとは思えましたし(子供はおらず、夫婦の2人暮らし。)、責任を負いたくない感じもありました。
倒れている木村に駆け寄ることまではせずとも、電話で場所を言って去れば良かったのですが、それだけ動揺していたということではあるのでしょう。
表面的にはさほど混乱や動揺などの様子は見られないのは(さほどであって、まったくではない。普通に見ても、何かあったのかと思う程度には普通ではない状態。)、別の事情でしょう。
・帰宅して、文則から話があると言われ、話をしてくる文則、事故を目撃したことは言えないので動揺を抑えつつ待ってと言って自室に行く綿子。
普通に見れば何かあったと思える程度には動揺しているのに、それにあまり気付かない文則というのは、2人の夫婦関係と2人の行く末を暗示していたのでしょう。
その辺のシーンで、2人の関係がうまくいっていないことは明らかでしたが、その原因は、(前妻の子と定期的に会っているのは普通のことですが、)文則に不倫をしていた過去があるとか(綿子が木村と知り合う前。)、文則の母が前妻の子を連れて2人の家に勝手に入ってくるとか(文則が鍵を渡している。)、いろいろあることが徐々に明らかになっていきます。そもそも、文則は不倫をして綿子と付き合って結婚したわけですし。
理詰めで自分の正当性を述べてばかりの文則というのも(男性にはありがちな気もしますが。)、綿子を息苦しくさせています。
冒頭の事故の後に帰宅してからのシーンのときから、綿子はどうして離婚しないのだろうと思いながら見ていました。専業主婦で、文則はかなりの高収入ですし、それに慣れきっている綿子がすんなりと自活できるのかは、結婚前の状況次第かなと思いながら見てはいました。結婚前も離婚後も描かれてはいませんが。
責任を持つことを避けている様子ですし、何かを積極的にやるタイプでも無さそうです。
それでも、なるべくしてなった結果。
○公式HPから。
「結婚生活も、恋人との時間も、このままでいい。そう思ってたーー
冷め切った夫婦生活の中、曖昧な関係を続けていた恋人が目の前で、死んだ。
ともに暮らしながらもすれ違いの続く夫と、優しく穏やかな時間をくれた恋人。どちらにもよりかかることができず、揺れる心を抱えた彼女はある行動に出るーー本音と建て前、優しさと偽善、相反する感情が静かに渦巻き続ける物語の後、観た者は「ほつれる」に込められた本当の意味を考えずにはいられない。」
「平穏に見えた日々が静かに揺らぎ始めるとき、彼女の目に映るものとはー。人とのつながり、人生の在り方を見つめ直していくひとりの人間の歩みを追う。
綿子と夫・文則の関係は冷め切っていた。綿子は友人の紹介で知り合った木村とも頻繁に会うようになっていたが、あるとき木村は綿子の目の前で事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。心の支えとなっていた木村の死を受け入れることができないまま変わらぬ日常を過ごす綿子は、木村との思い出の地をたどっていく…。」
【shin】