2015年夏アニメの感想の続きです。
◎「乱歩奇譚 Game of Laplace」(らんぽきたん げーむ おぶ らぷらす)(全11話)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/c0/a86bfc5262eabeec57dd7fddd6e0e1e1.jpg)
総合評価4点(5点満点)
2015年7月の江戸川乱歩の没後50周年記念として、乱歩作品が原案のアニメ。
最初の数話の謎解きの展開が早くて、少し慌ただしかったのでマイナスです。
謎解きの中で、何が正義なのか、正義が通らなかった時にどうすべきか、違法でもそうすべきか、といった人の罪深さについて描いた佳作でした。画風も合っていて、よかったです。
アケチとナミコシ、コバヤシとハシバの少しBLっぽい友情や、コメディもまじえて堅くなりすぎず、楽しめました。
また、OP曲「スピードと摩擦」(歌:amazarashi)とED曲「ミカヅキ」(歌:さユり)もとても合っている上にいい曲でした。
OP曲のMVは、別々の個室トイレで狂ったようにダンスというかパフォーマンスをする女子2人を交互に写した狂気的なもので、これまたいい味を出していました。
高校生探偵(宮内庁公認の探偵で、政府から不登校許可を得ている。)のアケチ(cv櫻井孝宏)、男子中学生のコバヤシ(cv高橋李依)、コバヤシの親友のハシバ(cv山下大輝)、刑事のカガミ(cv小西克幸)、刑事のナカムラ(cvチョー)、検視官のミナミ(cv藤田咲)、死体君(cv山口勝平)、アケチの親友だったナミコシ(cv福山潤)など。
監督は岸誠二さん、シリーズ構成と脚本は上江洲誠さん。「蒼き鋼のアルペジオ」シリーズや「暗殺教室」などのコンビ。2人だけで作っているわけではないですけれど、いいコンビですね。
○ 人間椅子編(1-2話)。担任教師(cv加藤将之)は愛するが故に、これまで愛してきた多数の女子を殺して人間椅子にし、女子も愛するが故に喜んで椅子になっているようだと。
担任教師の気持ちがコバヤシに移ったための嫉妬でホシノ(cv矢作紗友里)が担任教師を殺し、コバヤシを犯人にしようとするもコバヤシが解決すると。
そういう非日常的なことにワクワクして、退屈ではなくなった、楽しいと笑顔で言うコバヤシというのは、それだけ日常が退屈ということも少しはありますが(一般的な人にとっては、いくらか退屈には思っても、それほど退屈ではない程度である。)、それだけ優秀ということでもあり(いわゆる勉強ができる、という意味ではない。)、それ以上に歪んでいるということです。
歪んだ人が多数出てくるアニメです。現実世界では、そういう歪みは、思っても行動には移さないし、言葉にも出さない場合が多いものですが、これはフィクションですから、ちょっとしたキッカケで二十面相にもなることまで描き、その変化にある程度の説得力を持たせています。
コバヤシが認識していない人はグレーに描かれ、認識すると普通に色がつくというのも、関心の変化以上に関心の無さを表していて面白いです。(同じく、認識していない人を、アケチは人形、ナミコシはドクロに見えるシーンもあり。)
○ 二十面相は法で裁けない犯人を何人も殺していますが(賛同する者も多く、模倣犯も多いので報道規制をかけている。)、その是非というのは、実写映画の「狼よさらば」(1974年、アメリカ、主演はチャールズ・ブロンソン)も有名ですが、なかなか解決策の出ない難しい問題です。
最初の二十面相はナミコシで、ナミコシは自らに火をつけて公衆の面前で死んだと思われていたら実は生きていて、でもその後の二十面相はナミコシではないと。ED曲の歌詞に「次は君の番だと、笑っている」とあるように、二十面相が捕まっても別の誰かが二十面相になるという状況。それだけ裁かれない犯人が多いということでもあり、それだけ恨みが消えないということでもあり。
○ 7話。缶コーヒーが切れたからヘリで持ってこさせるアケチは何なのだか。ワンピを着ていた上に、ヘリからワンピ水着を見せて泳ごうと言うコバヤシはもっと何なのだか(笑)。男子が女子用水着を着たら、股間が大変そう・・・と思ったらミニスカートみたいになっている水着だったから大丈夫かな。
この後に泳げなかったことにちょっと文句を言っていたコバヤシですが、コバヤシがアケチとハシバをからかっただけなのか、本気で泳ごうとしていたのかは、謎。
○ 9話から10話。これまでの話でもミナミと死体君による突然の「3分間ショッキング」が何回かあって、アケチらと視聴者に遺体の状況説明をしてくれていましたが、ハイテンションなミナミによる死体君とのコメディというのは特に違和感はありませんでしたが、ミナミが怪しげなマスクのようなもので顔をかなり隠していることや死体君があの格好であることからも、ミナミの存在はアニメ世界での現実なのか否かについては判断しかねていたところです。
(新潟市で2015年10月に開催された「がたふぇす」での藤田咲トークショーでミナミについて、思いっきりやっていいと言われたので、思いっきりやれて楽しかった旨、藤田さんは言っていました。→そのときの感想へのリンク。)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/2d/794f76e8235b888716127d1e876c70a2.jpg)
それが、ミナミも二十面相であったと、捕まったものの、弟(cv山口勝平)を医者に殺された恨みを果たしたと。
その前(9話)、アケチにかかってきた、二十面相と名乗る電話の声が女性だということは分かりましたが、加工してあったので誰かは明確ではなかったのですが、それ故に既に登場していた人の可能性が高いと思い、ミナミの可能性も少しは考えましたが、ミナミと判明したときは普通に驚き。
○ 最終11話。ナミコシが自殺することでナミコシの数式(社会を変革する法則「暗黒星」)は立証されるとしてビルから飛び降りましたが、アケチが手をつかむと。数式の完成に必要としてナミコシはコバヤシにも一緒に飛び降りてもらいましたが(高校の時に親友だったアケチとナミコシに仲直りしてほしいからコバヤシはそうしたとのこと。)、コバヤシの体をハシバがつかむと。
ナミコシは涙ながらにその手をほどいて落ち、コバヤシは助かり。
少しBLっぽい雰囲気を漂わせつつ、見応えありましたね。
アケチへの思いの強さがアケチに認められたいという欲求となり、故に数式の立証を必須と考えたから飛び降りたナミコシ、「自分が死ななければ法則の証明にならない。もっと君に認められなければ嫌われてしまう。」。歪んだ思いですね。
3年前も焼身自殺したように見えて実は生きていたのですから、ナミコシは生きているのでしょうけれど。
でも、危険を冒してまでつかみに行ったアケチですし、危険を冒してまでつかみに来たアケチを見たナミコシですから、2人は仲直りしたと言って良いでしょう。
コバヤシとハシバの仲も一層近づいたようですし。自由なコバヤシと、それに手を焼くハシバというのもいいコンビです。
二十面相は現れ続けて、それが犯罪の抑止にもなったようでしたが、「狼よさらば」と同じですね。
ラストでのその辺の説明はED曲をBGMに文字で余韻を演出し、引き続いて、3人の語りからの、コバヤシの反則技級の笑顔(笑)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/55/f01ea9991637221868b6b76c9cb816db.jpg)
【shin】