CM抜きだと100分弱なので、映画みたいなものです。
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絵は、いつもどおりなので、敢えて書くこともなく。
また、私は録画派ですが、巻き戻して一時停止しないと読めない文言(しかも話の進行上は意味のある文言。)が多いのも相変わらずで、話の流れが止まるので、いい加減にしてもらいたいものです。
前2作ほどではないにせよ、話はなかなか面白かったです。
「物語シリーズ」も3作目のアニメ化となり、「化物語」の前日談の「猫物語(黒)」。高3のゴールデンウィークに羽川翼(cv堀江由衣)が「障(さわ)り猫」に取り憑かれて、これ幸いと暴れる話。
○ 猫に取り憑かれたときに黒い下着姿なのは、清楚な羽川翼が黒い下着というギャップ萌えも含めて、視聴者サービスが主なのでしょうね。
普段は真面目な羽川翼の深層心理にあって普段は自らの意志で押さえ込んでいる、真面目や我慢なんてやってられない、という気持ちから来る家族間の15年間の過大なストレスを裸に近い下着という開放的な姿になることによって解放しているという解釈も出来ますから、話の上では効果的ですが(それなら、猫に取り憑かれたことからしても本来なら素っ裸でないとおかしいのですが、そこはTVですから。)。
合わせて、障り猫を理由にして「羽川翼」が両親や町の人を傷付けるなどの悪いことをして「ブラック羽川」と命名されることから、悪いことの象徴として下着が黒という解釈も出来ますが(取り憑かれて髪も肌も白くなっちゃったのとは矛盾しますが、白猫(銀猫?)に取り憑かれたのだから仕方ないでしょう。)。
○ 「知らぬまに、落ちているのが初恋だ。」というコピーは、前2作に比べると今一つですが、別に悪いと言うことはなく。
初恋に落ちたのは、暦に恋した羽川翼、羽川翼に恋した暦、暦に恋したっぽい吸血鬼幼女の忍野忍(cv坂本真綾)。
でもみんな、「初恋は実らないもの」のとおりになりますけどね。すれ違いもあって。
初恋は実らないことが多いからこそ、恋は一度しか成就しないからこそ、だからこそ、初恋が成就した人以外の全ての人は恋が成就した回数よりも失恋(離婚、死別含む。)の回数の方が多いわけで、だから世の中には失恋ソングが多いわけで。
○ 羽川翼の現在の両親は共に血がつながっていないとか、両親は羽川翼の顔も覚えていないだろうと羽川翼が言うような関係だとか、家には羽川翼の部屋もないとか。
自室がないと羽川翼はリビングや廊下とかに居たり寝たりすることになるので、却って両親の目に付くと思います。
しかし、両親からすれば、自室を与えるということは羽川翼の存在を明確に認めることになるのでしょう。
一方、自室を与えないということは、羽川翼は幽霊か幻か空気とでも思い込むことも出来ますし、たまたま一時的に遊びに来た女の子と思い込むことも出来ますし、つまり、自分達と直接的関わりのない者と思い込むことが出来ますから、そういう行動に出ているのでしょう。
両親は歪んでいますね。
○ 両親が羽川翼に冷たい理由は羽川翼にもあるとされています。
忍野メメ(cv櫻井孝宏)が、怪異より怖い、気持ち悪いくらい正しい、(聖人君子のように)正し過ぎる人間、凄まじいまでの善性と言う、羽川翼。
暦も、他人を圧迫するくらいに正しい、気持ち悪い、と言っています。
両親は、自分の醜さ、それは普通の人間が普通に持つ程度のものであっても(この両親は普通よりもう少し駄目な人間のようですが。)、羽川翼の前では醜い者に見えてしまい、自分の醜さを常に見せつけられていることになり、忍野が言うように毎日が地獄であり、両親も追い込まれていたわけです。
両親が他人であるからこそ、良い子でいなければ嫌われる・見捨てられるという意識が強くなることは良くあることで、それが行き過ぎて、無理をしすぎて、自分が生きるために「正しすぎる歪んだ良い子」になってしまったのが羽川翼。
「水清ければ魚棲まず」と言うように、綺麗すぎる川だと魚は却ってすみにくいです。
あまりに良い子、あまりに優等生だと、無理に我慢して演じている場合が多いので、爆発すると危険だという、時々あるやつです。
子供は、そこそこやんちゃな方が、少しくらい危険なことをしてきた方が、少しくらいケガをしてきた方が、精神的には健全に育ちますし、物事の危険性や安全性の判断がつくようになりますし、大きくなってからは分別が付くものです。
羽川翼は、凄く、歪んでいますね。
○ 血がつながらないことも一因で羽川翼に冷たい両親。
一方、「偽物語」で、妹の月火(cv井口裕香)と血がつながっていないと分かっても変わらず仲の良い阿良々木暦(cv神谷浩史)と月火。
いろいろと条件が異なることから、羽川家の親子は仲が悪くて、阿良々木家の兄妹は仲が良いままというのは、話としてはとても自然であり、「猫物語(黒)」により「偽物語」のテーマが一層明確になりました。
また、暦は羽川翼を好きなのに、好きなままなのに、好きと言うことはないだろうとか、いずれ別の誰かを好きになるだろうと最後の方で言っていて、「化物語」でヤンデレの戦場ヶ原ひたぎ(cv斎藤千和)と付き合うところも理解しやすくなりました。
○ 最後の方の2人の対決シーンで、暦は、羽川翼のためなら命を捨ててもよいと思って実行しましたが(忍野忍に助けられる。)、羽川翼の気持ちに気付かず、諦めました。
羽川翼「なってくれないんだ、私のヒーローに。なってくれないんだ。」
本当は私のことが嫌いでしょと聞く羽川に対し、「僕は本当は、羽川のことが大嫌いなんだからね。」と言う暦。
「そう。。。私も本当は、阿良々木君のこと、大嫌いなんだからね。」と答える羽川翼。
互いに好きなのに、言えなかった・伝えられなかった・伝わらなかった2人。
羽川翼に頼られたいのに、暦に頼りたいのに、互いにそれが言えなかった・伝えられなかった・伝わらなかった2人。
上手く言葉に出来ないから伝えられない・伝わらないというのも、相手の自分への気持ちに自信がないから伝えないというのも、それも青春。
○ さて、血がつながらないけれど仲の良い兄妹を描いた「偽物語」と、血がつながらないし冷たい関係の親子を描いた「猫物語(黒)」を踏まえて家族とは何かについて考えると、血のつながりではなく心のつながり、というありふれたことを言っていることは確かです。
ただ、心のつながりがどうしたら出来るのかについては「猫物語(黒)」で明確に触れているわけではありませんが、
血がつながった兄妹だと何の疑問も持たずに当たり前に思って仲良く喧嘩しながら過ごして来たシスコンの暦とブラコンの月火は、それを前提に血がつながっていないと分かっても今までとおりに仲良くできたのに対し、
初めから血がつながっていない他人と分かっていて、それ故に、嫌われないために、見捨てられないために、良い子を演じすぎて気持ち悪い位の良い子になってしまった羽川翼と、それ故もあって、そんな羽川翼と向き合えなかった両親、
という違いになります。
暦と月火は血がつながっていると思い込んでいたことから、それって結局、家族は血のつながり、と言っているのと同じことです。
「血は水よりも濃い」
(でも、「生みの親より育ての親」とか「遠い親戚より近くの他人」とも言いますけどね。ことわざなんて、矛盾するものは沢山あります。)
「夫婦は他人の始まり」とか「夫婦は他人の集まり」とも言いますし、血のつながりがあれば築きやすい心のつながりも、血のつながりがなければ相応の努力がないと心のつながりは出来ないという、何ともまあ、当たり前のこと。
○ ラスト、暦が「僕はカイダンをのぼる。」と言って、階段の最上部に少女のシルエットでエンディング曲へ。
戦場ヶ原ひたぎと思われます。
様々な怪談を経て、大人への階段を登り、戦場ヶ原ひたぎにたどり着くという、「化物語」に続くという、ベタですが良い感じの終わり方でした。
今年中に物語シリーズの他もアニメ化されるそうで、そちらも楽しみです。
【shin】
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