岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

著書:新宿クレッシェンド

自身の頭で考えず、何となく流れに沿って楽な方を選択すると、地獄を見ます

闇 167(それぞれの決別編)

2024年12月22日 00時13分32秒 | 闇シリーズ

2024/12/22 sun

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携帯電話に望からのメールが届く。

彼女なりに何日も考えて悩み、それからこのメールを送ってくれたのだろうなという内容。

 


【ともさんへ】

ともさん謝る事事なんか、ないよ。

大丈夫だよ。

ともさんの考えている事、よく分かったし、私もその通りだなぁと思ったよ。

ともさんの言う通り、もしまた前のような関係になってしまったら、私は子どもたちの事を真正面から笑顔で見れないかもしれない。

…というか、もしかしたらこのように連絡を取りあっている事さえも、今の私にとっては罪悪感を感じてるのかもしれない。

いまは毎朝、夕飯とお弁当を作って子どもたちを学校へ送り出し、そのまま私も片道四十分~一時間かけて職場へ向かい、夕方仕事を切り上げていそいで帰宅。

子どもたちの一日の話を聞きながら夕食をとり、宿題を見たり明日の準備をして、お風呂、寝かせて……。

毎日バタバタと、仕事→家庭。

…と、忙しくしてるけど……。

でも、このルーティンワークが今の私には幸せなのかもしれない。

でもね、ともさんに出逢えた事は、私にとって本当に感謝な事だったよ。

「好きだから、相手が一番いい形を望む」

URLに書いた事は、ともさんの優しさなんだよね。

ありがとう。


 

うん、俺は望の新しい生活を壊しちゃいけない。

何よりも彼女が本当に望む生活を見守る。

俺は望から過去にもらった今でも保存してあるメールを開く。

未練がましい俺は、未だこのメールを保存したままだ。

 


今回のことで、今までもらった智さんからの携帯メールを全部削除してしまいました。

智さんと連絡が取れない時はいつも、今までのメールを読み直していたので、消すことは本当に辛かったよ。

でもその分、私の心の中には、しっかりと思いが刻み込まれた気がします。

夫は、私が他の男性に心奪われていることが相当なショックだったらしく、今までも割りと私を束縛していたのが、エスカレートした感じです。

お酒が大好きで、よく外に飲みに行っていた夫が、この1ヶ月、まったく外出をしなくなりました。

「望は俺のものだ」という、独占欲がとても強くて、私のことをいつもコントロールしようとするところが、私の中では窮屈になってきたのでしょう

日々の生活や仕事に対して、一つひとつ自分の理想があって、思い通りに行動してほしいと私に求めるのだけど

私も子供たちを育てながら、この家庭が子供も夫も居心地がよい場所になるなら、と思って自分に与えられたことをいっしょうけんめいやってきたつもり

だけど、ふと気がついたら「私は最近、心から笑ってないな・・・」と思った。

なんだか、だんだん、自分らしさが無くなっているような気がして

夫からの暴力は今のところないけれど、言葉の暴力でたくさん傷ついたんだ。

智さんも知っての通り、私はあんまり言葉が達者でないから、饒舌で理論立てて説明する夫にいつも言いくるめられてしまう。

何か私から意見を言うと、逆ギレされるのがいつも恐くてビクビクしてる。

結婚した時から子供が生まれて今まで、家事も育児もほとんど夫はノータッチで、私が倒れた時くらいかな。

子供たちをお風呂に入れてくれるのは。

だから最近では手伝ってほしい時は倒れて寝込むようにしているよ

以前、アメリカに1ヶ月間旅行した時、ミクが赤ちゃんで、私がミクをだっこして自分の荷物とミクの荷物とベビーカーを押しても夫は手ぶらで知らんぷり。

アメリカで出迎えてくれた私の友だちがすごくあきれて、「のぞみちゃんのだんなさんって酷い人だね」って言ったのを今でも覚えてるよ。

今でも、カフェの買い物とか外に買い物しても、どんなにたくさんの荷物を抱えて重くても持ってくれることはほとんどなし

それでも私は、夫のことを責めなかったんだ。

辞任しようかと思った時期を乗り越え、新年度計画を立て、建築に向けていろんな人と交渉をしたり情報を集めたり、教会の人との間でもコミュニケーションをとったり

ストレスを抱えながら、夫はがんばってるんだと思っていた。

でも、私のことをただコントロールしたいのか、大切に思っているのかということがずっとわからなくて、ずっと今まできてしまった。

何か言葉をかけられても、何をされてもまったく愛を感じなくなってきた。

子供がまだ赤ちゃんだった頃は、私がもっといい奥さんで、よく気がついて、もっと夫のことを大切にすれば愛してもらえるのかなと思っていた。

今は正直言うと、いろいろと思ったり考えている自分の気持ちを言うことが難しくなってきた。

心が堅くなってしまったというか

もう心も体もけっこう疲れてきています。

先日、夫にこのように言いました。

「私は最近あなたに愛を感じないし、伝えたいこともあったけど、もう何も感じなくなってしまった。ポッカリと心に穴が開いてしまった。あなたには本当にがっかりしてしまった」と。

言ってしまった後、いくらそう思っていても、夫のプライドを否定するような言い方はよくなかったなと反省しましたが、でも、今の正直な気持ちです。

智さんとは、逢うべき時に逢ってしまったような気がする。

私にとって、とても大切な存在になってきました。

子供のことを考えると、離婚とはすぐに決断できないけれど、私は子育てをある段階まで終えたら、もう一度考えようと思っています。


岩上智一郎

俺さ、馬鹿だから自分の欲望と言うか本能に忠実に生きてきた。

望を抱いた事に後悔はないし、この女と一緒にいたいって思った。

でも、時折見せる望の悲しそうな顔。

色々考えた。

今だって逢いたいし、逢えば抱いてしまうよ。

だって好きだもん。

でもさ、好きな人が幸せに子供の前で笑顔を見せられる事の大切さを知った。

いや、気付いた……。

望は悲しそうな顔よりも、笑顔がいい。

そして俺はそんな望が好きなんだって。

すっごい辛い選択して、今だってうーんって思うよ、もちろんね。

子供たちが育ち終わり、今の生活が嫌で、その頃まだ俺が独身だったら、いつだっておいで。

大歓迎するよ。


 

俺、本当にこの子を好きだったんだなと実感する。

人間楽な方向へ進めるのなら、基本的にそちらへ行ってしまう。

結果それは堕落に繋がる。

きっかけは小説の作家と読者だった。

気付けば不倫という関係になっていた。

もちろん俺は抱きたくて望を抱いた。

望もそんな俺を何度も受け入れた。

旦那に浮気がバレた。

望は離婚を決意、新たな生活を選択する。

まだ小学生の二人の娘がいる望。

成人までってなると、十数年。

それまでに彼女が新たな出会いがあるかもしれない。

もちろん俺にもそれは言える。

ただ誠心誠意、せめて今は清く生きたい。

品川春美…、ミサキ…、百合子とはまた違った形の終焉。

本当、前に群馬の先生が言った通り、俺は愛に苦しむなあ……。

 

俺は以前自費出版というものを否定した。

簡単にいえば、あれはあくどい出版社の商売なだけであり、本にしたいという作家志望の志を金に換えているからである。

自費出版で最初に思い浮かぶのが、新宿歌舞伎町の裏稼業『ゲーム屋』時代にお世話になった番頭の佐々木さん。

フォト

外見はパンチパーマで全身刺青入っているし、元ヤクザだから一般人はまず近寄らないだろうけど、本当に優しい人。

歌舞伎町の野良猫に十年間缶詰などの餌をあげ続けた。

一日だけ法事で猫にあげられないから、その時俺に頼んだくらい。

フォト

その元奥さんが幻冬舎で発売されている『極道な月』の天藤湘子。

元々は『文芸社』の自費出版で、佐々木さんが金を出して始まった。

湘子さんは奇麗な方で自分の刺青を載せた表紙が話題を呼び、五万部ぐらい売れたそうだ。

当時佐々木さんは、いつも俺に「岩上君、本当に金が掛かって困るよ」と愚痴をこぼしていた。

これだけ売れているのに、まだ最初に投資した額が戻っていないというのだから、自費出版って自己満足の人以外は悪だと思う。

騙しや詐欺と一緒だから。

小説家になりたい奴は、どんな賞でもいい。

絶対に賞を獲って、出版社が出すという形で本にしなきゃいけないと思う。

それしかありえない。

金さえ出せば、本にという『ズル』は文学界の汚点に繋がる。

俺も『新宿クレッシェンド』がまだ賞を取る前、二つの出版社から連絡があった。

一つは文芸社。

当時文芸社の上十石(かみじっこく)と言う偉そうな編集のオヤジから突然俺にメール来て「新宿クレッシェンドは世に出さなきゃいけない作品です。七百部で二百八十万出して世に出しましょう」と言ってきた。

頭がおかしいのかと思った。

何故普通の書店で一冊千円程度で売っている本に対し、わざわざ一冊当たり四千円も掛けて自費出版しなきゃいけないのか?

「売れる作品なんて作るのは簡単なんですよ。名のある作家に流行のものを書かせれば簡単に売れるんですよ! ただね、何であんたみたいな素人に声を掛けたか分かる? 斬新な発想がほしいんですよ」

そう馬鹿にされた俺は『文芸社』まで殴り込み「おいおい、俺を目の前にして随分と態度違うじゃねえかよ、あ? すみませんなんて口先で言わず、誠心誠意謝ってみろや。場合によっちゃ、さらわずに済ませてやるぞ、おい?」と脅すと、この馬鹿、勝手に泣きそうになりながら土下座した。

自身の行為が最低な行動なのは分かっている。

ただ、文学を冒涜し、金まで出させようとしているのにこのデカい態度が人間的に気に食わなかった。

自分の中にブレない指針があるのなら、電話口の向こうやメールでだけでなく、本人を目の前にしても同じ事を言えるはずだから。

もう一つは新風舎。

俺の処女作『新宿クレッシェンド』が当時この会社の賞で一次選考を通過した。

「岩上さん、青山にある当社へ一度是非お越し下さい」

そう連絡あった俺は、浮き浮きしながら青山へ初めて向かう。

編集プロデューサーと名乗る村田彩という女性と話した。

周りを見渡すと、この会社はそこそこいい女が多い。

しかし、どうも話の内容がおかしい。

「岩上さんの作品を世に出しましょう。共同出版という形で。それでまず金額のほうなんですが……」

「ちょっと待って下さい。俺は悪いけど、自費出版などするつもりまったくありませんよ。本当にいい作品なら、何も作者が金を出す必要などどこにも無いじゃないですか」

「ええ、それはおっしゃる通りだと思います。しかしこのタイミングでなら、お安く経費も済みます。とりあえず見てもらえませんか?」

そう言って出版プロデューサー村田彩は、分厚い書類をテーブルの上に置く。

言われた通り目を通してみた。

「……」

五百部の本を作るのに、俺が二百三十万の費用をまかなうと明記してある。

普通に考えて、本一冊の値段など、千円から二千円ぐらいが相場だ。

それを何故一冊辺り俺が四千六百円も出さなければいけないのだろう。

あの文芸社よりも高いじゃん。

俺はいい切り返し方を思い付く。

「あのさ、俺からも実は提案あってね。君、こういう仕事をしているぐらいだから、小説の一つや二つ書いた事あるでしょ?」

「ええ、あります。だから作者の気持ちはよく分かりますよ」

「そう…。じゃあ俺がそれを本にして世に出してあげるから、今二百三十万出してくれないかな? ちゃんと本にして世に出すからさ」

「いえ、私は……」

「何で? 君が提示した金額で同じ事ができるんだよ?」

「いや…、私は結構です」

「おい、姉ちゃん。自分でできない事を何故、俺に押しつけようとするんだ?」

「え、あの……」

「ちょっと立ってみ?」

「え、はあ…。これでいいんですか?」

その女が立ち上がったので俺は近付き、いきなり肩で担ぎ持ち上げた。

「ちょっと、何をするんですか?」

女は持ち上げられたまま、俺の背中を両手でポカポカと叩く。

「ん? おまえ舐めてっから、これからホテル連れて行ってお仕置きする」

「やめて下さい!」

「おまえさ、自分たちのしている事について、恥を知れ」

この騒ぎで奥からお偉いさん連中が出てきた。

俺は「作家の魂をくだらないトークやマニュアルで切り売りしてんじゃねえよ、ボケ」と言い残し、新風舎を去った。

当然の事ながら俺の作品は、二次選考で落ちていた。

自費出版会社は魂が無いと思った。

 

小説を何故書こうとしたのか?

『新宿セレナーデ』……。

本当はこの作品の内容を一番初めに書きたかった。

でも漫画チックに見られるだろうから、二千四年に『新宿クレッシェンド(四百二十八枚)』を書いた。

歌舞伎町入門編的作品として……。

同二千四年。

第二弾『でっぱり(三百八十二枚)』で外伝的な形にし、新しい試みをしてみた。

二千八年。

第三弾『新宿プレリュード(四百二枚)』で、神威龍一を登場させる事ができた。

二千九年。

第四弾『新宿フォルテッシモ(四百四十枚)』は時間が経ったからこそ、その内容をようやく書く事ができた。

同二千九年。

第五弾『新宿セレナーデ』……。

やっとこうして初心を書けた喜び。

俺って幸せだな。

ある程度の区切りがついたら、そろそろ第六弾『新宿リタルダンド』へ。

以前しほさんが始めに興味を持った短編作品『かれーらいす』。

これの前後を膨らませた作品になる。

これすらも『鬼畜道 ~天使の羽を持つ子~』になってしまうのだろうけど。

俺の本音記事で、多くの人間を嫌な気分にさせた。

一つあの記事の真意をミクシィで書いておこう。

 


前回の【本音記事】 応援したくない奴は、コソコソ見てんじゃねえよ、ボケ!

この記事を書いて、多くの人たちに嫌な想いをさせてしまった事については申し訳ありませんでした。

自分の予想外の人がマイミクから離れて、ショックはもちろん受けています。

俺の書き方が悪かったんだろうなと思ったので、ここでまた内容はそんな変わらないと思いますが、ちょっと意見を述べておきます。

俺が『岩上整体』を開業して一年以上やりましたが、近所で知っているのに挨拶一つ来ない。

賞を獲ったのに無視。

試合に出ても無視。

でも、道端で会った時だけ偉そうに「それはどうのこうの……」って言う輩が本当に多かったんですね。

天上天下唯我独尊……。

人それぞれでいいという意味合いですが、みんな自由でいいんですよ。

色々な応援の仕方があるのは分かります。

でも、俺は表立って応援してくれている人には本当感謝しています。

陰ながらって言われても、記事見る時間はあるのに何一つコメントくれない人って、何だかなあとは感じます。

だからじゃあ、記事を見れる人限定にしようかなって、今回思ったまでで。

実際、俺が賞を獲った時だけ寄ってくる人って本当に多かったんですね。

それで近寄って騙してくる連中、たかってくる連中も本当に多かったので、正直人間不信になりました。

だってもう歌舞伎町時代じゃないし、俺真面目に良心的に整体やっていたつもりだから、金なんて無いのに、何でそうやって騙して金を俺から奪っていくのって……。

金ありそうとか言われるけど、もう持ってないよって。

俺は当時怒り狂い、表立って応援してくれた人の感謝すら忘れていました。

それまでよく応援してくれていた人たちは、それでほとんど離れました。

まあ結局、全部俺のせいなんですけどね……。

それで余計に人をあまり信じないようにしようって思いながら、KDDI行って……。

でも、どこの世界でもそうなんだけど、結局騙す奴ってあとを絶たないんですよ。

普通なら同じような給料もらってんだから、同僚を騙すなよって思いませんか?

それでも騙されてしまう俺。

つまり、騙されている俺が阿呆なんですね。

甘いというか……。

だから人間を好きなんだけど、自分で壁を作ってそれを乗り越えてきた人だけ相手にすれば、騙されないで済む。

自然とそう思うようになりました。

フォト

『鬼畜道 ~天使の羽を持つ子~』を書いていて、ああ、俺って成長がないなあと気付き、そんなんじゃ誰の賛同だって得られる訳ないでんすよね。

だからもっと分かり易く今の心境で言います。

毎回コメントしろとかじゃなくて、ちょっとでも何か感じたらコメントくれたら、おおいに励みになるし、なるほどこういう捉え方もあるなあと俺は非常に勉強になります。

時間だけは誰でも平等。

こんな便利に世の中、もっと面白いものや楽しい事なんていくらだってあるんですよ。

それなのにその貴重な時間を割いてまで、こんな俺に対し表だって応援してくれている人。

本当にありがとう。

ギネスで記録突破した時は、一人一人の名前を言いながら「この人たちに支えられてここまで来れた」、俺はそう言いたい。

多分本当は、これを声を大にして言いたかったと思います。

最近同級生、男連中ですけど、メールとかくれて本当に嬉しく思ってます。

いつもありがとうございます。

まだまだ頑張りますよ!


差出人 セクラクララ

『最後の記事』にコメントしようと思ったんですが、本文が長すぎてケータイだとコメント入力欄まで行かなくて。

なのでメッセージ送ります。

これが岩上さんの歩んで来た道なんですね。

DEEPの一戦の結末…何故、語られないのか気になってはいました。

(ボクが読んでないだけかな。)

赤裸々な文章と写真…。

岩上さんの魂を感じました。

ヤバい。

グッと込み上げるものがありました。

岩上さんって器用なのか不器用なのか?

どっちにしても凄く魅力のある人だと感じました。

一つ失礼を言わせて頂いて宜しいでしょうか。

岩上さんが愛した女性…彼女よりも運命を感じる女性は、必ずこれから岩上さんの前に現れると思います。

人生ってそういうものではないでしょうか。

こだわりを捨てなきゃ見えてこない本質と言うものもありますものね。

夜勤明けで朦朧としております。

失礼な言い回しがあったら許して下さい。

これからも更に応援しています。


 

同じ西武台高等学校の同級生だというセクラクララ。

俺たちの学年って七百五十人生徒がいたもんね。

全然顔も名前も分からないよ。

一つ分かるのが、野口と仲がいいという事だけ。

野口にしたって、先輩の岡部さんの店『とよき』で初めて会話したぐらいだもんな。

彼のメールを見て、目頭が熱くなる。

高校生の頃から知り合っていたら、きっといい友達になれていたと思う。

いや、それは違うか……。

喧嘩に明け暮れた高校時代。

何人の男子生徒を殴ったか覚えていない。

その中に彼がひょっとしたら…、それは無いか。

あったらミクシィで俺を見ても、関わろうとしないはずだ。

あれ、連投でメールが来ている。

 


セクラクララ

ボクらが小学生の頃、ゴールデンタイムでプロレスをやっていたよね?

当日、ボクのヒーローは小林邦昭でした。

覆面のヒーロー(タイガーマスク)を狩る素顔のヒール。

後に橋本選手が継承したパンタロンも好きでした。

K-1やPRIDEが時代を席巻した時代、プロレスはカスの様な扱いを受けていましたね。

実際、ボクも同じ様に思っていました。

正直、今でもプロレスより総合格闘技の方が強いと思うし、勝つことが最優先される総合格闘技の方が好きです。

しかし。

昨年、三沢選手がリングで命を落とした時に感じましたが、プロレスには勝敗だけでは計り知れない闘う者同士の美学があるんですね。

岩上さんの日記やプロフィールにDEEPでの一戦の結果が書かれていないから調べて見た。

正直、結果を隠してカッコ良いところだけをアピールしているのだと思ってました。

だけど真実を知ったら涙が出て来た。

【戦いに対する飢えは人一倍ある。でも、前を思い出せ。俺は本気で人を殴れず、『打突』だってできなかったじゃないか。向いていないのだ、格闘家には……。】

礼儀正しい対戦相手の将来を重んじられて良かったですね。

彼の脇腹に打突ではなくタップをさせたのはプロレスを築いて来た岩上さんの師匠達なのだろうね。

本当に感じることの多い日記を読ませてくれてありがとう。

まだ暫く読めるようにしておいて欲しいです。

じっくり読みたいから。

夜勤明けでヘロヘロなので失礼なことを書いたかも知れないけど許してね。

ケセラセラ。


 

いつもありがとう。

俺も君のコメントで、どれだけ勇気付けられたか……。

それなのに結果たくさん傷つけてしまい、本当にごめんね。

君にはとても感謝しているんだ。

不器用で感情の起伏が激しく、文章でしか関わっていないから、変に誤解させてしまう事もあって……。

でも過ぎた時間は戻せない。

同時期のしほさんからのメールを見る。

 


しほちゃん

心が広いですね

 

>  俺はあなたが大好きです。

この意味は、どうとってもらっても構いません。

だから懲りずにまた気付いた点があれば、遠慮しないでバンバン言って下さい。

尊敬し、好きな人の意見なら、イラっとくるかもしれないけれど、「違う! 俺はこうなんだ!」って男の意地を見せたいので、絶対に挫けません。

いつかあなたを唸らせるような作品を書いてやる!

もう、それだけなんですよね。

いつもありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

 

私は私に意見するような人間は、大嫌いだけどトモさんは本当に心が広いですね。

自分の事は棚にあげて。

でも基本的に今のままで十分面白いので、普通にワクワクしながら読みたいと思います。

鬼畜道はトモさんの人生そのままなので、下手にいじるとリアルが無くなっちゃうかもしれませんもんね。

気分で発言する癖があるので、本当に御免なさい。

昨日と今日で言う事が変わったりするんです。

気分屋は治りませんねえ~ 。

なのであんまり私の言う事、気にしないで下さいね?

たまに良いこと言ったら、その時だけ参考にして?


 

本当にいつもありがとう、しほ師匠。

俺が勝手に小説での師と崇めた人。

あなたが俺の小説を純文学と位置付けてくれ、夏目漱石や太宰治らと似た評価をしてくれた。

それがどれだけ俺を救ってくれただろうか。

「……」

もういい加減逃げるなよ……。

先日の『。』の一連の騒動。

あれで高校時代の同級生というセクラクララはマイミクを外れ、俺の前から去っていった。

しほさんが、あれでいかに怒ったメールを寄越したか何となく想像で分かる。

 


しほちゃん

じゃあ私も正直な感想を。

女性だからかばってるわけじゃないんですよ。

本当に何で、トモさんがあのコメントでそんなに怒るのか、さっぱり判らないんです。

間違った事ひとっことも言ってないですよね?

他の人達のコメントはただ、トモさんの言った事に関して「頑張ってね~」って応援コメント言ってるだけですよね。

あの人もあの人なりに考えて、応援コメント言ってるとしか読み取れないんです。

悪意なんて感じません。

それをなぜあそこまで歪曲して捉えるかが、さっぱりわかりません。

ぎーたかさんにしても、あの人の意見にしても、私言ってる事も、間違っていないと思います。

それをトモさんが吊るし上げみたいにして、わざわざ日記に取り上げて非難するような記事を書いてるのを見ると、正直「何でそこまで?」って思います。

他の人に対しても、そうなのかなと。

ちょっとでも気に障るような事、触れて欲しくないような事、否定的な事を言っただけで、頭がおかしい人扱い?

ちゃんとしたコメント返してるのは、どっちなんでしょうか

トモさんはいつも調子よく頑張ってね!って言ってくれる人しか嫌なんでしょう?

ネットの付き合いは、それでもいいと思いますよ。

でもね、付き合うか付きあわないかは別として、方法がないですか?

自分が嫌だと思ったら、つべこべ言わずにアクセス制限して何食わぬ顔してればいいじゃないですか。

別に取り上げて、皆の前で公表しなくてもいいでしょう?

ああいう記事を見て、どれだけの人がトモさんに共感すると思いますか?

表面上「大変ね~」「色んな人がいるよね~」「気にしないほうがいいよー」っていうけど、内心は「この人面倒くさい人だなっ」って思うのが関の山です。

自分が同じ目に遭うのが嫌だから、適当な付き合いをするか、付き合いを避けるか、どっちかですね。

結局、トモさんが損をしてるんですよ。

人の悪口を言う人って、友達になりたくないでしょう?

こういう事を言うのすら、きっと面倒だからそのままマイミク切っちゃうと思います。

私もね、あんな記事ばかりだと正直コメントするのも嫌なんです。

見るのもやだ。

だから自然とトモさんに批判的で冷たい対応になるんです。

行くのやめようかなとか、このままフェードアウトしようかなとか思いました。

でも、わざわざメッセージ送ってくれたので返しておきます。

もう一回良く考えてみて下さい。

色んな人がいる世界です。ネットの世界は言葉だけです。

だからこそ、言葉が与える意味を考えて。

自分がちょっとした事言われて嫌ならば、自分の書いた記事が人にどんな影響を与えるかも考えて。

これを見て、何だこの女…って思ったら、私もマイミク外してもらってかまいません。


岩上智一郎

正直、分からないですよ、人間が。

いつ裏切られるかとか、またニコニコ近づいてきて土壇場で利用しようとしているんだろうなとか。

確かにネット上でああいった記事は良くないなと感じました。

だから前に辞めようと思ったんですね。

俺には協調性なんて無いし、いても周りを嫌な気分にさせるだけだし。

ぎーたかに関しては、感謝すらしていますよ。

彼女のところの紹介文にそれは書いたつもりです。

ちえみに関しては、粘着でずっとしつこくされたあと、あのコメントだったんで、嫌がらせにしか見えませんでした。

だって開業してて、三日客が来なかったらそっちに本腰入れるのは当たり前だと思うし。

それをブログにまでしつこく来たから、いい加減にしろよ、この女ってあのように怒ったんです。

セクラクララにしても、ぎーたかにしても、しほさんにしても、何でマイミクを俺から切って下さいって言うのか分からないです。

散々嘲笑され、罵倒されてきたので、結果を出した事にまであれこれ言われるのが嫌いなんです。

だから過剰反応してしまうのかもしれません。

確かに見苦しいだけですよね。

別にイエスマンだけを求めている訳じゃないですよ。

ちゃんと意見するなら、俺は聞く耳は持っているつもりでした。

ただ、みんなのコメント見ると、やはりミクシィとかからは、消えたほうがいいのかなと考えています。


しほちゃん

何故だか分かりませんか?

トモさん、いままで自分が間違ってた、御免なさいって謝った事ないでしょう。

取り敢えず私と出会ってから今まで。

ネット上だけでいいです。

言葉をくれた事に感謝はしてるって言っても、そんな言葉じゃ意味ないんです。

皆、トモさんに本音を言ってもどうせ聞いてくれないんだろうなって思ってるからです。

諦めてるというか、見限っちゃうんですよ。

この人、駄目だって。

だから変わらないんだったら、もういいよ。

性格が合わないんだな。

縁がなかったんだな。

考え方が違うんだな

仲良くは慣れないんだなって思ってるんです。

それでも自分からバイバイって言わないのは、トモさんの事が好きだからです。

トモさんが「そうだね。俺がいい過ぎたよ。ごめんね、嫌な思いさせて。」って一言でも言ってたら、「こっちこそ言い過ぎて、ごめんなさい」ってなるんです。

反論に反論しか返してこないから諦めるんです。

分かります?

私はトモさんの作品が好きです。

凄く可能性を秘めた人だと思います。

だからこそ、人を攻撃して傷つけるようなトモさんを見るとがっかりしてしまう。

好きだから、がっかりするんです。

好きだから意見するんです。

でも聞いてもらえないから去っていくんです。

まだわかりませんか?

もちろん好きって言っても、色恋の意味じゃないですよ。

みんな、どこかトモさんに惹かれてきた人じゃないですか。

作品とか、人柄とか。

色恋も利益もしがらみもなんにも絡まない人たちの言葉がどれだけ真実か。

トモさんにはわかりませんか?

わかりますよね。

だから去っていくのが分からないし寂しいですよね。

自分がいつも正しいと、思わないでください。

いつでもどこでも自分だけが正しいなんて思ってないでしょう?

本当は。

でも文章読んでるとそんな風に思っちゃうんです。

だから、よく考えて欲しいって言ったんです。

反論よりも真正面から謝ることっ!

できます?


 

しほさんには本当に感謝している。

でも、このメールに関しては苛立つ自分がいた。

俺は『。』について怒っただけだ。

それに対して周りは、俺が違うとコメントしてくる。

当然俺の事を思ってというのは自覚していた。

ただ、みんな何故俺を表現者だからと、これは駄目、あれは駄目と型に嵌めようとするのだろうか?

考えれば考えるほど、酷い苦痛だった。

謝った事ぐらい、いっぱいある。

そこまで俺は頑固じゃない。

しほさんは何故、俺に謝罪を要求するのだ?

自分自身そこまで悪い事をしたと思っていない件で、みんなの前で頭を下げる……。

表現者、物書き、小説家、作家…、色々な呼び方はあるだろう。

ただ俺は小説でまったく金をもらえていないんだぞ?

小馬鹿にしてくる奴をミクシィで晒して、何が悪いんだ?

『。』の一連のコメントが、悪意を感じない?

そんな事さえ、俺は思っちゃいけないのか?

表現者だから、受け入れろ?

だったら小説家などそんな邪魔な称号なんていらない。

俺はこのメールに対し、しほさんへ返信をできなかった。

 


岩上智一郎

ごめんなさい。

自分の書いた文字で、たくさんの人が嫌な気分になっているかと思います。

まあ感情的になって、言い過ぎたみたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

二千十年三月二十六日。


 

俺なりの変なプライドが出たミクシィの記事。

しほさんの言うように、とりあえず謝る。

そのあとに謎の空白をかなり入れた。

この記事を見た彼女は、そっと俺のマイミクから消えた。

「……」

しほさんへ何の返事も出せない俺。

もっと作品を指摘してもらい、もっと感想を色々言って欲しいのに……。

ただ、俺は操り人形ではない。

作家の前に、一人の意思を持った人間なのだ。

自尊心が自身の動きを止める。

彼女は以前言っていた。

本当に頭に来たら、何も言わずにそのまま消えると。

俺の行動に対し、ガッカリさせてしまったのだな……。

その現実を目の当たりにした俺は、しほさんとの師弟関係が終焉したのだなと悟る。

随分小説家としての成長をさせてもらった。

本当はこれからだって、もっと成長したかった。

感謝だって数え切れないほどしている。

でも、現状の俺からしたら、酷く辛い。

家の事も加藤皐月が出て行ったにしろ、月に一度は戻ってくる。

弟の貴彦と内緒で養子縁組した叔母さんのピーちゃんとは、仲良くするのは絶対に無理だ。

親父は相変わらず傍若無人。

俺は無職なまま。

こんな状況下にいて、まだみんなの前で謝らなきゃいけないのか?

しほさんを失いたくなかったから、あのような謝罪記事を書いた。

意味のない空白をあえて入れたのは、俺のせめてもの意地。

本当につまらない意地を張ったものだ。

師匠との決別。

何だか淋しいなあ……。

本当に馬鹿は罪である。

 

俺の理解者の一人でもあった高校時代の同級生セクラクララは去った。

そして小説の師と崇めたしほさんまで、俺から去ってしまった。

ぎーたかは残っているが、彼女は実物の俺など興味は無い。

あくまで俺が生み出す作品を好きなだけだ。

よくコメントをしてくれる中で、本当に残ったのはみゆきだけ。

彼女とは岩上整体開業準備前に会った。

まだ百合子と付き合っていた頃。

…といっても開業してすぐ別れるから、関わるようになったのはクリスマス以降になる。

当時川越の中央通り沿いにあった『クラブ姫』で働いていた当時二十五歳のみゆき。

第一印象は綺麗な女だなと思い、整体の営業をしがてら、酒を飲みながら口説いた。

波長が合ったのかみゆきは連絡先を教えてくれ、翌日食事へ行く。

百合子と別れた年末、俺はみゆきとよく連絡を取り合う。

プライベートで食事や飲みに行き、そのあと岩上整体へ施術をするからと連れて行く。

酒も入ったせいか、俺はその場でみゆきを抱いた。

そのあとのみゆきは、俺のブログ『智一郎の部屋』にもよくコメントをしてくるようになり、たまに岩上整体へ顔を出す。

住んでいたマンションが実家の近くというのもあり、俺はよくみゆきのところへ行った。

ただ難点が一つ。

みゆきは言葉遣いがとても悪く、そこだけはいい印象を持てなかった。

俺も態度に出ていたのか、みゆきとは自然消滅のような形になり、一時連絡は途絶える。

ミクシィの記事で、みゆきが結婚したのを知った俺はマイミクから彼女を外し、二年以上経つ。

KDDIも辞めて年が明けた二千十年になり、ミクシィで俺の足跡に何度かみゆきの写真を使ったアメリカンポリスという人物がいたので、本人かもしくは彼女の旦那かどうか確認する為、久しぶりに連絡を取ってみた。

彼女の写真を勝手に使った赤の他人という事が判明し、俺はアメリカンポリスを凶弾する記事を書く。

それ以来みゆきはまた俺に対し、よく連絡を取ってくるようになった。

しほさんやセクラクララが去っても、みゆきだけは変わらず接してくれる。

俺は気付けば、みゆきへ甘えていた部分があったのだ。

 


みゆき

あーなるほどね。

兄弟関係って、どこも一緒だよね。

弟によくしてやったって、そんな恩はすぐ忘れちゃうだろうしね。

うちの旦那は、一番下だけど、まぁ、似たような状況だよ。

智のとこほど、複雑じゃないけどね。

養子縁組して、なんかお互いに好都合だったの?

そこらへんは、よく分からないけど。

実家なんだから、居る権利ぐらいあるじゃん(笑)

周りがギャーギャー言う必要なんてないのにね。

しかし…家族内での虐めとは、酷すぎるね…

てか、智何もしてないのに、なぜ邪魔扱いなんだ?(笑)

引っ掻きまわされてるのはこっちなのにね…

なんか、今になって智は、美由紀に素直に話してくれるけど、当時はあんまり心開いてくれてなかったよね。

なんか、そう言うのも感じ取ってた。

なんか、美由紀に対して一線引いてたのもあったし、「俺が絶対」って感じがしてた。

なんか、昔よりも今の智のほうがずっと好きだな(笑)


 

みゆきも今じゃ子供もいる人妻になった。

彼女は彼女で新たな生活をしているのだ。

それなのにこうして俺の作家活動をいつも応援してくれている。

言葉遣いは昔から乱暴だけど、根は本当にいい奴なんだよな。

ただしほさんを失った俺は、間違いなくみゆきへこのままだときっと依存してしまう。

それは以前教会の神父の妻だった望の家庭を壊したように、下手したらみゆきの家庭すらも破壊する恐れだってある。

何故旦那も子供もいるみゆきが、こう毎日俺へ関わろうとするのかまで真意は分からない。

「みゆき、しほさんの一件で相談したいから、たまには会って食事でもしないか?」

多分俺がそう言えば彼女は時間を作って来てくれるだろう。

それが積み重なれば、俺は間違いなくまたみゆきを抱く。

俺はここまでみゆきへ家の実情を話した。

それに対し、彼女の質問や意見に答えるべきだ。

そして、俺との関係を辞める方向へ持っていく必要性がある……。

 


岩上智一郎

養子縁組は、おそらく家の財産の分与で何かしら好都合だったからでしょ。

いいところどりする人間って昔からどうも好きになれなくてね。

何故俺がこんな目にって何度か考え、『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』を当時書いている途中でなんとなくだけど理由が分かったんだ。

家でよく言われる台詞の中で、「おまえが余計な事をしなきゃ、加藤なんて家に入れなかったんだ」って最近になって言われるんだけどさ、結局俺が小二の冬にお袋が家を出て行ってから高校卒業するまでの十年間…、別居状態なのに家族誰一人、何も動こうとしなかったんだ。

当時お袋は別の男性と一緒に暮らしながら、家から徒歩十分ぐらいの場所で商売も始めててね。

ちょうど小、中学と母方の従兄弟の同級生もいて、当時は本当「あいつの家はよってたかってお母さんを追い出した」なんて言われ続けられたんだ。

だから大学進学など考えず、高校卒業したらすぐに母親のところへ行き、離婚をさせようと……。

ヨリが戻るはず無いのも分かっていたし、両方にとっても、俺ら子供たちにとっても、その形が一番ベストだって自分でずっとそう決めていたんだ。

十年ぶりに会ったお袋は泣きながら俺の話を聞き、離婚をしてくれた。

だから少しはお袋の言い分も聞いてあげようと何度か店には顔を出したんだ。

すると家族は、「あいつは母親が恋しいんだ」「裏切り者」と言われるようになり、阿呆らしくて何の言い訳もしなかったんだ。

その辺りからかな、おばさんが俺に対し妙にトゲトゲしくなりだしたのは。

そして俺が整体を開業するちょっと前、みゆきと会う半年ほど前なんだけどさ、親父がよくミクシィで記事にした加藤と隠れて結婚していたのを知ったんだ。

何でも五年ほど前に籍は入れていたらしいね。

念願の妻の座を手にした加藤は、親父を強引に社長にするよう毎朝四、五時になるとおじいちゃんの枕元へ行き、嫌がらせをしだした。

根負けするような形で親父が社長になり、そして加藤の義理の息子が家業の中へ入ってくるようになった。

呆れた支店の人たちは、親父が「社長になるなら独立する」と反旗を翻し、加藤らは「社長についていけない人間なんて辞めてもらえばいいの。この時代いくらだって働き手なんているんだから」と言い、数十年勤めていた従業員たちは次々と辞めていった。

当時歌舞伎町で自由奔放に過ごし金を稼いでいた俺は、二番目の弟から「兄貴、たまには家の事を考えてくれよ」と言われ、初めてその実態を知ったんだ。

だから歌舞伎町を引退し、家の支店問題の件などで色々代表として動くようになったんだ。

親父サイドは「支店はうちの会社の土地だから、毎月家賃収入として金を納めろ」。支店サイドは「無関係になりたいから土地を買い取りたい」と意見は全然噛み合わず、そこで俺が話し合いの場を作り、双方納得できる金額(贈与税が発生しないギリギリの金額)の四千万で土地の売買をまとめさせた。

心情的にはやっぱ支店サイドの味方でいたかったからね。

親父は「この手先が! あの土地を二束三文で売りやがって!」と常に罵倒しながら、たった三年で加藤にほとんどその金を奪われた。

おばさんは「おまえが余計な事をしたから、あいつらの遊ぶ金を作っただけだ」と罵倒してくる始末。

でも、じゃあ誰がそれ以上の収め方できたんだって?

一番悪いのは親父じゃないか。

何度それを言っても、常に矢面に立つのは俺だった。

クレッシェンドの賞を獲った時も、おばさんは「こんな作品に九百八十円も出すのは勿体ない。おまえの作品は読んでいて嫌な気分になるから嫌だ」と言い、家族で喜んでくれたのは二番目の弟とおじいちゃんだけだった。

『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』で自己のこれまでを振り返りながら書いていて、気づいた事があった。

お袋が家にいた頃、常に悪者扱いはお袋だった。

その後その役回りは親父になった。

しかし、親父には非常にこうるさい加藤が参謀についた。

つまり…、誰かしら悪者を作らないと、やっていけない一族なんだろうね。

加藤が家に勝手に住み始めるようになってから、あの女は嫌がらせの一環で、風呂場の風呂栓を自分たちが入り終わると隠すようになった。

それは今でも続いているけどね。

だからここまで…といっても、まだまだ一万分の一も語ってないけど、自身の人生をそのまま、ありのまま描こうと……。

そしてそれを世界記録へ乗せて、読んだ人間たちが個々に、好きなように思えばいいだろうってね。

整体開業時は正直、地元の人間の嫌がらせとかも色々あり、家の事もあり、みゆきだけじゃなく、誰にも言えない状況だった。

言ったらつっぱって何とか持ちこたえていた糸がプッツリと切れてしまうような気がして……。

多分…、俺もあれから数年経つし、成長したかどうか分からないけど、少しは当時より変わった、それだけなんだと思うよ。

今の俺が好き?

じゃあ、いつか機会あったら俺に抱かれな。


 

我ながら馬鹿な真似をしたものだ。

このメールを境にみゆきはマイミクを切り、俺の前から消えた。

また一人俺は女性を傷つけ、ガッカリさせたのだ。

うん、これでいい。

唯一親身になってくれていたみゆきでさえ、いなくなった。

俺は孤独に生き、文字をただ連ねよう。

 

闇 168(真夜中の徘徊者編) - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

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