潮待小屋

ブラックバスの天敵?

 
先日、久しぶりに大網白里町の「小中池」に散歩に行った。
(釣りに行ったのではないので念の為。釣り禁止です。)



ここは、背後の森から染み出す湧き水をせき止めて作った灌漑用の貯水池。
房総の他の野池と同じように、かつて何者かの手によってブラックバスが放流され、一時は池中ブラックバスだらけになっていた。
その後、公園として整備され釣りは禁止されたが、春に湖岸の遊歩道を散歩していると、良型のバスがあちこちでスメ[ニング(産卵行動)しているのが観察できた。
「うお~!あれ釣りてえ!」
と、よく地団太を踏んだものである。

ところが、数年ぶりに訪れた小中池の様子は、以前とはがらりと変わっていた。
かつてあれほどいたバスの姿は一匹も見られず、かわって悠々と泳いでいるのは、赤や金色の巨大な錦鯉の群れ。



もう、池中が錦鯉だらけである。
公園整備の際に放流されたものの子孫が増えたのだろう。
人の姿を見ると、餌をもらおうと足元にいっせいに寄ってくる。
いまや、この池の生態系の頂点は、この巨鯉たちだ。
鯉のほかにも、ゆうに40センチはあろうかという巨大なヘラブナが群れをなして泳いでいる。
ヘラ師が見たら垂涎物だ。(でも釣りは禁止(笑)。)

鯉やヘラブナが増えたことと、バスが姿を消したことには何か関係があるのだろうか。
私は、あると思う。

鯉やフナは、産卵する際、他の魚から卵や孵化した稚魚を守るために、岸辺の浅瀬に生えた葦などの茂みの奥に入り込んで行って(乗っ込んで)、そこで卵を産む。
一方、ブラックバスは水通しの良い開けた浅場に産卵床を作る。メスが産んだ卵をオスが守る習性があり、他の魚が近づいてきたときはオスが威嚇して追い払う。

しかし、バスが産卵床を作る浅場は、同時に鯉たちの餌場でもある。
バスの2倍以上の巨体の鯉が数十匹で群れをなしてやってきたら、おそらくひとたまりもない。
あっというまに卵は食べ尽くされてしまうのではないか。
天敵が居ないといわれるブラックバスであるが、それは成魚を襲う他の生き物が(人間以外に)居ないということであって、卵や稚魚は別であろう。
日本の在来魚が十分な勢力を保っている水域では、ブラックバスはその産卵形態から、実は相対的に弱い魚なのではないだろうか。

そう考えてみると、琵琶湖や霞ヶ浦などでバスが増え、在来魚が減っているというのは実は順番が逆で、まず水質の悪化や水辺環境の破壊(魚の産卵場所となる湖岸の葦原の消失など)で在来魚の勢力が弱まり、そこに出来た生態系の「隙間」にバスが適応して一気に繁殖したと理解するのが正解なのではないか。
なにしろ、他の魚は産卵することができないコンクリートの傾斜護岸の浅場でも、バスはしっかり産卵し、繁殖することができるのだ。

バスを減らし在来魚を増やそうとするなら、まずは湖岸の開発行為をストップして本来の水辺環境(葦原など)を回復させるとともに、周辺の下水道整備率の向上など水質改善のための抜本的な対策を講じることが、遠回りのようでいて実は近道なのかもしれない。



勝ち誇ったように湖上を悠々と泳ぐ鯉のぼり。
バスやギルをてっとり早く駆除しようとするなら、この池のように大量の鯉やヘラブナを放流してみるのも、乱暴ではあるが一つの有効な方法かもしれない。
魚たちの勢力図は、数年のうちに塗り変わってしまうだろう。

でも、ひとつだけ忘れてはいけないことがある。
錦鯉も、ヘラブナも、もともとこの池には居るはずのない「外来魚」だということ。
他の魚を駆逐する十分な力を持った外来魚。
ブラックバスと大差はないかもしれない。

  
  

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コメント一覧

管理人
>!さん
自分の目で見て確信したことと、どこの馬の骨とも知れぬ評論家の言うこととどちらを信じるかといえば、もちろん自分の目で見たことです。
もっとも、最近年のせいか視野が狭くなりつつあるので、次回の運転免許更新が心配です。
見えたモノが全てという単純なことでしょうか。バス
トーナメントを主宰している団体のHPではヘラブナ釣
りも行っています。

結局貴方も釣りたいだけの視野なんですよ。
通りすがりの釣り師さん
いや、錦鯉のほうが産業になるからじゃね?
外来云々よりも、政治云々よりもそこを何とかしないと。
人間様にどれだけ金をもたらしてくれるか、
それが社会的な価値観の相違につながってる。
このまま目をそらしたままだと、バス釣りはなくなっちまうと思うよ?
WOOさんへ、管理人さん
最近アカミミガメも多いですよねー。
うちの近くの公園の池にいる生き物は、ブルーギル、アメリカザリガニ、ウシガエル、ミシシッピーアカミミガメ・・・。
ここはアメリカか?
wooさん
私も管理人さんに同感。でも某工業団地に向かう橋の下ではブルーギルの他に大きな赤耳ガメが釣れたことがあります。釣り味は魚そのもの。ですが、こっちの方の原因となると・・・。管理人さんとは、いつもニアミスです。
うっかりさんへ、管理人さん
川の氾濫を防ぐのと、川岸をコンクリートで固める事とは何の関係も有りません。
河川工事でもって洪水対策しようとすると、スーパー堤防とか、とんでもなく大鰍閧ネ話になってしまうわけで・・・。
全国各地の砂防ダムは、いまや鉄砲水の元凶とさえ言われてますよね。
脂はむさんへ、管理人さん
護岸工事して、公園整備して、湖畔にパンジーやらチューリップやら植えて、錦鯉放流して・・・。
絵に書いたような「自然破壊」ですね。
びっちゃさんへ、管理人さん
渓流にヘラブナがいたら、ちょっと浮「です(笑)。
ヤマメと一緒に泳いでるんでしょうか。
なみへいさんへ、管理人さん
そうそう。
まさに利権の構造ですよね。
税金の無駄遣いだと思う。
ビッグネットさんへ、管理人さん
九十九里平野の川は、まだまだコブナ釣りできますよ♪
千葉っていいなあ。
洗心さんへ、管理人さん
本日、クマノミとフンボルトペンギンGETしました~。
うっかりさん
護岸工事しないと川が氾濫したり洪水で完遂したりという事とか、ほかに放し飼いのお子さんがおぼれたりとかあるわけで、それなりのニーズはあるのでしょうが、本当にお魚が卵を産む場所もなくなるんですよね。
単なる下水道みたいにしてどうするんだろうと思っています。

鯉もフナも勘弁してほしい私。
脂はむさん
http://diary.jp.aol.com/tycnwhn5/
先日はダイアリーへの複数の写真アップ方法の
アドバイスありがとうございました。
早速トライしてみようと思います。
遅くなりましたが御礼まで。

で、本題。
お役所の方は
錦鯉のいる池→自然が残るいい池
ブラックバスのいる池→釣り師にあらされる池
てな固定観念しかないんじゃないですか、多分。

以前、うちの実家の近所の川でお役所が錦鯉を
大量に放流したことがありました。
水質が改善されましたよ~とアピールしたかったようですが、
翌週には大量の錦鯉の死骸が…

いいなあ、お役所仕事。
税金でいろんな無駄なことできて。
びっちゃさん
うちの近所の川も「ブラックバス激減中」。これについては予想の範囲内だけど、代わりにヘラブナが増殖中です。上流から下流まで、ヘラブナがうじゃうじゃ。渓流でヘラブナを見ると、スゲーむかっ腹が立ちますよ。今、盛んに卵を産んでいますが、どうなることやら。そうそう、2月頃に地震の前兆じゃないかと騒がれていましたね。当りだ!(笑)
なみへぃさん
う~~ん、考えさせられるね。どーでもいいが、日本は何でもかんでも護岸工事しすぎ。そんなに土建屋を肥やしてどないすんじゃ。
ビッグネットさん
管理人さんに同感っ!
最近では「小川でコブナ釣り」が難しいことを実感しています。
自然の生態系を崩しているのはブラックバスなどでなく、コンクリート護岸(&河口堰)の建設等、建設行政に携わる人間ですよね。
特定外来生物被害防止法だけでは解決しません。
洗心さん
拍手!
管理人さんの言う通りだー!
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