「特定外来生物被害防止基本方針(案)」に関するパブリックコメントが昨日締め切られた。(ちなみに私の意見は先般掲載した記事の通り。)
そもそもこの法律自体、環境省と農水省の共管となっているところに無理があると思っていた。
外来魚の拡散を本気で「防止」しようとすれば、鯉ヘルペス対策と同じように、汚染水域(外来魚が居るってことね)からの種苗・成魚の搬出規制を全国規模で行うべきだ、という議論が出てしかるべきである。
琵琶湖や霞ヶ浦産種苗の放流事業は、全量検査で安全性が確認されない限り禁止。全国の内水面漁業に与えるインパクトははかりしれない。
水産業を振興すべき立場の農水省が首を縦に振るはずが無いではないか。いったいどうするつもりだったのか。
ところが、「特定外来生物被害防止基本方針(案)」を読んでみて、納得した。
要するに、ブラックバスやブルーギルなどの外来魚に関する限り、事実上の抜け道が用意されている法律なのだ。
曰く、「意図せずして、物資等に紛れて移入される特定外来生物(=「非意図的移入」)は本法の規制対象ではない」。
これはいったい、どういうことなのか。
明確な移入の意図がない限り、法には抵触しないということなのか。
それとも、「未必の故意」があれば違法ということになるのか。
答えは、おそらく前者であろう。
仮に後者だったとした場合、外部から完全に隔離された養殖施設で生産された種苗以外は放流できなくなってしまい、養殖漁業に大きな混乱をきたしてしまう。
現実的にもありえない。
結果、琵琶湖や霞ヶ浦などの水域で生産された種苗・成魚の放流事業については、事実上何も規制されないということになる。
船舶のバラスト水に入ってくる海洋生物が野放しなのと同じ扱いである。
これでは、「石神井公園の池に売れ残りのカミツキガメを放流したペット店店主42歳」くらいしか取り締まれない。
それでは、この法律は、こと外来魚問題に関する限り大して意味が無いのかというと、決してそういうことではない。
この法律制定によって、有害生物の駆除事業を、国、地方公共団体等が主体となって、つまり公共事業として予算措置をとって進めることの法的裏付けが与えられるのである。
予算が付けば、それなりの規模の対策事業も可能になる。
本来、根本的な部分で鋭く対立するはずの農水省と環境省が、「漁業被害の原因となっている外来魚の駆除」という点で表面的に利害の一致をみて、内部的に抱える矛盾にはあえて目をつぶってとりあえず走り出した、ということなのかもしれない。
しかし、最も基本的な問題について法が規制対象外としたおかげで、本法に基づく対策事業の実効性確保も大変難しいものになってしまったのではないだろうか。
「水道の蛇口を開いたまま、床にこぼれた水をせっせとモップでふき取る」ようなことにならないことを祈りたい。
<参考資料>
「特定外来生物被害防止基本方針(案)」
http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=5086
日本釣振興会に寄せられた釣り人の意見
http://www.jsafishing.or.jp/fishing/fishing_12.html
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