(1)より続く
わが国固有の生態系を脅かしているのは外来魚だけではない。
たとえば、イワナには地域ごとの個体変異があり、中国地方の山間部にはゴギと呼ばれる地域固有の特徴をもった岩魚がいるが、最近、放流もののイワナとの交雑が懸念されていると聞く。
日本各地で放流されているヘラブナなども、本来は、琵琶湖・淀川水系固有種だ。
日本中に居ていいわけがない。
海と繋がっていない山上湖にワカサギがいるというのも、そもそもおかしなことである。
こうした「生態系の乱れ」は、ブラックバスが現れる前から現に発生している。
生態系保護論者の多くは、ブラックバスを拡散させた犯人として、釣り人及び釣り業界を辛辣に攻撃する。
確かにそうした事実もあっただろう。
しかし、それがすべてではないはずだ。
私たち釣り人は、バスが入ってくるずっと以前から、種苗放流によって多くの外来魚(外国産の魚に限らず、本来その水域に生息しているはずのない魚は「外来魚」と言っていいだろう)が日本全国に拡散している事実を知っている。
決してごまかされたりはしない。
「すべての責任はお前たちにある」だって?
それは嘘だ!
外来魚の拡散を本気で食い止めようとするならば、意図的な密放流の規制だけでは足りないということは明らかである。
漁業者の手による拡散も同時に阻止しなければ効果がない。
それはすなわち、鯉ヘルペス対策と同じような措置(例えば汚染水域からの移動禁止、害魚混入の疑いのある種苗の廃棄処分等)を全国規模で行うということだ。
漁業者の経済的損失は甚大。現実的な措置とは正直思えない。
しかし、外来魚の拡散防止、ひいては固有の生態系の保護を本気で考えるのであれば、この議論を避けて通ることはできないはずだ。
それをせずに、バス釣り業界のみを悪者にして、リリース禁止条例を各地で成立させてみたところで、問題の本質的な解決にはならない。
単なるパフォーマンスだと言われても仕方ないのではないだろうか。
それでは現実的な対策として何ができるのか?
と訊かれても、実に情けないことだが私にもアイデアは無い。
ただ、ひとつだけはっきり言えることは、仮にバス釣りを全面禁止にしたとしてもバスの数は減らないだろうということ。
むしろ釣り人によるプレッシャーが減って、短期的にはバスの個体数は増えてしまうと思われる。
わが国固有の生態系を守らなければならないというのは、まったくそのとおりである。
しかし、昨今盛り上がっているブラックバス害魚論は、外来魚問題の一部のみに偏った議論に終始しているように思えて仕方がない。
釣りを愛するものとして、少々心配なのである。
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