麦青む
2019-04-20 | 俳句
麦青む竿にふんどし戦ぎをり
青麦や母はふんどし縫ふ日課
青々と、麦が風に光り戦ぐ頃になりました。子供の頃、学校帰りに、手前の方の筋に黒んぼ(害虫にやられて真っ黒になった穂)を見つけると、ぼくらはランドセルを揺らしながら、我先にと争って抜いたものです。そして、抜いたその穂を友だちの顔につけて遊ぶのです。黒くついたほっぺたに「わーいわーい」とはやし立てて。農家のおじさんも黒んぼを抜くのは叱りません。むしろ喜んでくれます。子供は目ざといからすぐに見つけるのです。もうこの頃の日差しは汗ばむ初夏に近い日差しが多くなっていました。家に帰ると、上る前に、小屋でランドセルを背負ったまま柄をコキコキさせて、柄杓に汲んだ井戸水をあごに垂らしながら、喉をゴクゴクと潤しました。農家のおじさんもお昼には畑から帰ってきます。仕事着を脱ぐと、肌着はもう汗をいっぱい吸っています。それを脱いで上半身を井戸水で拭います。下は越中ふんどし一つにゴム草履です。開いてる勝手口から、おばさんが焼いてるアジの香ばしい匂いが青い煙と共に漂って来ます。ちゃぶ台に箸やお茶碗を揃える音も聴こえて来ます。点けたラジオからは、昼のいこいのメロデイが、ゆっくりと広がってゆきます。隣の鶏が盛んに鳴いています。